オーバーロード~至高のもう一人は救済を望む〜   作:アバダケダブ郎

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10.神の名を騙るやつに碌な奴はいない

輝きを失いつつある夕日が地平線と交わり、夜の闇に飲み込まれていく草原一帯を

眩い光が昼のように照らす

 

純白の翼を広げ、ゆっくりと降臨する六枚羽の巨大な天使

あまりにも神々しい姿に感動すら覚え、思わず息を飲む

 

「おおおおー」

 

敵対しているものの、救世主の降臨に感極まって祈りを捧げ始める法国軍の気持ちをなんとなく理解できてしまう

 

「この天使が最大の切り札?」

 

「そうだ

ガゼフにはこの宝を使うだけの価値があると判断した」

 

勝利を確信しきった、陶酔のままに宣告するニグン。

もはやこちらのことなど眼中にないとばかりに

 

 

『あれが最上位天使…』

 

『違います』

 

『え?』

 

きっぱりと否定された。

 

『上から数えて四番目といったところですね。

レベル50ぐらいだったはずなので、ふうかさんなら確定で占拠できますよ』

 

言われたとおり占拠<オーバーライド>を向けてみると、本当に自動成功とでた。

え、あれで最上位じゃないの?

 

「なんということだ…」

 

「恐ろしいか?おびえるのも仕方がない」

 

「この程度の稚拙なお遊びに警戒していたとは」

 

露骨にニグンの機嫌が悪くなる

 

「お遊び?何を言っている?

人類では勝てない存在を前にハッタリとは哀れを通り越して滑稽だな!

そこまで言うならお望み通りお前から断罪してやろう

 

聖なる極撃<ホーリースマイト>を放て!

人が決して到達できない第七位階魔法、魔神すら消滅させる神の御技を前に己が無知を悔い改めながら死ぬがいい!」

 

手に持った笏を砕き、詠唱を始めた最上位天使

上空に光の魔法陣が出現し、極太の光線が降り注ぐ――

 

神聖魔法反射<リフレクト・セイント>を受けて、魔法を放った天使自身に向かって

 

「オオオォオオオオ…!」

 

光の奔流に自ら飲まれ、地面に叩き落とされる天使

流石に一撃死するようなことはなく、ヨロヨロと覚束無い動きで再び浮上を始めた

 

「な、なんだ?何が起きている…?なぜ善なる極撃が主天使自身に!?」

 

「フフフフフッ、ハハハハハ!

どうやらお前の信じる神はご立腹のようだぞ?なあ神官」

 

茫然自失といった有様のニグンを嘲けながら、手を後ろに回してくいくい、と主天使を指す

…モモンガさん、性格が悪いってよく言われない?

ゲーム時代のPKとか、ボス戦しているギルドに後ろから襲いかかってたもんなー

それで恨み買いまくったから1500人ものプレイヤーに同盟組んで攻め込まれぐらいだ

大体師匠(ウルベルト)の作戦だけど ノリノリでやってたから同罪だ

 

占拠<オーバーライド>:威光の主天使<ドミニオン・オーソリティー>

 

モモンガさんから離脱して主天使に乗り移る。なんの抵抗もなく、すんなりと憑依できたと思ったら

ズキリと体中が痛み出す。おおう、結構重症

というか、機械みたいな見た目してるのに生き物みたいな痛みの感じ方なんだ

 

唖然と見上げてくる法国軍を見下ろして、口――どこにあるかも分からないが、感覚だけはある――を開く

 

「問おう、お前たちはなんだ?」

 

「わ、我々は…神の御心に従い、人類を守護し、正しき道に導くスレイン法国陽光聖て――」

 

「人類を守護し、正しき道に導く道標たるべき神の下僕を名乗っておきながら…

くだらない謀略を巡らし、守るべき無辜の民を虐殺し、神の名を貶め…」

 

「あっ、あっ…」

 

わなわなと口を震わせ、言葉を絞り出そうとするニグンを焦らすように、ゆっくりと背を向け

モモンガさんに向き直る

 

「よりにもよって我らの主神、アインズ様その人にこの刃を向けさせるなど

己が犯した罪の深さを知れ!」

 

『ちょっ!?何言ってんですかふうかさん!?』

 

『人を勝手に女神に祭り上げて、自分だけ神官ポジションで逃げ切ろうたってそうは行きませんよ』

 

NPC達から見てずっとナザリックを支えていたモモンガさんを差し置いて、

出戻り組の私がアインズ・ウール・ゴウンの名前を掠め取って、挙句の果てにラッフィーがイメージアンバサダーとか

いくら忠誠心ガンギマリでもブチギレるに決まってる

ヘイト分散のためにもちゃんとモモンガさんを主神に祭り上げとかないと

 

「アインズ殿…いや、あなた様は一体…」

 

絶望のあまり武器を取り落とし、膝から崩れ落ちる法国軍を気に掛けつつ、

恐る恐るとたずねるガゼフ

 

