なんかそれっぽく仕上げてみたから…
何が…起こってるんだろうか?
僕ことハルトは、そう思わずにはいられなかった。
僕、今日はこの辺のポケモンを調べるためにここに来たんだよな…?
その為に朝早く起きて、朝食もそこそこに寮を出発して…うん、ちゃんとその記憶はあるし、アオイが途中で目的を忘れてバトルに耽っていたのに対して呆れたのも覚えている。
おまけに、ここはいつもの自室ではなく岩肌に囲まれた大地だ。という事は、朝からこれまでの行動は気のせいとかではなく現実なのだろう。
……ということは、だ――――
「フッ!……ダァ!!」 “ガキンッ!”
「ヌ゛オ゛ォ!?」
この目の前で行われている特撮の様なヒーローと鬼の戦いも現実なわけだ。
「ガァ!!」
「グッ……ハアァ!!」
鬼が銀色の戦士に金棒を振り下ろすが、戦士の装備している丸い盾に防がれる。
それによって体勢を崩した鬼は、そのまま戦士の持つ手斧に横腹を切られ、辺りに火花が飛んだ。
よろめく鬼に追い打ちを掛けようと駆けだす戦士の姿…うん――――
なんだこれ?
僕は念のため頬を抓ってみる。
痛い。ということは…やっぱり現実かぁ……
改めてこれが夢ではないと確認したが、やはりすんなりと受け入れることを脳が拒絶している感覚を感じる。
そりゃそうだろう。非現実的な存在である鬼が出て、同じ学園に通う生徒――ジロウが急に銀色の戦士に変身して鬼と戦っている。これをすんなり受け入れろなんて、無理な話だ。
「おりゃあ!」
「ヴッ!!」
ジロウの蹴りが鬼の腹に突き刺さり、鬼が倒れた所にそのまま馬乗りになる。
すごい……普段の彼からは考えられない、荒々しい戦い方だ…
鬼が力任せの戦い方だとすれば、ジロウの…いや、ドントラボルトだっけ?…の戦い方は凶暴な獣の様な動きだ。
相手のパワーにも動じずに飛びかかり、相手の喉笛を噛み千切らんと果敢に攻める。
まるで手負いのカエンジシやレントラーを彷彿とさせた。
「すごっ…」
その戦いぶりに、アオイも感嘆の声を漏らす。
もっと他に言うことあるだろうとも思うが、人とは状況が上手く呑み込めないと、こういった単純な感想しか出ないのだと初めて知った。
「ウ、ウグオォォォォ!!オレハ、強クナアアァァァル!!!!」
そんな事を考えていると、馬乗りになっていたドントラボルトをやっとの思いで押しのけ、紫の鬼が立ち上がった。
鬼は僕たちを襲った玉の集合体を再び召喚し、ジロウ目掛けて打ち込んだ。
あの時の僕らではどうすることもできなかった攻撃だが、ドントラボルトなら避ける事は簡単だろう。何故かそんな安心感が僕の中にあった。
「そんな攻撃……ッ!! グアァァァァ!!」
しかし、僕の予想とは裏腹に、ドントラボルトはその場から動かずに鬼の攻撃を真正面から受けてしまった。
あれっ?避けられると思ったんだけど…
「オラッ! フンッ!!」
「ぐっ…!」
それに味を占めたのか、鬼は同じように玉飛ばし攻撃を繰り返す。
ドントラボルトは、その攻撃を盾で受けることしかできていない。
なんだろう、先程よりドントラボルトの動きが悪い様な気がする…いや、動きが悪いというより、
「ハルト、あれ!」
アオイが何かに気が付いたように、ドントラボルトの後ろを指さす。
「…あっ」
僕もその先にあったものを見て、思わず声を上げた。
「かぼぉ…」 「ぼぅ…!」
ドントラボルトの後ろには、2体の赤い人型のポケモンが居たのだ。
あれは…カルボウ!? 逃げ遅れたのか!?
遠くからでもわかる、2体とも目の前の戦いに怯え切って逃げる事さえままならないのだ。
もしかして、ドントラボルトはカルボウ達を庇って…!!
「ぐぉぉ!…おい、さっさと逃げろ…!!」
トラボルトは鬼の猛攻を受けながらも、後ろを向いてカルボウ達を気にかけている。
やっぱり!ジロウはカルボウ達を助けようとして思うように動けないのだ!
