バハルシ250超越終わったので初投稿です。
ヒロアカキャンペーンも終わりが見え、トレジャー消費が復活しますね。
永遠にやってろ。
絶対に負けられない戦いというものは存在する。
そういうものは大抵、理屈に寄るものでは無い。プライドの問題だ。
傍から見たら降参した方がマシに見える戦いも、本人的には”戦いきった”という過程がなくては負けてやれない戦いであるのだ。
これもそのうちの一つに入る。
「はははは! 流石だな、イオウ!」
「十二神将を傍で守るのが俺の”お役目”だからな! これくらいできなきゃ」
「ならもっとスピードを上げるぞ!」
「え、ちょま」
「行くぞぉ! ガル!」
「ワンっ!」
犬神宮の十二神将、ヴァジラ。彼女の日課のひとつに犬の散歩がある。
これ、ただの散歩と侮るなかれ。もはや、一種の修行と言ってもいい代物だ。
犬であるガルジャナはそれはもうはやい。神宮の庭に生い茂った森林を颯爽と駆け回る。道が全く舗装されていない森を、だ。
時には木の枝に乗って、時には木の幹をジグザグに蹴りながら空中を走って、時にはいきよいよく枝を噛んでバク宙しながら、それはもう楽しそうに走る。
これはそんなガルジャナに着いていく修行……というわけではない。
彼のルートは先行するヴァジラが決める。そう、犬神将である彼女は四足歩行のガガルジャナよりも、森を駆ける速度がはやい。
これは悪路の中、如何にしてヴァジラに着いていくかが試される修行なのだ。
「こなくそ!」
「おぉ! 凄い凄い! これにも着いてくるなんて成長したな、イオウ!」
「9つも年下の女の子には負けてらんねぇからな」
ていうか成長したなとかも言われたくねぇ。……おかしいよな。彼女が産まれて直ぐの時から一緒に居たのに、スピードも身長も抜かれちゃってさ。これが天才か。
「それならこういうのは、どうだ!」
「うおっ、急にジグザグに……」
ヴァジラたちが一瞬にして森の中に消える。だが甘いな。もうお前たちを追うのに視界には頼ってない。普通に目が追いつけないし。
一人と一匹の”氣”は覚えている。それを辿るように森の中を駆ける。
しかし、ここまで森の奥に入ると木よりも草の方が邪魔だ。あぁ! 草の先が目に入る! 俺に身長、身長をくれえええええ!!!
「うおおおおおおお!!」
「おぉ! 更にやる気になったな! よしイオウ、少し遊ぼう!」
「あ? 遊びぃ?」
「そうだ! 鬼ごっこに変更だ! わしとガルを捕まえてみろ!」
やってやろうじゃねぇか!
一人と一匹の”氣”を探り、予測ルートを割り出す。普通の人と想定してはいけない。二匹の獣を追う感覚が大事だ。
”氣”を完全に読み着れば物の動きを完璧に予測することが出来る。最上級の使い手は完璧な未来予測まで行えるというが、まだ俺はその域まで達していない。
それでも鬼ごっこで捕まえる程度なら可能なはずだ。
「そこっ!」
「うおっとと、流石にするいどいな!」
くそ、外したか! もう視界から消えてるし……。
切り替え切り替え。立ち止まっている暇は無い。その分だけ距離を離される。
走るのはやめない。だが集中力も切らさない。”氣”を読み取って予測を組み立てる。
「そらっ!」
「…………!」
手を伸ばすのもやめない。外した分も加味して予測を更新。
「この……!」
「甘い甘い!」
予測を更新。
「こなくそっ!」
「こっちだぞ!」
更新、更新、更新、更新───!
