PROJECT NIYARI 始まりの軌道   作:龍狐

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 マホロアにワープされた先で出会った天を衝く髪の男、【ゴンさん(13歳)】。彼はなんとマホロアの言っていた現地の人間、つまり研修の講師とも言える人物だった。
 そんなときに明かされた『念』と言う力。研修とは、『念』を習得して戦闘能力を得ることだったのだ。
 彼から話を聞くと、ゴンさんも【転生者】らしいのだが【ゴンさん】の力が強すぎるあまり転生時に思考と意識が【ゴンさん】によって99%侵食されてしまっていたらしい。マジパない。
 そして迎えた修行開始日。黒竹とクロスはゴンさんによって全身の『精孔(しょうこう)』が開かれ『念』に覚醒した。だがそのままでは『念』の源である生命エネルギー、オーラが垂れ流しになってしまい最悪死ぬとのこと。黒竹は焦ってオーラを肉体に留める技術、『纏』を習得しようとしたがクロスは覚醒とほぼ同時に『纏』を取得。
 そんな時、クロスと黒竹が触れている間は『纏』の状態が黒竹に連動することが分かった。これにはゴンさんも驚いており、黒竹とクロスはしばらくの間、運命共同体のようになったのであった。




自身の系統を知ろう

「―――ようやく、ようやくできた…!!」

 

「コ~ン!!」

 

「やったね。おめでとう。ようやく『纏』を習得できたんだ」

 

 

 『念』の修行の基礎中の基礎、『纏』の修行を始めて1週間。黒竹はようやく『纏』を習得するに至った。

 ここまでの道なり、本当に長かった。毎日毎日『纏』の修行を繰り返しても全然習得の気配すら見えず、疲労が極限までに達するとそれを察知したかのようにクロスが体に張り付いて『纏』の状態を維持する。

 これを一週間繰り返して黒竹は『纏』を会得したのだ。

 

 

「ようやくコイツに頼らなくても済むのか…」

 

「コ、コ~ン……」

 

「黒竹さん、クロスが悲しんでるよ。黒竹さんはちゃんとクロスに感謝しないと」

 

「あ、あぁ……そうでしたね。……えっと、ごめん。1週間、ありがと、な」

 

「コォン♪」

 

 

 黒竹が感謝の言葉を述べるとクロスはあからさまに元気を取り戻し上機嫌に鳴いた。

 どうやら黒竹の言葉が「用済み」のように聞こえたのかもしれない。クロスがいなければ黒竹は『纏』をできずに十数時間気絶、最悪死に至っていたかもしれないため、黒竹はクロスに感謝しなければいけない立場にある。

 黒竹はクロスに謝罪と感謝を述べたあと、座禅のままゴンさんのことを見上げた。

 

 

「ゴンさん。俺もようやく『纏』が出来たんだから、次の技術(ステージ)に進んでもいいんじゃないですか?」

 

「うん。そうだね。えっと……」

 

 

 ゴンさんは近くに置いてある本の山から一週間前にも見た【HUNTER×HUNTER 6巻】と書かれた漫画を取り出してペラペラとページをめくる。

 ゴンさんの視線が本に注目されながら、説明が始まった。

 

 

「あのね、『纏』を含めて『念』の基礎を四大行って言うんだけど、名前の通り基礎は四つあって、『纏』『絶』『練』『発』の四つ。まずは『絶』と『練』からやろっか」

 

「……『発』をやらない理由は?」

 

「『発』はね、オーラを自在に操る技術で、念能力の集大成なんだ。いわゆる、『特殊能力』とか『必殺技』みたいなの。俺で言うと最初に見せたパンチかな」

 

「なるほど…」

 

「コォン…」

 

 

 それを聞いて納得した。確かにゴンさんのあの大岩を破壊し、地面にクレーターを作ったパンチはとんでもない威力だった。アレがゴンさんの『発』だというのなら、確かに集大成と言うだけはある。まだまだ初心者の自分には早いということだろう。

 

 

「じゃあ、『絶』と『練』ってなんですか?」

 

「えっとね……詳しくはコレ読んで」

 

