【ポケモン】人生を安価で decide…エンジョイエンジョイね【転生掲示板】   作:ユフたんマン

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インフルでの隔離期間暇すぎたので書けました。まさか年末までにもう一話出せるとは…
今回も独自設定もりもりです。


Zワザ

アローラ地方の海上に浮かぶ人工島、エーテルパラダイス。

その中枢施設では、エーテル財団代表ルザミーネが慌ただしく指揮を執っていた。

 

膝下まで流れる長い金髪を揺らしながら、若々しくも威厳に満ちたその姿で、彼女は次々と職員へ指示を飛ばしていく。

緊迫した空気が施設全体を包み込んでいた。

 

『こちらウルトラガーディアンズ。周辺に発生していたウルトラホールの消滅を確認しました。次の指示をお願いします』

 

通信機越しの報告に、ルザミーネは即座に応じる。

 

「ご苦労様。残るウルトラホールはメレメレ島のみね。グラジオがすでに先行しているわ。あなたたちは直ちに合流しなさい。現地での指揮はグラジオに一任します」

『ウルトラジャー!』

 

通信が切れると同時に、ルザミーネは深く息をついた。

 

ウルトラガーディアンズ。

ウルトラホールと、そこから現れるUBという脅威に対抗するため結成された特別部隊である。

財団内でも選りすぐりの実力を持つポケモントレーナーたちで構成され、その任務は多岐にわたる。

暴走するウルトラビーストの鎮圧と捕獲、そして本来の世界へ送り返すこと。

さらには、ウルトラホール発生地域の調査や被害の最小化も含まれていた。

 

かつてアローラを襲った、大規模なUB災害。

その惨禍に、誰よりも強い危機感を抱いたのがルザミーネだった。

 

夫を、愛する家族をウルトラホールの実験で失った過去。

あの日の喪失が、彼女を突き動かしていた。

 

だからこそ、準備を怠らない。

対策は徹底的に。

もう二度と大切なものを失わないために。

彼女は異世界の脅威に備え続けてきたのだ。

 

ウルトラネクロズマという存在を認識した事で以前と比べ更に強化し続けてきた。

 

すでに戦場では、エーテル財団から派遣された救助隊が活動を開始している。

傷ついた人々、そしてポケモンたちを保護し、迅速に治療を施す。

薬品も、ウルトラボールも、物資の制限はない。

必要とあらば、すべてを惜しみなく投入する――それがエーテル財団の方針だった。

 

「エーテル財団の名に懸けて、私は人もポケモンも、アローラの未来も守ります」

 

その瞳は覚悟と決意で燃え滾っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▽▽▽

 

 

ウルトラホールの出現と同時に、素早くUBへの対処を進めていた島キングのハラと、その孫であるハウ。

 

『皆さん、ここが正念場です。カプ・テテフ、そして守り神であるカプ達に力を。Zリングを持つ者は、すぐに準備を!』

 

スマホロトムからライチの切迫した映像が届いたその瞬間。

ハラは迷いなく懐からZクリスタルを取り出し、ハウの前に差し出した。

 

「聞きましたな、ハウ」

「じーちゃん……これ……?」

 

震えるハウの掌に乗せられたのは、淡く神秘的な光を放つカプZ。

守り神が島キングへと授け、島キング、クイーンのみが持つことを許された特別なZクリスタル。

 

「うむ。今から島キングは……ハウ、オヌシだ」

「……っ!?」

 

言葉を失うハウをよそに、ハラはゆっくりと頷く。

 

「本来であれば、もう少し時間をかけて引き継がせるつもりであった。しかし……この状況では、そうも言ってはおれませぬな」

 

遠くで轟く咆哮。

ウルトラホールの向こうから、更にUBが迫ってきている。

 

一瞬、UBと戦っているカプ・コケコと視線が交差する。

 

「でも…俺はじーちゃんみたいに島キングとして出来る気がしないよ…

じーちゃんみたいに皆を引っ張るより、皆と一緒に笑ってる方が得意でさ……

こんな俺が、本当に背負っていいのかなって……」

「安心しなさい。ハウは既にトレーナーとしての実力はワシを超えている。

それに、島キングとは高みに立ち命じる者ではない。導き先導するだけでもない。島の民と共に悩み、共に歩み、最後まで背負い続ける者。

その資格はすでにハウにある。

あとは……覚悟だけですな」

 

