オーバーロード~至高のもう一人は救済を望む〜   作:アバダケダブ郎

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15.骸骨のどこに読める唇があるのか

「いやだーー!!死にたくない!!助けてくれええ!!」

 

「ム、レバーが折れたゾ!」

 

「あー!人間が仕掛けのところを足で押さえつけて動かないようにしてる

だめじゃんそういうの モモンガ様が待ってるんだから!」

 

「くっ…これは手痛い設計ミスですね。内部はもっとスムーズに作るべきでしたか…となると、巨大な一枚骨、鯨などの骨盤ですか…」

 

骨組みの邪悪な装置の中で全身黒革ボンデージに目隠しのひょろガリ細マッチョの変態が必死に抵抗したせいで、

力んだコキュートスが間違ってレバーをへし折り

やじを飛ばすアウラのとなりでメガネを抑え首を横に振るデミウルゴス

 

この際穴の生死はどうでもいいけど、精神衛生上人間の圧殺ショーとか絶対見たくない

憑依している骸骨にそんな圧を掛けてると、この場を収めることができる唯一の存在がようやく口を開いた

 

「よい、デミウルゴス 

新鮮な飲み物を私に献上したい、その一心で専門外にも関わらずこんな大掛かりな装置を作ってくれた

お前の忠義は十分に理解した」

 

「なんと勿体無きお言葉」

 

モモンガが声を発したことで装置に群がってあーだこうだ言っていた守護者たちが我に返り、

一斉にこちらに振り向き跪く

 

「我が朋友 風鈴菓のこの贈り物によって、今晩は私にとって、ナザリックにとっても記念すべき日になるだろう」

 

占拠<オーバーライド>の込った魔封じの水晶を掲げたモモンガにデミウルゴスがハッとなる

 

「それはフーリンカ様がお作りになられた…なるほど、そういうことでしたか!

いと尊きの御身の計り知れない叡智にかかれば、一つの矢にて三羽の鳥を射るのは至極当然のこと」

 

「どういうことでありんすえ?」

 

「牧場の食料改善などほんの些細な副産物、いと尊き御方が真に望まれるは――

ああ、モモンガ様 よろしければこの体、どうかお使いください!」

 

恍惚の表情で改まって臣礼を取ったデミウルゴスに、何かを察したシャルティアも急いで倣い

 

「いと尊き御身にぶしつけな願いとは重々承知でありんしが、どうかわらわのことも選択肢に入れてくれんなまし

わらわであれば、例え相手がデミウルゴスであっても 喜んで受け入れりんす」

 

え、ちょっと何の話?

デミウルゴスもシャルティアも先ほどの実験には立ち会ってたから

水晶の意味は知ってるはずだけど…

二人の言動で何かを察したのか、アルベドも同じようにラッフィー――憑いてるであろう私に――に跪く

 

「ああ、いと尊き御身!私も身も心も常に準備できておりますわ!

モモンガ様、やはり元気な世継ぎの母体にはには発育途中で止まってしまった未来性のない吸血鬼よりも、

生涯適齢期であるこの夜魔の方がよろしいかと!」

 

「『え!?』」

 

え!?何の話??

何か察したコキュートスも爺は爺であるゆえとか意味不明なことに頭抱えて混乱してるし

アウラもマーレも姉弟ならより純粋な力が~ といって それじゃ親近◯だろ!と周りから一斉に突っ込まれ

 

「な、何の話をしているのだ?」

 

「「「至高の御方々の世継ぎ作りのお話でございます」」」

 

困惑を極めたモモンガの問いに 決まっている、とばかりに守護者たちが一斉に応えた

 

『なんでそうなるーー!?』

 

あかん、モモンガさんがまたヒュンヒュンヒュンし始めた

この流れだとさっきの二の舞になりかねない

私が舵取りしないと

 

『ラッフィー 体借りるよ!』

 

「はい、喜んで!」

 

頷いたラッフィーに急いで占拠<オーバーライド>する

一瞬女性陣から物凄い気配がした気がするけどおそらく気のせいだ

 

「コホン、聞き間違いだと思いますが、先ほどから、一体何の話ですか?」

 

「はい、至高の御方々の婚礼にまつわるお話でございます」

 

そういって恭しく頭を垂れるセバス

よく見たらいつもの執事服ではなく牧師服で手には教典を携えている

ブルータス!