 

 そう言いゴンさんは持っている漫画をそのまま黒竹に手渡した。参考書(まんが)に説明を丸投げしたと言ってもいい。仮にも講師がそれでいいのだろうか。

 だが百聞は一見に如かずだ。黒竹は漫画を受け取り、描かれている四大行について頭の中で整理した。

 

 

 『(テン)』 オーラが拡散しないように、体の周囲に留める技術

 体を頑丈にする、若さを保つ効果がある。

 

 『(ゼツ)』 精孔を閉じ、オーラが全く出ていない状態にする技術

 気配を絶つ、疲労回復の効果がある。

 

 『(レン)』 精孔を広げて通常以上のオーラを出す技術

 大量のオーラを駆使できるようになる、攻防力が上がる効果がある。

 

 『(ハツ)』 オーラを自在に操る技術。

 念能力の集大成。個別の能力。いわゆる特殊能力、必殺技。

 

 

 まとめると、こんな感じだった。

 

 

「なるほど……」

 

「とりあえず目標は『纏』と『絶』と『練』の熟練度を上げることだね。頑張ろっか」

 

「はい。分かりました」

 

「コンッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

* * * * * * * *

 

 

 

 

 

 

 

~一月後~

 

 

 

「―――――」

 

 

「うん。『絶』も『練』もスムーズにできるようになってきたね。普通ここまでもっと時間がかかる(らしい)のにすごいや」

 

「コォン…」

 

 

 あれから約一月。黒竹はできる限りの時間を『纏』『絶』『練』の修練に時間を当てていた。ただそれだけのことに切磋琢磨し、力が格段に上がっていくのを感じていた。

 今黒竹が行っているのは『練』の修行だ。『練』は熟練度を上げていけば攻撃に防御にも役立つ。基礎能力を上げるには『練』が一番だ。

 

 

「まぁもっとすごいのはクロスだよね。『纏』も『絶』も『練』も、教えてすぐに出来ちゃったんだからさ」

 

「コォン♪」

 

「いや、ソイツと一緒にしないでもらえます?」

 

 

 だがそれでも、一番早く成長したのはクロスだ。クロスは『纏』『絶』『練』を習ったと同時に会得していた。今では黒竹よりも早く応用の技術を習っているほどだ。

 異常すぎる成長スピードに、ゴンさんですら驚いてたほどだ。クロスを引き合いに出されたら、黒竹なんて月とすっぽんすぎる。

 黒竹は修行を一旦止め、ゴンさんとクロスのいる方角へとゆっくり歩いてくる。黒竹はしゃがんでクロスの頭に自分の手を乗せる。

 

 

「にしてもコイツって結局なんなんだ…?いや、マホロアには教えてもらったけど、イマイチまだ理解できん…」

 

「【ケイミー】だったっけ?錬金術で創られた人工生命体だったよね、確か」

 

「……ゴンさんなんで知ってんすか?あとケミーです」

 

「マホロアさんの手紙に書いてあったけど」

 

(……本当にどこまで書いてあるんだ?……まぁ、いいが)

 

 

 本当にマホロアがあの手紙にどこまで書いたのかが謎過ぎる。だがその肝心の手紙はゴンさんの手中だ。それにソレ自体はあまり問題ではない。

 重要なのは確実に強くなっているという“事実”。だが、まだ確実に足りない。黒竹の最終目標は“復讐”にある。その肝心の復讐相手が持っている力は『創世の力』。そんなチート能力に対抗するためには中途半端な力を身に着けたところで無駄に終わるだけだ。だからこそ、待っていられる。

 

 それに、黒竹がこんなに悠長にしていられる理由はそれだけではない。理由は単純である。黒竹にはゴンさんに反抗できる度胸も力もないからである。

 

 

(……今、反論できねぇ侮辱をされた気がする…)

 

 

 気のせいである。

 

 

「知識不足でまだ何とも言えねぇが……いつかお前のことも教えろよ」

 

「コン!」

 

「まぁ言葉が喋れないんじゃ教えようもな――ってなにやってんだ?」

 

 