ハラの言葉にハウは目を伏せ考え込み、そして強くカプZを握りしめた。

 

「覚悟……わかった。やるッ!じーちゃんがこれまで背負ってきたもの、守ってきたもの…!俺が、皆のアローラを守るんだ!」

 

その言葉にハラは静かに、しかし誇らしげに笑った。

 

「よい返事ですな。では、覚えてますな?継承するにあたり何度も何度も繰り返してきた、カプ・コケコに捧げる舞を」

 

カプZが、まるで応えるかのように、ひときわ強く輝いた。

 

「うん!じーちゃん、任せてよッ!!」

「うむ、その意気や良し!」

 

ハラはスマホロトムを操作し、四天王であるマーレインへと繋げる。

 

「よし、これでいけますな」

 

スマホロトムがライチの映像と共に全てのスマホロトムと流れる事を確認したハラは大きく息を吸い、叫ぶ。

 

「皆の者ッ!!今この時をもって、メレメレ島の新たな島キングはハウですぞッ!!!!

そしてアローラに生きる者たちよ!Zポーズを守り神へと捧げますぞッ!!Zパワーを島キング、クイーンに送り込むのですッ!!」

 

アローラ全域でハラの言葉が響き渡ると同時にアローラ中のトレーナー達がZポーズでZパワーを送り始める。

 

「うおおお!!私のZパワー!ハウに届けぇー!!」

 

UB達との激戦の最中でありながらもミヅキはZポーズを決め、新たに誕生した島キング、ハウへとありったけのZパワーを送り出す。

 

「ククイッ!早くZパワーをハウの奴に送れッ!!余裕はねぇぞッ!!」

「分かってるッ!!ハウッ!頼んだぞッ!!」

 

UB達の猛攻をグズマが食い止めている隙にククイもZパワーを送り出す。

 

「フッ…ハウの奴…!総員、Zパワーをハウに送り込め!」

「「「ウルトラジャー!」」」

 

グラジオ率いるウルトラガーディアンズのメンバー達も続々とZポーズを決めZパワーを送り出していく。

 

「私達もッ!!」

「役に立つぞー!!」

 

ホウとスイも、Zリングを持つ全てのトレーナーからZパワーが送られていく。

 

「うおおおお!!こんな事でしか役に立てねーんだ!!ありったけ持ってってくれー!!」

「なんとかなれー!」

「私のZパワーも使ってー!!」

 

先程まで絶望に沈んでいた避難所の人々も、希望を見出したかのように各々がZポーズを決めてZパワーを送り出していく。

そのZパワーの奔流は極太の光の柱となってハウの元へ飛び出していく。

 

「圧巻だな…」

「ええ…これがZワザですか…」

 

その光景にアンカーとネリネは圧倒される。

これは通常のZワザではない。これは特別な、守り神へと奉納する伝統ある舞。

 

メレメレ島だけではない。アローラ全土から送り出されたZパワーは全て、四箇所の位置に存在する島キング、島クイーンの元へと集約していく。

 

「これが皆の思い…!!あまりにも大きすぎて溢れ出しそう…!!」

「あんちゃん、あんま背負いすぎるもんじゃねぇぜ?にしてもやっぱりおじさんにはキツイねぇ…ハラさんみたく俺もそろそろ引退かね…」

「ご冗談を。まだまだクチナシさんも現役じゃろうて。

しっかし島クイーンに選ばれて早々連続で非常事態が起こるとはついてないのぉ…」

「皆さん雑談はそこまでにして、始めましょう!」

 

メレメレ島、島キング ハウ。

 

アーカラ島、島クイーン ライチ。

 

ウラウラ島、島キング クチナシ。

 

ポニ島、島クイーン ハプウ。

 

四人はアローラ全土のトレーナーの想いを受け取り、Zリングに宿るカプZへと流し込む。

 

「いきますよッ!!」

 

ライチの掛け声と共に光と力が一斉に集結し、アローラに新たな守護の輝きを生み出した。

 

