愛生まばゆ×巴マミの短編集   作:つむぎルカ

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バレンタインまばマミ短編。
誰も書かないのなら私が書く──!

pixiv様にてマルチ投稿させて頂いております。
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季節の行事編
愛と愛【バレンタイン編】


 明日はバレンタインデー。

 私──巴マミは、愛しい愛しい女の子──愛生まばゆさんとチョコのやりとりをしたくて──。

「まばゆさんっ」

「はい…?」

「明日…わかってる…わよね…?」

 ──と、彼女へと──伏し目で上目遣いな視線を、期待を込めながら向ける。

「アッワカリマセンワタシニハカンケイナイデス」

「……もう~……!」

 お口を三角形に尖らせながら、早口でいじけてしまうまばゆさん。

 とまぁ、まばゆさんがこんな反応を返してくるのは予想の範囲内だった。

 加えて──。

「だってそうですもん! チョコ会社の陰謀には屈しませんよ私は!」

 私には分かる。

 これは、まばゆさんなりの強がりだってこと。

 だから私は──。

「……そう」

「そうですっ」

 鼻息荒くしながら腰に手を当てるまばゆさん。

 ──ああ、その仕草も、何もかもが愛しい……。

 そんなまばゆさんに──。

「……まばゆさんにチョコ……あげようかと思ったのに……」

「え」

「私のチョコ……」

「ゑ」

 ちょっぴりわざとらしく、指をいじいじと絡ませながら、いじらしく拗ねてみながら。

「でも……そうよね…。私なんかのバレンタインチョコなんて、要らないわよね……? まばゆさんのお家ってケーキ屋さんだもの……。毎日おいしいチョコぐらい、食べられるものね……?」

「あっ……」

 まばゆさん、とっても優しくて、素敵で、良い子だもの。

 まばゆさんが、そんなひどい事を言わない子ってぐらい分かってる。

 けれど敢えて拗ねてみる事で、まばゆさんに食いついてもらえるのなら……って期待を込めて。

「……ブ◯ックサンダーとかみたいな義理じゃなくて?」

「むっ……」

 あ、私ちょっと馬鹿だったかもしれない。

 ひどい事なんてレベルじゃなかった。

 と言うかまばゆさん、バレンタインデーにどれだけの恨みがあると言うの……?

 あなたは充分──チョコを貰えて良い程に素敵な女の子なのに──!

「失礼ねっ。私の手作りよ? まばゆさんの為なら本命あげようかと思ってたのに……」

 これは本当。

 ……と言うより、これこそ今回の私の目的。

 まばゆさんになら、私からの──日頃の感謝を込めた本命チョコを渡したい。

 受け取ってくれると良いなぁ……。

「……マ?」

「うんっ」

 半開きのお口のまま呆気に取られるまばゆさん。

「ごめんなさい欲しいですお願いしますこの私め如きにマミさんのチョコを恵んで頂ければ……」

「うふふっ。もちろんっ」

 やったぁ!

 まばゆさんにチョコを受け取ってもらえるっ!

 嬉しいなぁ……!

 ……ちょっと図々しいかもしれないけれど、私も──。

「ふふっ。でもその代わり……」

「あっはい何でもします私!」

 食い気味なまばゆさん。

 何でもしてあげたいのは、寧ろ私の方なんだけどな……。

 けれど、こう言ってくれたのは好都合。

 これで心置きなく──。

「……じゃあ、まばゆさんのも欲しいかなって……」

 まばゆさんの手作りチョコレート。

 こうでも言わないと、まばゆさん……彼女自身の価値を分かってくれないもの。

 多分チョコレートのケーキで来ると思うけれど、まばゆさんの手作りバレンタインチョコを頂けるのなら、もう思い残す事も無さそう……。

「え……い、良いんですか…? 私如きの……ド陰キャボッチキモヲタの作るチョコで良いんですか? キモくないですか!?」

「……む~……!」

 私、ちょっと頬を膨らませながら──。

「もう……! 私の大好きな人の事を悪く言わないでっ! あなたの手作りなら何だって嬉しいのに…」

「あわわわわわわわ……!」

 お口に波線を打ちながら、うろたえてしまうまばゆさん。

 まばゆさん……。

 あなたは自分が思ってるよりも素敵な人なの。

 だから、こう言う時にこそ、常日頃から軍師様と自称してるみたいに、もっと調子に乗ってくれても良いと思うの。

 もっと自信を持って欲しいな……。

「と言う事で、明日……楽しみに待ってるわね……」

「あっがっ頑張ります私で良ければっ……私なんかで良ければ……!」

 少し詰まり気味に、あせあせなまばゆさん。

 私『なんか』だなんて、言わないで……?