 クロスが一声鳴くと、トコトコと木がないエリアへとゆっくり歩いていく。その光景をゴンさんと黒竹で顔を見合わせて『?』マークを浮かべていると――、

 

 

 

 

「コォ――――――――ンッ!!」

 

 

 

 

 クロスは、天に向かって甲高く鳴いた。鳴き声はやがて上空へと木霊となって広がっていった。

 だが、何も起きない。

 

 

「……何がしたかったんだアイツは?」

 

「さぁ?……あ、もうこんな時間だ。二人とも、そろそろお昼の時間だよ。ミトさんがご飯作って待ってるだろうし、行こっか」

 

「そうですね。……おーい」

 

「コォーン」

 

 

 ゴンさんが立ち上がり、その後ろを着いていこうとする前に黒竹はクロスを呼ぶが、クロスは返事をしただけでそこから動こうとしない。

 不思議に思った黒竹が方向転換をしてクロスを迎えに行こうと歩みを進めたその時――、

 

 

 

 

ドォオオオオオン!!!

 

 

 

 

 突如頭上から凄まじい轟音とともに、()()()が降ってきた。そのなにかは黒竹のちょうど目の前に落ちてきて轟音と衝撃により黒竹は地面にバウンドしながら後方へと転がった。

 

 

「な、なに、が…?」

 

「大丈夫?」

 

「は、はい、なんとか…」

 

 

 震える体で起き上がろうとする黒竹を、当然のごとく動揺も怪我もしていないゴンさんに心配されるが、黒竹は特に大きな怪我はなかった。黒竹は目の前になにかが落ちてきてその衝撃で体が吹き飛ばされていると認識した瞬間、体を咄嗟にオーラで覆い『練』を行い体をバウンドのダメージから守った。

 だが、黒竹の熟練度では咄嗟に『練』をするのは至難の業で防御が遅れてしまったため、地味に痛い。

 

 

「何かが落ちてきたみたいだけど、なにかな」

 

「アレ、は…?」

 

 

 徐々に砂埃が晴れていき、黒竹とゴンさんの瞳に映ったそれは――二振りの剣だった。

 二振りとも形が違い、双剣とは呼びづらい上に長剣だ。黒と青竹色のバイカラーのその二振りの剣は地面に先端が突き刺さりその地面にはヒビが入っている。

 

 

「剣だね、アレ」

 

「なんで剣が空から降って……まさか」

 

 

 空から剣が降ってくる。そんな非現実的なことが起こる前に起きたこと。そしてあの剣の色にとても見覚えがあった。

 その元凶であろう存在が奥からトコトコと歩いてくる。言わずもがな――クロスだ。クロスは黒竹たちの前まで歩いてくると舌を出して尻尾を振っていた。

 

 

「コン!」

 

「……もしかしなくても、アレ、お前の仕業か?」

 

「コン!」

 

 

 黒竹の問いに、クロスは笑顔で首を縦に振った。

 

 

「てめぇ…!」

 

「ゴン?!」

 

 

 黒竹は怒りのあまりクロスの下あごを掴みかかる。指が頬を圧縮し、クロスの顔が少し縮む。

 

 

「いきなり何すんだコノ野郎…咄嗟に『練』してなかったら死んでただろ…!」

 

「コォ~ン…」

 

「まぁまぁ。助かったんだからいいじゃん」

 

「でもゴンさん。それとこれとは話は別だ。ここで怒っておかないとまたやらかすかもしれないだろ」

 

「クロスも悪気はないように思えるし、次から気を付けたらいいよ」

 

「……まぁ、ゴンさんがそういうなら…」

 

 

 黒竹はここで打ち切ることにした。もしここでゴンさんと言い争いになってそのまま物理バトルにでも発展したら確実に死ぬという確信と自信があったからだ。

 黒竹はクロスを手放すと、クロスは急に走り去り地面に突き刺さった二振りの剣の周りをグルグルと回る。まるでこの剣を見てくれと言わんばかりの行動だ。

 クロスとゴンさんはその剣に近づき、マジマジと見る。

 

 

「うーん。この剣から特にオーラは感じられないね。具現化したものってわけじゃないのか…」

 

