クロック作の謎のロボットを使って、教授とクロックがオクトーゲンの爆破を手伝う話。

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クロック「できた……きょうじゅ、めめ子型ラジコンだよ」

「ある程度はめめ子が勝手に判断して動くから、細かな動作もなんのその!」

 

 一言一句同じ声が、二重に響く。調子づいたクロックの声と連動しているのか、めめ子から聞こえる声も妙に弾んでおり、騒がしい。めめ子の髪は何故か逆立っており、部屋の中なのに揺らめいている。操縦者の声の調子で髪が喜怒哀楽を表現する。そんな画期的な機能らしい。

 

「きょうじゅ、ヒロインってのはね、文字通り全身で感情を訴えるものなんだよ」

 

 クロックはよく変な機能を自分の作品に加える。その上妙に熱を持ってそれの良さを毎回訴えるものだから、最近は突っ込む気力もなくなっている。

 

「クロック、ちょっと落ち着いて。めめ子が今何をしているか、ちゃんと分かっているの?」

 

 つい先ほどから、シュッシュッと少し水っぽいをめめ子は出している。りんごの皮を剥いているのだ。もちろん操っているのはクロックだ。めめ子の実演を兼ねてしていることのようだが、調子に乗った今のクロックだとヘマをしてしまいそうで不安だった。クロックが言うには、目の前のめめ子は人形のような魂がないただのラジコンらしいのだが、どうみても人形にしか見えないような精巧さを持っている。だから、めめ子が包丁で傷つくことは避けておきたかった。

 

「大丈夫だよ、これは料理じゃなくて操縦だから。あたしの得意分野だし大丈夫だって」

 

 そうやって私とクロックが言い合っていると、いつしかめめ子は皮を剥き終え、ついでに奇麗にカットされていた。めめ子はフォークをりんごに突き刺すと、私に突きつけた。

 

「あのね、クロック、私は別に起き上がれないわけじゃないのよ」

 

 あーんだなんて赤ちゃんじみたことをするのはあまりに恥ずかしい。身を起こすだけなら問題なくできるし、腕だって動かせるのだから、めめ子の動きを黙って見てはいられなかった。

 

「でも、寝たきりなのはあってる」

 

 フォークはりんごを矢印のようにして、私の右足を指した。

 

「スキルEXP採集中に、ツルハシで怪我したんだっけ。なんかオクトーゲンの爆発にびっくりして手元が狂っただとか」

 

 BBSで話題になってたよとクロックは話す。そのスレッドは私も知っている。いつもは嘘と誇張ばかりのBBSだが、こんな時に限って確信を突いていた。

 その日、私はスキルEXPのマイニングの護衛を募っていたところ、珍しくオクトーゲンが志願してきた。スキルEXPが手に入る場所というのは、セキュリティが強固であり、簡単には建造物を壊せない。そのため、爆破解体を愉しみとするオクトーゲンが参加しようというのは不思議だった。だが、採集場所に集まったとき、その目的が分かった。オクトーゲンはいつも以上に大きい荷物を抱えてやってきた。中身はもちろん爆薬だ。しかも、オクトーゲンが服を脱ぎ捨てると、体中びっしりとダイナマイトが縛られていたことに誰しもが気づいた。オクトーゲンは、まったく爆破解体を諦めていなかったのだ。

 

「グランドフィナーレ!!」

 

 オクトーゲンは爆薬を全て周りに投げつけると、興奮を抑えきれないような力強い声で起爆を宣言した。四方八方から音で刺すような爆音と聞こえ、目の前は真っ赤な景色で埋め尽くされる。それと同時に、あちこちから何かが地面に激突していくような振動が私たちを揺らした。

 

「ハハハ、とてつもなく頑丈だと聞いたが、こんなものか」

 

 オクトーゲンはこの光景を見ても、不快さを一切示さない。むしろ、高笑いすらしている。ただ、もちろんそれは彼だけで、他の人形は驚き戸惑っている。それは私も例外ではなく、私はツルハシを振りかざしながらバランスを崩した。そして、遠心力がこもったツルハシは、そのまま私の足を突き刺さったのだった。

 

「まあ、きょうじゅというよりかは、誰かがアップロードした爆破の動画でみんな盛り上がってたんだけどね」

 

 めめ子が一歩私に近づく。

 

