愛生まばゆ×巴マミの短編集   作:つむぎルカ

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scene0全話および愛生まばゆ魔法少女ストーリー読了後推奨。

改変後かつ叛逆前世界の全貌が13年経っても未だ明かされていない事にかこつけて書きなぐった妄想。
まどかの敷く優しい世界なのだから、実はこうして再び巡り逢えてた…なんてしてくれてたら良いなぁ…なんて。
表に出てこなかった理由としては、相変わらずマミさんの言う「軍師様」として、もとい引き籠っててるか、透化してるかでどうかひとつ。

pixiv様にてマルチ投稿させて頂いております。
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改変後世界編
間違い


 今日の朝から、ずっとマミさんの様子が気になってました。

「どうしたんです……?」

「……っ」

 瞼を閉じる時間の長い瞬きをしてる、と言いますか、それともふとした瞬間にお口をぎゅっと閉じる回数が多い、と言いましょうか──。

 学校でも、そんな様子が度々見られてしまっていました。

 ──今にも、泣いてしまいそうな──。

「なんでもない……っ」

「……」

 なんでもなくなんてない。

 こう言う時のマミさん、絶対なんでもあるに決まってるんです。

 前にマミさんに聞かれた事がありました。

『私の誘った子たち、みんな居なくなっちゃうの……』

 その時のマミさん、とても辛そうでした。

 晴れない心で味わうケーキは『美味しい』とは言っても、きっと味なんてしなかったのだと思います。

「マミさん……」

 実のところ、あの人たちがどうなってしまったのかは分かりません。

 マミさんから心離れしてしまったのか、魔獣にやられたのか、はたまた──噂でしか聞いた事はありませんが──『円環の理』に導かれてしまったのか。

 そしてマミさんは、マミさん自身をも責める様にもなってしまって──。

『他の人の為に願える清らかな子は、私みたいな身勝手な人とはいっしょにいられないの……?』

 私の大切な友達を、悪く言うのはやめてほしかった。

 例えそれが、マミさん自身であっても。

『ほ、ほら〜っ! 私っ! 私がいますよ〜!』

 だから私は──へたくそだけど、マミさんを元気付けられたらって。

 柄にもなく、露骨に気遣う様な態度を取ってしまいました。

 それが却って、マミさんに気を遣い返させる事になってしまうのかな──と過ぎりながらも。

 ……そのあと、酔ってしまうと泣いて甘えてしまう一面が見れたりもしまして、なんだか素のマミさんを見れた気もして、ちょっとドキッとしちゃいました。

 それはさておき──。

「前にも言いましたよね……? 私たち、友達なんですよ……?」

「……まばゆさん」

 私なんかに気遣いは無用です。

 また思い悩んでるのなら、何度だって付き合います。

 私がマミさんを元気付けるんです。

 だって私は、マミさんのおかげで──。

「──恐い夢を見たの」

 それは、震える声で。

 ゆっくりと、絞り出すように紡ぐ。

「まばゆさんが、とても恐ろしい──見た事もない怪物に変貌してしまうの……」

「……っ」

 そんなことあるはずない。

 そんなの、ただの夢です。

 ──でも、何故でしょうか。

 不思議と身震いしてしまう様な気もするんです。

 ただの夢の話なのに、私も恐いんでしょうか。

 なおも、マミさんは続けて──。

「それで、私もバケモノに堕ちて……。守りたかった筈のこの街を、めちゃくちゃにしてしまうの……」

「……でもマミさん、それは──」

「えぇ、ただの夢だって分かってる。そんな事、ある筈なんてない。でも、思ってしまうの。もしも魔法少女の末路が、噂されてる『消滅』なんかじゃなくて──」

 マミさんが、自らを抱きしめながら震える。

「私が……っ、身勝手で……色んな子をっ……寂しいからって……! おぞましい『死』に、導いてしまってたのだとしたらっ……!」

 マミさんの頬に、涙が通る。

 ──もう、堪りませんでした。

「──マミさんっ!」

 叫びに、近かったんだと思います。

 私がマミさんへと呼び掛ける今みたいな声色は、自分でもとても聞いた事がない筈なんです。

 なのに──。

「……まばゆさん……」

 マミさんの体を抱きしめる。

 さながら『絶望』へと離れていってしまいそうなマミさんを、小さな全身を使って引き留めるように──。

「……自分のせいだなんて思わないでください。自分が悪いだなんて思わないでください。自分こそが『死』だなんて思わないでくださいっ……!」

 瞼が熱い。

 喉が詰まる。

 胸の中を鷲掴みにされる。

 抱きしめる私は、彼女の──私なんかよりもずっと大人っぽい服を、滴で濡らしてしまう。

 大人っぽいけど──私だけは知ってます。

 本当のマミさんは……マミさんは──!

