PROJECT NIYARI 始まりの軌道   作:龍狐

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 前回、マホロアが黒竹とクロスを迎えに来た。その会話の中で、黒竹はマホロアからブランクカードと【一ノ瀬宝太郎】と言う人物が書いた本を渡される。
 しかしマホロアはゴンさんにも用があった。それはツカサと言う人物の誕生日であるという報告であった。そのため、黒竹とクロスは二か月間お世話になったクジラ島を、マホロアとゴンさんとともにあとにした。
 そんな中、船内で謎の麻袋を見つける。その中に入っていたのは、一人の猫耳猫尻尾の女性だった。その女性に対し、「誘拐(つれ)てきた」と明言するマホロアに疑念を募らせる黒竹だったが、その直後に現れたゴンさんのオーラに当てられ女性を見捨てた。
 そんなことも知らずに、とある世界で、ツカサと言う人物は今日も学校に登校する――。


ゴンさんと行く!天馬司の誕生日:プロセカ編
ゴンさん襲来


――この日、【神代(カミシロ)(ルイ)】と【草薙(クサナギ)寧々(ネネ)】の両名は現実を疑った。

 学校から出ようと校門まで歩いていたら、校門前に()()は現れた。ソレを見た瞬間に現実を疑ったのだ。いや、実際はその表現は正しくない。校舎から出る前からソレの一部は見えていたのだ。ただ、ソレを不思議に思っていただけ。

 この二名はとあるテーマパークの数あるショーステージのうち、「ワンダーステージ」で活動するキャスト4人によって結成されたユニットの内の2名である。今日はメンバーの一人――座長の誕生日のため、ワンダーステージで集合の予定なのだが、残りの二人は一緒ではない二人は先に集合場所へ行こうとしたが、目の前のそれのせいで足止めを喰らっている。

 ていうか、このままでは永遠に足止めさせられそうな雰囲気(オーラ)を、()()は常に放ち続けているのであった。

 

 

 

――この日、【東雲(シノノメ)彰人(アキト)】【青柳(アオヤギ)冬弥(トウヤ)】【白石(シライシ)(アン)】の三名は死を覚悟していた。校門前にいる圧倒的存在感を放つ謎の存在に殺されるのではないかと、恐怖を抱きながら覚悟をしていた。

 彼ら3人は、学校が別と言う理由でここにはいないもう一人のメンバーとともにストリートユニットを組んでいる。正確には女子高校生のユニットと男子高校生のユニットの混合ユニットだが、今は深堀している余裕はない。

 

 白石杏は自身の相棒であるもう一人のメンバーに対し「ごめんこはね、もうそろそろ私死ぬかもしれない」と遺言にも等しいメールを送っており、その次の瞬間に相棒から「どうしたの杏ちゃん!?」と言う心配のメールが送られてきた。

 東雲彰人もとある人物にメールを送っていた。彼の実姉(じっし)である。普段は姉のことを名前で呼ぶような間柄でお互いに憎まれ口をたたく関係だが、キャラに似合わずメールの内容に「姉貴、俺の墓にケーキをお供えしといてくれないか」と書いて送信した。ちなみに既読はつかなかった。

 青柳冬弥は一種の走馬灯に耽っていた。彼には尊敬している人物がいる。その人物は同じ学校の一つ上の先輩であるのだが、その人物ともっと会話をしておけば――。その人物は今日が誕生日だというのに、祝いの言葉もまだ満足に言えていない。

 

 そんなそれぞれの後悔を残し(なおもちろんのこと3人に共通している後悔も存在する)、目の前の漆黒にまみれた縦線の影をただただ見ているしかできなかった。

 

 

 

―――この日、【暁山(アキヤマ)瑞希(ミズキ)】は後悔した。学校に来たことを。

 瑞希は簡単に言えば不登校だ。今日は単位が危うかったため補講に顔を出したのだが、それが間違いだった。今日ではなく昨日や一昨日、先週でも来ればよかったのだ。そうすればこんな思いをせずに済んだ。

 

 そんなIFのことを頭に浮かべながら瑞希は、死んだ魚の目で天を衝く髪とともに空を見上げていたのであった――。

 

 

 

 

 

 そして、そんな考えをしているのは彼ら彼女らだけではない。この学校――【神山高校】の生徒と教師全員が対象であった。学校から出るための一番広い場所、正門。そこから出ることができないのだ。無論、学校の入り口は正門だけではない。他の門を使えば遠回りにはなるが出ることはできる。だが、彼ら彼女らはそんな簡単なことすら思いつくことができないほどに追い込まれていた。

 教師ですら、目の前の圧倒的な存在感(オーラ)に気圧され使い物にならない。

 

 

 

 

 

 そんな異常事態の元凶――正門の前でデフォルト(左手を首の辺りで上げている横からの姿)のポーズで立っているその男。

 2mを超すムッキムキの肉体。今にもはち切れそうな子供用の服とズボンになぜか裸足。絶望を知っているどこまでも深く果てしない漆黒の瞳の童顔。どこまで伸びているのか分からない(少なくとも学校の校舎より長い)重力に逆らい一直線に伸びている長い黒髪。