両腕を胸の前で交差させZの形を作る。全身に気を巡らせ、力を一点に集中する

ノーマルZ。

 

拳を幾度も突き出し、最後に力を込めてもう一度突き放す。

カクトウZ。

 

両手を前に差し出しながら体をしなやかに捻る。

ドクZ。

 

クルリと回転し、片手を地面に付け、大きく膝を曲げる。

ジメンZ。

 

羽のように腕を優雅に羽ばたかせ、最後に天へと拳を突き出す。

ヒコウZ。

 

鎌のように手の先を鋭く、すくい上げるように腕を振るう。

ムシZ。

 

力こぶを作るように腕を曲げ、足を踏みしめ力を一点に集める。

イワZ。

 

まるで幽霊のように手を揺らす。

ゴーストZ。

 

ガツンガツンと両拳を打ち合わせ、鋼の意志を全身に宿す。

ハガネZ。

 

アーカラの山の如く、燃え上がる炎を想起させる動きで腕を振るい、最後に腕を突き出す。

ホノオZ。

 

波のごとく腕を揺らめかせ、水の力を全身に巡らせる。

ミズZ。

 

両腕を勢いよく振り、目の前で稲妻の如く組む。

デンキZ。

 

しゃがみ、蕾が花開くように勢い良く立ち上がる。

クサZ。

 

腕を上げ、何度もクロスさせ、一度広げて前へと突き出す。

コオリZ。

 

頭に指を添え、掌から力を押し出す。

エスパーZ。

 

牙のように両手を繋げ広げる。

ドラゴンZ。

 

湧き上がる力を押し出すように、威嚇するように力を示す。

アクZ。

 

そして最後に両手を広げ、柔らかく光る力を抱き込む。体を優雅に揺らし、全身に祝福の光を宿す。

フェアリーZ。

 

全てのタイプのZポーズを、四人同時に繋げて舞う。それはカプ達に捧げるカプZの完全なるZポーズ。

 

Zポーズを終えると共に、カプ達の身体が光り輝き始める。

アローラ地方のトレーナー全員分のZパワーが全身を包み込み、膨大なオーラを放ちながらカプ達は殻を閉じる。

大地が静かに息をひそめた。

風が止み、空気が張り詰める中、島の守護神はゆっくりと宙へと舞い上がる。

 

「「「「ガーディアン・デ・アローラッ!!」」」」

 

その膨大なZパワーは巨人の如き巨大な身体を形成、そのままカプ達は殻に籠ったまま、全員が同じ身体へとドッキングする。

島々の記憶、自然の意志、全てが一つに束ねられていく。それは巨人のような見た目をしていた。

ポケモンと人の歴史から生まれたその守護神の姿。

それはかつて神話で語られた大陸を引きずったとされる巨人を彷彿とさせる。

 

「カ・プ・ッ!!」

 

Zパワーを纏い光り輝くその神々しい姿をした巨人は一瞬の内に駆け出し、大量のUB達を撃破していく。

走るだけでその巨体で巻き込み、腕を上げればその風圧でUBを巻き上げる。

その一挙手一投足が全てZワザ並の威力を誇る。

 

「今だッ!!カプ達が倒したUBを捕まえていくぞッ!!」

 

好機と見たトレーナー達もカプ達に続きウルトラボールを構え駆け出していく。

巨人に戦闘不能にされ倒れているUBを続々と捕まえていき、みるみるうちにその数を減らしていく。

 

「俺達もカプ達に加勢するぞ!ネリネ、合わせろッ!」

「了解、…エンペルト!」

 

アンカーとネリネも再度動き出す。

二人の掛け声でポッチャマとエンペルトが動く。

ポッチャマが視線で合図を送るとネリネのエンペルトはヘイ、ボス!と頭を下げて構える。

余談だがネリネのエンペルトはポッチャマランド出身であり、かつてアンカーのポッチャマに泣かされた過去がある。そのためアンカーのポッチャマには頭が上がらないらしく、その瞳には戦闘時以外は恐怖が宿っているという。

 

「お兄ちゃんにお姉ちゃん!手助けするよー!」

「オニシズクモ、なかまづくり!!」

 