「えっ、オーラ?特になにも見えないですけど…?」

 

「うん。『(ギョウ)』って言う応用技術なんだけど、オーラを体の一部に集中させる技術を使ってるんだ。コレで目にオーラを集中すると他人のオーラを見破れるんだけど…。まぁコレは後で教えるとしても、この剣からオーラは感じられないから、『念』とは一切関係ないみたいだし…」

 

 

 全く知らない新情報が出てきたが、剣自体は『念』とは無関係なようなので一旦頭の隅に追いやる。

 剣をジロジロ見るがとても重厚感を感じる剣だ。まぁ剣だから当たり前だが。そんな時、黒竹は二振りの内の一振り――リボルバーのような部品がついている剣を見て、既視感に襲われた。

 

 

(この剣……どっかで見たような…?どこだったか…?)

 

 

 そんな疑問を持ちながらもその剣を選び、実際に手に取って持ってみる。

 

 

「重ッ…!?」

 

 

 手で持ち手を掴むと、見た目よりもさらに重厚感を感じさせた。なにより重い。剣だから当たり前だが。黒竹は両手でその剣を持つと、ようやくその剣がすっぽ抜けた。

 

 

「はぁ、はぁ…。『念』を修行しても、体力や筋力が付くわけじゃないのか…?」

 

「ソレとコレとは話が別だからね。“強化系”だったら別にできないわけじゃないけど、黒竹さんの“系統”はまだ分からないからなぁ」

 

「あの、ちょくちょく分からない専門用語出すのやめてもらえます?」

 

 

 『念』を学んでいるとはいえ分からないことの方が多い。その状況で専門用語を出されても分からないことだらけだ。

 

 

「ごめんね。でもそんなに重いんだ。どれどれ…」

 

 

 ゴンさんがその重さを確かめようともう一振りの剣に手を伸ばし――触れた瞬間、虚空に消える。

 その光景に、二人の思考が停止した。

 

 

「―――?」

 

「……あれ、どこいったんだろ?あ、あった」

 

「え?」

 

 

 ゴンさんが指さした場所は――黒竹の右足元だった。そちらの方に顔を向けると、先ほどまでゴンさんが触れようとしていた剣が、黒竹のすぐそばで地面に突き刺さっていた。

 

 

「――WHY?」

 

 

 黒竹、あまりの謎現象に言語が英語になる。何故ここのあの剣が?たった今ゴンさんが触れようとして消えた剣が自分のすぐ隣にあった。

 

 

「うーん。瞬間移動でもしたのかな?」

 

 

 ゴンさんが黒竹――正確にはもう一振りの剣に近づき剣に触れようとすると、再び剣が虚空に消えた。どこへ行ったのかと探せば、今度は左足元の地面に突き刺さっていた。

 

 

「あぁやっぱり瞬間移動してるのか。しかもこの感じだと黒竹さん以外使用できないようになってるのかな?」

 

「コン!」

 

「ウワッ!」

 

 

 ゴンさんの推測に、いつの間にか隣にいたクロスが肯定しているかのように鳴いた。それに黒竹が驚き、左足を軸に転びかけ、ちょうど突き刺さっていた方の剣を掴んで転倒を回避する。

 

 

「っぶねぇ…。驚かすなよ…」

 

「コォン♪」

 

「大丈夫?」

 

「はい、なんとか…」

 

 

 黒竹は二振りの剣を松葉杖替わりに地面に突き刺し体制を立て直す。

 剣を地面に突き刺したまま黒竹はしゃがんでクロスを見つめる。

 

 

「これがお前の能力……ってわけか?」

 

「コォン!」

 

「剣を召喚する能力かぁ。本当に不思議だね」

 

「……これじゃ、分からんことが増えただけだな…」

 

「コォン!?コォン……」

 

 

 黒竹の呟きに、クロスは甲高い鳴き声を上げると、その次に落ち込む様子を見せた。

 そんなクロスの姿を見て、黒竹は自分なりにフォローをする。

 

 

「まぁ……お前なりに自分のことを教えてくれたんだろ。だから、気にすんな」

 