 そして、彼を中心に発生している圧倒的なオーラを放つ存在――ゴンさん(13歳)。それが、彼ら彼女らの足を止めていた。

 

 

 

 

 

「――――――」

 

 

 

 

 

 

 そしてその隣では申し訳なさそうに顔を両手で抑えている左目を中心に包帯をしている男性、黒竹がいた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

* * * * * * * *

 

 

 

 

――時は少し遡る

 

 

 

 

 

ボ ボ ボ ボ ボ

 

 

 

 

「インセクト、ジョブ、ビークル…。10種の属性にそれぞれレベル1から10のケミー。合計101体のケミーが存在している…」

 

「コ~ン…」

 

 

 黒竹とクロスは今現在、マホロアの魔術によってボートから――というかボートごとローアに転移した。食事を済ませたあと、そのローアの一角でマホロアにもらった本をクロスとともに読んでいた。ちなみに体勢は体育座りからの足を開いてその間にクロスがいる。クロスの頭に自分の顔を乗せながら、本を読んでいた。これなら同時に読めるから一石二鳥であり、クロスも特に嫌がっていないから問題ない。

 

 

ボ ボ ボ ボ ボ

 

 

「…ケミーの掟。ケミーは悪意に触れさせてはならない。悪意を持った人間を媒介に怪人【マルガム】を生み出し災いを振りまくため…」

 

「コ~ン」

 

「……お前、ケミーだよな?この本の通りなら俺と融合しててもおかしくないんだが…」

 

「コン?」

 

 

 この本に書かれているケミーの掟が本当であれば、今頃黒竹はこの狐(ケミー)と融合してマルガムになっていても不思議ではない。

 クロスと出会った当初は世創狐白、立花や小日向たちに向けて極限までの憎悪を向けていた。その状態の■■(さとう)とケミーであるクロスが出会ってマルガムになっていないのは理に適っていない。

 

 当のクロスは後ろを向いて黒竹の顔を見ながらキョトンとしている。やめろ、可愛いだろ。

 

 

ボ ボ ボ ボ ボ

 

 

「………次に、ケミーを目撃した者の記憶・記録はすべて消し去るべし…。記憶はともかく記録を消すってどうやんだよ」

 

 

 記憶を消すのはまだ分かるが、記録を消すとは一体どうするのだろうか。情報技術が発達していない世界ならまだ分かるが、黒竹が生きた現代社会でソレはどう考えても難しい。そこら辺のこともなんらかの技術でどうにかしているのだろうか。これに関しては考えても無駄だろう。

 

 

ボ ボ ボ ボ ボ

 

 

「それで最後に、レベルナンバー10(テン)を支配してはならない…」

 

 

 レベルナンバー10(テン)とは、各属性における最強のケミーたち。桁違いの存在故に制御は不可能とされているためのようだ。これは理解ができる。そんな存在を支配できたらそれこそ問題だ。

 

 

ボ ボ ボ ボ ボ

 

「まぁコレに縁はなさそうだな…」

 

「……コ~ン」

 

 

ボ ボ ボ ボ ボ

 

 

「――――」

 

「コーン…」

 

 

ボ ボ ボ ボ ボ

 

 

「―――駄目だ…。やっぱり集中できねぇ…」

 

「コォン…」

 

 

 黒竹とクロスは、ガクッと首を垂れてため息をついた。そのまま本を閉じ、立ち上がって歩く。向かう先は無論、さっきからローア内で鳴り響いているこの鈍い音の発生源だ。

 この音の正体は分かり切っている。だが、ローアについてからずっと鳴り響いているのは流石に精神的に堪える。

 少し歩くと、すぐに音の発生源がいる部屋の前についた。その扉には【トレーニングルーム】と書かれている。黒竹とクロスは心構えをして、その扉を開けた。そして、その目に映った光景は――、

 

 

 

 

 

 

「ピトォオオオオオオ!!」

 

 

 

 

「ニャアアアアアア!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 何度も何度も、()られている女性と、()っているゴンさんの姿であった。

 このトレーニングルームはすごい。壁が床なんかが超特殊素材で出来ていてありとあらゆる衝撃を吸収してくれる、使用者にとても配慮がされた場所だ。まぁその分使い辛いのが難点だが安全性は抜群。どちらかと言うと訓練場と言うよりは子供用の遊び場――トランポリンルームと言う呼び方が合っていると黒竹は個人的には思っている。

 

 そんな衝撃を吸収できる優れものの素材でも、限度と言うものがある。その素材はゴンさんの蹴りの威力を完全に殺すことができずに女性をゴムのような弾力で弾き飛ばす、ゴンさんのもとまで。ボって戻って、ボって戻っての繰り返しだ。

 

 ていうかあの女性の方が凄すぎる。何度も何度もゴンさんに本気でボられているというのに未だに生きている。耐久力が凄すぎる。いや、凄すぎるという表現ですら物足りない。

 それにしてもあの女性は一体なにをやらかしたのだろうか。なにをどうすればここまでゴンさんをキレさせられるんだろう。

 

 この音を何とかしたくて来たのに、今は猛烈にこの部屋に入りたくない。ていうか最初から分かり切っていたことだろう。触らぬ神ならぬゴンさんに祟りなしだ。

 

 

(よし、そうと決まればこの部屋を早く出――)

 

「あ、黒竹さん」

 

(遅かったァ!!)