「じゃあ、あなたはその数少ない私を心配した側の人というわけね」

 

 りんごを口にねじ込まれた。

 

「あ~うるさい……とにかく、あたしはめめ子を認めてほしくて来たんだ」

 

 クロックは私にあるデータを送信する。それには、めめ子に与えてほしい権限がずらっと並べてある。

 

「クロック、知っているとは思うけど、機械と人形は分かる人には簡単に見分けがつくの。こんなものを通したら、私はアントニーナに叱られてしまうわ」

 

 クロックの要望は、めめ子に追放者と同じ権限を与え、天候シミュレーターの管理役にするというものだった。

 

「大丈夫だって、アンナは最近天候シミュレーターに近づいてないし、気づかないよ。最近ほんとに寒くてさ、外に出たくないの」

 

 元々クロックには繊細な天候シミュレーターの点検をしてもらっている。だが、ただ動かすだけなら一般の人形でも、それこそ私でも頑張ればできることだ。そのため、クロック以外がそこで働いていても、それほど変なことではない。

 

「それに……きょうじゅ、ずっと病室にこもりっきりで退屈だよね。ここじゃ『武装騎兵』も見れないし。だからさ――」

 

 めめ子、きょうじゅが動かしてみても良いよ。

 

 

 

 思えば、前にオアシスを見て回ったのはいつになるだろうか。色々と建設の計画を立てた覚えがあるが、司令室の窓越しでしか見ていなかった気がする。今はお昼時だからか、飲食店は活気あふれている。もちろんめめ子が何かを食べたって私に味は伝わらないので遠目で見るしかないが、それでも新鮮だった。

 

(あたしとしては、店で違和感なく注文できるか知りたかったけど、まさか全部素通りって……きょうじゅは目的地とか決めてるの)

 

 めめ子のスピーカーをミュートにして、クロックは私に話しかけた。クロックはドラマを見るかのように、りんごを口にしながらめめ子を見ている。もちろん、場所は決めている。

 

(行きたい場所というよりは、会いたい人になるね)

 

 めめ子は扉の前にいた。傍の看板は、この先が『潜在能力特訓:シューター』であることを示している。クロックはフォークの動きを止めた。

 

(りょーかい、そういうことね。きょうじゅを怪我させた張本人に仕返ししたいわけだ)

(そんな大人げないことはしないわよ。ただ、もっと知っておく必要があると思っただけ)

 

 潜在能力特訓はオアシスの後方部門が創り出したシミュレーションである。扉の先には森や海辺、街などを模した空間が広がっている。日替わりで環境は変わり、そこに出現した敵と戦う。そうやって人形の作戦能力を向上させることが目的だ。シューター以外にも後4つ同じ場所があるが、一番活気があるのはシューターになるだろう。なぜなら、日替わりで建造物が復活することに目をつけた発破技士が、毎日ログインしているからだ。

 

(教授じゃないからこそ、分かることだってあるんじゃない?)

 

 最近は私が戦闘を指揮することも少なくなっている。実際、オクトーゲンの戦い方を見たのはあのときが初めてだった。だが、追放者のトップが仲間のことを知らなくてどうするのか。めめ子は仲間を知る絶好の機会であり、機械だ。私は覚悟を改めて抱き、扉の先に足を踏み出した。

 

 

 

 ロッサムセクターみたいな先進的な都市。ただっ広い交差点の中心で、めめ子はいつのまにか佇んでいた。

 

(こんな位置だとすぐに撃ちぬかれて終わりね。早く離れないと)

 

 めめ子はぎこちなく顔を動かすと、ビルの出入口だったり、路地裏だったりを目視していく。

 

(始めから思ってたけど、きょうじゅの操縦ってかなり下手くそ……)

 

 頭、手、足と気にする箇所が多すぎる。正直、目線を動かしながら歩くことなどできない。だから、ちょくちょくめめ子を止めないといけなかったのだが、クロックにはじれったく感じたようだった。

 

「おい、お前何やってんだ?」

 

 ただ、その動きにしびれを切らしたのはクロックだけではなかったらしい。別の交差点にたどり着いた頃、左側にあるビルから一つの人影が飛び出してきた。

 

「見たことない顔だが、新入りか」

 