「コォン!♪」

 

「うわっぶ!?」

 

 

 一瞬で喜んだクロスが黒竹にダイブする。上乗りになって黒竹の顔をペロペロと舐め回す。

 

 

「ちょ、おま、舐め!?やめろぉ!」

 

「コォン」

 

 

 勢いよく起き上がった黒竹は、そのままクロスの体を掴んでため息をつく。

 

 

「分かった。分かったからもうやめろ。顔がベトベトになる!」

 

「コン」

 

「仲いいね、二人とも」

 

「…ありがとうございます」

 

「コォン!!」

 

 

 ゴンさんにそう言われ、黒竹は素直に感謝した。クロスに関しては不明な点が多い生物だが、ここまで懐かれては悪い気は正直していない。クロスもクロスでとても嬉しそうだ。

 ゴンさんは首の方向を変えてクロスが召喚したであろう二振りの剣を見た後、黒竹に向き直った。

 

 

「とりあえず、コレを片手で持てるくらいには筋力と体力をつけないとね」

 

「え、さらにトレーニング追加ですか!?」

 

「せっかくクロスが出してくれたんだから、使えるようにならないと。それにこの剣、黒竹さん専用みたいだし」

 

「まぁ……そうですね」

 

 

 確かにゴンさんの言うことは一理ある。修行が増えるのは正直言ってキツい以外ないが、強くなっていて損はないし、何よりこの剣が自分専用だというメリットが大きい。もし他人の手に渡ってもすぐに自分の元に帰ってくるという帰属性はデカい。

 コレを扱えるようになっておいて、無駄はない。

 

 

「それじゃあ明日から筋トレと持久力も上げていこうか」

 

「――はい」

 

「コン!」

 

 

 黒竹は力強く頷き、力を手に入れるために奮闘する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

* * * * * * * *

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――約一月後。

 

 

 

「フゥ、フゥ、フゥ…」

 

 

 黒竹は上半身裸になり、片手にそれぞれ黒と青竹色のバイカラーの二振りの剣を振り回し、その度に汗が彼の周りに飛び散り、そんな汗で彼の周りの地面は濡れていく。

 だが、一月で彼の体は見違えた。流石にゴンさんほどの筋力が付いたわけではないが、それでも鍛えられた肉体が徐々に顕著になり、持久力も上がった。その証拠に一月前までは両手でようやく持てた剣もそれぞれ片手で持てるまでに成長している。

 

 

「うん。すごいね。一月であんなに成長するなんて」

 

「コォンコォン!」

 

「やっぱり毎日の努力が大事だね」

 

「……ありがとうございます」

 

 

 ゴンさんから誉め言葉をもらい、剣を消失させゴンさんたちの方を向き直る。そのままゴンさんたちの方に歩いていき、近くにあったタオルで自分の体を拭いていく。

 

 

―――この一月で、分かったことがある。二振りの剣についてだ。

 新たな発見。それは二振りの剣を出したり消したりできるということだ。これは自分の意思で自由にでき、コレを知ったときはかなり驚いた。黒竹専用だということは当初から分かっていたことだが、ここまでの機能があること自体驚きだ。

 そして、この出し入れはクロスでも可能だということ。クロスも、剣の出し入れが可能なのだ。確かに黒竹しかできないとなれば、クロスがあの剣を召喚したのはどういうことなんだということになるが。

 

 そしてあらゆる検証を試みた。

 

 召喚済みの剣を片方が召喚するとどうなるか

 黒竹が持っている二振りの剣を、クロスに召喚させるとなにも起きなかった。どうやら使用中はもう片方は使用できないようだ。

 

 次の検証は召喚済みの剣を持っていない状態で片方が召喚するとどうなるか

 これに関しては先ほどと真逆の結果となった。地面に突き刺した状態でクロスに召喚させると、目の前で地面に突き刺さっていたはずの剣が消え、クロスの目の前に召喚された。

 

 どうやら、“使用中”の判定は持っているか持っていないかで決まるらしい。確かにこれなら帰属性の武器といてなんらおかしいところはない。

 持っていれば何の問題もなし、持っていなくても“未使用”と判断されて召喚の対象になる。

 