「あなたなんか……じゃなくて、あなただから良いの……。まばゆさんから贈ってもらえるなんて、私……もうっ……」

 ……私が求めておきながら、いまさら顔が熱くなっちゃった……。

 今の私、すっごく顔が赤くて……頬が紅潮してると思う……!

 

 

 ──やばいやばいやばいやばいどうしようどうしようどうしようどうしよう……!

「ぅぎゃぁぁああ……!」

 私──愛生まばゆは、マミさんと約束してしまった。

 バレンタインチョコを交換してしまう事を……!

 いや、私の中でマミさんはもう気を許せる友達の筈でした。

 その程としては、私の固有スキル──コミュ障を発症しないぐらいには。

 けれど、これは本当に予想外でした。

 まさかマミさんと──私とは一生縁のないバレンタインチョコを交換する時が来てしまうなんて……!

 それもどうやらマミさん、私に──よりにもよって私に本命チョコを渡してくるだなんて……!

「ふぎゃああぁぁ……!」

 台所で蹲る私。

 途方に暮れる私。

 ああ……もう……!

 約束してしまったからには、下手なモノを作れません……!

「あらあら~? まばゆちゃん~?」

 背後から間伸びした緩やかな声──咲笑さんから声を掛けられて。

「げっ咲笑さん……」

 絶対いまの漏れ出した声を聞かれてしまってます。

 ……まぁ、咲笑さんに聞かれるぐらいは何ともありませんが。

 家族ですし。

 ……いや、それよりも──。

「まばゆちゃんも遂に手作りチョコ作りかしら……? 私嬉しいわぁ~」

「あ、あはは……いやコレは単なる予行練習と言いますかなんと言いますか……」

「ううん~? 隠さなくて良いのよ? ……好きな人、出来ちゃったんでしょう?」

「あ、あはは……あはははははははは~……?」

 ──好きな人。

 私、マミさんの事って好きなんでしょうか。

 あ、いえ、マミさんの事は好きです。

 私に大切な友達です。

 ……けれど──。

「……咲笑さん」

「なあに? まばゆちゃん……」

「私って、あの人の事……好きなんでしょうかね……」

「……あらあら」

 視線だけは、いつになく真剣寄りになる咲笑さん。

「この手の『好き』って言って良い『好き』なんでしょうか……? ちょっと自分でもよく分からないんです……。具体的に言えば、likeではなくloveと言った感じのモノなのか……」

「……」

 そんな視線のまま、私の話を聞いてくれる咲笑さん。

「……その人なんですけども、私が支えたいって思ってるんです。いつもがんばってて、私なんかよりもずっと賢くて。──でも、時折思うんです。がんばり過ぎて無理してしまわないだろうかって」

 マミさん、友達が欲しかった──って言ってたけれど、ちょっとそれは語弊があるかもしれない──と私は思ってます。

 単に友達と言うだけなら、同じクラスに話し相手はいくらでも居ます。

 と言うか、ガチボッチは私の専売特許です。

 でも、真に彼女に必要なのは、友達と言うより理解者──彼女を苛んでいた孤独と自責を知ってくれる、同じ魔法少女なんだ、って。

 だから私は──。

「──あの人、責任感が強過ぎるんです。そんなあの人が、せめて……せめて私の前だけでは、素のあの人で居られる……。安らいでくれる……。そんな居場所であれたならって、不束ながら思ったりもしてます。……うん、私……あの人の事……好きです……」