 オクトーゲンは両肩を出した、いつもの服装を着ていた。めめ子がゆっくりと顔をオクトーゲンに向ける間に、彼はめめ子の腕を左手で掴む。

 

「観光中悪いが、こっちも楽しみをずいぶんお預けされてんだ。ついてこい」

 

 オクトーゲンはめめ子を掴んだまま走りだした。そのまま交差点を左折する。

 

「こっちこい、ガラクタども!」

 

 オクトーゲンは右手を大きく振りかざすと、後ろに馴染みある物を投げ飛ばした。スタングレネードだ。すぐさまめめ子の聴覚をミュートにさせる。そのままオクトーゲンと一緒に走っていると、足を止めた。ミュートを解除する。

 

「10、20、30――さて、今日も大量だな」

 

 何やら背後が騒がしい。振り返ると、優に30体を超える敵が、あのスタングレネードのせいで集まっていた。

 

(クロック、操作変わってくれない? 私じゃあの数から逃げれないわよ)

 

 純粋に戦えば、私もオクトーゲンもあの大群に踏みつぶされてしまうだろう。私はクロックにコントローラーを手渡す。脂汗をかく私に反して、クロックは何やら自慢げな顔をしていた。

 

(実はね……めめ子の二本の角、ただの飾りじゃないんだ。中に上位データが山ほど詰まっていてね――)

「KA-BOOM!!」

 

 クロックの声は、愉しげなかけ声にかき消される。瞬間、そんな声も聞こえなくなるような、強烈な音が病室中に響く。あちこちのビルの窓から、真っ赤な火炎が吹き出ていく。

 

(ビルが倒れて、敵が下敷きになっていく……!)

 

 こちらに向かっていた大群は、全てビルだった瓦礫に埋もれていく。コンクリートの粉塵だとか、そういったものが吹き飛んで視界が明確になったころには、街はすっかり静かになっていた。

 

「堅牢な建物があっけなく崩れる様を見るのは最高だ!」

 

 そういって、オクトーゲンは笑い出す。それから、めめ子に目をやった。

 

「お前、さっきから固まったままだな。さては、爆破の素晴らしさを体感して声もでないのか」

 

 めめ子は機敏な動きでオクトーゲンの両肩をがばっと掴む。おわっ、という彼は驚く声をあげたが、きっとめめ子には、クロックには気が付いていなかったことだろう。

 

「うん本当凄かったねオクトーゲンBBSの動画通りいやそれ以上の光景だよ爆炎はもちろん煙がとにかく良いライダーカブトを思い出しちゃったよあっライダーカブトを知らないかあたしも最近までロボットものばっかりで見たことなかったしねでも本当良い作品なんだよねなんてったって悪役が最高なんだ特に777は名作だねあの素晴らしいアクションの数々はびっくりしたよそして最終話の基地の大爆発!やっぱりアニメの爆発とはまったくの別物だねなんというか熱量が違うのかなそりゃ映像越しじゃ熱さなんて分からないけどあのときはしっかりと伝わったんだよそれで再現しようと思ったんだけど流石に爆弾は専門外で扱えなくてねだから実はあたしもちょっと起爆をやってみたいななんて」

 

 無駄に高性能なマイクは、クロックの一言一句を鮮明にオクトーゲンに送る。ただ、マイクは声質を変えてくれるが、イントネーションも調整してくれるわけではない。発言主がこうでは相手に何も伝わらないだろう。

 

「ああ、わかったわかった。頼むからこの辺で止めてくれ」

 

 いや、熱意は受け取っていたみたいだ。オクトーゲンは少し動揺した声色でめめ子を止める。

 

「それで何だったか――確か、お前、爆破をやってみたいんだったか」

 

 うんざりした声色とは違って、オクトーゲンの顔色はなんだか明るい。

 

「良いだろう。ただ、俺様の指示にあれこれ言わないならな」

 

 オクトーゲンは道路の外れにある、二階建ての古びたアパートを指さした。次の標的だろう。

 

「分かった……やる……」

 

 クロックは弱弱しい声で返事をする。見てみると、頬が少し赤らんでいた。ところで、あのクロックが人と一方的だが話をするとは驚きだ。これは、もしかするとクロックの交流を広げるチャンスかもしれない。恥ずかしさからか、すっかり意気消沈していたクロックに反して、私は気合を入れ直すことにしたのだった。