 ちなみに未召喚状態で同時に召喚した場合、一本ずつ黒竹とクロスの前に召喚されるということが分かった。

 

 分からないことだらけの二振りの剣。分かっていることはいくつかのパターンと完全に黒竹専用装備だということ。むしろクロスが扱えるとは思えない。口で加えれば使用できなくはないが。

 

 

 そして、最も恐ろしい出来事が起きてしまったのだ

 それは検証の最中のこと。二振りの剣の内の片方――リボルバーのような部品がついている剣を弄っていたときの話だ。

 剣の持ち手に、トリガーのようなものを発見したのだ。それを見て思った。この剣、遠目から見て刃の部分を除いて見てみると、なんと銃の形にソックリなのだ。

 この時黒竹は、完全に調子に乗っていたと言えるだろう。新しい発見に、一種の興奮状態を覚えていた。そんな彼が犯した過ち、それは――

 

 

――バキュン!!

 

 

「――あ」

 

「――コン」

 

「―――――」

 

 

 誤発射による、ゴンさんへの直撃。これこそが彼の最大の過ち。だがしかし、直撃した本人は全くの無傷だった。ちなみにこの武器、名前はまだ伏せるのだが放たれる弾丸は荷電粒子砲である。そんなものを喰らって無傷でいられるゴンさんはやはりとんでもないが、問題はそこではなかった。

 砲弾は、ゴンさんの手に持っていたものに直撃したのだ。それは、ゴンさんの昼食(サンドイッチ)(ミトさん製)であった。

 ゴンさんは怒った。激怒した。かの邪知暴虐なうんたらかんたらを決して許さないと誓ったのだ。

 

 その時、ゴンさんは漆黒のオーラを体から放った。全身が黒く染まり、唯一光輝く目は、獲物を捕らえた殺意にまみれた目であった。

 

 

「もう、おやすみ…」ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ

 

 

(あ、俺死んだ…)

 

「コ、コン…」

 

 

 あの出来事は二度と思い出したくない。黒竹はあの日に確信したのだ。ゴンさんを怒らせたら命はないと。魂に刻み込んだのだ。今生きていること自体奇跡と言っていい。あの日のミトさんが救いの神様に見えた。

 なんでこんな短期間で命の危機を頻繁に感じないといけないのだろうかとも思った。

 

 他にも気になるボタンやトリガーがあったりしたが、触るとどうなるか分からない上にこれ以上ゴンさんの怒りを買う行動は避けたかったため、気になる気持ちを我慢して、片手ずつで剣を振るえるようになることと、『念』の修行にのみ励んだ。

 

 そして、今日。

 

 

「さて、そろそろ黒竹さんもクロスも自分の系統を知っておいたほうがいいと思うんだ」

 

「系統…?」

 

 

 そう言われてもピンとこず、首を傾げる黒竹とクロス。

 首を傾げる二人に、ゴンさんは一枚の紙を取り出した。その紙には六角形が描かれており、その中心には『発』と書かれており、それぞれの角の部分には『強』『放』『変』『操』『具』『特』と書かれている。

 

 

「――これは?」

 

「六性図って言ってね。人の持つオーラの性質は6つのタイプに分けられるんだ。これはそれを分かりやすく示したものなんだ。ちなみに俺は『強化系(きょうかけい)』。この一番上だよ」

 

 

 そう言い、ゴンさんは『強』と書かれている六角形の頂点を指差す。

 

 

「(なるほど。『強』は『強化』の『強』か)それだったら、他の五つはなんですか?」

 

「えっとね。『放出系(ほうしゅつけい)』『変化系(へんかけい)』『操作系(そうさけい)』『具現化系(ぐげんかけい)』『特質系(とくしつけい)』だね」

 

「へぇ…」

 

「自分のオーラに合った能力の方が覚えが早いし強力に使いこなせるよ」

 

 