「そ、こぉ……!」
「甘い! イオウ、息が切れてきたぞ! ギブアップするか?」
「誰が、するか……っ!」
ちくしょー。全然捕まんねぇじゃねぇかどうなってんだホント。
近づけているということは予測は間違っていないということだ。だが、かわされる。
手を伸ばす位置が悪いのかと、少し意表を突くような登場の仕方をしているはずなのだが、背後からでも全然避けられるのだ。
思い当たる節があるとすればガルの鼻だろうが、二人はどうやって意思疎通を行っているんだか。
ヴァジラは気配や仕草だけで動物の感情を読み取ることができる。視界の中に常にガルジャナをおさめているということだろうか。にしたって、お互い凄いスピードで動いているだろうに。
やはり十二神将、ということなのだろう。
とりあえず試してみるか。
「木の実を少し拝借しましてと」
各神宮の庭には薬になる植物や食べ物になる植物が生い茂っている。それら十二神将のかかりつけ医として働いてきた代々の猫神が植え育てたものだ。
無論、この犬神宮も例外では無い。スパイスにも滋養効果のある薬にもなるこの実は、それはもう匂いがきつい。
走りながら採取して、すり潰し匂いを出す。だが、こうして俺の周りの匂いを強めても、彼女たちに俺の位置を知らしめるだけだ。
だから一手間加える。
常備している医療キットの中にある布を切り裂き匂い袋を作る。問題はどこに投げるか。そして匂いを発生させるタイミング。
「もってくれよ、俺の体力……!」
”氣”によって匂い袋を掴んで潰すと、両手を広げて俺の横に浮かべる。離せる距離はだいたい手から3mくらいだ。
限界ギリギリまで俺から離した袋たちの速度を俺と合わせ、木々の間をさも駆け回っているかのように動かしていく。これで、向こうからは急に俺が3人になったように見えるはずだ。
「がぁ……っ、きちぃー!!」
だがまぁこれ、めちゃくちゃ疲れる。相手の”氣”を探りながら、手の先の”氣”で木の中に袋を潜り込ませるようコントロールしなくてはいけない。長時間の維持は無理!
「予測と操作を同時に……! 同時に……!!」
ルートではなく範囲で予測。袋を左右前方へと投げて、あたかも囲いに来たように演出しなくてはいけない。そして最後の仕上げにひと工夫。
「いくぞ!」
袋を投射! 匂いは木々の隙間をドストレートに飛んでいく。とりあえず第一段階はクリア!
投げた直後に予測ルートを再更新。あいつらの行動範囲を更に絞る。………………読み切った!
「まずは一匹!」
「…………!!?」
よし、タッチ! 鬼ごっこだから捕まえる必要なし! そしてヴァジラも視界の端で補足完了! 約5m先!
「これでもくらいやがれ!」
「うおっ!? なんだこれ!」
「スパイス香る俺の上着だああああああああぁぁぁ!!!」
さっき袋投げた後に脱いだやつ! だから俺は既にインナー姿だああああああああぁぁぁ!! 流石に秋になると少し寒いいいいい!!! けどっっ!!
「ダッ゛ヂ!!」
「あ──っ!!」
よっしゃ触った───って、やべぇ速度殺せねぇこのままじゃやばぶへぇ!!!
「〜〜〜っ!!!」
「だ、大丈夫か!?」
が、顔面セーフ……! ふふふっ、木の幹の味がするなぁ。たんこぶできてそう。
「ふ、ふふふ。おれのかち。これがおとなのちから」
「確かに負けたのは悔しいが、遊びで怪我しちゃダメだぞ!」
「おっしゃるとおりで」
なんか。勝負に勝ったのに今ので大人として負けた気がする。いや、体力の使いすぎで体動かねぇし。あ、やめてガルジャナ俺を運ぼうとしないでやめてこのままヴァジラに怒られたうえに呆れながら運ばれたら俺の大人としての尊厳が完全におわ……おわったわ。
「修練が足りぬ! 修練が足りぬ! 修練が足りぬ!」
「ワン!」「キャンっ!」「ワフっ」
うおおおおおおお!! 高速腕立て伏せだぁ! 振り落とされるなよ、エク、ドゥイ、トリ!
「おー凄い凄い! もう怪我はへっちゃらみたいだな!」
「気力が! 戻れば! あの程度の! 怪我など! すぐに! 治る!」
練成した”氣”で自らを治せば良いからだ。というか、俺が猫神として一人前であれば、そもそも気力切れなど起こさないのだが。
「一寸たりとも、動けなくなったのは! 俺の! 修練が! 足りぬから!」
「そうなのか?」
「そうですニャ、ヴァジラ様」
「お、ニャンえもんも来てたのか!」
「このバカの気力が感知できなりましたからニャ。そニャ、もっとはやく動くのニャ!」
「るせぇ! こんのクソ猫がァ!」
言われなくてもやってやるわい! スピードを上げるぞエク、ドゥイ、トリ!
