わらしべ長者と猫と姫 ~宇宙と地球の交易スキルで成り上がり!? 社長! 英雄? ……宇宙海賊!?~   作:岸若まみず

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24年1月16日より、Ver.1を削除してVer.2への更新を行っております。
2月9日に発売される書籍版第01巻の続きはVer.2準拠で更新していきます。
書籍には書き下ろしが沢山載っておりますので、どうかよろしくお願い致します。


第37話 カラオケと姫と音声認識

『本日未明に爆発事故のあった埼玉第四ダンジョンから突如巨大な双頭の蛇が現れ、周りの建物をなぎ倒し、口から火や氷を放ち始めました! 現場では自衛隊がダンジョンの周りを取り囲み……ああっ! 今自衛隊の車両が爆発! 爆発しました!』

 

 

街を秋風が吹き抜ける、行楽日和の休日の午後。

 

夏の残りのそうめんを食べながらつけたテレビの中では、大変な事が起こっていた。

 

 

『蛇の吐き出す炎の熱波がここまで届いております! とてつもない熱量です!』

 

 

画面の中では玉四の入り口を吹き飛ばして現れた蛇の化け物が、両方の口から炎や氷の塊を四方八方に向けて吹きまくっていた。

 

その周囲で炎に巻かれた自衛隊員が凍った地面をゴロゴロ転がり、服に燃え移った火を必死に消そうとしている様子が映っていた。

 

 

『シホちゃん! やばいやばい! 避難避難避難!』

 

『それでは我々も一旦避難させて頂きます! 皆様も決して外には出ず……あーっ! 発砲です! 今自衛隊が発砲を始めました! ご覧ください! 特機の巨大な銃が火を吹いています!』

 

 

歩兵部隊の持つ小銃や戦闘ロボである特機の持つ銃、そして戦車の主砲の発砲音が数秒続いたかと思うと、その直後に一瞬画面が真っ白になるぐらいの大閃光が蛇の口から放たれた。

 

大閃光は一瞬でダンジョンの周りを火の海へと沈め、何かが爆発する音が連続して聞こえてくる。

 

 

『戦闘が始まりました! 戦闘です! 街が燃えております! 街が燃えております! 一体あの蛇はどういう魔物なのでしょうか! どうぞ皆様……あーっ!! 御覧ください! 自衛隊の特機がメラメラと燃えています!!』

 

『いいから逃げなきゃ! ここいたら死んじゃうってぇ!』

 

 

カメラが揺れて天を向き、何かがガチャガチャ鳴る音と共に画面はスタジオへと戻り、昼の帯番組のコメンテーター達はすぐさま政府の不手際を批判し始めた。

 

俺は画面を指さしながら、一緒にテレビを見ていた姫とマーズの方へ顔を向ける。

 

 

「やばくない!? あれってうちの実家のすぐ近くじゃん」

 

「あれって異世界の蛇かな?」

 

「玉四の中に置いてたドローンは全滅してたから調べられてないけど、多分そうじゃね?」

 

 

落ち着き払った二人とは違い、俺はもう、気が気ではなかった。

 

なんせあの蛇が焼いている場所は、俺の地元からちょこっと離れただけの場所だったからだ。

 

あれが都市破壊級の魔物だったならば、うちの地元ごと焼き払われる可能性は十分にある。

 

落ち着いていられる場合ではなかった。

 

 

「それどころじゃないって! 俺、行ってくる!」

 

「どこに?」

 

「玉四だよ! 職権濫用で悪いけど地元の危機なんだ! 二人がどう言おうと俺はサードアイで行くからね!」

 

「まあ落ち着きなよ」

 

 

今すぐにでも部屋から出ようとする俺にマーズはそう言って、手の先からニュッと出た爪でこたつ机の天板をチャッチャッと叩いた。

 

 

「誰にとっても故郷ってのは一つきりなんだ。俺も川島家の皆には世話になってるし、うちのロボットならあの蛇には負けない。別に駄目だなんて言わないよ」

 

「じゃあ、すぐに行こう!」

 

「あのさぁ、行くったってどっから出発するつもり?」

 

 

未だこたつに入ったままの姫は、立ち上がったままの俺のズボンを掴んでそう聞いた。

 

 

「……え? そりゃ、前の道路から……」

 

 

彼女はそんな俺の答えを聞いて頬を膨らませ、口の端からふぅーっと息を吐いた。

 

 

「あのさぁ、このアパートって常に見張られてんだからさ。家の前で道路塞いでロボットなんか出したらソッコー取り押さえられるっつーの」

 

「え!? そうなの?」

 

「そりゃ俺たち色々疑われてんだから、見張りぐらいついてるよ。日本人は礼儀正しいから令状無しでは屋内には踏み込んでこないけど、さすがに武装付きのロボットなんか出したらそのまま御用だと思う」

 

 

渋い表情でそう言ったマーズの横から、ちょっと怒った表情の姫が俺の顔を指さしながら続ける。

 

 

「言っとくけどさ、バレたらトンボ一人が捕まるだけじゃないんだよ? あたしらも捕まるし、阿武隈(クマ)さんとか、それこそ実家のお母さんとかにも迷惑かかるんだよ?」

 

「じゃ、じゃあどうしたら……」

 

