ぽにおとタロウ   作:生牡蠣

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書いてる途中でサザレさんを間違えてサザエさんって表記してたのに気が付いた…
実は愉快なサザエさんだったかZOY!?


れんずごしのつき そのざ

ある日の事です。

ガチグマは男達が昔世話になっていたという里に行くことになりました。

男やおともの鬼にとっては、里帰りみたいなものでした。

しかし、そこでもバケモノの鬼が出たのです。

 

色々あって、ガチグマと男たちは鬼を退治し、その里に再び平和が訪れました。

その際に、ガチグマは山奥の森を守ったことで、そこに住まうポケモン達に慕われるようになりました。

自分の周りに集うポケモンたちを見て、ガチグマは悪い気はしませんでした。

そんな時です。ガチグマの頭の中にとある考えが浮かんできました。

 

 

もし、自分たちがここを離れて、また鬼が襲ってきたらどうしよう?

 

 

ガチグマは悩みに悩みぬいて、とある答えを出しました。

 

 

 

それは、ガチグマにとって別れを意味する答えでした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっ…へっ?」

 

サザレは状況が飲み込めず、ただ言葉にならない声を漏らすしかなかった。

緊張で口は乾き、心臓がバクバクと音をたてて高鳴っているのが分かる。

だが、そんな状態になってしまうことは仕方のない事だ。

なにせ、自分の求めていたポケモンが、たった今目の前にいるのだから。

 

当然、サザレは赫月を見つけることが出来て興奮した。

しかし、それと同じくらいに、サザレは命の危機を感じ絶望していた。

 

森で出会ったら絶対に危害を加えてはいけないと言われるほどに凶暴で有名なリングマ。

そんなリングマがさらに強力になったガチグマだ。その力も攻撃性も上がっているはず。

それはサザレも理解しており、写真を撮るときも十分な距離を置き、細心の注意を払うと決めていた。

しかし、自分の意思とは裏腹に、目的のガチグマが自分の目と鼻の先に現れてしまった。

しかも、相手は通常のガチグマより強大な力を持つと言われている赫月。

自分の手持ちポケモンではどうにもできるはずもない、まさに命の危機であった。

 

興奮と絶望。

そんな2つの感情で頭も心もぐちゃぐちゃになってしまったサザレの思考は冷静な判断など出来るわけがなく、完全に停止してしまった。

 

(……あっ、写真撮らなきゃ)

 

だからだろうか、サザレは頭で考えるより、カメラマンとしての本能で動いてしまったのだ。

サザレはカメラを赫月に向け、シャッターを――――

 

 

 

 

 

「やめろ」

 

 

シャッターを押す前に男がサザレのカメラを抑え、写真を撮るのを制止した。

“はっ”となり意識を取り戻すサザレ。

自分は何をやっているんだ…いくら冷静さを欠いたとはいえ、野生のポケモンをこんな近距離で、何の策もなく撮影しようなんて、最悪死んでしまってもおかしくはない愚かともいえるだろうに。

サザレは少しの後悔と反省を頭に残し、ここから逃げる策を考えた。

 

ここで慌てて、背を向けるのは下策。すぐに追いつかれて後ろから襲われてしまうだろう。

ここはあえて視線を逸らさず、一歩一歩後ろへと下がってフェードアウトするのがベストだろう。

サザレは一瞬だけ男に視線を向ける。この男が声を掛けてくれなければ、自分はこの世にもういない存在になっていたかもしれない、命の恩人と言っても過言ではない人物だ。

そんな人物を置いては逃げられない。男も一緒に逃げるべきだろう。

そう考えたサザレは、小声でガーディと男に自分の作戦を伝えた。

 

「オッケー、冷静に…まずは慌てずに「撮影するならフラッシュを使うのはやめろ。ギィちゃんが怖がるだろう」……はっ?」

 

サザレは男の言っている意味が理解できなかった。

撮影?フラッシュ?……えっ、さっきの「やめろ」の意味ってフラッシュ使うなって事なの?

……そりゃ野生のポケモンに対してフラッシュを使った撮影は、ポケモンを驚かさないために配慮すべきだ。実際、サザレも興奮でフラッシュをオンにしていたのを忘れていたので、そこは反省すべきだろう。

 

……だが!今言うべきことそれか!?命の危機だぞ、しかも現在進行形でッ!!

それなのに一番気にするのはフラッシュって…感覚ズレすぎだろっ!?時と場合を考えろッ!!

 

…あれっ?というかこの男、今聞き捨てならない事を言ってなかったか……?