「ワン!」「キャンっ!」「ワフっ!」
「本来であれば猫神将たる者は”氣紛れ”を習得しておりますニャ」
「”氣紛れ”?」
「”氣”を常に放出することであらゆる身体能力を向上する技ですニャ。同時に気配も殺すことが出来る凄技ですニャ」
「ん? それならイオウもやってる時あるよな?」
「片方だけならこのボンクラにも可能ですニャ。だが初代は両方を、常に使っておられたニャ」
いや、実は絶対量が少ないだけでニャンえもんも使っている。お陰様で俺はこいつの襲来に全く気づけないわけだが。
「こいつは圧倒的に体力が足りていないニャ。ヴァジラ様のお散歩はいい薬になるのでどんどん連れて行って欲しいニャ」
「おう、もちろんだ! イオウとの散歩は退屈しないからな!」
うーん素直な笑顔がめちゃくちゃかわいい。これずっと見てられるなら腕立てなんて永遠に続けられるかもしれん。
「「「ガウっ!」」」
「いってぇ!!」
「邪念を感知せりニャ」
なんで!? 良いじゃん可愛いって思うくらいなら! ていうかニャンえもんが偉そうにするとこじゃないだろ。
「しかしそうか、イオウはまだまだ強くなれるんだな」
「うん、まぁ。……ていうかなんだその言い方。まるでヴァジラが育ちきったみたいな」
「いや、 そうなったイオウと戦ってみたいなと思っただけだ!」
「こわい」
俺そういう子にヴァジラを育てた覚えがないんだけど。これが闘神の性か……。
「それはそうと、イオウが騎空艇を買うって話は本当なのか?」
「あれ、言ってなかったっけ」
「本当なんだな!」
昨年、ガロンゾに長期滞在した際にどの騎空艇を買うかを決めてきた。ただし、滞在にかかる不意の出費により予算が足りず、まだ購入はしていない。
応援隊はボランティアの側面が強い。実質十二神将のファンクラブだ。希望する人種が人種なので、危険人物が紛れないように厳正な面接や試験が行われる。
資金源は応援隊メンバーや他のファンたちからの寄付金と、各社に納められた玉串料の一部などから捻出されたお金だ。元が元なので、予算をどのように使ったのかを明確化し、一般にも公開する形をとっている。
故にだ。お金を出してくれる人達からの理解が得られない場合は予算を使えない。
ガロンゾ旅行を敢行した段階では昨年末までに騎空艇を購入できる予定だったのだが、宿泊費の増加により今年中に買えるかどうかという状態になってしまった。
それを聞きつけたアンチラには拗ねられて色々と大変だったけど、落とし前はキッチリつけたので大丈夫だと思う。うん。
「ということはマキと2人きりで外に行ったのも本当なんだな?」
「ん?」
あれ、なんか……空気が変わったような……?
