わらしべ長者と猫と姫 ~宇宙と地球の交易スキルで成り上がり!? 社長! 英雄? ……宇宙海賊!?~   作:岸若まみず

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24年1月16日より、Ver.1を削除してVer.2への更新を行っております。
現在発売中の書籍版第01巻の続きはVer.2準拠で更新していきます。
書籍には書き下ろしが沢山載っておりますので、どうかよろしくお願い致します。


第40話 異世界と猫とバーストモード

『どうする? トンボ』

 

「追いかける!」

 

「あれ追っかけて戦闘ロボでダンジョンの中に突っ込むってこと?」

 

「東三のドラゴンみたいに再生してまた出てこられたらまずい!」

 

「まぁ、たしかにそうかも」

 

 

俺はサードアイの高度を上げ、埼玉第四ダンジョンへと進路を向けた。どういう早さで引いていったのか蛇の体は上空からでもすでに見えず、めちゃくちゃに破壊され、所々に原型を留めていない車や擱座した特機が残る幹線道路には、べったりと蛇の血の線が引かれていた。

 

 

「そういや姫さぁ、さっきトンボの事を首領とか言ってたけど……」

 

『しょうがないじゃん。あの子に話を聞かれてるかもしれなかったでしょ? できるだけ情報は渡したくなかったの』

 

「泣きじゃくってたから大丈夫だとは思うけど、たしかに子供って意外と周りの大人の話を聞いてるからなぁ……」

 

 

首領か……なんだか悪の秘密結社の長のような呼ばれ方だけど……

 

俺が我を通した結果だ、この件に関して俺が文句を言う権利はない。

 

むしろ、とっさに気を回してくれた事に感謝しなければいけないだろう。

 

 

「姫、ありがとうね」

 

『やっちゃった事はもうしゃーないけど、後で説教!』

 

「うん」

 

 

俺はそう答えながらサードアイの高度を下げ、未だ消火活動の続く街へと飛び降り玉四へと突入した。

 

入り口を吹き飛ばされて大穴と化したダンジョンの中には、蛇が通ってきたトンネルのような道がしっかり残されていた。

 

これを追っていけば迷う事はなさそうだ。

 

ビームライフルをダンジョンの奥へと向け、サードアイは所々に崩落して積もった瓦礫を避けるようにスーパーマン飛びで蛇を追いかけた。

 

 

「全然いないね」

 

「結構飛んできたよね?」

 

 

暗視モードのまま真っ暗闇のダンジョンの中をひたすら飛び続けるが、蛇はおろか他の魔物も一切出てこない。

 

俺はなんだか不安になって膝の上のマーズを見る。

 

ちょうど彼の方もこちらを見ていたようで、暗闇に浮かぶ瞳とぱっちり目が合った。

 

 

「トンボこれさ、このまま行ったら異世界に抜けちゃうんじゃない……?」

 

「まさか、流石にそれはないんじゃ……」

 

『……って……くが……』

 

「あれ? 姫……? 姫!?」

 

「……もう遅かったみたいだね。多分これ、異世界に入っちゃってる」

 

 

暗視モードで青みがかっていた全周囲ディスプレイの色が徐々に変わっていく。

 

真っ暗だった洞窟の向こうに、ゆっくりと光が射してきていた。

 

 

「なんか来る!」

 

「えっ!? 水……!?」

 

 

風の音だけが聞こえていたダンジョンに、突然地鳴りと轟音が響く。

 

俺達の進む光の射している方向から、こちらに向けて大量の水が流れ込んできていた。

 

サードアイは宇宙用の戦闘ロボットだから水に浸かってもどうなるという事もないけど、生身の人間なら普通に流されて溺れ死ぬ水量だ。

 

 

「どういう事?」

 

「とにかく光ってる方向に行ってみてよ」

 

 

推進力を上げて水流に逆らって進み始めると、全周囲モニターの一部にパッとお知らせが浮かんだ。

 

なになに? 感電注意……?

 

 

「え? 電気を流されてるって事!?」

 

「水で濡らして電気を流す、なるほど理に適ってるね」

 

「パワードスーツで来てたら完璧に死んでたなぁ……」

 

 

そんな事をマーズと話している間にもどんどん光は近くなり、ついにダンジョンの終わりが見えてきた。

 

 

「このまま出るよ!」

 

「気ぃつけてよトンボ!」

 

 

サードアイは水しぶきを散らしながら巨大な横穴になっているダンジョンの入り口から飛び出した。

 

まず目に入ったのは、口から水流を放つ巨大な蛇の頭、そしてその両脇(・・)で口を開けている同じサイズの蛇の頭だった。

 

双頭の蛇の胴体を追って来た先で待ち構えていたのは、三つ首の蛇だったのだ。

 

 

「三つ首!?」

 

「これ、もしかしてあの二股蛇の尻尾側かな?」

 

 