ホウとスイのオニシズクモのなかまづくりがポッチャマとエンペルトにかけられる。効果は特性を自身と同じものへの上書き。

これによりポッチャマとエンペルトの特性が水泡に変化。効果は火傷の無効化と水タイプの技が2倍になる効果、そして炎タイプの技の半減。

つまり御三家のピンチ時に威力を1.5倍にする激流の完全上位互換ともいえる特性を与えられた。

 

「ポッチャマッ!」

「エンペルトッ!」

 

「「ハイドロカノンッ!!」」

 

同時に放たれた極太のハイドロカノンが絡み合い、一つの水流レーザーとなりUB達に放たれる。

 

「最終局面だぜ!出し尽くせよポッチャマ!」

「しっかり狙って効率的に。連発は出来ませんからね」

 

 

 

 

 

 

劣勢だったトレーナー達の反撃は続く。際限なくUBは現れ続けるが、直ぐ様カプ達が叩き落とし、ウルトラホールに投げ返す。

それに加勢するポケモン達の技による雨あられ、出てきた傍からUB達を押し返していく。

 

「ミヅキさん!」

 

そんな自身を呼ぶ聞き覚えのある声にミヅキは嬉々として表情でその声の方へ顔を向ける。

 

「リーリエッ!!久しぶりだね!!」

「はい!お久しぶりです!」

 

白いプリンセスラインのノースリーブワンピースに白のつば広帽子、金髪の長髪をたなびかせた少女。かつての島巡りで共にアローラを旅した仲間の一人であるリーリエがそこにはいた。

ミヅキは目を輝かせながらイワンコの如く一目散に駆け寄りリーリエに抱き着いた。

 

「ちょっ、ちょっと!?今はこんなことしてる場合じゃ!?」

「うへへっ、リーリエの顔をみちゃったらついね。

それよりどうしたの?ここは危ないよ?」

 

UB04 BLASTER、カプ達をすり抜けて舞い降りたテッカグヤが二人に迫るも、ガオガエンの火炎放射で直ぐ様戦闘不能。リーリエに抱きついていたミヅキが軽くウルトラボールを投げて捕獲する。

 

「それは分かってます!私も皆さんのお役に立ちたくてここに来ました!ほしぐもちゃん!」

 

リーリエの背中から羽が生えた。…様に背後で翼を広げて現れたのはほしぐもちゃんことルナアーラ。

かつてリーリエと共に過ごしたコスモッグが進化した姿であり、ミヅキとも長く友好のあるポケモンである。

ネクロズマに取り込まれ色々と大惨事にはなってしまったが今では無事にリーリエと共にまた平和な日々を過ごしている。

 

「ほしぐもちゃんも久しぶり!」

「マヒナべーア!」

「ミヅキさんに見てもらいたいものがあります。ジャジャン!」

 

そう自慢げにリーリエが突き出した腕に巻かれているモノ。それは…

 

「Zリングじゃん!?」

「そうです!それにこれにセットされているZクリスタルはルナアーラZ!ほしぐもちゃん専用のZクリスタルなのです!」

「おおーー!!じゃあリーリエがそれをほしぐもちゃんと放つの!?」

「はい!…ですが、まだ一度も使った事がなくて…一人だと不安なのでミヅキさんも一緒にお願いしてもいいですか…?」

「もちろん!Zポーズは分かる?」

「Zポーズは何回も練習しました!完璧です!」

「ならよし!じゃあやろっか!あ、けどさっきのハウのZワザで殆どZパワー使っちゃったからあんまり期待しないでね?」

「私がミヅキさんの分も頑張ります!」

 

ミヅキとリーリエが並び立つ。

同時に構え、ゴーストZと同様のZポーズ。

幽霊のように手を垂らし、驚かすゴーストポケモンのように揺らしながら、ZパワーをZリングへと送り込む。

Zリングから溢れ出したZパワーは一直線にルナアーラに向かい、その身体を覆い尽くす。

ルナアーラはZパワーを纏い空へ飛び立つ。

その翼は大きく広がり、銀色の光を反射して妖しく輝く。瞳は深い青に光り、敵をじっと見据えている。

 

