わらしべ長者と猫と姫 ~宇宙と地球の交易スキルで成り上がり!? 社長! 英雄? ……宇宙海賊!?~   作:岸若まみず

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24年1月16日より、Ver.1を削除してVer.2への更新を行っております。
現在発売中の書籍版第01巻の続きはVer.2準拠で更新していきます。
書籍には書き下ろしが沢山載っておりますので、どうかよろしくお願い致します。


第39話 決断と猫とビームソード

『まあでも、もしかしたらさっきのはまぐれかもしれないから、もう一回撃ってみて! モニターしてる限りでは機体は全然大丈夫、ステルスもあっちの体当たりぐらいじゃ解けてないよ』

 

「あ……うん……」

 

 

俺はなんとなく不安な気持ちのまま、カラカラの喉を潤すためにごくりとツバを飲んだ。

 

 

「トンボさぁ。どっちにしろ、やらない(・・・・)はないんでしょ? 荷電粒子兵装が駄目なら、殴ってでもやっつけなきゃいけないんじゃないの?」

 

「……当たり前じゃん!」

 

 

マーズの言う通りだ。

 

俺は誰のためでもなく、自分のために、自分の手で自分の地元を守るために来たんだ。

 

やらない(・・・・)はない。

 

なら、ビームライフルを見てから避けるような化け物相手でも、やるしかないのだ。

 

 

「行くぞ!」

 

 

俺の言葉と共に、サードアイは前傾姿勢で飛び出した。

 

破壊しながら来た道をもう一度かき混ぜながらかっ飛んで、三つ目のロボットは元いた幹線道路へと土煙と共に躍り出た。

 

さっきまで俺達がいた場所へと冷気のブレスを吐いている蛇の首に向けて、腰だめのままライフルの引き金を引く。

 

奇襲をかけたにも関わらず、蛇は凄まじい素早さで巨体をくねらせ、軽々とビームをかわした。

 

 

『やっぱり避けた!?』

 

「なんでこの星って変な生き物ばっかりいるんだよ!」

 

「うちの星のせいじゃないって!」

 

 

また蛇に体当たりされないように、牽制の意味も込めてライフルを撃ちまくる。

 

撃ちまくると言ってもほとんど撃っている感覚はない、音もなければピンクの光線も出ないからだ。

 

 

「これほんとにビーム出てるの!?」

 

『出てるよ! 当たってないだけ!』

 

「あんま適当に引き金引いてるとビルに当たるよ!」

 

「んな事言ったって……マジで拳でいくしかないのか……うおおおおおおおおっ!!」

 

 

俺は気合いの声と共に飛び蹴りの姿勢で蛇の頭へと突っ込み……

 

そのまま大きく開けられた口でバクンと足に噛みつかれた。

 

視界全体におっかない蛇の顔がドアップになったかと思うと、物凄い速さで振り回されて周りの建物や地面へと無茶苦茶に叩きつけられる。

 

 

「のわあああああっ!」

 

『トンボ今! 今! サードアイの足に食いついてる頭狙って撃って!』

 

「う、撃つ? 撃つぞっ!」

 

 

無我夢中で引き金を引いた瞬間、ドッパァン! と破裂音がした。

 

視界が真っ赤に染まる中、俺は一瞬その音の正体が何なのかわからなかった。

 

大量の血を撒き散らしながらのたうち回る蛇に振り回されながら、サードアイの足を咥えた口だけ(・・)が残った、千切れかけた蛇の頭の残骸を見てようやくわかった。

 

あの音は、蛇の頭がビームに吹き飛ばされた音だったのだ。

 

 

「トンボ! まだ頭は片側残ってるよ!」

 

「わかってるよ!」

 

 

俺は双頭の蛇のもう片側の頭に止めを刺そうとしたが、暴れまわる蛇になかなか空に抜ける照準を合わせる事ができずにいた。

 

 

「やばい、どっかに引きずられてる」

 

『草加ダンジョンに戻ろうとしてるみたい!』

 

「まずレーザーブレードで足に噛み付いてる蛇の首を外して!」

 

「オッケー!」

 

 

しかし、俺が腰にあるビームソードの発生装置を取って足を咥えた口を切りつけたその瞬間、振り回されていたサードアイは幹線道路沿いにあったデパートのビルに力いっぱい叩きつけられ……そのまま地面ごと(・・・・)下に落ちた。

 

視界の端に、蛍光灯に照らされた無人の飲食店街が映る。

 