 

勢いよく立ち上がったまま結局どこへも行けない俺は、姫にズボンを引っ張られてまたコタツの中へと収まった。

 

 

「あのロボットにはステルス機能も飛行能力もあるからさ、出発場所さえ確保できればバレずに行って帰ってくる事もできると思う」

 

「怪しまれはするだろうけど……ま、それはいつも通りだしね」

 

「じゃあ、一旦工場(かいしゃ)に移動してから……」

 

「あの工場の中で出しても、多分搬出口のサイズ的に外に出せないよ」

 

 

そういえばそうだ、工場の搬出口は二メートルぐらいしかない……肩幅三メートルぐらいあるロボットは床を這っても外には出せないだろう。

 

どうしよう……と両手で抱えた俺の頭を、ちょっとひんやりした姫の手がポンポンと叩いた。

 

 

「大丈夫大丈夫、場所さえ選べば行って帰ってくるだけなら近場でもなんとかなるって。でもどうせなら、ついでにアリバイも確保できるとこにしよ」

 

「え? それ……どうやって……?」

 

 

俺が尋ねると、彼女はにっこりと笑って「カラオケ行こっ!」と答えた。

 

 

 

 

 

三十分後、俺とマーズは駅前のアミューズメントビルの屋上に不法侵入していた。

 

 

「これ、ほんとによそからは見えてないのかな?」

 

「大丈夫大丈夫、見えてないって。ちゃんとアンカー打って光学迷彩フィールド張ってんだから、外からは誰もいない屋上に見えてるはずだよ」

 

 

俺とマーズは姫が用意した光学迷彩用の3Dホログラフ発生装置のアンカーを屋上の四隅に設置し、その結界の中で堂々とサードアイの最終調整を行っていた。

 

ビルの屋上に立つ三つ目の巨人のコックピットの中は、姫が走らせているシステムの診断プログラムでピカピカと光っている。

 

姫の本体はビルの中のカラオケ店でヒトカラ中だが、監視カメラの映像では俺たちも一緒にカラオケをやっている事になっているらしい。

 

これならばこっそり発進もできてアリバイも作れる、なるほどいい場所だ。

 

 

『トンボ、まーちゃん、オッケーだよ』

 

 

コックピットから姫の声でOKが出たので、膝立ちの機体の前面装甲に設けられたくぼみ型のステップを使って操縦席へと登っていく。

 

 

「五メートルぐらいの高さでもさ、登る時はおっかないんだよな」

 

「もうちょっと新しいのなら操縦席の前面装甲がリフトになってんだけどねぇ」

 

 

肩にしがみついたマーズの毛皮がふわふわと首元に当たる。

 

しかし俺、銀河警察の生体維持装置はつけてるけど、普段着で戦闘ロボに乗っていいんだろうか……?

 

なんとなく不安なままコックピットに入ると、自動で前面装甲が閉まった。

 

クッション素材の内装に囲まれた操縦席に座ると、背中から尻がガチッと椅子に吸い付いたように固定され、俺の顔の前にタブレットサイズの薄緑色のホログラフが表示された。

 

 

『OSは弄って日本語にしてあるけど、最初の起動だけはボイスコントロールだから』

 

「何て言えば?」

 

『エンザーキー!』

 

「どういう意味?」

 

「銀河連邦万歳って事」

 

 

宇宙の事はよくわからないけど、言えば動くならそうしよう。

 

 

「エンザーキー!」

 

『認証完了。起動シークエンス開始。母艦との接続が確認できません』

 

「はいはいパスパス」

 

『スタンドアロンモードで起動します』

 

 

俺の顔の前のホログラフをマーズが肉球で操作していくと、コックピット内のクッション素材が魔法のように消え失せて外の景色が映った。

 

視界の真ん中には、でっかく『STAND ALONE』という薄緑色の文字が表示され、数秒でフッと消えた。

 

 

『複合迷彩(ステルス)起動してるよ。だいたいの事は大丈夫だけど、飛行機と正面衝突したりしたらさすがにバレちゃうから気つけてね』

 

「じゃ、行こうかトンボ」

 

「よし、よし、よし! ……で、どうやって動かすの? 今更だけど、よく考えたら俺って訓練とかしてないけど大丈夫かな?」

 

「できたら訓練もしたかったんだけどね……まぁ、視線コントロールと思考コントロールのハイブリッドだから、ずぶの素人でもでっかい蛇の駆除作業ぐらいなら大丈夫だと思う。肘掛けの前にある握り棒握って、させたい動作を頭で念じて」

 

「よし……よし! 飛べっ!」

 

 

その瞬間、ぐわっと屋上の地面が遠くなったかと思うと、急に視界がグルグルと回り始めた。

 

 

「おわーっ! どうなってんだ!」

 

「膝立ちのまま飛び立ったりするから……静止するように念じて」

 

「止まれ止まれ止まれ!」

 

 

口に出しながらそう念じると、視界はビタっと静止した。

 

さっきまでいたビルの屋上と一緒に、沢山の人が行き交う駅前がくっきりと見える。

 

ゴクンと、自分が唾を飲む音が大きく聞こえた。

 

俺とサードアイは、まるで神様のように無音のまま東京の空に静止していた。

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