ルナアーラは静かに空中で旋回し、体から月の光のエネルギーを集め始めた。

背中のリング状の光が徐々に輝きを増し、まるで世界そのものがルナアーラの力に吸い込まれていくかのようだ。

 

ZポーズでZパワーを注ぎ終えた二人は共に手を繋ぎ、一緒に腕を突き出して叫ぶ。

 

「「ムーンライトブラスターッ!!」」

 

瞬間、銀色の光がルナアーラの体から放たれ、月の光を凝縮した光線が一気にUB達に向かって飛ぶ。

その光は柔らかくも鋭く、周囲の闇を切り裂き夜空に淡い光の軌跡を描いた。

 

「これが私達の!!」

「ゼンリョクですッ!!」

 

 

 

 

 

 

▽▽▽

 

戦況は良くなった。先程までと比べれば格段に。

島キング達とカプによるZワザ、外部からの増援、地上に降りてきたUB達はもう既に殆どがボールへと捕獲されている。

 

だがしかし、ウルトラホールは未だ閉じない。むしろ最初と比べ大幅に広がってしまった影響か。

UBの襲来速度が劇的に増加してしまっている。

そのためカプがどれほどの速度でUBを蹴散らしていっても無限に増え続ける、まさに焼け石に水という状態になってしまっていた。

 

「不味いな…」

 

殆どのトレーナーは気付いていない。しかしアンカーのような一流のトレーナーであれば気付くだろう。

最初と比べてカプ達が纏うZパワーの出力が大幅に下がっていることを。

 

このままいけば、カプ達のZパワーも底を尽き元の姿へ戻ってしまう。元々Zワザは長期戦のものではなく、一発撃って終わりという単発式だ。これ程までに長い時間Zワザをし続けるというのはカプ、島キング達には凄まじい負担が強いられていることだろう。

 

「クソ、後もう少しなんだ…!このまま押さえつけてりゃウルトラホールは自然に閉じていくはずなんだ…!!」

 

今回のUB災害の首謀者である転生者は既に対処されている。報告ではウルトラスペースも徐々に安定してきていると聞いている。

だからこそ、ここを乗り越えれば耐えられる、アンカーはそう確信していた。

 

「ここでダイマックスが使えれば俺ももっと貢献できたんだがなぁ…」

 

しげしげとバックから取り出したダイマックスバンドを眺める。

ダイマックスさえ出来れば、カプの手助けを容易く行え負担を減らす事が出来ただろう。

今のようにカプが動き回る必要が無くなるはずだ。

それが無い物ねだりだとしても思わずにはいられなかった。

 

 

 

 

そしてその時がきた。遂にZパワーが底をつく。

Zパワーを纏ったその巨人は倒れ込むように、宙に溶けていくかのようにその姿を消していく。

 

周りから聞こえてくる絶望の声。空からはカプが対処していたUB達が続々と舞い降りてくる。

 

無意味と分かりながらもダイマックスバンドを腕へ付ける。

逃げない。諦めない。止まらない。例えこの身が滅びたとしても、自身と同じ存在が引き起こしたこの惨禍を食い止める。

 

「やっぱ嘘、俺はポケモンマスターにならなきゃならねぇ、こんなとこで死んでられねぇぜ!」

 

アンカーが走り出したその瞬間、満身創痍といった様子のカプ達が上空に現れる。

 

「カプゥーコッコ!」

 

カプ・コケコが何かを訴える。

 

「コッコッココケ」

 

殻の先端部分で示す先はアンカーの腕に巻かれたダイマックスバンド。

 

「コッコ!」

「フフ!」

「ブルル!」

「ゥーレ!」

 

鳴いたと同時にカプ達は全員殻をアンカー目掛けて突き出した。その先端から光の粒子が溢れ出す。

先程までの荒々しいそれではなく、優しく、包み込むかのような暖かい光。

放たれたそれがアンカーの周囲をクルクルと舞い降り、ダイマックスバンドへと吸収されていく。

 