「覚えてますか……? 初めて出会った時の事っ……」

「……えぇ」

「絶望に染まったお母さんから、占いの記憶を取り除いたあの日を──」

 こわかった……。

 つらかった……。

 寂しかった……。

 絶望に染まってしまったお母さんを直視する事なんて、できない日々が続いてしまっていた。

 でも──。

「マミさんのお陰なんですよ……?」

「……私……?」

「あの日、マミさんが居てくれたから──マミさんが私を見つけてくれたから、叶える事ができたんです……!」

 あのままだったなら私、ずっと後悔したままだっだと思います。

 ──私なんて、居ない方が良かった──って。

 咲笑さんが掛けてくれる言葉も通じてこなくって、ずっとずっと悔やんだままだった筈なんです。

 私が居たせいでお母さんを、大好きなお母さんを苦しめてしまったんだ、って。

 咲笑さんが教えてくれた、お母さんの本当の気持ち──私なんかを大好きで居てくれたからこそ、私なんかをまばゆい希望の光と思ってくれてたからこその苦しみだったんだと言う事も、分からないまま……!

 だから、私は──!

「マミさんがそばに居てくれた事を、間違いだなんて思えません……。マミさんが手助けしてくれたから叶えられたんです……! マミさんが居てくれたから、お母さんとの最期の一時(ひととき)を過ごす事ができたんです……っ!」

 私の存在は間違いなんかじゃなかったって、咲笑さんが教えてくれた。

 だから私も──マミさんが私と出逢ってくれた事を、間違いだなんて言わせない──!

「だからお願いします……マミさんっ……。自分を間違いだったなんて、言わないで……っ」

「……っ」

「マミさんが辛いとき、苦しいとき……私がそばに居ますから……! 例えマミさんがどうなってしまおうとも、私だけはマミさんのそばに居ます……! マミさんが居てくれた事には意味があるんだって、私が証明してます……っ! 私なんかでよければ……! だから……だから……っ!」

「……っ……!」

 温もりが全身を包んだのは、その時だった。

 涙に喉を詰まらせて、言葉が出てくれない私を、マミさんは抱きしめてくれた。

「まばゆさん……っ! うんっ……! ごめんね……本当にごめんね……っ! あんなの……あんなの、ただの夢なのにっ……! 私、なんてことをっ……!」

 マミさんの声も、涙に濡れていた。

 堪えようとして、息を継ごうとも、唇を噛み締めようとも──。

 ──それでも溢れてくる滴。

「……にひひっ。そうです、ただの夢なんですっ。……でも、不思議と分かる気がするんです」

「まばゆさん……」

「私も、そうなってしまったのなら本当に嫌だな……って。マミさんに会えなくなるの、考えるだけでも辛いです……本当に辛い……っ」

『死』をもって──それも、マミさんの言う悪夢の中でのように、怪物にまで堕ちて大切な友達に会えなくなる未来──。

 そんなこと、一晩経てば霧散する夢であろうとも──考えたくなんてなかった。

「……だから、私も一緒ですっ。ただの夢の話なのに、ここまで恐がっちゃってます。でも──忘れないでくださいね……? マミさんのおかげで、今の私がここに居ます。お母さんと最期の時を過ごせた私が、ここに居ます」

「……うん……、うんっ……!」

 涙に堰き止められてしまって、もう声が出ないのか──涙声で、必死の思いで頷くマミさん。

「だからマミさんには、ありがとう……って、そう言いたいんです……。魔法少女にならなかったら、マミさんといっしょに──ずっといっしょに居る事だって出来ませんでした。だから、マミさん……。ありがとうございます、マミさんっ……」

「っ……うん……っ。私もっ……。ありがとう……っ。まばゆさんっ……。こんな、こんな身勝手な私のそばに居てくれて……っ」

 まったく──身勝手だなんて、またマミさんは……。

 やっぱり、寂しがりやさんなのに責任感が強いのも考えものです。

 ……でも私は、そんな頑張りやさんなマミさんの事が──。

「身勝手なんかじゃないですっ……」

「ううん、身勝手よっ……」

「身勝手じゃないです……!」

「ふふっ、身勝手なのっ」

「にひひっ、身勝手じゃないです身勝手じゃないです身勝手じゃないですっ!」

「うふふっ、すっごく身勝手なのっ!」

 ああ──よかったです。

 マミさん、まだ泣いたままですけど──そんなままでも、笑顔を浮かべてくれた。

 そうですよ……、魔法少女の最期は、非業の絶望なんかじゃない筈です。

 希望から始まった魔法少女は、希望のまま導かれる。

 誰が経験した事でもない、そして誰かが教えてくれた話でもない。

 なのに──何故だか、そんな気がするんです。

 私が、私自身の記憶を──気付かぬ間に切ってしまったからなのかも分かりませんが、そう確信できる。

 未来はきっと、優しさに包まれてて……。

 そんな可能性を信じながら、私──いいえ、私たちは──。

「私たち、ずっとずっと、友だちだよ……マミさんっ──」

「うんっ、まばゆさんっ……。こんな私だけど、これからもよろしくねっ──」

 

 目尻に涙を溜めながら、互いにはにかむ──。

 

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