【ポケモン】人生を安価で decide…エンジョイエンジョイね【転生掲示板】 作:ユフたんマン
ともあれそちらは完結したのでまたこの作品を中心に執筆していきますのでご容赦ください!
ブルーベリー学園、リーグ部の部室ではアンカーとゼイユの二人は事務作業に没頭していた。
他の部員は全員出払い、部室にはキーボードを叩く音と二人の会話のみが響く。
「そういえば…」
ゼイユが何かを思い出したかのように口を開く。
それにアンカーは何だ?と作業を続けながら耳を傾ける。
「キタカミの鬼退治フェス、負けた方が勝った方の言う事を聞くって話だったわよね?」
「あぁ…そういえばそんなこと言ってたな…けど俺ってば既にゼイユの無茶振りも結構聞いてるんだが…」
「それはそれ、これはこれよ」
「なんて理不尽な」
「明日空いてるわよね?出掛けるわよ」
「明日はBP集めの予定「空いてるわよね?」はい、空いてます…」
「ライモン行くゾ!アンタは荷物持ち!」
「あいあいさー」
拒否権などあろうはずも無く、強制的に明日の予定が決まってしまったアンカーの顔は死んでいた。
▽▽▽
ライモンシティ、稲妻煌めく輝きの街。
その南、4番道路との境目に存在する大型商業施設。
その名もジョインアベニュー。
通りは、色とりどりの看板と呼び込みの声で満ちていた。
アクセサリーショップ、衣料店、屋台、育成グッズ専門店等、あらゆる店が肩を並べる活気の塊のような場所。
「これとこれとこれ…これもいいか…こっちの方がいいかしら…」
ゼイユが次々とカゴの中に商品を積み上げていく。
「買いすぎじゃねぇか?」
「いいのよ偶には。普段学園じゃ使わないんだしちょっとくらい贅沢してもバチは当たらないわよ。はい、試着してくるからカゴ持ってて」
ぽん、とカゴを押し付けられる。
そして数分後、試着室のカーテンがしゃっと開いた。
「どう?」
最初の服はシンプルなワンピース。黒を基調に、差し色の紫が入っている。
「似合ってんじゃん」
「私が選んだんだから似合うのは当たり前よ。次行くわ!」
ばっとカーテンが閉まる。
その後も色々と試着し、次々とお披露目していく。さながらそれはファッションショーとでもいうべきか。
「ところでアンタ、よく恥ずかしげも無く綺麗だの歯の浮いたような台詞で褒められるわね…まあ私が美しいのは周知の事実だけど」
「そうだな、実際どんな服でもゼイユに似合うし」
「流石ねアンカー。私のことしっかりわかってるじゃない」
試着した服は全てアンカーの持つカゴに押し込まれた。
「じゃあ次はアンタの番ね」
「は?」
「アンタいつも制服かモノクロの同じ服でしょ?偶には他の服も着なさい」
「俺のか……?別にいいって」
「拒否権は無いわ」
ゼイユは迷いなくラックから服を抜き取っていく。
「これと、これ。あとこれも」
「ちょ、待てよ!多いって!」
ゼイユに着せ替え人形にされたアンカーは心做しかゲッソリとしながら、選ばれた数着を購入。
既にアンカーの両手には、もはや指が見えないほどの紙袋。
会計を終えたゼイユがほくほくとした顔で歩いてくる。
「はいよろしくね」
微笑みながらさらに紙袋が追加される。
「人の心とか無いんか?」
そんなこんなで店を出たゼイユは満足げに周囲を見渡す。
「うーん……美容品に服、ネリネへのお土産…これくらいでいいかしら」
「これくらいって量じゃねぇだろ」
アンカーは袋を持ち直しながらため息をつく。
「ポケモンの道具はいいのか?」
「道具? そんなの購買で買えるじゃない」
「いんや、意外とこういうとこで掘り出し物が見つかるかもしれねぇぞ?」
アンカーが顎で示したのは、煌びやかな看板が並ぶジョインアベニューに似つかわしくない少し古びた道具店。
「本当?」
半信半疑のゼイユと共に入店。
並んだ埃っぽい棚には年季の入ったモンスターボールケースや対戦に使う道具、進化道具等がずらりと並んでいた。
「意外に品揃えはいいのね…」
「見て回るか。お宝の気配が…」
結果だけいえば、特に何も無かった。
「何がお宝の気配よ…期待を返しなさい…!」
「いてっ、そういう時もあるって」
見事に期待を裏切られ、肩すかしを食らったゼイユはアンカーを小突き、ため息を吐く。
「はぁ、もういいわ。ところで時間はまだまだ余裕あるけどその荷物はどうする?私が買っておいてなんだけど何をするにも邪魔よね?…もう帰る?」
「つってもせっかくライモンシティに来たしなぁ…今帰るのも早いし…配送して貰うか?」
その時。
向かいのゲームセンターから、聞き覚えのある声が飛んできた。
「おやおや、奇遇だねぇ。おふたりさん、もしかしてデート中かぃ? お熱いねぃ」
ひらひらと手を振るのはカキツバタ。
「はぁ!?べ、別にデートじゃないから!!