「本当なんだな!?」
「え、あ、あぁ、まぁ……」
なんだろう。ヴァジラの”氣”がなんか動いてるんだけど……。
「ずっと2人きりだったって言うのも本当なのか?」
「あ、あぁ。ガロンゾにいた星晶獣のせいでな。半年間はあの島にいたぞ」
「……本当なのか……」
あ、これ見覚えあるわ。長らく見たこともなかったから忘れてたけど、幼少期の彼女はよくこんな感じだった。……てことは、だ。
「ずるい! ずるいぞ!!」
「えーと……」
「わしだってイオウと一緒に外に行きたいのに!!」
やんややんやと、仰向けになって手足をじたばたさせるヴァジラ。
それは、まだ彼女が今よりもずっと少女だった頃、他の十二神将たちの所へ行くため島を離れる時に、必ずと言っていいほどやっていた”ずるいのポーズ”だった。
「んなこと言ったって”お役目”があるし……」
「マキとはそれでも外に行ったじゃないか!」
「それはそうなんだが……」
あれは彼女の休養兼応援隊の運営状況の視察、という名目で通したものだ。マキラが騎空艇に関しては専門家レベルであったことは周知の事実だったので、十二神将の業務のひとつとしてすんなりと通すことができた。あの時点で騎空艇の購入が認められていたのも大きかっただろう。
「それができるなら、わしは闘神として外に鍛錬に行くことにする! それならイオウも着いてくるだろ!?」
「それはわざわざ歳神である年に始める必要があるのか、って反論が飛んでくるぞ、多分」
「じゃなきゃイオウが居ないじゃないか! 歳神の年は、わしはここから離れられなくて、そうじゃない時はイオウが他の皆から離れられない。イオウと次に2人になれるのは11年後だ!」
「……」
ヴァジラの言うことは正しい。今のシステムでは、俺の元に遊びに来る事が出来ても2人きりというのは難しい。どうしても俺はその年の歳神を優先しなくてはならないからだ。外に行く、なんて言うのも言語道断だろう。
「今まではずっと、皆も同じ気持ちだろうから我慢してたんだ。でも、マキだけイオウと外に行くなんて、ずるい! ずるいぞ! わしも、昔みたいにイオウと遊びたいんだ!」
ヴァジラは基本的に素直で嘘は言わない。今のも間違いなく本心であろう。
歳神と一年共に暮らして護り抜く、と言う制度を作ったことに俺は後悔はしていない。
彼女たちが世間に露出しやすくなるのはその一年で、危険が増すのもまたその一年だ。いざという時、彼女たちの盾になれることに、俺は喜びすら感じている。
だが、その弊害で彼女たちが寂しい思いをするのは嫌だ。仕方のないことだとしても、どうにかしてやりたい。
「ヴァジラ。ひとつ約束をしよう」
「ん……」
彼女を落ち着かせるように、頭に手を置いてゆっくりと撫でる。昔、彼女が駄々をこねた時も、こうして頭を撫でては「必ずまた会いに来る」と約束して宥めたものだ。
「今すぐはどうにもならない。だが、騎空艇を手に入れた後ならなんとかしてやれるかもしれない」
「本当か?」
「あぁ、本当だ」
騎空艇の運用は応援隊の受け持ちになる。ならば、それが正しく使われているかを十二神将の誰かが”視察”に来ても問題はないはずだ。外へと旅立つ最初の一回目なら、更に説得力が増すはずだ。
「だからその時までは我慢していて欲しい。外へは必ず2人で行こう」
「……我慢したら、ご褒美をくれるか?」
「もちろんだ」
「……わかった、信じる。イオウは今までも絶対に約束は破らなかったからな!」
「なるほど〜。それでお金が必要になったわけですか」
「うん。どうにかならないですかね?」
お金の話は専門家にということでシェロカルテさんを頼ってみた。彼女とは多くの取引や契約をしてきた仲なので、こちらの内情についてもある程度理解がある。
「隊の皆さんからのお金は現状を維持したい、ということでしたね」
「はい。寄付金ですから。上から圧力かけて集めるようじゃ意味が無いですし、それをすると十二神将の名に傷がつきますから」
応援隊はボランティアだが、ほとんど十二神将公認の組織と言っていい。故に組織として清廉潔白でないと、あらぬ疑いが十二神将に向けられることになるだろう。
「でしたら、一番いい方法がありますよ〜」
「ほう」
「応援隊の皆さんで騎空団を結成し、騎空士として働くのはいかがでしょう〜?」
騎空団に? いや、それはどうなんだ?
「……応援隊のメンバーは非戦闘員が多いです。空域を移動する際は魔物との戦闘が必至。騎空団としての運用は難しい気がしますが」
「ですが、全くいないわけでは無いんですよね〜? イオウさんをはじめ、犬神宮付きの皆さんはとても腕が立つと聞きますよ〜」
「それは、まぁ」
応援隊の面々には派閥がある。これは当然と言うべきなのか十二に分かれており、それぞれの十二神将を崇拝している。
実は十二神将全員と関わりのある隊員の方がレアだ。これに関しては、十二の社がそれぞれ遠く離れてしまっているのが原因と言える。
隊員の多くは十二人の何れか、もしくはその先代たちの魅力に惹き込まれた者たちだ。隊員は彼らが奉仕したいと思う神宮の応援隊屋敷に優先的に配置されるようになっているため、自然と神宮ごとに特色が出てくる。
”闘神”たるヴァジラが管理する犬神宮は特にその色が強く、腕っ節の隊員が集っていた。
「別に全員で空を移動する必要はありません。騎空士として依頼を捌けるだけの人員が必要最低限いれば、現状においては問題ないかと思われます〜」
「依頼で貰った報酬で騎空艇を買え、ということですね」
「その通りです〜。一隻目に限り、騎空団結成割引も付きますよ〜」
なるほど。それなら確かに今年中に騎空艇の購入ができるだろうけど……。
俺は”お役目”があるから騎空艇には乗船できない。隊の中から騎空団長を新たに任命しなくてはいけない。……危険が伴う依頼に隊長が関われないのはどうなんだ?