この男、今赫月の事、なんか可愛い名前で呼んだような……

 

「………………ギィちゃんッ!?」

 

サザレは驚きと戸惑いの混じった声を上げるが、男はそれに反応することなく、ガチグマへと近づいていく。

対するガチグマは、男に対して威嚇などをする様子はなく、むしろ男へ好意的な視線や息使いをしているように見える。

 

「ギィちゃん」

 

「ギィ」

 

やがて男とガチグマは対峙する。

しばらく見つめ合う両者。お互いにそれ以上言葉はなく、ただ静寂だけが流れた。

 

先に静寂を破り、動いたのは男であった。

男は背負っていたリュックを地へと置き、その中から箱を取り出し―――

 

 

「お届け物です。ハンコかサインをお願いします」

 

 

ガチグマへ向かって差し出した。

 

 

「……グゥ!」

 

 

対するガチグマは、どこからか朱肉を取り出し、自分の肉球に赤いインクを染み込ませると―――

 

 

“ポンッ!”

 

 

そのまま、箱の上にある伝票に手を置いた。

ガチグマが手を離すと、伝票にはくっきりとガチグマの肉球の跡が付いていた。

 

「……よし」

「グマッ」

 

それを見て、どこか満足気に頷く両者。

 

――――………私は、何を見せられているんだろう?

 

その光景を間近でみたサザレは、宇宙の旅へと再び出発した。

 

 

旅の道中、「おっしゃラッキー!」と叫びながら真っ赤な丸い球体に乗っている赤い獅子や約20年ぶりに新作が決まっていそうなスペシャルなポリス集団を見たような気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっと…つまり、お兄さんは赫月………ギィちゃんと昔からの付き合いで、今日はギィちゃん宛の荷物を届けに森まで来た…って事?」

 

「あぁ、その通りだ」

 

ガチグマと戯れる男からの返事を聞いて、サザレは頭を抱えた。

 

宇宙の深淵を見る前に何とか帰ってこれたサザレは、溜まりに溜まった疑問を男へ投げかけた。

さて、その一部を箇条書きにしてみよう。

 

Q.なんでガチグマとそんなに親しげなの?お兄さんのポケモンなの?

→A.俺とギィちゃんは友達だ

 

Q.なんでガチグマに荷物を渡してるの?

→A.俺は宅配人だ。宅配物を届けるのはあたりまえだろう

 

Q.ガチグマとはどういった経緯で知り合ったの?

→A.ギィちゃんがまだヒメグマの時、とある村で出会った。それからしばらくは一緒に宅配の仕事をしていた

 

Q.赫月って結構昔から生息してるポケモンのはずだけど、それだとお兄さん相当生きてることになりません?流石に嘘では?

→A.俺は嘘を吐けない

 

…………うん、振り返ってみても頭痛がする程にぶっとんでいる。ぶっ飛びすぎて脳が理解を拒んでいるのが分かる。

伝説とも言われている赫月と昔からの友達ってなんだッ!?

ポケモン相手に宅配便配達ってなんだッ!?

明らかに眉唾な話を「俺、嘘つかない」で済ますなぁぁぁぁぁぁ!!!

サザレはまだまだ言いたいことがあったが、これ以上男と問答をしても珍妙な答えが返ってくるのは目に見えていた為、疑問を腹の奥底に何とかしまう。

この他のにも「ギィちゃんはカブトムシだった」等頭が痛くなる返答をされたのだ。サザレはもう、疲れてしまったのだ…

というかなんだよカブトムシって…明らかにむしタイプじゃないだろ…

 

そんなサザレのことなど無視して、ガチグマは男の顔を舐めたり、抱き付いたりなどじゃれつき始めている。男の方もそれを拒むことなく受け入れ、どこか嬉しそうだ。

……こいつらマジで仲いいなおい。特にガチグマ、お前は一応伝承上のポケモンで滅多に人前に姿を現さないはずだろう。そんなに人馴れしてていいのか…

 

「わふぅ~ん…」

 

サザレが頭を抱えていると、足元から相棒(ガーディ)の鳴き声が聞こえた。

そちらに目をやると、先程ガチグマが男から受け取り、地面に置いた箱をしきりに気にしているガーディの姿があった。

……そういえば、この箱の中には何が入っているのだろう?