ってか何でアンタがここにいんのよ!?」
デートの単語に、ゼイユの頬が一気に赤くなる。
一方でアンカーは首をかしげる。
「いやほんとに何でいるんだ?今日ツバっさん、リーグ部の当番じゃなかったか?」
空気が止まった。ゼイユはすぐさまスマホロトムを取り出す。
「……えーっとぉ? 人にはこう、気分転換というものがだねぃ」
「もしもしネリネ? 今ちょっといい?ライモンシティでカキツバタ見つけたんだけど…うん、えぇ。やっぱり…」
「じゃあオイラはこれで! 若人の青春を邪魔するのも野暮ってもんさ!」
そそくさと逃げようとするカキツバタの肩を、ゼイユががしりと掴む。
「待ちなさい。アンタサボりね」
ゼイユのスマホロトムが点滅し、画面が切り替わる。
その画面にはリーグ部部室にいるネリネの姿があった。
『謝罪……出掛けている最中に手間を掛けさせましたね。……適当にカキツバタをエアームドタクシーに放り込んでおいてください。後はこちらで回収しておきます』
「わかったわ。ついでに私達の荷物も運んでもらいましょ」
「よし!ツバっさんよろしく!タクシー代は俺が出しとくからな!」
「なんかオイラの扱い雑じゃね?」
「日頃の行いのせいだろ」
こうして、荷物と共にカキツバタは空の彼方へ連行された。
「よし、行くか」
「そうね。行きましょ」
二人は何事もなかったように歩き出した。
その後も2人はライモンシティを満喫した。
屋台で食べ歩き、ポケモンミュージカルやビッグスタジアムを軽く見学。
元ライモンジムに設営されたジェットコースターに乗り込みながら、職員のトレーナーとライディングバトルを興じたり。
買い物の疲れなどどこへやら、気づけば日も傾いていた。
そして辿り着いたのは、この街の象徴とも言える観覧車。
「デッカイわねぇ…」
ゼイユが空を見上げて呟く。
その時、どこからともなく野太い絶叫が夜空に響く。
「ああ……虚しい……なぜだ……なぜ彼は消えてしまったんだ……!
あの日、あの瞬間、確かに僕たちは……同じ景色を見ていたはずなのに……!僕たちは、愛し合っていたというのに……!!」
膝から崩れ落ちる。
「今日もこうして……ひとり……彼を忘れられず……この場所へ来てしまった……!」
「……なにあれ」
両手を天に伸ばし、警備員に連れて行かれた山男に対しゼイユが小声で呟く。
「見るな、不審者だ」
アンカーは即座に視線を逸らし、ゼイユの肩を軽く押して方向転換させる。
二人は何もなかったかのように、チケット売り場へ向かった。
▽▽▽
観覧車のゴンドラが静かに上昇する。
眼下には稲妻のように煌めくライモンシティの夜景。
さっきまでの喧騒が嘘のように静まり返っていた。
「今日は……まあ、悪くなかったわね」
「そうか、そりゃよかったぜ」
「アンタが荷物持ちとして有能だったからかもね」
「それって褒め言葉か?」
ゼイユは足元の小さな紙袋を手に取る。
「これ、アンタに」
差し出されたのは、手首まで覆うトレーニンググローブ。
黒を基調に、白のラインが走るシンプルなデザイン。
手の甲に補強パッドが入り、掌はしなやかに曲がる素材が使われている。
「……俺に?」
「そうよ、好きでしょ?こういうモノクロ。それに今使ってるの、もうボロボロだったじゃない」
アンカーはゆっくりと右手に通す。
きゅっとベルトを締めると不思議と手に馴染んだ。
手を握り、開く。これを数回繰り返す。
「いいなこれ、しっくりくる」
「当然よ。私が選んだんだから間違いは無いのよ。バトル馬鹿には丁度いい装備だし」
「ひでぇ言われようだ、俺の心は硝子だぞ?」
観覧車が頂上に差し掛かるその瞬間、街の光が2人を包み込む。
「ありがとな、ゼイユ」
ゼイユは一瞬だけ目を逸らし、そっけなく肩をすくめた。
「別に。大したことじゃないわよ。……でも、本気で感謝してるなら…」
くるりと向き直り微笑む。
「またどこか付き合いなさい。次も荷物持ち、よろしくね?」
「結局それかよ」
「私みたいな美少女と出掛けられるんだからご褒美でしょ?」
頂上を越え、ゴンドラはゆっくりと下降を始める。
夜景の中、二人の時間だけが少しだけ長く続いていた。
次の話なんですが久しぶりのガチバトル回です。描写の仕方なんですがどちらがいいでしょうか?
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実況や解説を入れる
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今まで通りトレーナー間だけで完結