「……」

 少し驚き気味なのか、目を点にしてしまう咲笑さん。

 私自身でもビックリしてます。

 好きな映画俳優とかキャラクターとかそう言うのは幾らでも居ましたが、そうでなくて──実際にいる女の子にここまで入れ込んでしまうなんて、自分でもビックリです。

 友達なんて、私には縁の無い話だと思っていたのに──。

 ──そこまで思ってると、咲笑さんの表情が綻んで──。

「成長したわねぇ、まばゆちゃん……。まばゆちゃんの成長ぶりは、私もほんと嬉しい……!」

「あ、いや、そんなんじゃなくて……私、あの人に比べたらまだまだで……」

「ううん……、そんなにもその子の事を分かってあげられてるのなら、もうそれは立派な『愛』なんじゃないかしら……?」

「そ、そですかね……」

「うんうんっ……! ただひとえに愛とは言っても、恋愛的な愛だけじゃなく、親愛だったり……そう言う『愛』であっても良いんじゃないかしら? だってバレンタインデーって、感謝を込めても良いんだもの」

「あ……」

 ──咲笑さんには、隠せない様です。

 いやまぁ、ここまで語り尽くしちゃったならモロバレだとは思いますが……。

 無理にlikeかloveのどちらであると言い切らなくても、今は良いのかなって……。

 とにかく私は、マミさんに感謝を伝えたかったんです。

 こんなガチボッチのキモヲタ陰キャな私を拾ってくれてありがとう、って。

「……にへへ。なんか、ありがとうございます」

「いえいえ~」

 ──よし、私……頑張らなきゃ。

 マミさんに感謝を伝えるべく──。

「……で、相手はどこのどんな子なのかしら?」

「!?」

 ああ、これは──。

 多分、どこの誰かまではバレてなかった感じですね。

 それに、もし相手が男性なら──と言った感じに、悪い虫が寄らない様にシバくと言った感じでしょうか。

 ……とは言え、どうやって懲らしめるのかは分かりませんが。

 咲笑さんって、色々と謎が多い人物ですし──。

 いや、それはそれとして──。

「……さん」

「うん?」

「マミさん……。巴、マミさん……」

「……!」

 咲笑さんも、マミさんぐらいは知っています。

 何せこのお店の常連客ですから

 ……それも、私目当ての。

 けれど、なぜだろう……。

 マミさんの名前を告げる時、いま……とっても顔が熱かった様な気がしました。

「……あらあら~。あらあらあらあら~」

 頬に手を当ててはにかむ咲笑さん。

「ちょっと何ですかその顔は!」

「いいえ~? そっかぁ、マミちゃんが……」

 ちゃん付けされてしまうマミさん。

 大人びてる印象を受けるマミさんにちゃん付けは、あまりにもしっくりこなかった。

 とは言え、私の前でだけは……年頃の女の子みたいな挙動も見せてくれる彼女ではありますが……。

「手伝った方が良いかしら?」

「いいえっ、私だけでやりますっ」

「うふふっ。そうよね……」

 こう答える事を見越した上で、敢えて私に聞いてみたんだと思う。

 私の本気度を窺いたいが為に。

 いつも微笑んでて緩やかで、私が居ないと抜けていがちな咲笑さんだけれど、私への……要所要所の気配りは、いつだって忘れない。

 だから、咲笑さんは侮れないのだ。

 

 

 私──巴マミの、バレンタインの手作りチョコを作り終えて──。

「……やだぁっ。恥ずかしいっ。恥ずかしいよぉ~っ……!」

 ひとりでジタバタしてしまう。

 ──バレンタインチョコに添付するメッセージ。

 私はそれを、直筆で書くと言う事をしてしまっている。

 あまり長い文章だと、気持ち悪がられないかな……?

 まばゆさん、受け取ってくれるかな……?

 あの子自身は「欲しい」って食い気味に言ってくれたけれど、チョコだけじゃ足りない気がして──。

「あぁ……恥ずかしいっ……。……でも筆が止まってくれないっ……。ううん……止めたくないっ……。まばゆさんっ……ありがとうっ…。ありがとうありがとうありがとうっ……。大好きっ……」

 まばゆさんへの『大好き』が溢れて、走る筆を止められない。

 今は文章なんてキーを打って済ませられる時代なのに、まばゆさんになら……まばゆさんになら私の想いを、直筆で書いてしまいたい。

 けれど──。

「ぁ……あれっ……」

 手紙に雫が滴っていた。

 頬を触れると、濡れていて──。

「……ぁ……やだっ……。なんか、泣けてきちゃったあっ……。どうしようっ……、手紙っ、拭かなきゃっ……。涙、溢れてっ……」

 せっかくしたためた手紙を汚さないように、涙の水跡を拭き取りながら──。

「……まばゆさんっ……」

 私、もうひとりぼっちじゃないのよね……?