Zパワーを内包する鉱物をZクリスタル、空から落ちてきたダイマックスエネルギーを内包する鉱物を願い星と呼ぶ。

共通点として挙げられるのがどちらも特殊なエネルギーを内包した鉱物であるということ。

更に願い星はエネルギーを蓄える性質を併せ持つ。

通常であれば、願い星にZパワーを注ぎ込む事など不可能。だが、カプと呼ばれる守り神が4匹も揃えば話は変わる。

無理やりZパワーを注ぎ込まれたダイマックスバンドはミシミシと嫌な音を立てながらも、Zリングと同様に光り輝く。

 

「これは…」

「コケェ!!」

 

使えとカプ・コケコに催促される。

Zワザ。純粋なZワザではない。願い星に注ぎ込んだ以上、確実に多少なりともダイマックスエネルギーと混ざり合っているはずだ。完全なる未知数、アンカーの脳内に存在する掲示板にも、原作にも有り得なかった未知。

それにアンカーはこんな非常事態であれど興奮を隠せなかった。

 

「ウーラオスッ!やるぞ!」

「べあッ!!」

 

ダイマックスと発動方法は変わらないだろうと推測したアンカーはウーラオスをボールへと戻し、ダイマックスバンドからZパワーとダイマックスエネルギーを同時に注ぎ込む。

 

「ダイマックスエネルギーはやはり注ぎ込め無いが…問題なし…!Zパワーの注ぎ方は今覚えた…!カプ達が開けたこの隙間からバンドへ流し込む…!!ここで…終わるわけにはいかねぇ…!!ありったけを…ッ!!」

 

ボールにダイマックスバンドを介してZパワーを注ぎ込む。文字通りありったけ、アンカーの所有する無尽蔵な体力をほぼ全てZパワーへと変換しボールへと注ぎ込む。

転生者としての格、そして人外ともいえるその内包されたエネルギー。それが掛け合わさることで爆発的なZパワーがアンカーの中で生成されていく。

 

「ぐっ…!!いくぜウーラオスッ!!Zワザとダイマックス、合わせて…Zマックスッ!!」

 

アンカーがボールを放り投げる。大きさはダイマックスエネルギーを含まない為変わらない。

ボールからウーラオスが飛び出すが、その姿は何も変わらない。失敗かと思われたその瞬間、ウーラオスが吼える。

 

「べああああくあっ!!!!!」

 

Zパワーが溢れ出す。それは膨大で、濃密で、強大。

ウーラオスから溢れ出したZパワーは蜃気楼のように天へと昇っていく。

それはゆっくりと姿を形成していき、白く、強靭な肉体を持った存在へと変貌していく。

 

まるでスタンド、白熊の化身。ウーラオスの背後から伸びるそのZパワーの姿は正に、キョダイマックスしたウーラオスの姿であった。

 

「正真正銘ッ!!これが俺達の今出来るゼンリョクだッ!!」

 

正解など知り得ない。故に、直感的に拳を振るう。それは奇しくもウーラオスの放つ水流連打と全く同じ動きであった。

ウーラオスの放つレンゲキZ、そのZポーズは水流連打。即興で名付けたアンカーとウーラオスの放つZワザ。

 

「叩き込めッ!!水流無双レンゲキッ!!」

「べあべあべあべあべあべあべあべあべあべあべべあべあべあべあべあべあッ!!!」

 

ウーラオスの化身が吼え、凄まじい速度で拳を振るう。

レンゲキ、レンゲキ、レンゲキ、その速度、威力はキョダイレンゲキすら上回る。

その拳は正確に降り注ぐUBに命中し、次々とウルトラホールへと押し返していく。

メレメレ島を覆う巨大なウルトラホールから湧き出るUBをたった一匹で対処する。本来なら一匹では到底不可能なその規模だが、ウーラオスとアンカーの莫大なZパワーと出力でそれをカバーしていた。

 

「うおおおおおおおおおッ!!!!」

「べあべあべあべあべあべあべあべあべあべべあべあべあべあべあべあべあべあべあべあべあべあべべあべあべあべあべあべあッ……べあッ!!」

 

途切れさせるな、空を拳で埋め尽くせ。惜しみ無く、ゼンリョクをそのレンゲキに注ぎ込む。

技を繰り出す以外には何も考えず、鼻から、口から、耳から血が流れ出ようと止めるな。

そのあまりのエネルギーに遂にダイマックスバンドは弾け飛ぶ。だがそれでは止まらない、止めてはならない。

ウーラオスとアンカーの意識が完全にシンクロする。

 