 

「私たちがいつ、どこでそんな話をしたのですか?」

 

「はい、人間どもの村をお救いに赴かれ、天使を操る軍勢を臣服させた時でございます

モモンガ様がアインズ、フーリンカ様がウール、そして生まれてくるであろう御子息にゴウンの名前を授けられ

アインズ・ウール・ゴウン三柱神として降臨されたことを

この目で確かに見届けました」

 

一部始終見られてた…?

そうか、遠隔視の鏡<ミラー・オブ・リモート・ビューイング>か!

 

「主人の安否を随時お見守りすることも執事の責務ですので」

 

安否以上に主人のプライバシーを守って!?

 

「でも声は聞こえないはずですよね?」

 

「読唇術でございます」

 

骸骨のどこに読める唇があるんですか??

 

「なによりモモンガ様よりフーリンカ様にワールドアイテムを授けられたこと

これを婚約の契と受け止めております」

 

WIのことどうやって知った?ユリ――はないか、あの場にいなかったし

でも目を合わせた途端必死に首を振り始めたから、まさか本当に黒?あ、首がすっ飛んだ

 

…いや、全員に伝わっている話なら広めたのは自分ではないという弁明行為で通る

じゃあ、犯人はあの埴輪か?

 

「ラッフィーより伝言<メッセージ>を頂き、急遽宴会から披露宴へと準備に切り替えさせていただきました

只今ソリュシャン・シズ・エントマの監督のもと第六階層にて式場の用意を進ませております」

 

ラッフィー!?なにしてくれちゃってんの??

って占拠してるから伝言<メッセージ>繋がらないか

え、なにその、なんでもすぐSNSにあげちゃう承認欲求モンスターみたいなノリ??

 

ヒュン

 

「ふふふ、そういうことか 確かに、片面的な情報を繋ぎ合わせればそのように見えなくもないな」

 

セルフ鎮静の儀式を済ませたモモンガが話に割り込んでくる

おい頼むからさっきマルフォイの時みたいに余計話をややこしくするなよ

 

「セバスよ、第六階層にいるプレアデスを呼び戻せ。式場の建設も中止だ」

 

「承知しました。出過ぎた真似申し訳ございません

此度の責はモモンガ様達のお考えを勝手に解釈した私の責任。いかなる罰も甘んじて受けましょう」

 

「怒っているわけではないのだよ

今日は…我が旧友のこともあり手放しには喜べないが、この世界に希望を見出せた日だ

この喜びをナザリックの皆誰ひとり欠かさず、共に共有したいと私は思っている」

 

旧友のところで一瞬だけ声のトーンが沈む。スルシャーナさん達のことだろう

衆人が見守る中、装置の中のベリュースに水晶を向ける

 

「骨の鎌<ボーン・シックル>」

 

装置の前の部分だけを魔法で切り開き、間髪入れず

占拠<オーバーライド>:ベリュース

 

どさり、とモモンガの体が崩れ落ちる

 

「モモンガ様!」

 

地に伏すその前に、目にも止まらぬ速さでアルベドとデミウルゴスが駆けつけ、急いで支えた

 

「本体が無防備になるのはユグドラシルの時と変わらないか」

 

装置の方から若く、しかし威厳のこもった男の声がし

皆一斉にそちらに振り向く

 

全身を黒革ボンデージに包んだ細マッチョの変態が、目隠しを外しながら装置の中から這い出てきた

 

「モモンガ様…!なぜ、そのような脆弱な人間に…!