どうやらサードアイはデパートの床をぶち抜き、地下街へと落ちてしまったようだった。

 

 

「やばい! 地下街に抜けちゃった!」

 

「でも足も抜けたよ」

 

「よし! 後はもう片方の頭を……」

 

 

そう言いながら、ビームソードの発生装置を腰に仕舞った瞬間、ウサギのような耳のついたピンク色の帽子が視界に入った気がした。

 

サードアイの体を持ち上げ、俺は恐る恐るもう一度同じ場所を見た。

 

見間違いじゃなかった。

 

小さい小さい子供が、通路の真ん中にうずくまっていた。

 

 

「マーズ! あれ!」

 

「えっ!? 子供!? 避難し遅れ!?」

 

「やばいって! なんかないの!? バリア的なの!」

 

『そんな都合のいいものないよ! 巻き込まないように早く離れて!』

 

 

すぐに外に飛び出て引き離せばこの子は助かるか……?

 

そう考えた瞬間、デパートの外からこちらを眺めている蛇が首元を膨らませるのが、視界の端にはっきりと見えた。

 

 

「やばい! 火が来る! ……コックピットの中に!」

 

「トンボ! 開けたらやばい! バレたら大学も通えなくなるよ!」

 

 

一瞬、頭の中を親の顔がよぎった、自分の会社に入ってくれた人達の顔も、冒険者の人達の顔も……

 

そして子供の頃の、自分の後ろをずっとついて回っていた、泣き虫の、小さな妹の顔もだ。

 

 

「大学ぅ……辞めた!」

 

 

その時の俺は無我夢中で、自分自身が何をしているのかもわかっていなかった。

 

人への迷惑だとか、今後の人生だとか、全部纏めて吹き飛んでいた。

 

ただ、蛇の吹き出した炎がデパート中を焼き尽くしていく中……

 

俺の膝の上には、これまで見た事のないような顔で天を仰ぐ猫と、泣きじゃくる子供がいたのだった。

 

 

『ハッチ開けたからステルス切れたー!』

 

「かけなおして! かけなおして! ト……」

 

『ダメダメダメーッ!! 社……いや、首領(・・)! ステルス再構築に二分かかる! その間に外出て蛇やっつけて安全なとこで子供下ろして!』

 

「なんで二分なのさ!?」

 

『最初起動するときもそんぐらいかかったでしょ!』

 

 

俺はとにかく頭が混乱していて、とても二人に何も言う事ができなかった。

 

でも、あの蛇を倒さないと膝の上のこの子を下ろせないのはわかる。

 

燃え盛るデパートから飛び出したサードアイは、蛇の周りを滑るように移動しながら空に抜けるようにビームライフルを撃った。

 

頭を片方失った蛇はさっきまでのようには避けきれなかったようで、一部を吹き飛ばされた首から血を撒き散らしながら引いていく。

 

俺はホバー移動するように地面スレスレを飛びながら腰のビームソード発生装置を引き抜き、逃げ腰の蛇に斬撃を放つ。

 

その斬撃で身をくねらせる蛇の首を切り落とす事はできなかったが、浅く切ることはできたようで蛇はボタボタと血を流しながらもどこからか引っ張られているようにバックで引き続け……

 

何度目かの斬撃で、ついに首を切り落とされて絶命した。

 

 

「よし、これで一安心だ! ステルスは?」

 

『あと二十秒! 監視カメラ類の死角にナビするから従って!』

 

 

俺は全周囲ディスプレイの真ん中に出てきた矢印に従ってサードアイを動かし、雑居ビルの前の道路で膝立ちにした。

 

 

首領(・・)は外に出ちゃ駄目だよ、入れた時みたいにロボットのマニピュレーターで出して』

 

「…………」

 

 

俺は涙と鼻水で俺の服をべちゃべちゃにしながら泣き続ける子供の背中を撫でながら引き剥がし、サードアイの手のひらに乗せてどうにか外へと出した。

 

 

『ステルス再起動!』

 

 

姫のその言葉に、ふぅーっと深く息を吐いて、俺は一言「ごめん」とだけ言った。

 

 

「トンボさぁ……」

 

『……ボーイズ! まだ終わってないよ! 蛇の体がどんどん草加ダンジョンに吸い込まれていってる!』

 

「えっ!? あれまだ死んでないの!?」

 

 

俺が蛇の方を向くとそこに胴体はなく、血の海の中に切り離された首の残骸だけが残されていた。

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