「うぷぷぷ。考えていることは分かりますよ、イオウさん。ですが、その問題も簡単に解決できるかと〜」
「そんな方法が?」
「はい〜。先程は応援隊の皆さんで、と申しましたが、騎空団での依頼解決を十二神将の活動の一環にしてしまうのはどうでしょうか〜?」
「え、いやそれは……」
彼女たちを更に危険にさせるのではないだろうか?
「十二神将の皆さんもかなりの実力を持つと聞いています〜。多少の依頼なら問題なくこなせるでしょう」
「しかし……」
「アンチラさんを乗せることは既に決まっているのですよね〜? でしたら、他の方が乗っても問題ないかと〜。十二神将による無病息災を祈るための”ご奉仕”活動ということにしてしまえば、歳神も外に出られますし、イオウさんも問題なく騎空士として働くことができます〜」
……確かに。ヴァジラと抜け出す口実作りもしやすい。十二神将公認の騎空団、か。
「……ありがとうございます。その案で検討してみようと思います」
「はい〜。騎空艇をご購入する際や、依頼の斡旋の際はシェロちゃんにご相談を〜! 今後ともよろしくお願い致しますね〜!」
この人本当に商魂逞しい。
「てなわけで騎空団を結成することになった。団長は暫定的に俺とさせてもらったが」
「本当か!? イオウとも外に行き放題、鍛錬のし放題、だな!」
歳神であるヴァジラに真っ先に連絡した訳だが、俺が団長であることには全く反応を示さなかった。いいのかなそれで。
「なぁ! なぁ! 早速外に行こう!」
「あぁ、そう言うと思っていい感じの依頼をひとつ受けて来た。ほれ」
「手際がいいな!」
依頼内容はかぼちゃ畑の護衛兼収穫の手伝いだ。ハロウィンの近いこの時期、大量のパンプキンを必要とするのだが、ハロウィンが近いせいか魔物が活発にもなっているらしい。
「だが、その前にイオウにはやることがあるんじゃないか?」
「……はて、なんかあったかな?」
「うぅ〜! 酷いぞ! わしにご褒美をくれる約束だろう!」
ご褒美って……。二人で外に行くことがご褒美だと思ってたんだけど……。何か料理を振る舞うとか、プレゼントを買うとかかな……。
「ん!」
「ん?」
「んっ!!」
そんな頭を突き出されましても。……撫でろってこと? そんなことでいいです?
「……ほれ」
「わしが満足するまでだからな!」
満足するまでって……。もっと激しく撫でるとかカッ……ッ!!
おまっ、いきなり手のひらにほっぺたをくっつけて来るんじゃねぇ……!
「……手が止まってるぞ」
「……」
ええいままよ! そんなに言うならやってやろうじゃねぇか! 懇切丁寧に両手で対応してやるぜおらおらおらぁ!