 

 

 

 それからは、意外とあっさりと事は運んだ。オクトーゲンはアパートの中に入り、一通り見て回るとめめ子に爆薬を持たせた。めめ子を経由して私たちがアパートのマップデータを受け取ると、そこら中に赤いバツ印が記されてあった。本当に、いたるところにだ。

 

「ねえ、オクトーゲン、ちょっと量が多すぎるんじゃない。個室一つだけのトイレに、二か所も置く必要はなさそうだけど」

 

 いちいち指図するな、とオクトーゲンが言っていたことに気づいたのは話し終えてからだ。私は思わず身構える。

 

「ここじゃ周りの被害を気にする必要もない。だったら、派手で愉しい方が良いに決まっている」

 

 物騒な内容に対して、オクトーゲンの口調は穏やかなものだった。

 オアシスの姿とは違い、オクトーゲンは終始優しかった。爆薬の取り扱いの指示も的確なもので、元々器用なクロックは特にミスをせずに計画は進んでいく。神経を使う作業なはずなのだが、始めから全ての設置を終えたときも、私とクロックは疲れを感じていなかった。それはきっと、オクトーゲンが心を開きだしている確信があったから。

 

「あの……オクトーゲンはきょうじゅのこと、どう思ってるの……?」

 

 アパートの外に集まったとき、クロックはおそるおそるオクトーゲンに話しかけた。オクトーゲンの動きが止まる。それから、少し気恥ずかしそうに話し出した。

 

「――悪くないと思ってる。俺様の行動を取り締まることはあっても、発破自体を禁止されることはなかったからな。それに、俺様がいかにシニカルであり続けても、誰も態度を変えないしな」

 

 このことは誰にも教えるなよ。オクトーゲンはめめ子にそう威嚇して話を締めた。もちろん、私は他人に隠し事を暴露するような大人げないことはしない。それに、オクトーゲンの両手はダイナマイトを握っている。私たちは、めめ子を大げさに首肯させるしかなかった。

 

「ほら、起爆やってみたいんだろ」

 

 話を逸らすかのように、オクトーゲンは物を投げつけてきた。起爆スイッチだ。めめ子は大慌てでそれを受け取る。

 

(クロック、あなたが押しなさい。やってみたかったんでしょう)

 

 クロックと目を合わせる。それから、めめ子はスイッチを押すため、腕を大きく振りかざし――。

 

「っ!? おい、ここから離れるぞ!」

 

 腕を強く握られ、アパートとは反対側に引っ張られる。突然のことで一瞬混乱したが、すぐに原因がわかった。アパートに隕石が降りかかってきたのだ。アパートに着弾すると、激しく炸裂した。当然仕掛けた爆薬も引火して地面を揺らすほどの大きな爆発を引き起こす。オクトーゲンが言ったように、残骸も残らないような派手な爆発だ。

 

(きょうじゅ、一体何が起こってるの!?)

 

 私はめめ子の視線を動かす。おそらく交差点の方に――いた。

 

(どうやらビルに押しつぶされても、まだ生き残っていた敵がいたみたいね。しかもシューターが)

 

 それは砲台のような見た目をしている。かなり遠隔を狙える個体のようで、交差点のど真ん中に陣取っている。

 

(シューターだから、あのスタングレネードのときも私たちにそこまで近づく必要がなかったのね。そのおかげで致命傷を免れ、きっと今復活したのよ)

 

 敵と私たちの距離はあまりに離れている。これではオクトーゲンが爆薬を投擲しても届かない。近づこうにも、オクトーゲンが左右のビルを破壊したせいで、隠れる場所がない。狙い撃ちされて終わりだ。

 

(クロック、残念だけどここは逃げるしかないわ)

 

 出口は遠いが、道路が入り乱れているおかげで逃げ道は大量にある。逃亡自体は簡単だろう。

 

(いいや、きょうじゅ、逃げる必要はないね)

 

 めめ子が隠れていた場所から勢いよく飛び出した。

 

「何やってんだ、早く戻れ!」

(きょうじゅ、前に言ったと思うけど……この角は飾りじゃなくてね、大量のオペランドが詰まっているんだ)

 

 クロックはコントローラーをはちゃめちゃに動かす。多分隠しコマンドみたいなものだろう。

 