 

 

 寸でのところでゴンさんに気付かれた黒竹とクロス。ゴンさんは壁にバウンドして吹っ飛んできた女性の胸倉を掴んでこちらに向き直る。女性の方を見るとまだちゃんと意識があった。改めてとんでもない。

 

 

「どうしたの?もう着いた?」

 

「いや……読書してたんですけど、さっきから音が大きすぎて集中できなくて…」

 

「ごめんね。ピトーを殺したらすぐに終わるからさ…」

 

「ヒィ…!」

 

(いやゴンさんに何度もボられてるのに死なない時点で時間かかるヤツでは?)

 

 

 黒竹の中でもはや女性のことは全然心配されていなかった。と言うか出会ってすぐに女性のことを《対ゴンさん用理不尽集積装置》としてしか見ていなかった。それはとても(むご)惨く残酷な現実であるが、悲しいことながら事実そうとしか思えないほどに彼女の存在は周りへの被害を減らす重要な存在である。

 それゆえに、黒竹が導き出した結論は――

 

 

「そっか。でもこの部屋とかローアが壊れないようにはしてほしいかな。ローアが壊れたら死ぬから、マジで」

 

 

 女性を見捨てることであった。一度ボられた経験がある以上二度とボられたくない黒竹が取れる最善の策である。

 それにゴンさんのボを喰らっても無事のローアも凄い。特殊素材が衝撃をある程度吸収してくれるおかげもあるだろうが、それにしても文句なしの船だ。

 

 

「うんわかった」

 

この船(ローア)じゃなくて少しはボクの心配を――」

 

 

 

「黙れ!!」

 

 

 

 

「理不尽!」

 

 

 そして再開されるボられタイム。とりあえず黒竹とクロスはこれ以上考えることをやめ、部屋から出ようとクロスとともに回れ右して部屋から出ていこうとしたとき――

 

 

「アーテステス。マイクのテスト中…」

 

 

 ローア全体に、マホロアの声が――船内放送が響き渡った。その声で黒竹とクロスは足を止め、ゴンさんも女性をボる脚を止めた。ちなみに女性の方は地面で撃沈して尻を突き出した状態で地面に伏していた。

 黒竹は全体を見渡すが、スピーカーの類は一切見られなかった。見えないところに配置してあるか、マホロアの魔術のどちらかだろう。

 

 

「もうスグで目的地に到着するヨ!ミンナ降りる準備ヲしてネ!」

 

「え、早くない?」

 

 

 黒竹が船内放送を聞いて真っ先に思い浮かんだのは到着が早すぎることだ。ローアに乗り込んだのはついさっき――1時間ほど前のことだ。それだというのにもう到着するのは流石に早すぎる。

 マホロアの話では今日出発しないとツカサと言う人物の誕生日に間に合わないと言っていたが、早すぎる。

 

 

(いや……待て、そういえばマホロアはホールケーキの予約をしてたはず…。到着したのは本来の目的地ではなくケーキ屋だと考えるのが自然か…)

 

 

 が、そこで考えを改めた。普通に考えればマホロアのいう目的地はケーキ屋だろう。誕生日を祝うにしてもまずケーキを持っていかなければ話にならない。それならばこの早すぎる時間にも説明がつく。世界は広いからね、うん。

 

 

「もうこんな時間か。早く降りないと」

 

「そうですね…。行きましょうか」

 

「コン」

 

 

 そのまま、ゴンさんとともにトレーニングルームをあとにする。――後ろでのびている女性を背にしながら…。

 

 

(散々酷いこと思った、なんか買ってあげよう…)

 

 

 その憐れな光景に、黒竹はなにかおごることを決意した。

 

 

 

 

 

 

 

* * * * * * * *

 

 

 

 

 

 

 

 

 ゴンさんとともにマホロアのいるところまで歩いて到着すると、モニターを見ながらパネルを操作しているマホロアの後ろ姿を見つけた。

 

 

「マホロアさん。お待たせ」

 

「ア、待ってたヨ。ケーキはそこに置いてあるカラ中身確認シテおいてネ」

 

 

 後ろを振り向いたマホロアが指を指した方角を見ると、そこにはポツンとケーキが入っているであろうケーキボックスが置かれていた。

 

 

(―――?)

 

 

 この時黒竹は頭にクエスチョンマークを浮かべた。何故これから取りに行くはずのケーキが今目の前にある?