「ハルト」
その事に驚いていると、アオイが真剣な表情で話しかけて来る。
「私の考えてること、わかる?」
アオイは短くそう言った。
…言葉は少なかったが、不思議とアオイがやらんとしている事がわかった。
「わかるよ、双子だもの」
「そっか…怖かったら、やんなくてもいいよ?」
「う~ん…正直少し怖いけど、アオイ一人で行かせられないから」
「なにお~、生意気!」
そんな日常的な会話をしつつ、僕達は内心ビビりまくっていた。
これから行おうとしている事は、揶揄抜きで命がけだろう。
しかし、それでも、この状況を何とかしたい。僕達の心は一つだった。
「いくよ―――」
「「せーのッ!!」」 ダッ!
そう声を合わせて、僕達はカルボウ達の元へと走った!
僕達では鬼を何とかすることは出来ない。でも、目の前の命を助ける事ぐらいはできる!!
「オラッ!!」
僕達が走り出したタイミングで鬼も玉攻撃を繰り出した。
僕らの周りにも玉が放たれ、地面や岩に当たって爆散していく。
怖い。今にもこの場から離れ、逃げ出したい気分だ。
でも、目の前の命を見捨てるなんて、もっと嫌だ!!
その一心で僕達は走り抜ける。
3m、2m、1mと距離を縮め―――
「よっし!!」
「掴んだ!!」
「「ボウッ!?」」
ついにカルボウの元へとやって来れたのだ!
僕達はカルボウを抱き上げると、そのまま元来た道を走って戻る。
「ジロウ! カルボウは無事だよ!!」
「思いっきりキメちゃってぇ!!」
僕とアオイの叫びに反応して、トラボルトもこちらを振り返る。
その顔はマスクで覆われて見えなかったが、その下には獰猛な笑顔があると感じた。
「ドラアッ!!」
再び鬼の玉攻撃がトラボルトを襲う。
しかし、ドントラボルトは先ほどの様に盾で受けることはなく、華麗に玉をよけながら鬼に近づき――――
「ホアタァ!!」
―――ヤクザキックを鬼の顔面にぶち込んだ!!
「ギャオッ!?」
キックの威力が相当なものだったようで、鬼はそのまま後ろへと吹っ飛ばされ、膝を着いている。
「――とどめだ」
トラボルトはそう言うと、手斧の柄の部分にあるトリガーを押した。
“タイガー!奥義ィィ!!”
瞬間、斧から中華風の待機音が鳴り響き、手斧と盾がまばゆい光を放つ。
やがてその光は腕に、顔に…全身にまで広がっていった。
“乱れ雷虎!ホワターッ!”
「雷刃…闇駆白虎!」
トラボルトがそう言った瞬間、彼の姿が変わった。
その姿は、今まで見た事のない4足歩行で鋭い爪と牙を持つ、勇猛な獣の姿であった。
獣は目にも止まらぬ速さで鬼に駈け寄り、その爪で切り裂き、牙で噛みついた。
その度に鬼の身体は引き裂かれ、身体中に穴が開き、鬼の口からは悲鳴にも似た断末魔が響いた。
獣の攻撃が終わると光が収まり、そこには斧を構えたドントラボルトの姿が。そしてその後ろで立ち尽くしていた鬼が、身体中から電撃の様なエネルギーを漏らしながら徐々に倒れていき――――
“ドカ―――――ン!!!”
爆発四散した。
「勝った…の?」
その言葉を漏らしたのは、僕なのかアオイなのかもうわからない。
僕達は、ただただ目の前の光景を“ポカーン”と見ることしかできなかったのだ。
「う~ん…」
しばらくして煙幕が晴れてくると、小さい嗚咽のような声が聞こえてくる。
声の方に目をやると、そこには突然鬼になってしまった男の人が目を回して倒れていた。
お、鬼!?倒しきれなかったのか!?
「心配するな、あいつはただの抜け殻だ」
そう言葉を発したのは、トラボルトであった。
その瞬間、トラボルトの身体が発光し、光が収まった時には元のジロウの姿に戻っていた。
ジロウは男の人に近づき、そのまま担ぎ上げ、僕達に斧を向けて来た。
…ってえぇ!な、何事!?