 まばゆさん、ずっといっしょにいてくれるものね……?

 今までこうして、バレンタインの──それも、本命チョコのやりとりなんて、魔法少女になってから出来なかったから。

 魔法少女になってから、こんなにも誰かを好きになってしまう事が無かったから。

 そして、ずっと一緒にいてくれるとまで言ってくれたの、今まで誰もいなかったから──。

 私、とっても嬉しくて。

 胸をきゅっと締め付けられるぐらい嬉しくて。

 私──こんな幸せで良いのかな……って。

「……ふふっ。私っ……今とっても幸せっ……。まばゆさんっ……早く会いたいな……」

 

 

 そしてバレンタイン当日。

 レコンパンスにて。

「わぁっ……」

 まばゆさんのくれたチョコは、オレンジをあしらったザッハトルテ。

 オレンジ──私をイメージしてくれたのかしら?

 いつものケーキは咲笑さんによるものだけれど、今回のザッハトルテはオールまばゆさんの手作り。

「さ、咲笑さんのものには到底及びませんが……」

「ううん……! ありがとう……! とっても嬉しい……!」

 まばゆさんが、私のために作ってくれたバレンタインのザッハトルテ。

 もう、頂くのが勿体無いぐらいに嬉しかった。

 ……けれど、やっぱり食べないとね。

「……いただきますっ」

 心弾ませながら、褐色のチョコレートにフォークを沈ませ、お口に運ぶ。

 まばゆさんの気持ちを込めて作ってくれたザッハトルテ──そのお味は──。

「……ぁ……」

 ──濃厚な甘味。

 それでいて、甘味の後味には嫌味がない。

 けれど、それ以上に──。

「……ぐすっ……」

 ──堪えられなかった。

 私、また──決壊しちゃった……。

「えっあっ、ま……不味かったですか……!? そんなはずは……! ごっごめんなさいっやっぱり引っ込めまっ──!」

「やだっ! 引っ込めないでっ! お願いっ!」

 わたわたと、焦りながら取り上げようとするまばゆさんから、彼女のケーキを死守する私。

 私が、また泣いてしまったのはそうじゃない──そうじゃないの。

「おいしいっ……。おいしいのよ……? でもっ……」

「は、はい……?」

「……こんなにも温かいチョコ、味わった事なくてっ……。ぐすっ……。ぁむ……」

「え、ええと……」

 まばゆさんが困惑してる……。

 ごめんね……? 涙脆くて……。

 私、どうしてか──あなたの前でだと、すぐ泣いてしまうの。

 あなたの事を想ってしまうと、すぐ泣いてしまうの。

 ──あなたがくれた、あなたのザッハトルテを味わう度に、嬉しさと共に、涙も溢れてしまうの──。

「……うふふっ。ありがとうっ、まばゆさん……。私っ、ぐす……この日の事……もう絶対忘れないわよ…?」

「ど、どういたしまして……?」

「……ぐすっ……。……ぁむ……っ……」

 まばゆさん──。

 咲笑さんには及ばないって言ってたけれど、違うのよ……?

 私にとっては、世界で最高のザッハトルテだと思うの。

 あなたが一生懸命がんばって作ってくれたものだからこそ、私にとっての一番なんだから──。

 

 ああ──まばゆさん、あなたの事が大好きで──愛していて、本当に良かった──。

 

 

 私──愛生まばゆが、マミさんにザッハトルテを食べさせてからしばらくして──。

 甘味に染め上げられた舌を、私の淹れたコーヒーでリセットしてもらって。

 と言うかマミさん、私如きので嬉し泣きしてしまうなんて、流石に予想してませんでした。

 いつも咲笑さんのケーキを買ってったり、そして私が咲笑さんのケーキを差し入れてたりするもんだから、私のケーキをあそこまで嬉しがってくれるとは思ってなくて──ちょっと気恥ずかしかったです。