「バレてしまっては仕方がないな

そう、私こそがアインズ・ウール・ゴウン三大神が一人、アインズである」

 

「先程はやはり、アインズ殿…いや、アインズ様が私たちに力を与えてくれてたのですね

村人だけじゃなく、私たちまで助けてもらい、本当になんと礼をすれば…!」

 

拳を地面に付け、深々と跪くガゼフに続いて、兵士たちも慌てて跪く

 

「それは違うとも」

 

すっと嫉妬マスクに手をかけ、ゆっくりと外すモモンガさん

 

「私は死しか与えられない、陰なる存在。

戦士長たちを見守り、加護を与えてくれていたのは

今主天使を介して我々に声を掛けてくれている…

 

アインズ・ウール・ゴウンの真の主、死者をも蘇らせる陽たる存在、女神ウールだ」

 

モモンガさぁーーん!?この状況でなに特大の爆弾をキラーパスしてくれてんですか!?

 

おお、と場の全員の視線がこちらに集まる

なんでそんな禍々しい骸骨魔王の話すんなり信じてんの少しは疑え!?

と思ったら最上位天使が洗脳なんてされる訳ないからそれに降臨しているのは本物の女神に違いない!

とニグンが雄弁していた。お前が敵かーー!!

 

くっ、ここでモモンガさんの言葉を否定したら演技がバレてしまう

かといって逃げ出しても認めたことにされかねない

 

つまりありのままモモンガさんの言葉を受け入れるしかない――なら!

 

「生と死は二つにして一つ。

罪を犯したものにアインズが死の裁きを与えるように

罪なきものたちに私は生の加護を与える

私たちに上も下もなく、それゆえに三大神なのです」

 

「で、では…第三の神には、一体、どなたが…?」

 

黙れ。それ以上余計なことを聞いたらその口縫い合わすぞマルフォイ。いやニグン

 

「それは――」

 

「「「それは…!?」」」

 

『なんて言います?ちょっと急に設定が思い浮かばないんですが』

 

『だったら意味ありげに「それは」とか言うなー!!』

 

なんか法国兵たちが色んな色のシンボルを取り出してこれみよがしに掲げながら

期待した目で祈りを捧げてるんですけど?

こうなったら全員の注目がモモンガさんに集まってる今のうちに逃げるか?

いや、それで変な設定生やされたら目も当てられない!

 

「それは…これから生まれるであろう、可能性の神、ゴウン」

 

「つまり…お二方の、御子息ということでしょうか?」

 

ねぇこいつ本当黙らせていい!?

 

いかん、モモンガさんがフリーズしてる

え、これ私が否定しなきゃいけない流れ??いや、否定するのは絶対条件だけど

どういう設定にしたらいい??

 

ヒュン

ヒュンヒュンヒュン

ヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュン

 

完全にフリーズしたモモンガさんの体から鎮静のエフェクトが連続で発生する

その間隔がどんどん短くなっていき――

 

「う、生まれるのですか…?」

 

深淵の息<ブレス・オブ・ザ・ディープ>

占拠状態の今なら発動できる攻性魔法でニグンの肺を海水で満たす。

そのままげぼげぼ吐いて溺死しろ

 

「「「ニグン隊長の口から羊水が!」」」

 

んなわけあるかー!!

 

「ヴォェ!!」

 

「「「生まれた!!」」」

 

ニグンの口から深海魚が一匹吐き出され、ピチピチとのたうち回る

あ、これ知ってる。確かクリオネって名前だ。神秘的な姿から流氷の天使と呼ばれている、

ブループラネットさんが一度でいいから生で見たいと常に口走ってたからよく覚えてる

 

――なんでよりによってこんなタイミングにこんなのが出てくるんですか??

 

「フゥ――ッ」

 

そしてモモンガさんも最悪のタイミングですっきりしたような声だしてんじゃない!

 

 

「水の神<ロールヒャッハー>様が再誕、いや、ゴウン様が降臨なされた…!」

「「「闇の神<アインズ>・光の神<ウール>・水の神<ゴウン>万歳…!万歳……!万歳…‥っ!!」」」

 

成し遂げた顔で果てたニグンに涙を流して狂喜する法国兵たち

その熱意にあてられ、関係ないはずのガゼフたちでさえ一様に涙を流し、神への賛美を口にする

 

大きく顎を落としたモモンガさん、羽ばたくことを忘れて一瞬落下しかけた私

そして衆人環視のなかピチピチとのたうち回るクリオネ

 

『と、とりあえずクリオネは回収しましょうか

ブループラネットさんが見たら喜ぶでしょうし…』

 

ねえ!この惨状でどうやったらそんなに落ち着いていられるの??

 




水の神=ロールヒャッハーはオリジナル設定です。まだ名前が出てないみたいなので
由来はロールシャッハとヒャッハー
多分モヒカン
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