 ゴンさんはさも当たり前のようにケーキボックスを手に取って中身を確認しているし。

 

 

「あ、ショートケーキだ。ありがとうマホロアさん」

 

「イイヨイイヨ。代金はイツモ通りゴンさんの給金カラ引いてるシ。ボクの出費じゃナイからネ」

 

「うん」

 

 

 それを言わなかったらもっと美談に聞こえていたのだが。マホロアの上げて落とす性質は相も変わらず健在だ。

 形が崩れないようにゆっくりとケーキをボックスに戻すゴンさんを視界の端に入れながら、黒竹とクロスはマホロアの元へ歩いていく。

 

 

「マホロア」

 

「うん?どうかしたカイ?」

 

「この船って…ケーキを取りにいくんじゃなかったのか?」

 

「エ、ケーキならソコにあるジャン。ソレにケーキを取りに行くくらいボクの魔術でナントカなるシ」

 

「――じゃあこの船どこに向かってんの?」

 

「エ、ダカラ言ったジャン。目的地」

 

 

 マホロアがパネルを操作すると、モニターにとある画像が映し出される。宇宙と言う暗闇の中、青く光る星。とてもよく知っている星、【地球】。

 

 

「―――…?」

 

「ボクらの目的地はアソコだヨ」

 

「え、もしかして、ツカサって人は…」

 

「ウン。別の星の人間」

 

 

 予想外。完全に予想外だ。開いた口が塞がらない。黒竹はケーキの購入もプレゼントを贈る対象も全てゴンさんのいる世界で完結するのだと、勝手に思っていた。だがそれは全くの見当違いであった。

 

 

(ていうかゴンさん、あんた別の星の人間とも仲良くなってたのか。凄いなツカサって人!!)

 

 

 黒竹は頭の中でまだ見ぬツカサと言う人物を賞賛した。こんな髪オバケと仲良くなれるなんて相当な変人か聖人くらいだろうと思う。流石にそれは言い過ぎだとは思うが。

 ゴンさんもよく別の世界の人の誕生日にわざわざ――

 

 

(いや、友達だから、か…)

 

 

 友達だから。ただそれだけの理由でこうして遠い場所っていうか世界から来てその人の誕生日を祝うために来ている。そこまでして大事にできる友達、親友、仲間…。黒竹には、まだ予想ができなかった。あの1日の光景が、仲間だと信じていた人間たちの豹変が、頭にチラつく。

 

 

「―――ッ」

 

「コ~ン…」

 

 

 唇を噛み締め、拳を握り締めた。そんな黒竹の変化に気付いたのか、下の方からクロスが心配そうな顔をして見上げてきた。黒竹は咄嗟に微笑んで、クロスの頭を撫でた。

 

 

「気にすんな。大丈夫だから」

 

「コーン」

 

「……マホロア、到着まであとどれくらいかかる?」

 

「ソンナにかからないヨ。アーデモ、目立たナイ場所にローアを降ろす必要があるシ、降りてカラもやることあるカラ、到着しても少しかかるカナ」

 

「そっか。すまんが席を少し外す。準備ができても来なかったら一回呼んでほしい」

 

「……アァ、ウン。行ってキナ」

 

 

 マホロアは少し難しそうな顔をしながら了承した。マホロアの顔は口元がベルトで隠れて見えないが、目元だけで表情が容易に想像できた。黒竹は方向を変えて扉の前へと歩いていく。その後ろをクロスが着いていこうとしたが―――、

 

 

「お前は来なくていい」

 

「コン?」

 

「すぐ戻る。お前はここで待ってろ」

 

「コォン…」

 

 

 しょんぼりと気分が落ち込んだクロス。その光景に罪悪感を感じながらも、黒竹はクロスを置いて一人でコックピットから出ていった。

 少し歩き、黒竹はとある場所で足を止めた。その場所は――メディカルルーム。黒竹がローアで初めて目を覚ました場所だ。その部屋に入ると、最初に見たときと全く変わらない間取りが広がっていた。

 その中を少し探索して、包帯を見つけて取り出すと、ドレッサーの前に座り、手持ちの髪用クリップで髪を止める。

 

 

「――――」

 

 

 黒竹はこの二か月間、髪を伸ばし続けた。左目を中心に。左目を隠すために。だが二か月伸ばした程度では左目全てを覆うには足りない。だから包帯を巻く。理由は単純だ。左目を隠す理由は決まっている。

 鏡に映る自分の姿。その左目には深く斬られた傷跡がこびりついていた。

 

 

(ほとんどの傷はマホロアとローアのおかげでなんとか治った。『念』を習得してからは自然治癒力も向上したからより早く。だが…この傷だけは…)

 

 

 治らなかった。傷はとても深く、完全に元通りにすることは難しかった。だがこれでもかなりマシな方だ。マホロアとローアの技術を持ってしてもこの傷を治せなかったということは、それほど深い傷だったという他ない。むしろ視力がなくなっていてもおかしくない傷だ。だが今左目の視界は良好。これだけでもマホロアとローアの技術の凄まじさが伺える。この傷痕も治してほしいなんて、欲が深すぎる。