 でも、喜んでくれたのなら何よりです。

 私だけで作ってみた甲斐がありました。

 そして──。

「……今度は私からの……ね」

 頬を染めながら、チョコレートの入った箱を差し出してくるマミさん。

 マミさんが私の為に作ってくれたバレンタインチョコ。

 側にはマミさんの淹れてくれたお紅茶つき。

 それも本人直々に仰せによる所『本命』とのこと。

 本命チョコなんて一生全く縁が無いものとばっかり思ってただけに、もう心臓がバクバクです。

 開ける前からもう心臓バクバクです。

「どうしたの……?」

「ひゃ、ひゃいっ! あ、えーと……こ、こんな経験初めてでっ……!」

「うふふっ……。私とは気兼ねなくお話できる仲じゃなかったの……?」

 瞼を細めながら、いたずらげに囁いてくるマミさん。

「い、いやっ、そ、そうですけどっ! ほ、ほほ本命チョコなんて初めてでっ! て言うか分かってて、からかってません!?」

「うふふふっ……」

 そんなマミさんも、紅潮っぷりが先程よりも増してます。

 もう、お耳までもが真っ赤です。

 多分私も今ヤバいです。

 顔がすっごく熱いです。

 いやもう暑い。

「……私もなの……。本命チョコなんて渡すの初めてでっ……、今にもおかしくなっちゃいそうなのよ……?」

「あっあはっあははははっ……」

「うふふふふっ……。……はやく開けて……? 食べて……?」

 こんなに湿度濃かったかな──と思う程に暑い。

 まだ夏とか言う季節じゃない筈なのに。

 そしてそんな囁くマミさんの吐息と声色自体にも、湿気を帯びていると思えてならなくて──。

 意を決して箱を開けてみると──。

「──おぉ……。って──え……ええっ……!?」

 チョコのタルト。

 それも、かなり精巧な飾り付けが──フィルムを模した飾り付けがなされています。

 魔法少女としての私をイメージしてくれたのでしょうか。

「す、すごいですマミさん……! これマミさんが……!?」

「うふふっ、ちょっとがんばっちゃった……」

「いや、がんばるとかそう言う話じゃ……えぇ……!?」

 ──ビックリしてしまったのは、これはとても素人技には見えなかった事。

 確かにマミさんは、趣味でお菓子作りに興じている事は知っていましたが──これほどとは──。

 なんか、もう、これは──。

「あ、あああ、ああありがとうございます……!? ありがとうございますっ!」

「ふふっ、どういたしましてっ。……ケーキ屋さんなまばゆさんのお口に合うかは分からないけれど、私の中では自信作なの……」

「いやもう明らか美味しいですよこれ! 食べてしまう前から分かります! あ、写真撮って良いですか!?」

「もちろんよ……? 寧ろ嬉しいっ……」

 マミさんのチョコタルトを写真に収めて……。

 寧ろ嬉しがるのは私の方なのに、写真に収める事でマミさんに嬉しがってもらえてしまった。

 ──さて、写真にも収めた事だし──。

「それじゃ、いただきま──」

「──待って」

「えぇ~!」

 制止されてしまった。

 まさか食べてはいけなくて、保存しろとか言うお話だったりするんでしょうか……!?

 色々と頭の中で巡る中、マミさんがもう一つ差し出してきたのは──。

「あ、あのっ、こ、これも……受け取ってっ……!」

 ……よくラブレターとかが入ってそうな形の封筒。

 それも、その封筒を渡す時のマミさんの表情は──。

「……っ」

 目尻に涙の滴を溜めながらぎゅっと瞑って、赤面していました。

 お口を波線みたく閉じてしまいながら。

 そして視線を逸らしながら──。

「……わ、私でも恥ずかしくて……は、早く読んでもらえると、嬉しいなって……」

 ──マジですか?

 これ、マジモンのラブレターとかだったりしますかね?

 マミさんが? 私に?

「……いやいやいやいや……。……え?」

「もうっ……! は、早くっ……!」

 て言うかチョコ渡すよりも恥ずかしがってません!?