 

 

 

 

そんな時だった。

 

「あれは何だ…?」

 

一人のトレーナーが気づいた。

空を覆うウルトラホールがまだ届かぬ彼方の空。

それなのにここまで微かに聞こえるキーンッと鳴る空気を切り裂く音。

 

「空を見ろッ!」

 

こちらへと猛スピードで飛んでくる何か。

 

「鳥ポケモンだ!」

 

違う。鳥ポケモンでもあの速度で飛行するのは不可能だ。

 

「飛行機だ!」

 

違う。段々と近づいてくる。紫色のその身体をしたそれは明らかに飛行機のような機械ではなく、生身のポケモンである。さらにその背中には少年が跨っていた。

 

「チャンピオンだッ!!」

 

紫色のポケモン、メガラティオスの背中に跨るはアローラが誇るチャンピオン、ヨウ。

 

ヨウはホウエン地方で行われる交流戦に招待されていた。しかし現地滞在中、アローラ地方でUB災害が発生したとの知らせを受け、急遽帰還することになる。事情を知ったホウエン地方チャンピオンのユウキは、飛行機で戻るよりも早い方法があると提案し、メガラティオスに頼んでヨウを送り届けてもらえることになったのだ。

 

ヨウはメレメレ島の上空に到着すると、ボールを投げてポケモンを繰り出す。

 

「ネクロズマ、ソルガレオ!」

 

ネクロズマは空を仰ぎ、すぐ隣に佇んでいたソルガレオへと歩み寄る。

その意図を悟り、ソルガレオは嫌々ながらもそれを受け入れる。

 

ネクロズマの腕がソルガレオの身体へ深く食い込み、光と闇が交錯する。

二体は溶け合い、境界を失い、やがて一つの存在へと収束していく。

その姿の名は日食ネクロズマ。

 

ヨウはその表情を一切変えることなく、Zリングに嵌められたウルトラネクロZへとZパワーを込める。

 

「ウルトラバースト!」

 

解き放たれた言葉と同時に、ウルトラネクロZから放たれた強烈な光がネクロズマを包み込む。

 

 

黒が金へ。

闇が光へ。

 

「シ…シ…シカリ…!!」

 

それは神であった。まさに光そのもの。

溢れ、漏れ出し、世界を満たすほどの輝きを放つ存在。その名はウルトラネクロズマ。

神にして、光の略奪者。

 

「ふぅ……いくよ…ッ!!」

 

覚悟を決めたように、ヨウは息を吐き、Zポーズを決める。それはエスパーZと同じポーズ。額に指を添え、精神を研ぎ澄まし、集めたサイコパワーをZパワーと共に掌から押し出すという通常と何も変わらぬそれ。

 

しかしウルトラネクロズマには足りない。ヨウという人間一人のZパワーでは補えない。故に、限界までそのZパワーを搾り取る。

 

Zパワーを与えているのではなく、勝手に奪われる。

力無くへろりと倒れたヨウを一瞥すること無く、ウルトラネクロズマは極光を放つ。

それは天をも滅亡させる神の御業。

 

「天焦がす滅亡の光……」

 

ウルトラネクロズマが放ったその極光はウルトラホールへと突き進み、着弾と共に凄まじいエネルギーを撒き散らしながら爆発を起こした。

 

 

 

 

 

極光が消え去った後、ウルトラホールは崩れ落ちるように歪み、ひび割れた空間は光の粒子となって静かに霧散していった。

そして空は光に満ちて…完全にウルトラホールは消滅した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▽▽▽

 

「凄まじい威力…まさに異世界の神といったところでしょうか…」

 

一人の男が空を眺めていた。先ほどまでウルトラホールで覆われていた空はあの極光の前にその姿を消した。

所々破れた部分を縫い合わせた、薄汚い服を着た男は傍らに立つポケモンに語り掛ける。

 

「どうでしたかジガルデ、何か得るものはありましたか?」

「ゼッ……!」

 

その問いにポケモン、ジガルデは一鳴きし、その場から一瞬の内に消え去ってしまった。

 

「そうですか…」

 