 それに、この傷を残しておけば、世創(セイソウ) 狐白(コハク)への怒りも忘れずに済む。

 

 怪我のほとんどが治ってからはずっとそのままにしていた。ミトさんもなにも聞いてこなかった。本当に優しい人だ。

 だが、今から行く場所は多くの人間がいる場所。傷を見られて不気味がられるより、包帯で隠していたほうが幾分かマシだ。

 

 

「ていうか、本読む前にやってればよかったよな…」

 

 

 あの時は本を早く読みたすぎてすっかり忘れていた。

 そんなことを考えながら、慣れない手付きで左目に包帯を巻いていく。自力で包帯を巻くのなんてやったことがないため、無理もないが。思い付きでやるものじゃない。

 正直言ってこの状態で人前に出れば厨二病患者と間違えられそうだが、あまり気にしないことにしている。何故なら、自分より絶対目立つ人物と一緒に行動するから。

 

 

「よし…これでOK。行くか」

 

 

 包帯を巻き終えた黒竹は、鏡で自分の姿を確認する。頭と左耳を巻き込みながらも、しっかり左目は隠れている。初めてやるにしてはプロまでとはいかないが十分な出来だと自負した。そのままクリップを外して髪を降ろしメディカルルームから退室する。

 そのまま来た道を戻り、マホロアたちの待つ場所へと到着した。

 

 

「待たs――」

 

「コン!!」

 

「わぶっ!?」

 

 

 扉が開いた瞬間、目の前からモフモフのものが黒竹に向かって全力で突進してきた。黒竹は対応が遅れて後ろに大きく倒れた。

 

 

「コン!」

 

 

 黒竹の腹の上に、クロスがまたがって舌を出して嬉しそうに九本の尻尾を振っていた。

 

 

「少し別れただけだろ…。大袈裟過ぎだって…」

 

「そんなコト言わないデ…クロス君、スゴク落ち込んでたヨ?」

 

 

 パネルを操作しながら、マホロアがジト目で見てくる。的確に罪悪感を着いてくる視線だ。

 

 

「うぅ…。すまん、悪かった…」

 

「コォン!!」

 

「マァクロス君も、彼の気持ちを察してあげてネ。彼も()()()()()()だろうからサ。そういうのの準備(うらがわ)はあまり見られたくないだろうからさ」

 

「……おい、誰がそういう時期だ?肉体年齢は13歳でも中身はとっくに成人済みだぞ俺は!」

 

 

 マホロアが黒竹の左目の包帯を見てそんな感想を漏らした。こういうことを言われることを予想はしていたがまさか最初にマホロアに言われるなんて。さっきまで難しそうな顔してただろ。なんだったんだあの顔は。あんな顔してたから触れてはこないだろうななんて思ってたらバリバリに触れてきた。

 

 

「――お前は本当に上げて落とすのが得意だな…」

 

「フフッ、ボクは【虚言の魔術師】だからネ」

 

 

 その二つ名関係あるのか。そう思ったが敢えてなにも言わないことにした。

 黒竹はクロスを持ち上げて立ち上がり、抱っこする。最初はとても重かったが、『念』を習得して基礎能力も向上し、二振りの剣を扱えるようにするために筋力も鍛えたことで大型犬並みの大きさのクロスも軽々持つことができた。

 

 

「サテ…そろそろ範囲に入ったカナ」

 

「範囲?」

 

「ウン。()()を使うタメのネ。“ブック”

 

 

 マホロアがそう唱えると、マホロアの右手から一筋の光が現れ、その光が一瞬にして本と化した。――本?

 

 

「え…本?」

 

「あれ、マホロアさん。それって…」

 

「ウン。コノ前ゴンさんに勧められた【グリードアイランド】のバインダー。やってみて面白かったカラ、再現シテみたんダ」

 

「大変だったんじゃない?」

 

「チョット“ツテ”があってネー。流石にボクだけジャ再現不可能ダカラ、【なんでもありな人】に【なんでもありな技術】を使ってもらったンダ」

 

「待って待って待って。さっきからなんの話してんの?」

 

 

 マホロアとゴンさんの間で、どんどん話が進んでいって完全に置いていかれている黒竹が間に割って入る。さっきから全然知らない単語が出てきてそれが当たり前のように進行しており、このままでは置いていかれるため、黒竹は一からの説明を求めた。

 

 

「エー、一から説明するト時間かかるシ…。要点ダケ説明するト、この(バインダー)は【グリードアイランド】ッテ言うゲームのアイテム――カードを収納スルのに使うんダ」

 

「――うん」

 

「デ、そのゲームのアイテムをボクの“ツテ”で再現シテもらったンダ!」

 

「――なるほど、分からん」

 

 

 要点だけ説明されても、全然分からない。とりあえず分かることはゲームのアイテムを現実で再現したということだけ。十分すごい偉業ではあるが、そのゲームの内容が分からない以上黒竹の反応は微妙だ。

 

 

