愛生まばゆ×巴マミの短編集 作:つむぎルカ
今回はクソ映画編となっております。
喜々とクソ映画を、それもインド版スター〇ォーズと言われているアレを見せられてガチ困惑するマミさんが見たかったんです。
本作はpixiv様にてマルチ投稿させて頂いております。
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=21607512
以下、鑑賞してる映画の元ネタのヒント
・インド産
・2005年5月産
・上映時間120分
・宇宙戦争モノ
・1話未完
スペース・マサラ・アクション
日頃の感謝を込めて──と、まばゆさんイチオシらしい作品を見せてもらってしまった。
なんでも、いまどき各種配信サイトに全く上がってなくて、DVDでしか見られないらしい超大作とのこと。
そんな貴重な逸品を見せてくれるのなら──それだけなら、私としても嬉しかった。
美味しいお紅茶を用意して、まばゆさんの持って来てくれた──レコンパンスのケーキと共に鑑賞に挑んで、たった今終わったのだけれど──。
「どうですかマミさん!」
「……」
──終わった?
いいえ、あからさまに次へ続く──と言った感じに、尻切れトンボのまま強制終了されてしまった。
「……まばゆさん」
「はい!」
「ええと……続きは……?」
「ないです!」
──えっ!? EPISODE1『帝国の勇者』ってタイトルにあったわよね……!?
なのに、きっぱりと言い切られてしまった。
それはそれとして、勇者の青年──青年? どう見ても壮年の男性だったけれど──。
とにかく、主人公である勇者の青年が石化されて身動きが取れないまま、守ろうとした星を見せしめに爆破される場面で──と言ったところで、突如エンディングが始まって終わってしまった。
「……うーん……」
──まばゆさん、ごめんなさい……!
有り体に言うなれば、そして控えめに形容しようとも『駄作』としか評し様の無い酷い作品だった。
と言うかそもそもコンセプトからしてもスター〇ォーズの真似……? としか見れない。
そして見るからにス〇ーウォーズと比べるまでもなく予算は掛かっておらず、CGにあまりにも立体感が無さ過ぎる。
更にはツッコミ所も満載──いいえ、ツッコミ所しかない。
特に──。
『大変! 私の母乳に毒を仕込まれたみたいなの!』
『何だと! 私の王子が──』
王妃の母乳に毒を仕込まれたと言う場面。
けれど敵の策略は分かっており、あたかも毒殺されたかの様に見せかけて芝居を打つシナリオ。
確かに劇中で言う通りに、彼女自身の肉体に毒を塗って仕込めば実現が出来ない事もない。
ないけれど……それでは母体もろとも危険に晒されてしまうはずで、母体がお亡くなりになっていないと、芝居をしてやり過ごす策略も成り立たないはず……。
……と、色々とツッコミを入れたいのはやまやまだったものの……。
──でも、まばゆさんがあれだけ楽しんでたんだもの。あまり辛い事を言ってまばゆさんを困らせてしまうのも……ちょっと……。
テレビを前に瞳を輝かせるまばゆさんの表情は、何よりも眩しかった。
きっとこの日の為に──私に喜んでもらう為に、一生懸命この作品を選んでくれたのだろう。
そう思うと、とても酷評する気なんて起きなかった。
まばゆさんの、しゅん……と落ち込んだ表情を思い浮かべてしまった私が、いま掛けてあげるべき事は──。
「え、えぇ……良いんじゃないかしら……」
──嗚呼、なんて白々しいの……!
私って意外と嘘が下手だったのかしら……。
我ながら酷く震えた声だったと思う。
思ってもない言葉を、無理矢理口にしてしまう挙動不審さ。
「へ……?」
目を点にして驚愕されてしまう。
──あぁっ……! ごめんなさいっ……! まばゆさんっ……!
確実に嘘とバレてしまった。
当然よね、こんなバレバレな挙動……。
いつの日だったか、引きこもりたさを理由にバレバレの棒読みでテレパシーを送って来たまばゆさんに、嘘が下手だと言ってしまった日もあった。
これからもう、そんな事言う資格なんて無くなってしまう。
頭を抱えたくなったその時──。
「マミさんっ……! この映画の
「えっ!?」
──こ、これで通ったの──!?
まさか嘘が通ってしまった。
この展開は予想できていなかった。
正直言って、まばゆさんの言うこの作品の
何を見せられてしまってるんだろう……と、お紅茶とレコンパンスのケーキで誤魔化す他無かった。
けれど、いくら誤魔化してもツッコミたさが私を侵食してきてしまう。
ここで本当の事を言うべきか、それとも都合の良さに乗るべきか、それとも──。
「え、えぇ……まぁ……」
──ああっ! またやっちゃった……!
その場のノリと勢いに任せて頷いてしまった……!
もう後戻りなんて出来ない……!
幸いにも内容は覚えてしまってるから、覚えてる限りの場面を無理矢理褒めるしかない……!
そうして恐々と口を開けようとして──。
「ホントですか!? 良かったですっ!」
──ああ心が痛い……! 助けて!
ぱぁっ……と、満面の微笑みを向けてくるまばゆさん。
その笑顔は、私に自責の念を抱かせるには十分な輝きだった。
これがもしも、世間一般で言う名作を見せて貰えた後のモノだったのなら──。
まばゆさんお紅茶とケーキを味わって、まばゆさんと笑顔と涙を共有できて、大好きなまばゆさんと過ごす幸せな
──うん、頑張るのよ巴マミ……! まばゆさんの笑顔の為に……!
