オーバーロード~至高のもう一人は救済を望む〜 作:アバダケダブ郎
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法国軍と王国軍の衆人環視のなか、無言でニグンの前に行き、クリオネを掴みあげるモモンガさん
そのまま転移門<ゲート>――傍から見ると闇の隙間に放り込み、汚い物を触ったとばかりにローブで手を拭う
「アインズ様…!し、失礼を承知で、どうか、お答えして頂きたいことがございます…!」
足早に離れようとしたモモンガさんを、急いで口から海水を吐き切り、居住まいを正したニグンが呼び止めた。
なんでこいつ死なないの?
「いいだろう。ひとつだけ質問を許す」
「…!ありがとうございます!
では失礼ですが、アインズ様とウール様は…スルシャーナ様とアーラ・アラフ様であらせられるでしょうか?」
ヒュン
またモモンガさんが鎮静<カーム>を自分にかけた
そしてゆっくりと、勿体ぶって振り向き、法国軍を端から端へと流し見、
さらに一人ずつ、値踏みするようにゆっくり視線を泳がせ――
『ふうかさん、人間に失望したからその名は捨てた、的なアドリブをしてください』
『え?なんで?』
じっくり間を置き飛んできた、要領を得ない伝言<メッセージ>に困惑する
『…詳しくは帰ってから話します
とにかく今は、光の神アーラ・アラフのつもりで話を合わせてください』
切羽詰ったような、怒りに満ちたような、落胆したようなモモンガさんの伝言に
それ以上何も聞けなかった
「その名はもう捨てた。人間に、お前たちに失望したからだ」
「あ、アーラ・アラフ様…!」
喜びと絶望が同時に噴出したような形容の出来ないニグンの形相に
ますます訳がわからなくなる。さっきから何の話をしているんだ?
「神の力に酔いしれ、その本質を見ようともせず
私欲にまみれた正義を振りかざしあまつさえ!…とにかく、貴様達にはもはや何の哀れみも感じない
帰って貴様らの飼い主に今度こそ告げろ――貴様らの信仰する六大神は死んだ
これ以上その名を穢すならアインズ・ウール・ゴウンが貴様らの国に死を告げに行くと」
そう言い切り、話は終わりとばかりに上位転移<グレーター・テレポーテーション>で私ごとナザリックまで転移した。
■■■■
『さっきから何なんですか?話が全然見えないです』
いつか見た星空に照らされたナザリックの地上部分で、転移を終え開口一番に問いかける
ずっと蚊帳の外にされたせいか、自分でも刺々しい口調になっていることに驚く
『ネコさま大王国…輝煌天使ねこにゃんさんのギルドのこと、覚えてますか?』
『え?はい…確か、1500の時、情報を提供してくれた友好ギルドの一つですよね
モモンガさんにそっくりなスルシャーナさんっていう、死の支配者<オーバーロード>が…あっ』
『ええ、それからふうかさんが引退したあと、アーラ・アラフという方も新たに加入しています
さっき神官達が言ってた六大神というのは、ネコさま大王国のことなんですよ』
『じゃあ、やっぱり他のプレイヤー達も!?』
『…ええ、”来ていました”――”600年”も前に』
酷く落胆した声で、さきほど伝言<メッセージ>でベリュースから聞き出した
こちらの神話を語ってくれた
曰く、かつて亜人に虐げられ、滅亡寸前だった人間種を守り、導いてくれたのが光・闇・炎・水・風・土からなる六大神だった。
やがて時が経ち、六大神が一人一人と姿を消し、最後に残った闇の神スルシャーナも八欲王という八人に放逐されたという
…スルシャーナさんという例外はいたけど、ネコさま大王国は基本人間・亜人種がメインのギルドだ。
姿をけしたというのは、きっと寿命で…そして、アンデットで寿命がないスルシャーナさんも八欲王という人達に…
『どうして、スルシャーナさんが…!どうして600年も後なんだよ!!』
近くの柱に拳を叩きつけながら、普段の穏やかな様子からは想像も出来ないほど荒むモモンガさん
…スルシャーナさんはモモンガさんと全く同じ種族、クラスで、同じように最強装備で固めたため見た目までほぼ一緒で
頭上に表示される名前の長さとお腹の珠でしか見分けが付かないほどだ
そんな二人だから意気投合というか、ゲームの時でもしょっちゅう絡んでいて
スルシャーナさんが「モモンガさんの珠格好良いから似たようなの作ったよ!」
と珠まで似せてWモモンガをやりだした日には紛らわしすぎてヒーラーとして殺意を覚えたほどだ
…そんな仲のよかった人の死を、600年も遅れて知らされて
どんな言葉を掛けたらいいか、分からなかった
『それにスルシャーナさん達だけじゃない…600年もの間に他のプレイヤーが、
ギルドメンバー<みんな>が転移してきていたかも知れない
そんな長い時間が経ったら――』
それ以上を口にしてしまわないように、とばかりに一方的に伝言<メッセージ>を切るモモンガさん
「…AOGの加入条件は二つ
一つ、社会人であること
二つ、異形種であること
…ねこ主様(輝煌天使ねこにゃん)達は仕方ないですけど、スルシャーナさんは最後まで残っていたんですよね
もしかしたら、ギルドのみんなもなんだかんだで上手くやってるかも
絶滅寸前の人間種を救う、そんな派手なことをしてないだけで…」
骸骨顔で表情がないせいでモモンガさんの気持ちが分からない
だから、傷つけないように慎重に言葉を選びながら
「あまのまさんとか、知る人ぞ知る名工房!みたいな隠れ鍛冶屋を立てて、伝説の名匠になってたり
ホワイトブリムさんとか、各国に宮廷メイドを派遣して、影から世界を牛耳るメイドギルドを運営してたり
それから――」
「ありがとうございます、ふうかさん
…少し、一人にさせてください」
呼び止めるまもなく、転移してしまった。
伝言<メッセージ>を飛ばしても、繋がってくれない
怒らせてしまったのだろうか…昔からいつもそうだ
誰かが悲しんでいるのが見てられなくて、なんとか元気づけようとして
逆に傷つけてしまう
本当に、ダメダメだな
自己嫌悪に浸りながら、オールドガーダー達を従えたシャルティアがナザリック内部から向かってくるのを呆然と見つめるしかなかった
■■■■
「本当に申し訳ありんした!!