「ソレでネ、今回使ウのはこのカード」

 

 

 マホロアがバインダーを開いて一枚のカードを取り出した。そのカードには同行(アカンパニー)と書かれていた。

 

 

同行(アカンパニー)。ゲームでは移動手段の一つとシテ使われているカードダヨ」

 

 

 マホロアにカードを見せられると、黒竹はそのカードの説明分をマジマジと見た。

 

 

同行(アカンパニー)

 

 呪文を使用したプレイヤーを含め、その半径20m以内にいるプレイヤー全てを指定した街(行ったことのある街に限る)か指定したプレイヤー(ゲーム内で出会ったことのあるプレイヤーに限る)のいる場所に飛ばす。

 

 

 カードにはそのように書かれており、文字通り複数で移動する際に使用するカードのようだ。

 

 

「そのカードを現実で再現したってことは、つまり……」

 

「ウン。現実(ココ)でも使えるってワケ。ト、言うわけデ同行(アカンパニー)オン。“ワドルディ”」

 

「えっ?」

 

 

 そのマホロアの一言とともに、マホロア、黒竹、クロス、ゴンさん一同の体が発光し光の矢となってローアから姿を消した――。

 

 

 

 

 

 

 

 

* * * * * * * *

 

 

 

 

 

 

 

「――うん?」

 

「――コン?」

 

 

 黒竹が次に目を開けると、狭い一室だった。星柄のカーテンやカーペット、テーブルクロスなどが存在しており、部屋の色は黒や青、黄色などの宇宙を連想させる色で統一されており、その部屋が真上にあるライトで照らされている。人口観葉植物家や壁掛けテレビもあり家で言うところのリビングに相当するスペースだ。

 その隣にはキッチンに該当する場所があり、冷蔵庫、電子レンジ、IHコンロ、水道などもある徹底した場所であることが伺える。

 

 

「黒竹クン」

 

「ウワッ!……って、あ、マホロア…」

 

 

 後ろから呼ばれ慌てて振り替えると、そこには人間へ擬態した状態のマホロアが黒竹の肩を叩いていた。ちなみにマホロアの後ろには背中を見せているゴンさんがいた。

 

 

「ここは…?」

 

「ボクが所有シテいるキャンピングカーの中ダヨ。綺麗ダロウ?」

 

「キャンピングカー…」

 

 

 キャンピングカーと言われ、黒竹は確かにそんな感じがすると考えた。確かに車特有の微かな振動とエンジン音が微妙に耳に伝わってくる。それだけで、ここが車の中であるということが分かる。

 

 

「キャンピングカーって……アレ、お前さっき移動の前に“ワドルディ”って言ってたよな?え、この車の名前“ワドルディ”なの?」

 

 

 アカンパニーの発動条件は“名前”か“場所”の名前を唱えること。普通に考えればワドルディのいるところに飛ばされると考えるのが普通だが――着いた場所はキャンピングカーの中。

 もしかして本当にこのキャンピングカーが“ワドルディ”と言う名前で――

 

 

「アァそれはネ。コノ車運転シテルのがワドルディだからダヨ」

 

「わにゃ!」

 

 

 マホロアが移動すると、リビングルームの奥側――そのすぐ傍には梯子がありおそらく梯子を上った先がベットなのだろう――を隠しているカーテンを開けると、そこからバスの運転手が被りそうな帽子をかぶっているワドルディがハンドルを持って運転していた。

 

 

「カレには一足サキにこの世界に来てモラッテ車を走らせてもらってたんダ」

 

「へぇ…(どうやって運転してんだろ…?)」

 

 

 人間が使用する前提の車を、どうやってワドルディは操作しているのか、普通に気になった。ワドルディが持てるのはせいぜいハンドルぐらいだろう。どうやってあの短足でアクセルとブレーキを操作しているのか非常に気になったがあまり考えないことにした。

 

 

「(常識で考えてたら、対応しきれないしな…)……ワァ……」

 

 

 カーテンを開けられたことで今まで見えなかった外の景色がフロントガラス越しに露わになる。

 ―――そこはまさしく、都会と呼ぶべき風景だった。いくつもある車線に一つ一つが長い横断歩道、周りの車の量、そして天に向かって伸びる高層ビルの数々(ゴンさんの髪の長さよりは遥かに劣るが)が黒竹の瞳に映った。

 

 

「コォン…!!」

 

 

 いつの間にか黒竹の隣にいてその光景を見ていたクロスも、感嘆を鳴き声を上げていた。

 

 

「完全な都会だな…。どこなんだ、ココ?」

 

「シブヤだよ」

 

「渋谷…東京か。そりゃここまでなわけだ」

 

 

 この時、両者の間に決定的な食い違いが存在していたが、それを指摘するものはいない。

 黒竹とクロスは身を引いてカーテンを閉める。後ろを振り向くと既にマホロアはソファーで寛いでおり、ゴンさんは未だに後ろ姿のまま――あれ?