……この幸せ(?)な時間を守る為に、いつになく自らを奮わせる私。
さあ、褒めちぎるフレーズを考えよう。
そうして私が口を開こうとするや否や──。
「いや~しかしホンットこれヒッドいですねコレ!」
え?
「いつ見てもクソ過ぎますよコレ!」
ゑ?
「カット割りがもうめちゃくちゃだし──」
──!?
「主人公は若き青年って設定なのにどう見ても四~五十代のおじさんが演じてるし! あと何故かいつも眠そうで……と言うか主演の人ってプロデューサーの人なんですよ!?」
喜々として語り出すまばゆさん。
……と言うかまばゆさん、いま『クソ』って言った……?
あれだけ楽しんでたのに……?
「て言うか何ですかあのR2〇2モドキとC-○POモドキを混ぜたロボットは!? 先ず造形がヒドいし頷くだけでクソの役にも立ってないじゃないですか!? いや王子を逃がしましたよ? 逃がしましたけど何ですかあの動き!? トロ過ぎません!? よくアレでダー〇ベイダー的なモノから逃げられましたね!? 銃撃の音もショボ過ぎますし、毒ガス攻撃で何で赤ちゃんの王子無事なんですか!? と言うかダース〇イダーモドキの造形が段ボールで作ったみたいな──」
マシンガンの様に軽快で速射な早口を吐き出すまばゆさん。
これはまた大変な事になってしまったわ……! と、私はあたふたと焦りながらまばゆさんを止めようとして──。
「あ、えっと、ま、まばゆさんっ……!」
「CGもペラッペラだし! ラ○トセーバーっぽいCGも役者さんの動きに付いて来られてなくでテクスチャがズレッズレで──」
「まばゆさんっ!」
「へ?」
あ、良かった、止まってくれた。
そしてマシンガンうんちくトークが止まるや否や──。
「……あっ!」
瞼をぎゅっと瞑って赤面するまばゆさん。
「ぅぎゃぁぁぁぁああっ……! ごめんなさいごめんなさいっ……!」
縮こまって、小動物の様に鳴いてしまうまばゆさん。
時折、彼女の好きなモノを語るにつれて気分が高揚してしまうのか、早口で捲し立ててしまう癖がある。
まばゆさん自身もそれは自覚出来ていて、よくこうして『やってしまった……!』と言いたそうに──いいえ、実際言ってしまった事もある。
けれど、良いの。
いくら語ってもらっても、私は構わないの。
私はまばゆさんが楽しそうなら、それで──。
──でも──。
「えっと、まばゆさん……? さっきすっごく楽しんでたわよね……?」
「はいっ!」
良かった。
また笑顔が戻ってくれた。
いいえ、それはさておき──今の私の頭の中は分からない事だらけ。
と言うのも──。
「でもまばゆさん、さっき『クソ』って……」
「はい! クソです!」
「!?」
ほら、今確かに『クソ』って言った!
言った……のに、まばゆさん……すごく楽しそうだった。
頬を染めて、花が満開に咲いたかの如き満面の笑顔のままに語っていた。
私が気にもしていなかった所を、事細かにあんな速度で喋れもしていた。
なのに、まばゆさんが評するには『クソ』。
けれど、楽しそう。
にも拘わらず、評価は『クソ』。
『クソ』なのに満面の微笑みで楽しむまばゆさん。
その矛盾した挙動に、私はわけがわからなくなってしまい──。
「そう言えばこの作品、数年前に関西地方の深夜枠で放送されてたそうですよ! コレがなんと地上波で見れてしまったチャンスが……!」
「あ、うん……」
「それも2回も! あぁ……! 私も実況に参加出来てたらなぁ……!」
──実況?
……って何かしら……。
まばゆさん、音声配信でもするのかしら……。
「真夜中にコレを見ながらネットで実況するの、ぜったいスゴい楽しかったと思うんです!」
「は、はぁ……」
「もう一度こっちの地方で放送して欲しくて堪りません! そう言えば映像特典なんですが、何故かダンサーの──」
──もう私は、考えるのをやめてしまった。
もう、まばゆさんの笑顔だけ見ておこう──。
うん、その方が良いわね。
「ほら見て下さいこれ! EPISODE IIの特報! 制作まだなんですか!? って感じなんです! 作られてからもう何年も──」
「ふふっ……」
ああ──ただひたすら、まばゆさんの笑顔を見ているのが幸せ。
まばゆさんと過ごせるこの日々を思うと、あの時出会えて本当に良かったと思うの。
──大好きよ、まばゆさん……。
私って、こんなにも身勝手で──自分の為だけに願ってしまった魔法少女だけれど、こんな私のそばに居てくれてる。
この子の前で泣いてしまう事もあるけれど、それでも幻滅しないでいてくれる。
真摯に向き合ってくれる。
本当の私を見てくれる。
それが何よりも嬉しかった──。
まばゆさんと友達になれて本当に良かった……。
ずっと離れたくないって思ってしまう。
──思ってしまうし、そして嬉しいのは嬉しいけれど──。
「最後の地球を爆破するエフェクトなんて絶対2fpsもいってなくないですか!? 20fpsじゃありませんよ!? 2fpsですよ!? あっ、fpsと言うのは所謂フレームレートの事で──」
「……はぁ」
願わくば、この時流れてた映画が(世間一般で言うところの)名作だったならなあ……とも思ってしまうのでした。