「え、ええぇっと…な、なに?」
「そいつらも、連れてってやれ」
慌てる僕らの事なぞ気に留める事もなく、ジロウは僕らの腕の中のカルボウを見て言った。
そういえば…この子達も念のためポケモンセンターで見て貰った方がいいよね。あんなことがあったんだから、もしかしたら怪我してるかもだし…
「う、うん…もちろん連れて行くよ」
「あぁ」
アオイの言葉に短く頷くと、男の人を担いだまま何処かへあるk出すジロウ。
……えっ、これで終わりなの!?
あの鬼はなんだったのかとか、ジロウの急なキャラ変とか、ドントラボルトについてとか、一切説明なし!?
「ね、ねぇ!せめてこれだけは聞かせて!」
僕はジロウの背中に向かって叫んだ。
ジロウの雰囲気的に、全ての説明をしては貰えないだろう。というかあの全てを切り裂きそうな空気感を纏ってるジロウにあんまり関わりたくない。
でも、これだけは聞いておきたかった。
「君は、本当にジロウなの?」
アカデミーで見かけるジロウの様子とはかけ離れた彼の姿に、僕はどうしてもそう聞かずにはいられなかった。
すると、ジロウは立ち止まり、寂しそうな笑みを浮かべる。
「……さぁ、な」
僕の疑問に帰って来た言葉は、何処か寂し気な雰囲気を感じさせるものであった。
ジロウはそれだけ言うと、今度こそ振り返ることはなく歩き出してしまった。
ジロウが見えなくなるまで、僕達はその場から動くことは出来なかった……
「ただいま~!」
『おかえり、ジロウ君!』
ジロウが家へ帰ってくると、彼の事を幼馴染のルミが出迎えた。
「ルミちゃん! どうして僕の家に?」
『なんでって…ジロウ、お前が今日学校が終わったら自分の家で遊ぼうって言ったんじゃねーか』
ジロウの疑問に答えたのはルミではなく、彼女の後ろから現れた会社員風の男であった。
その更に後ろから、農家風の男と消防団の様な格好の男も現れた。
「三増、八会、佐五! みんなも来てたんだ!!」
ジロウは嬉しそうにそれぞれの名前を呼んだ。
アカデミーでの生活でも良い友と出会えているが、やはり昔からの幼馴染との交流は嬉しかったのだ。
『今日は寺崎さん、夜勤で帰って来ないんでしょ? せっかくだし、お泊り会しようよ!』
「お泊り会!? すっごい楽しそう!! よーしっ、今日は一晩中、ヒーローになる為の練習に付き合ってもらうよぉ!!」
『ま~たヒーローごっこかよぉ…好きだねぇ、お前も…』
『でも、正直俺もちょっと好き』
『それじゃ、私は夕飯作るね♪』
ジロウ達は和気藹々と家の中へと入っていく。
その姿は、幼いころからの親友たちが友好を深めるという微笑ましいものである。
こんな時間が、ずっと続くといいなぁ…
ジロウは心の底からそう思っていた。
そんな家の中の様子を、近くの木の上に止まっていたカイデンが偶然目にしていた。
しかし、カイデンの目にはその微笑ましい光景は、なんだかおかしな絵面の様に見ていたのであった。
カイデンは、こう思っていた。
確かにあの男とその
「キル!! キル!!」
「あははっ!くすぐらないでよルミちゃ~ん♪」
何故、あの人間は周りの
首をかしげるカイデンの疑問に答える存在は、この場にはいなかった。
・バックパッカー(シソツ鬼)
パルデア地方の各地でキャンプするのが趣味の20代後半の男性。
実はアカデミー周辺でキャンプをしていた時、偶然ネモを見かけて一目惚れした。
彼女の事を調べた結果、ポケモンバトルが好きという情報があったため自分も強くなるべく奮闘。しかし、彼にトレーナーとしての才能はなく、結果的にシソツ鬼に取り憑かれてしまった。
むかーしむかし、バックパッカーは年の離れた女の子に恋をしてしまったそうな…
最後のポケモン…一体何ジアンなんだぁ!?(迫真)
なんか色々フラグ立てちゃったなぁ…気が向いたら続き書かなきゃなぁ……
ここまでご拝読ありがとうございました