男は気絶し倒れている二人の少年を一瞥し、そのまま何もない、誰もいない森の中へと姿を消した。

 

 

 

 




ウルトラガーディアンズ
エーテル財団に所属する特殊部隊。アニポケでサトシ達がやってたあれ。今作ではルザミーネが対UB目的で創設した。もちろん隊員はサトシ達ではなく選りすぐりのエーテル財団職員である。



カプZ
完全に独自設定。ゲームでのあれは簡略版。この作品では全てのZポーズをして最後にフェアリーZのポーズをすることで本来の力を発揮する。
ちなみに順番はSMのアニポケのエンディングから。あの曲好き。
発動するとカプ達が究極合体しレジギガスみたいな巨人へと姿を変える。攻撃全てがZワザとなるつよつよフォルム。


ハウ
遂に島キングに。おめでとう。土壇場ではあったがハラから既に自身以上と期待され継承した。
断ればハラがカプの舞をやってくれたがそうなるとカプの出力はもうちょい下がっていた。


Zパワー
独自解釈の塊。この作品では人に分け与えたり出来る。


Zマックス
完全オリジナル。ダイマックスエネルギーの代わりにZパワーを無理やりバンドに詰め込んだ末に可能となった力技。カプにしか出来ないため今後登場予定無し。
同じ鉱物ならZパワーも入れれるやろと無茶ぶりされ、負荷に耐えきれずバンドは粉々に破損した。
ちなみにウーラオスの技名は適当。アイテムがあるならレンゲキZとなる。
キョダイマックスウーラオスが背後にイナイレの化身、ジョジョの幽波紋のように出現し、オラオラ殴りまくる技。


アンカー
有り余る力とZパワーを惜しみ無く絞り出した。通常の人間なら何人も死んでる量。流石にアンカーも無事ではなく流血、失神した。多分復活したら死の淵に追い込まれた事でパワーアップしてるヤベー奴。



ダイマックスバンド
Zパワーを無理やり注ぎ込まれてぶっ壊れた。
一応マスター道場に予備がある。



ヨウ
ホウエン地方からすっ飛んできた。
何度もZワザを繰り出せる力は持ち合わせているのだが、ウルトラネクロズマの燃費がヤバすぎるせいで一発でぶっ倒れた。いつも笑顔を絶やさないポーカーフェイスだがこの時ばかりは息絶え絶えで死にかけてた。緊急時以外はネクロズマを合体させない。(過剰だし自身も死にかけるしソルガレオも嫌がるため)



メガラティオス
ユウキに頼まれたのでヨウを送り届けた。マッハ4で飛ぶことが出来るが、人間を乗せてなのでかなりスピードを落としている。かつての厨ポケ。



ソルガレオ
ほしぐもとは別個体。月輪の湖でのイベントの個体。
ネクロズマとの合体は痛いし不快なので嫌い。



ネクロズマ
化け物。土下座ポケモン。
ウルトラバーストすると絶望の皆のトラウマ、ウルトラネクロズマへと変貌する。
Zワザは糞燃費。ヨウが一瞬でカラカラに。一度撃つと一週間くらいヨウが歩けなくなる。
ネクロズマへの負担も大きくZパワーが補充されたとしても連射は不可能。



ウルトラホール
実はウルトラネクロズマのZワザなら破壊可能。これが例外枠。
ただし条件が2つあり、1つはそのウルトラホールのfallとなった存在がウルトラボールにて捕獲、もしくは送還されていること。
閉じることは出来るが結局繋がりは断ち切れていないのですぐまた開く。

もう1つは今回の様にウルトラホールがひとかたまりになっている事。
普通に回数的な意味で1度しか撃てないのでそれが外れたりfallを見逃し再度開いてしまうとチャンピオンも倒れるので打つ手が無くなる。

つまりウーラオスのZマックスは無駄ではなく、なければウルトラネクロズマでZワザは撃てない状態であったのだ。(ウーラオスの下り必要あった?という質問潰し)



次回でアローラ編は終わりです。ではよいお年を!

次の話なんですが久しぶりのガチバトル回です。描写の仕方なんですがどちらがいいでしょうか?

  • 実況や解説を入れる
  • 今まで通りトレーナー間だけで完結
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