 表情からして、本当に?

 私に? ラブレターか何かを?

「あ、開けますね……?」

「え、えぇ……」

「開けて読みますね……!?」

「うんっ……!」

 再び意を決して──と言うか、チョコの時よりも緊張してます!

 もう心臓破裂しそうなぐらいに胸を高鳴らせながら、封筒を開けて、そこには──。

「──」

「~~っ!」

 目の前のマミさんは、もう堪えられない──とばかりに、真っ赤なお顔を両手で覆ってます。

 一方で、私は──。

「──ぉ」

 寧ろ、何だか──圧倒されている様です。

 と言うのも──。

 

『愛しい愛しい、クラスメイトの……一番大切な魔法少女の友達さんへ。

 私の心は、今まで凍えてしまってたの。

 あなたと言う、眩き光に出逢うまでは……。

 まばゆさんの存在が、私の心を温めてくれたの。

 友情に誓うって言ってくれた、ずっと一緒に居るって言ってくれた言葉が、私にとってどれほど温かかったか……。

 今ではもう、私の心は毎日熱いのよ……?

 もう、あなた無しでは生きてけない程に、蕩けてしまった心地がするの……!

 その気持ちを、今回の私のお手製チョコに込めてみました。

 お家がケーキ屋さんなまばゆさんのチョコにはかなわないかもしれないけれど、これが今の私に表現出来る精一杯の愛情です。

 味わってくれると嬉しいな……。

 あなたのお口に合うかな……と、ドキドキしてます。

 これからも、ずっと側に居てくれると嬉しいな…。

 愛しい愛しい私のパートナー・愛生まばゆさんさんへ。

 巴マミより。

 P.S.

 愛生まばゆさん。

 大好きで愛してます。

 私を救ってくれてありがとう……!』

 

「きゃぁ……! きゃあっ……! ~~~~っ!」

 顔を覆いながら、赤面しながらジタバタしてしまうマミさん。

 そんなマミさんに──。

「──」

 ──これは──『重い』ッ──!

 とてつもなく『重い』ッ──!

 確かに、紛れもないラブレターです。

 偽りようもないラブレターです。

 けれど、そこにしたためられた愛情は──もう、ドロドロに煮えたぎる様に重くて──。

 チョコを食べるよりも、寧ろこちらの方がカロリーが過多な気がします。

 腹に一撃ガツンと重く喰らってしまうような──そんな感じです。

 それに、ひとつ気になったのが──。

「な、なんか……文字が少し滲んでません……!?」

 一部の文字が、水に濡れた様に滲んでるのが、やたらと気になってしまいました。

 その事を指摘されたマミさんは──。

「やめて……言わないで……」

「え、それってどう言う──」

「書いてる最中に泣いちゃったのっ……! わ、私でも恥ずかしいの……! お願いっ、見ないでっ……!」

 読ませてくれたのはマミさんなのに、見ないでと言ってくるマミさん。

 ちょっと訳が分からないです。

 ──けれど──。

「……ありがとうございます」

「まばゆさん……」

「えっと……この手紙も大事にしますし、チョコの方も……よく味わって頂きますね……!?」

「……!」

 赤面しながらも、満面の笑みを浮かべてくれた。

「えぇ……えぇ! 召し上がれっ! うふふっ……!」

 ──もう、この人の事は裏切れませんね──。

 ここまでのを受け取ってしまったなら、あんなにまで私の事を──私なんかの事を想ってくれる人を裏切るなんて、私にはできないです……。

 裏切ってしまうなんて、普通に心が痛みます。

 私も、マミさんの事が大好きなので……。

 ……と言うか余談ですが、裏切ってしまったなら多分──私の身も危なくなる。

 そんな凄味を感じる愛情でした。

 マミさん──。

「ど、どうかしら……?」

 なんかもう、チョコタルトが美味しいのは美味しいのですけど、生地がさくさくしてて美味しいのですけど、それ以上に先の手紙のインパクトが凄まじ過ぎました。

「お、おいひい……」

「……! 良かったぁっ……!」

 この甘味を、もう一生忘れられないと思います。

 それ程に、頭の中に重く伸し掛かる──。

 

 ──そんな、マミさんの愛情。

 

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