僭越ながら、どうか!どうか私の体をお使いください!」

 

意識のないモモンガの本体を上座に座らせ、慌てて穴(モモンガ入り)の元に駆けつけるデミウルゴス

切羽詰まった様子の彼の肩を手で叩いて

 

「私はナザリックの皆誰ひとり欠かさず、喜びを共有したいと言ったのだ

そこには勿論、お前含まれている」

 

「モモンガ様…少し、少しの間だけ退室をご許可頂けませんでしょうか」

 

肩を小刻みに震わせ、必死に平成を装った声で呟くデミウルゴス

さすがに人間に憑くのは地雷だったか

 

「あ、ああ…許可しよう」

 

「っ、ありがとうございます!」

 

背中から羽を生やし、文字通り外に飛んでいったデミウルゴス

直後、扉の向こうから悪魔の慟哭が木霊した

 

「私は!なんということを!至高の御方々のお考えを読み違え、顔に泥を塗ったにも関わらず!

それでもナザリックの一員として!喜びを!共有したいと直に!直にお声かけいただいた!

うぉおおおん!!」

 

…心配した方のやつじゃなかったらしい。嬉しそうでなにより

ただこれだとラッフィーにも主導権返さないといけない流れなので、占拠<オーバーライド>から騎乗<ライド>に切り替えておく

 

感情を吐露し、憑き物が取れたような穏やかな顔でデミウルゴスが帰ってくるのを待ってから、

インベントリから漆黒のマントを取り出し羽織ったモモンガが話を続ける

 

「まずはカルネ村の件で、私たちが個人で勝手に動いたことを詫びよう

それに伴い、アインズ・ウール・ゴウンを名乗ったことも――

 

これより私の名を呼ぶときは、アインズ

風鈴菓を呼ぶときはウールと呼ぶがよい

 

異論あるものは立ってそれを示せ」

 

ぱーどぅん?

 

「ご尊名伺いました

いと尊き方々に絶対の忠誠を

アインズ様万歳!ウール様万歳!」

 

「「「アインズ様万歳!ウール様万歳!」」」

 

当然NOとは言えないデスティニーのNPCたちは斉唱する

 

『え、ちょっとモモンガさん!?何勝手に人を改名に巻き込んでくれちゃってんですか??』

 

『会話の弾みで…あと今後のことを考えるとこっちのほうが都合がいい気がするんですよ』

 

『…何を考えてるか不安しかないので、ほうれんそうしっかりお願いします』

 

本体が据え置かれた上座の前まで歩いていき、パサりとマントを翻してこちらに向き直る穴…じゃなかったモモンガ

そのまま守護者とその眷属たちに席に着くよう命じ、本来提供されるはずだった人肉ミンチジュースの代わりにメイド達にワインを注がせながら、

計画の全貌を話してくれた

 

まずアインズ・ウール・ゴウンの名を宗教として広め、ゆくゆくは各地にカルネ村のような拠点を作る

そうすればアインズ・ウール・ゴウンを知るユグドラシルプレイヤーがいればそこに訪れるはずだから、こちらの正体を掴ませないままコンタクトを取れる

 

AOGはいい意味でも悪い意味でも知名度の高いギルドだったので、後者のお礼参り(主にPKやギルド解体の恨み)も、分拠点をデコイにすれば

リスクを最小限に抑えられる――ということらしい

 

「種は播かれた あとは実るのを待つだけ

お前たちに厳命する!アインズ・ウール・ゴウンを不変の伝説にせよ

 

地上に天空に海に、この世界の知性を持つ全ての者にアインズ・ウール・ゴウンの名を知らしめろ

――こちらの世界に来ているかも知れない友たちの元に――その名が届くように!

 

アインズ・ウール・ゴウンに栄光あれ!」

 

――乾杯!

 

モモンガ――もといアインズの演説で場の空気が最高潮に高まり、各々が杯を高く掲げ

 

「「「アインズ・ウール・ゴウンに栄光あれ!!!」」」

 

…あれ、これ流れ的に私食べれなくない??

歓喜の声を上げ、献杯するラッフィーの背後に憑きながら、肝心なことに今更気づいた

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