「ほっぺてゃだきぇじゃにゃくて、ここみょ」
「……」
あ、顎から首にかけてだと……。これいいの? 事案じゃない? 同意を得てるからまだ事案じゃないか……。ていうかこうしてると猫みたいだ。
「んふ〜。じゃあ次はそこに座ってくれ!」
「? ……こうか?」
「よし! それじゃあ頼むぞ!」
あのーヴァジラさん? 頼むぞって申されましてもね。僕のお膝に寝転がって何を頼むと言うんです? 全身を撫で回せと? 自分よりも大きな女の子を? んなアホな。
「……」
「……んふ、くすぐったい……」
どうやら正解だったらしい。試しに脇腹を軽く撫でてみたら身を預けてきやがった。やべぇ、膝から落っこちそうで怖い。
「ヴァジラ、満足した?」
「まだ全然撫でてもらってないぞ」
「いや、流石にこれ以上は……」
「なんでだ? 昔はよくこうしてくれたじゃないか」
っていつの話をしてるんだ。もう十年も前の話しだろそれは。
俺も大人になったように、ヴァジラだってかなり成長した。もう俺よりデカい。
この空では一般的に15歳で一人前だ。ヴァジラは今年で14歳。もう一人前のレディになる日も近い。
そんな子を大人の俺がこうして触るのは良くない。
「ヴァジラだってもう十二神将じゃないか。あんまり男の人に無防備な姿をさらけ出すんじゃない」
「な、他のヤツにはやらないぞ!? イオウだからこうしてるんだ!」
「俺でもダメです」
「……そんな」
なんか、凄いダメージ食らってるんですけど。そんな悲しい顔をされてもその、困る……。
「イオウの手も、膝も、とっても安心するんだ。わしは急にお前が撫でてくれなくなって寂しかった」
「ヴァジラ……」
「お前は昔から、わしが何かする度にこうして撫でてくれた。これからも、続けてはくれないのか……?」
ヴァジラは俺の事を信頼してくれているのだろう。もっとずっと小さい時からの付き合いだ。それが続いた結果、こうした信頼関係が築けたのだ。それ自体はめちゃくちゃ嬉しい。
だが、だからこそ怖い。その信頼を損なうようなことが起きるのが。
もう彼女は一人前の女の子だ。正直な話、俺は彼女の肌に触れて理性を保っていられる保証がない。
ヴァジラからすれば年の離れた兄のような存在なのだろうが、俺からすればもう彼女は……。
「腹を撫でてはくれないのか? 昔、ガルと一緒にやったように……」
「……っ!」
なんて、無邪気なのだろうか。彼女の目には常に光が灯り続けている。
14歳になってもなお”カミオロシ”を発動させられる程の無垢な心。器の広さ。
全幅の信頼を寄せられているからこそ、その広大さが見えてくる。何も無い草原に立たされているような清々しさを覚えるのと同時に、呆れるほどに何も無いが故の、ある種の恐怖を感じざるを得ない。
「……分かったよ。いっぱい、我慢したもんな」
「あぁ。いっぱい我慢したんだぞ」
彼女の信頼は、アニラたちが持つものとは全くの別物だ。
純粋すぎるが故に性別の違いを彼女は理解していない。俺を”男”だと認識してはいない。
アニラたちは、俺が”男”であることを認識した上で信頼を寄せてくれている。だからこそ超えるべきでは無いラインもしっかりと理解してくれている。
だがヴァジラのこれは”家族”に対するものだ。”家族”だと本気で信じているから全力で甘えてくる。そこに限界は存在しない。
俺はそれを裏切れない。その信頼を許容しなくてはいけない。
「なぁ、いつまでこうしているつもりなんだ?」
「んー? そうだなぁ。もう外に行こうと思ってたけど、今日はずっとこのままがいいな!」
「……そうか」
あぁだからこそずるいなぁと、思ってしまう。
俺はこんなにも耐えているのに。お前はどうしてそんなにも好き勝手にやってくるのだ、と。
俺はその全てに答えられるほどできた人間ではないというのに。
そういうお前は未だに”お嬢様”扱いしてないか?
ヴァジラがそっちまでお子様だと思うなよ……。
『十二神将を応援たい団』団長
イオウ プロフィール
CV???
年齢 23歳 身長 140cm 種族 ヒューマン
得意武器 刀、拳 趣味 料理全般、おこた
好き 十二神将の笑顔、歳下のお世話をすること
嫌い 十二神将の悲しい顔
ヴァジラ プロフィール (以下グラブル公式より引用)
年齢 14歳 身長 147cm 種族 エルーン
趣味 ガルジャナと散歩、ガルジャナと鍛錬
好き ガルジャナ他犬達、甘いもの、祭り
苦手 苦いもの、辛いもの
https://granbluefantasy.jp/sp/pages/?p=34562