 

 

(……あれ、あの、ゴンさんの足元にいる奴、って…)

 

「ピトーォ…」

 

「な、なんでボクも…」

 

 

 今ここで初めて気づいた。ゴンさんの足元にはなぜかあの女性が、ゴンさんに何度も()られて生還しているあの猫耳猫尻尾の銀髪女性がいたのだ。あれ、同行(アカンパニー)って半径20メートル以内にいるヤツが対象じゃなかったっけ?あの女性がノびていたトレーニングルーム(トランポリンルーム)は明らかに20メートル以上距離があったはずだが――。

 

 

「あ、ゴンさん。サスガに今ここでボられるとキャンピングカー壊れるカラやめてネ」

 

「―――分かってる」

 

(あ、少し不服そう…)

 

 

 例え後ろ姿だったとしても、この時のゴンさんの顔は用意に想像できた。

 ゴンさんが後ろを振り向いて冷蔵庫にケーキを入れると、マホロアが座っているソファーに座りこんだ。ソファーに座ったゴンさんが地べたに尻もち着いている女性に顔を向けた。

 

 

「座れよ、ピトー」

 

「う、うん…」

 

「黒竹さんも座ったら?」

 

「あ、はい…」

 

 

 なんともいたたまれない気持ちで、ゴンさんとマホロアと対面になるように向かいのソファーに黒竹と女性は座る。なおクロスは黒竹の隣で寛いでいる。

 マホロアはグラスに入ったジュースをストローで飲み、ゴンさんは女性を睨み、女性はその眼光に居心地が悪そう(ていうか実際悪い)に拳を握り締め、冷や汗をかいていた。黒竹は、そんな女性を観察していた。

 

 

「――――」

 

 

 この女性、改めてみると両手の指がそれぞれ四本しかない上に獣の特性がある。それだけでもこの女性が人間ではないことが伺える。さらには足の関節が人間のそれじゃない。

 黒竹は、改めて女性に話しかけることにした。

 

 

「なぁ」

 

「―――」

 

「なぁあんた」

 

「――え、ボク?」

 

 

 緊張と恐怖で張りつめていたのか、最初の呼びかけには全然反応しなかったが、次の呼びかけでようやく反応した。

 

 

「そういえばあんたの名前聞いてなかったなって思ってさ。名前は?」

 

「ボ、ボクは【ネフェルピトー】……」

 

「あぁ、だからピトーか…」

 

 

 どうやら彼女の名前はネフェルピトーと言うらしい。だから略してピトーと呼ばれているようだ。

 

 

「ところでさ、なんでお前がここにいんの?お前って確かトレーニングルームでゴンさんにボられてのびてたはずだよね?」

 

「いや、ボクも気づいたらここにいて目の前にゴンさんが…」

 

「そこんところ、どうなんだよマホロア」

 

「ウン?いやソリャ、ゴンさんが同行(アカンパニー)を使ったサイにドコに居ようガ一緒に移動スルようにプログラミングされてるシ」

 

「ハァアアアアア!?なんだそれは!?聞いてないぞボクは!!」

 

 

 勢いよく立ち上がりマホロアに問い詰めようとするピトーだったが、同時にゴンさんの圧倒的オーラがピトーを襲い、ピトーはその場で止まった。

 

 

「ゴンさんが同行(アカンパニー)を使えばピトーがどこにいようがすぐ会えるってことか…(コイツにとっちゃ正しく地獄だな…。どこに行こうがゴンさんからは逃れられないってか…)」

 

「誰だそんな迷惑な設定をしたヤツは!?」

 

「ソレは守秘義務がアルのでイエませーン」

 

「くっ、この…!」

 

 

 ピトーが拳を握り締めるが、すぐ傍にゴンさんがいるためなにもできない。そのままピトーは緊迫した面持ちで座り直した。

 そのまま無言の時間が続く。マホロアは相変わらずジュースにプラスしてお菓子を食べ、黒竹はクロスと戯れる。ゴンさんは相も変わらずピトーだけを見つめ続けていた。

 

 

「わにゃ!」

 

 

 そんな時間が流れていると、運転手であるワドルディから声が上がった。それを正しく聞き取ったマホロアが、全員にその意味を伝える。

 

 

「もうソロソロで着くみたいダカラ、降りる準備シテだってサ」

 

「そうか…。じゃあクロス、ここに入っていてくれ」

 

「コォン…」

 

「大丈夫だって。お前(カード)は手放さないからさ」

 

「コォン!」

 

 

 黒竹はクロスが目立たないように懐から取り出したブランクカードに入るよう言ったが、クロスは落ち込む様子を見せた。だが、黒竹の一言ですぐに元気が復活した。

 そのままクロスはカードに向かって飛び込むと、クロスの体積が変化し光の球体に変化するとカードの中へと吸収された。

 

 

「へぇ~……半信半疑だったけど、マジでカードの中に…」

 

『コォン!』

 

 

 少し感動しながらクロスが入ったカードの正面を見ると、とても気になる場所を見つけた。

 

 

「アレ、お前、コレ…」

 