ほらお前も頭をさげんしゃい!!」
両膝を揃えて地に付け、頭を垂れる――土下座をしたシャルティアは
となりで立ったままのオールドガーダーの頭蓋骨を鷲掴みにし、地面に叩きつける
ゴンッ、と鈍い音を立てて四散した頭蓋骨を求めて、わしゃわしゃと手を泳がせる本体
…ナザリックに無限湧きするNPCなので、仕様通りなら一日で元通りになるはずだ
「至高の御方々の気配を感じ、急ぎ馳せ参じたでありんすが
急にモモンガ様の気配がナザリック内部に転移して
残られたフーリンカ様の他にも何やら悍ましい…失礼でありんす、天使の気配を感じて、
もしやと思い兵を招集しんしたが…」
私の気配に気づいて慌てて攻撃をやめたシャルティアだったが、命令に忠実すぎるオールドガーダーはそのまま槍を投げてしまった、と
「いと尊き御身を天使ごときどうにかせんししょうに!この失態を払拭せんしは、この身を御身に捧げるしか…!」
「ええ…。えーと、あなたの役目はナザリックの防衛、それを全うしただけです
むしろ、私やモモンガさn――モモンガの力を過信して何もしなかった方が問題なので
今回の件については褒めこそすれど責める道理がありません
そのオールドガーダーも、忠実に責務を果たしただけなので 罰を与えることは許しませんよ」
こんな風に言えばいいのかな?高圧的にし過ぎて、出戻りの癖に何を偉そうに!とか陰で言われてたら嫌だし
なんと慈悲深い寛大な処置を…ともはや定型文過ぎて慣れてきそうな応酬を受け流していると
オールドガーダー達の奥からズシンズシンと地鳴りが響き、肘が地面に着くほど長い巨人の腕部で体全体を支え、
人ごみ――もとい骨ごみの間を縫って、低空飛行するようにラッフィーがやってきた
「マスター…!無事に帰ってこれたのですね、安心しました…!
あの…、それは、マスターの新しい器、なのでしょうか…?」
心なしか不安そうにしている。そういえばこの子は私が他の誰かに占拠<オーバーライド>するのを嫌ってたんだ
慌てて解除すると、支配を逃れた主天使が暴れだし――今度こそシャルティアに一撃で沈められてしまった
「と、思わず叩き潰してしいまいんしたが、大丈夫でありんしょうか…?」
脱出するタイミングがなかっただけだから、特に問題はないとラッフィーに伝えさせる。
それよりモモンガさんのことだ。
ナザリックの中にいるのなら一先ずは安心だけど、こんな状況で一人にしたらどんどん嫌な方向に考えが行ってしまい、
取り返しのつかない事になってしまう
「にしてもこれは…魔封じの水晶でありんすか?
こんなものに頼らないと現世に留まれないなんて、ハリボテの天使らしいといいますか」
落ちていた魔封じの水晶をぞんざいに掴み上げ、ころころと掌で回すシャルティア
「魔封じの水晶、とても懐かしいです…
マスターもよく、ご自分の力を封じ込めて、分け与えてくださっていましたよ」
そういえばよく使ってたなー
ユグドラシルにはMP回復ポーション的な物がないので、MPを使い切ったら自然回復するまで何も出来なくなる
だからいざという時のため、回復魔法を込めた魔封じの水晶を複数用意してた
まあ、本質的にはラッフィー自身の魔力なんだけど
何故なら深淵の凝視<アビスゲイズ>はアイテムを使えない――というか、触れないので
占拠してラッフィーの体で魔力を込めるしかない
…ん?占拠<オーバーライド>も階位魔法だから、魔封じの水晶に込められるんじゃ?
いいこと思いついた
六大神とモモンガが仲良しなのはオリジナル設定です
シャルティアの言い回しが難しすぎてフィーリングで適当に書いてます