サードアイが三つの頭の根本に向けてライフルを発射すると、三つ首の蛇は双頭の蛇と同じように身をくねらせてそれを躱した。

 

 

「こいつも避けるのかよ!」

 

 

サードアイの倍ほども高さがある木々が立ち並び、その隙間からはまるで壁のように空にそびえる山々だけが見える鬱蒼とした森の中、巨大な蛇は木をなぎ倒すようにしながらこちらへと迫っていた。

 

 

「とりあえず探知打ったけどでっかい熱源も見当たらないし人里はないと思う! バーストモードにするから撃ちまくって!」

 

 

そう言いながらマーズがタブレットサイズのホログラフをちょいちょいと操作すると、全周囲ディスプレイの視線の先に『BURST-FIRE』と緑の文字で表示された。

 

引き金を引くと、銃口の先から光の渦のようなものが明滅しているのが見え……

 

そのまま振り回すとその先にある木々や地面が次々に大爆発を起こして吹き飛んでいった。

 

 

「これがバーストモード!?」

 

「いいから蛇に当ててよ!」

 

「やってんだけど……!」

 

 

俺はライフルを振り回しながら何度も何度も蛇の体を射線に入れたはずだ……

 

だというのに蛇は今や避ける事もせず、悠々と鎌首を擡げてこちらを睨んでいた。

 

 

「なんかおかしくない? 当たってるよねこれ?」

 

「待った待った待った、姫がいないからアナライズも手動でやらなきゃ……」

 

 

そう言ってマーズがタブレットにかかりきりになった瞬間、蛇は動いた。

 

何のブレスも吐くことなく、直接噛み付きにかかってきたのだ。

 

 

「ビームソード!」

 

 

サードアイは地面を滑るように退きながら、ビームソードを抜き放って蛇の鼻先へと切り掛けた。

 

だが、その薄青色の刀身は蛇に当たる直前にぐにゃりと歪んで霧散し……

 

サードアイはそのまま腕を蛇に咥えられて、癇癪を起こした子供の手にあるおもちゃのように滅茶苦茶に振り回された。

 

 

「うわああああああああ!!」

 

「トンボわかった! 力場だ! 多分電気を吐いてた首が強力な力場を出してて、荷電粒子に干渉されてる!」

 

「つまり! どういう事!?」

 

「バリアが張られてるって事!」

 

「どうしたらいいの!?」

 

「物理的なもので攻撃して!」

 

「よし! ぶん殴る!!」

 

 

俺はサードアイの腕に噛みついた首に全身で抱きつくようにして取り付き、ビームライフルの銃床を鼻先めがけて思い切り叩きつけた。

 

鼻先を抉られた蛇は、顔を地面や木々に叩きつけようと大暴れを続けている。

 

ぐわんぐわん動きまくる画面を見ながら二度三度と同じ場所を殴りつけていると、不意に眼の前に真っ赤な文字が表示された。

 

 

『C2 FATAL ERROR』

 

「え! これ何!?」

 

「C2……噛まれてる左腕が壊れた!」

 

「やばいじゃん!」

 

「トンボ! あれ出して! 密造銃!」

 

「え!?」

 

「ドラゴンの時使ったやつ!」

 

「なんでさ!」

 

 

ジャンクヤードから缶ジュース型の密造銃を取り出すと、マーズはカシュッと音を立てて変形させたそれを持ったまま俺の肩へと登った。

 

俺の首に思いっきりマーズの足が絡みついて少し苦しい。

 

 

「トンボ、ハッチ開けるから全力でしがみついててよ!」

 

「マジ!?」

 

 

是非も音もなく、ハッチは静かに開き……

 

蛇に振り回されている猛烈なGが俺に襲いかかってきた。

 

 

「堪えて!」

 

 

その言葉と共にマーズが俺の頭の上から突き出た銃の引き金が引かれ、ハッチの目の前に見える蛇の眉間に小さな穴が空く。

 

俺が全身全霊でシートにしがみついている数秒の間に、その穴は血を吹き出しながらどんどん大きくなり……ついには突き抜けて向こう側へと貫通した。

 

その瞬間、体を強烈な浮遊感が襲う。

 

蛇の頭が死んだことによって噛まれていた口が外れ、サードアイは空へと打ち上げられたのだ。

 

 

「やっ! あっ! 死ぬううううううう!!」

 

「死なないよ」

 

 

その言葉と共にハッチが閉まって重力制御が動き出し、俺はトスンとシートへ落ち、サードアイは半ば体をめり込ませるようにして地面に激突した。

 

 

「しっ……しっ……死ぬかと思ったぞ!!」

 

「あのまま噛まれてたら他の首からも噛みつかれて死んでたよ」

 

「ひっ……一言ぐらい!」

 

「ほら来るよ!」

 

「あっ! 蛇やだっ! 蛇怖いっ!」

 

 

俺は慌ててサードアイを立ち上げ、蛇から距離を取った。

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