「ジャア次はピトーの番ネ。コレつけて」

 

 

 黒竹の言葉を遮り、マホロアがピトーになにかを投げた。それは、ピトーの太い指にも入るほどの星型の青い宝石が着いている大きな指輪だった。

 

 

「ナニコレ?」

 

「その指輪はボクの『念』で“具現化”したモノだヨ。ソレを着ければ人間に化けれるカラ」

 

(具現化系の能力…。そういえばマホロアは“変化系”だったな。“具現化系”とも相性がいいし、指輪くらいならリソースもそんなに必要としない。そして具現化したものを体から離すことは“放出系”の能力も必要だ。“放出系”は“変化系”と相性最悪の“操作系”程とは言わないが相性は良くないはず…。マホロアは『念能力』を完全に人間化のために使ってる感じか)

 

 

 黒竹は今のやり取りだけでも、マホロアの『念』に対してここまで考察をしていた。

 マホロアの系統は変化系。六性図で見ると相性がいいのは“強化系”と“具現化系”。良いとも悪いともいえないのが“放出系”と“特質系”(ただし特質系は覚えようとして覚えられるものではないため0%)、相性最悪は“操作系”だ。マホロアは指輪だけでも“放出系”と“具現化系”の能力を使用している。

 自身の人間化と、他の者を人間化させるアイテム。マホロアの『念』はこれに振られているとみて間違いないだろう。

 

 

「エ、他人の『念』はちょっと…」

 

「いいからつけろ」

 

「わ、分かったよ…」

 

 

 ゴンさんの圧に屈したピトーはそのまま自身の右手の人差し指に相当するであろう場所につけた。ピトーの指は四本ずつしかないからどこが人間で言う指に該当するのか曖昧だ。

 ピトーが指輪を着けると、あからさまな変化が出てきた。ピトーの指は四本から五本に変わり、人間の女性らしいスラッとしたものに変化。足の関節も人間らしいものに変化していた。そしてなにより、猫耳と尻尾がなくなっていた。

 

 

「おぉ…マジで人間みたくなった…」

 

「うーん、なんかちょっと変な感じだなぁ…。指が五本あるってこんな感じか…」

 

「サテ、あとはゴンさん、なんだケド…」

 

 

 全員の視線が、ゴンさんへと集中する。この4人の中で、確実に一番目立つ存在。2mの巨体に筋骨隆々で子供用の服を着用し裸足と言う、とんでも要素が満載の存在にプラスして、この髪の長さだ。この前、普通に気になって食卓で聞いたことがある。

 

 

『ゴンさん、そういえばゴンさんのその髪ってどこまで伸びてるんですか?』

 

『うーん…測ってみたことないし、分からないなぁ』

 

『それなら、この前マホロアさんから聞いたわよ。なんでも世界樹よりも長かったって』

 

『――世界樹?』

 

『とある場所にある観光名所のすっごく長い木なんだけど、高さが1784mもあるらしいのよ』

 

『せ、1784m…』

 

 

 この話を聞いたとき耳を疑ったが、事実ゴンさんの髪の長さは首を痛めても天辺(テッペン)が全然見えない。この話が真実ならばゴンさんの髪の長さは単純計算で1800m以上。どう考えても人智を超えた長さだ。

 ていうか今更ながらどうやってそんなに長い髪をこの車に収納できているのだろうか。魔術か?魔術なのか?よし、そう思うことにしよう。

 

 

「マホロア、お前ゴンさんも目立たないようにできるか?」

 

「ソレができるならトックにやってル。デモゴンさんのオーラがハンパなさすぎテボクの力がゼンブ弾かれるんダヨネ」

 

「――――」

 

 

 ゴンさんは本当に、その……なんなのだろうか。いや、考えるだけ無駄である。今までそうしてきたじゃないか。全員は思考を停止し、ただただ車が停車するのを待った。

 そして、ついにその時は来た。車が完全に停車し、ワドルディがカーテンを開けてきた。

 

 

「わにゃ!」

 

「着いたってサ」

 

 

 その一言でマホロアが一番先に立ち上がって扉を開けた。

 

 

「一番ノリー!」

 

「元気だねェ…」

 

「―――」

 

『コォーン』

 

 

 続いてピトー、黒竹の順で車を降りていく。

 黒竹は車を降りると、その光景を見た。周りには多くの車が駐車しており、立体駐車場に車を止めていることが分かる。タワー型の駐車場の屋上に車を止めたためか、屋上から空が一望できる。

 

 

「――――」

 

 

 そして、最後。ゆっくりと、車体から姿を表す、二mの巨体。車から出た途端に解放された一直線に貫く髪の毛。

 その手には、ケーキボックスが握られていた。

 

 

「ツカサ…今行くよ」

 

 

 ゴンさん、襲来 

 

 

 

 

 




 
 テンポが速いと思う方もいるでしょう。理由はゴンさんがいるからです。もう一度言います。ゴンさんがいるからです。
 原則として、この小説のピトーは(メス)です。
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