 ゴンさんの説明を聞きながら、黒竹とクロスは六性図を凝視する。

 本当に念は奥が深い。普通に修行しただけでもあれほどまでに強くなれたというのに、まだその先のステージがあったことすら驚きだ。ここから更に力が派生する。それだけでも、黒竹の心は震えた。

 

 

「ちなみに、性質別でどんな力があるんですか?」

 

「えっとね、コレ見て」

 

 

 そう言われゴンさんに手渡されたのは毎度恒例の参考書(マンガ)。流石に慣れてきたので特に何も言わないが、何度も見返して思った。「この漫画、この世界のことでは?」と。あまりにも内容と世界が酷似しすぎていて、むしろその可能性しか考えられない。

 良く出てくる主人公らしき11歳の黒髪の活発な少年が【ゴン】と呼ばれていることから、十中八九ゴンさんのことで間違いない。この漫画で11歳で現実では13歳。一体この二年で何があった。

 ていうかそもそも漫画の世界に原作の漫画があること自体おかしいだろ。どっから手に入れてるのか謎だが、入手して渡してる人物が簡単に連想できてしまったため、特になにも考えていない。

 

 話を戻し、黒竹とクロスはオーラの性質について描いてある部分を着目して読む。

 まとめるとこんな感じだ。

 

 『強化系』 物の持つ働きや力を強くする

 肉体や武器の強化、治癒能力、運動維持

 

 『放出系』 オーラを飛ばす

 念弾、憑念、瞬間移動、ダメージ転換

 

 『操作系』 物質や生物を操る

 他人の操作、命令の強制、能力を付加

 

 『特質系』 他に類の無い特殊なオーラ 

 他人の能力を利用、記憶や生体情報、未来などの情報取得

 

 『具現化系』 オーラを物質化する

 特殊な武器の創造、念獣、念空間

 

 『変化系』 オーラの性質を変える 

 炎や雷、ガムをオーラで再現、形状変化

 

 

(なるほど……こりゃどの系統かでどんな能力なるかが決まるな…。だがそっからまた派生を繰り返す。他人の無駄みたいだな…こればっかりは、独力でやるしかねぇか…。にしても…)

 

 

 黒竹は『強化系』の項目を見る。それはゴンさんが属している系統だ。コレを見た瞬間にゴンさんの異常なまでの強さをすぐに理解できた。

 ゴンさんの強さはオーラで肉体を強化することで実現していた。あの圧倒的なオーラで繰り出される一撃は全てを破壊できるほどの威力、そりゃ強いわけだ。

 

 

「それで、その性質って、どうやって調べるんですか?」

 

「ちょっと待っててね」

 

 

 ゴンさんが立ち上がると、とある方向へと歩いてその姿を消した。だが、ゴンさんの長すぎる長髪が彼の居場所を指し示していた。相変わらずあの髪は目立ちすぎる。それにあの方角は確か、ミトさんの家だったはずだ。

 何分か待つと、ゴンさんが森の奥から戻ってきた。だが、その手にはグラスとバケツが握られていた。そのバケツには、水が入っている。

 

 

「――?」

 

 

 ゴンさんはいつも座っている丸太に座り、テーブル替わりにしている切り株の上にバケツの水で満たしたグラスを置いた。そして、その辺に落ちている葉っぱを水で満たしたグラスの上に乗せた。

 

 

「…これは?」

 

「【水見式】って言ってね。このグラスに『練』をすると自分の系統が分かるんだ。試しにやってみて」

 

「はぁ…」

 

 

 黒竹は半信半疑になりながらも、グラスに両手を近づけて『練』を行った。最初、『練』を行ってもなんの変化も起こらなかった。だが、時間が経つにつれて、その変化が顕著になっていく。

 

 

――水の色が、『青く』変色し始めた

 

 

 だがその変化はとてもうっすらであり、少し時間をかけてようやく変色を理解できたほどに薄い。

 

 

「―――!」

 

「水の色が変わった…。黒竹さんは『放出系』だね」

 

「『放出系』…」

 

 

 『放出系』。六性図では左上に位置している系統。『放出系』の能力者はオーラを体から離して留めることに長けている。

 黒竹は自身の系統を知り、ある程度の攻撃パターンの方針を決定していた。だがそれは漠然としたもので、とりあえず遠距離主体の攻撃方法になる、程度にしか考えていない。

 