ガチグマに届ける品…駄目だ、全く思いつかない。

 

「! …グゥ」

 

そんなガーディに気が付いたガチグマは箱を手に取り、蓋を開けた。

そこには、白くて丸い物体がいくつも入っていた。

その物体をよく見ると、表面に緑や茶色の粒がちりばめられていた。

これは……

 

「………おにぎり?」

 

「あぁ、いきいきイナホを炊いた米にころころマメともちもちキノコを加えたものだ」

 

サザレが漏らした疑問の声に、男は答えた。

いきいきイナホ、それにころころマメともちもちキノコ…偶然にも全てヒスイガーディの好物である。

あぁ…ガーディが突然走り出した理由絶対これじゃん…。

そういえば、早くキタカミまで行きたいという気持ちが先行してポケモン達の食事をおろそかにしていたかもしれない……反省しなきゃなぁ…。

 

「ワグゥ」

 

「!! わふっ!」

 

ガチグマはおにぎりを一つ取り出し、ガーディに分け与えた。

ガーディはお礼を言うように鳴くと、そのままおにぎりを食べ始めた。

“ガツガツッ!”と勢いよく口を動かし、おにぎりが見る見るうちになくなっていく。そんなにお腹すいてたのか……気づかなくて本当にごめんね。

 

「キュキュキュ!」

「れっしぇーい!」

「ハボハボ」

 

ガーディがおにぎりを食べているのを眺めていると、他のポケモンの鳴き声も聞こえてきた。

声の方に視線を向けると、イトマルやイシツブテ、ハスボーのこの近辺に生息しているポケモン達がこちらに向かってくるのが見えた。

こちらに…というかガチグマに向かっている?

 

「グギャ」

 

「キュ~♪」

 

そのポケモン達を見たガチグマは、次々におにぎりをポケモン達に渡していった。

それを受け取ったポケモン達は、嬉しそうな表情を浮かべながらおにぎりを食べている。

他にも、ガチグマによじ登ったり、甘える仕草を見せたりするポケモン達も見受けられた。

 

「なんか……慕われてる?」

 

「当然だ。ギィちゃんはこの地の鬼を倒して、平和を守っている。ポケモン達もそれを理解しているのだろう」

 

サザレの疑問について、男がガチグマをしみじみと眺めながら説明を入れる。

………もう、この男に何かを聞くのはやめておいた方がいいのではないか?

サザレは男に呆れたような視線を向けながらそう思った。

 

……それにしても、いざ目的の赫月を前にしたのは良いものの、何と言うかその……イメージと全く違う。

もっとこう、伝説のポケモンじみた神秘的なオーラや、隠しきれない荒々しさや凶暴性を持つ大型のポケモンをイメージしたのだが……蓋を開けてみればどうだ。

威厳などは全くなく、他のポケモンたちと一緒になっておにぎりを貪っている姿は、のんきな大型のワンパチやイワンコを見ているかのようだ。

はっきり言って拍子抜けである。

まったく、自分はこんなありきたりなものを撮りに来たのではないのだが……。

 

「ぐぅぅ~♪」

 

「……………」

 

しかし、サザレはそんなガチグマから目を逸らすことが出来なくなっていた。

確かに、今のガチグマは普通のポケモンと同じに映り、何の特別性も感じられない。

仮に赫月について全く知らない人間がこの場面を見たとしても、どこにでもある普通の光景であると感じるだろう。

それくらい、写真に撮ったとしても、迫力も何もない、何の変哲もない平凡な写真になる。ネームバリューがある分、コラージュと判断されてしまうだろう。サザレはそう確信していた。

しかし――――

 

「グマぁ♪」

 

「おぉ、どうしたギィちゃん、今日は甘えん坊だな」

 

しかし、サザレは気付いた。ガチグマが、本当に楽しそうなことに。

目の前の光景は、決して絵になるものではない。だが、ガチグマはそんな中でいきいきと、自分の赴くままに動き、生きていた。

他のポケモン達と戯れる姿、おにぎりを齧る姿、男へと甘える姿。

辺りは暗いはずなのに、その一つ一つの行動に、スポットライトが当てられていると錯覚してしまう程に、ガチグマは輝いて見えた。

 

「……………!!」

 

そんな中で、サザレは気が付いた。

いつの間にか、自分の手にカメラが握られていることに。

 

あぁ、そうか――――

 

 

 

 

 

 

 

私、写真を撮りたいんだ

 

こんな闇が深い森で、フラッシュを使わずに撮ったところで、何が写っているかわからない写真になってしまうだろう。

おまけに、撮影対象は思うがままに動き回るし、構図もめちゃくちゃだ。

 

でも、そんなの関係ない

 

「ん?……フラッシュは使うなよ」

 

サザレがカメラを持っていることに気が付いた男から、再びそんなことを言われた。

もう、そんなことするわけがないと苦笑いするサザレ。

その時、とある事を思いついた。

 

「ねぇ、さっきお兄さん言ったよね。私の困りごとを手伝ってくれるって」

 

「あぁ、言ったな」

 

「じゃあさ、ちょっと頼みたいんだけど―――」

 

 

 

 

 




いきいきイナホやころころマメが現代でも入手できるかは謎
でも、どっかの地方ではまだ生産されてると思うの…

赫月って大型犬味あって可愛い…可愛くない?
キタカミの新規ポケモンはみんな可愛くていい…


ここまでご拝読ありがとうございました
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