「お前、なんか角が光ってるぞ……」

 

 オクトーゲンは困惑を隠せない声をあげる。視点がめめ子なため、私には分からないが、何らかの異変が起こっているようだ。

 

(爆破以外にも、アクションも面白かったんだ。だから、つい再現したくなって……人型だろうが、ロボットだったらあたしの得意分野。それで、こっちは上手くいった)

 

 クロックはミュートを解除すると、大きく息を吸った。

 

「見せてもらおうか、このザコの性能とやらを!」

 

 めめ子は疾風迅雷の勢いで走りだす。その速さは人の限界を優に超えており、ロボットだということを改めて認識させる。勢いはビルの瓦礫にたどり着いても殺されることなく、むしろ軽やかに跳躍しながら加速していく。敵の砲撃もこの速さの前では何の意味もなさない。めめ子はあっという間に敵の目の前にたどり着く。

 

「めめ子キーック!」

 

 めめ子は空高く飛び上がると、渾身の力で、右足で敵を蹴り倒したのだった。

 事態は解決したが、クロックの顔は晴れなかった。それも当たり前だ。だって、あれほど熱く語っていた起爆を結局できなかったのだから。そのまましばらくすると、がさがさと瓦礫の上を歩きながらオクトーゲンが現れる。きっとクロックはこのまま諦めるつもりだろう。だが、今この場には私がいる。私はマイクに語りかけた。

 

「どう? 私、なかなか強いでしょう」

 

 オクトーゲンに顔を向けると、自慢げに腰に手を当てる。

 

「オクトーゲン、あなたは明日もここに来る?」

「そのつもりだ」

「じゃあさ、待ち合わせしてみないかしら。結局、私は起爆できなかったからね」

 

 確かに、今日は起爆できなかった。でも、明日できれば良いのだと私は思う。

 

「ああ――」

 

 

 

「――教授! 大丈夫!? 吾、もう入っちゃうよ!」

 

 結局、オクトーゲンがどう返事したのかは分からずじまいだった。病室の扉をどんっと開け、ドゥシェーヴヌイが飛び込んできたからだ。

 

「ドゥシェーヴヌイ、どうしたの。そんなに慌てて」

「扉をノックしても教授が全然返事しなくて、倒れてしまったのかと吾は心配で心配で……」

 

 そういえば、あの怒涛の展開に夢中で、こっちの様子はあまり気にしていなかった。私の声を聞くと安心したのか、そわそわしていたドゥシェーヴヌイは落ち着きを取り戻したようだ。それで、私の隣にクロックがいることにも気づいたらしかった。

 

「そうだ、クロック! 吾が貸したライダーカブト、まだ全部見てないの? もう結構経つけど……」

 

 吾はまだ最終話を見れていないのに、と少し恨み節に話す。クロックはそれを聞いて、はっと思い出したようだ。

 

「ご、ごめん……ロボット作りに熱中してて忘れてた。全部見たから、きょうじゅの見舞いが終わったら返すよ」

 

 どうやら、めめ子はそれから着想を得たみたいだ。といっても、時間を忘れるほど熱中できるのは良いことだが、それで約束を忘れてしまっては元も子もないだろう。私は呆れてため息をついた。

 

「絶対だからね!」

 

 ドゥシェーヴヌイは私をあちこち見て回り、容態が悪化していないことを確認すると、満足げに去っていった。

 

「きょうじゅ、そういうことだからめめ子を帰さないと――」

 

 クロックはめめ子の映像を見ると、途端に固まった。疑問に思って私も映像を見ると、すぐさまその理由に気づいた。

 

「マイク、ミュートにしとくの忘れてた……」

 

 クロックは恐ろし気に呟く。突然のドゥシェーヴヌイの訪問に気を取られて、すっかり頭から抜けていた。つまり、さっきの会話は全てオクトーゲンに筒抜けだ。私は冷や汗を垂らす。

 

「オクトーゲンがどこにも見当たらない……! きょうじゅ、もしかしてこれ、かなりまずいんじゃ――」

 

 その日の三人目のお見舞いはとてつもなく派手なものだった。具体的には、爆風で病室の扉が吹き飛ぶほどには。




オクトーゲンの親密度がLv.15になった記念。こんな話を書いているのに、未だにナシタをお迎えできていません。

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