 

「それじゃあ、次はクロスの番だね」

 

「コン!」

 

 

 ゴンさんはグラスの水を捨て、バケツから新しい水を汲んで再び葉っぱを乗せ、準備を完了させる。

 ただ、クロスの骨格では台の上に乗せた状態で水見式をするのは難しいため、グラスを地面に置いてクロスはその間に両前足を置いて、『練』を始める。

 少し時間が経ち、変化が始まる。

 

 

――グラスから、水がチョロチョロと溢れ出る

 

 

「水が…」

 

「クロスは『強化系』かぁ。俺と同じだね」

 

「コン!」

 

 

 どうやら、グラスから水が溢れるのは『強化系』の証らしい。『強化系』は肉体や武器などの強化や治癒能力向上などの力があり、攻め、守り、癒しと攻守のバランスが取れた系統となっている。

 クロスはこの力をどのように活用するのだろうか。バランスが取れている分、分かりやすい系統ではあるが楽しみにすら思えてきた。

 そんなことを考えている間に、ゴンさんが漫画を手に持って説明に入っていた。

 

 

「えっとね…まずね、『放出系』はオーラを飛ばすことが得意な系統だから、とりあえずは『念弾』の修行かな」

 

「『念弾』…?」

 

「うん。オーラはね、体から離すと丸く硬くなる性質があるんだよね。でも普通、体や物に纏わせないと消えちゃうんだけど、『放出系』はソレが可能なんだ。その飛ばすオーラが『念弾』って言って、『放出系』の能力の基本なんだって」

 

 

 説明を聞いた限りでは、確かにオーラを体から切り離して攻撃する『念弾』はいい練習になる。とりあえずある程度の方針は決まった。

 

 

「次にクロスだけど…『強化系』は単純に『纏』と『練』を極めていけば一撃一撃が『必殺技』って呼べるくらいに強くなれるよ」

 

「コォン!」

 

「マジか…俺も『強化系』が良かったな」

 

「『強化系』、憶えられないわけじゃないよ?」

 

「え、ホントですか?」

 

 

 嬉しい朗報を聞いて、黒竹は嬉しそうな顔をしながら顔を上げる。自分の系統が『放出系』だと先ほど分かったばかりなのに、『強化系』を覚えられるらしい。

 ゴンさんは先ほど見せた六性図を取り出し、『放出系』の場所を指さした。

 

 

「オーラの系統はあくまで“自分が修得するのに最適”ってだけだから、それ以外の系統の能力も修得できるんだ。例えば黒竹さんは『放出系』だから、六性図で見るとその隣同士の『強化系』と『操作系』の能力も習得しやすいんだ。まぁ100%ではないけどね」

 

 

 ゴンさんの話によると、六性図で自分の系統を頂点としてみるとそこから遠くなるほどに習得できるレベル・精度は落ちていくらしい。だからこそ、基本的に自分の系統を中心として他の系統の修練もするといいらしい。

 隣り合っている能力のレベルや精度は、80%程度しか習得できないようだが。しかし、これが全てではないとゴンさんは語る。

 

 

「俺の場合『強化系』だけど、『放出系』寄りの『強化系』なんだよね。だから『変化系』は苦手でさ。だから、俺の場合習得率はこんな感じかな」

 

 

 ゴンさんが髪にスラスラと文字を書いていき、黒竹たちに見せる。そこには、

 

 『強化系:100』『放出系:90』『変化系:70』

 

 と書かれていた。

 

 

「俺はこんな感じで偏ってるからさ、黒竹さんとクロスも自分がどっち寄りかちゃんと分かってた方がいいよ」

 

「なるほど…」

 

「コォン…」

 

 

 隣同士だとしてもどっち寄りかでまた能力の幅が広がりそうだ。だが逆に決めづらい。

 

 

「それじゃあ、始めよっか」

 

「はい!」

 

「コン!」

 

 

 こうして、黒竹とクロスの新たな修行がスタートした。

 

 

 

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