オーバーロード~至高のもう一人は救済を望む〜   作:アバダケダブ郎

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19.冒険者の掛け合いはホモホモしい

「止まれ!どこから来た?エ・ランテルに何の用だ?」

 

商人らしい立派な馬車の列に並ぶこと数刻

漸くこちらの番になり、検問の兵士が問いかけてくる

 

「カルネ村から来た、要件は物資の買い足しだ」

 

何やら首から下げた木の板を見せるエンリ父

 

「そちらの三人は?」

 

木の板を確認した兵士が、今度は訝しげな視線を投げてくる

 

「私達は護衛だ」

 

とロンデス

 

「農民の護衛にしては偉く立派だな

冒険者か?プレートは?」

 

全身フルプレートのモモンガと私を見比べながら、掌を上にしてくる兵士

 

「遠い地から来たのでね、まだない。これから冒険者ギルドに登録しにいくところだ」

 

「その顔立ちは…南の方からか

わかった、とりあえず顔を見せてくれ 中身が骸骨だったーーなんて洒落にならないからな」

 

こちらの顔を一瞬凝視して、そっぽを向いた兵士は

打って変わって陽気に笑い飛ばす

 

…あながち間違ってないからリアクションに困る

まあ 今のモモンガさんは中身ちゃんと人間(元)なので問題ないが

 

わかった、と兜を外したモモンガにロンデルが瞠目する

 

「ベリュース隊長!?」

 

「え?」

 

「え?」

 

モモンガ、兵士

それぞれ別の意味で驚く

 

「誰のことかな?他人の空似じゃあないのか?世の中に同じ顔の人は三人はいると言うしな」

 

「隊長?何の話だ?まさか貴様、帝国の間者じゃないだろうな!」

 

露骨に目を泳がせて言い訳するモモンガさん。下手くそか

幸い兵士の方がインパクト強くてそれどころじゃない

 

「失礼、以前所属していた傭兵団の隊長に似ていたのでつい…

安心してくれ、これでもちゃんと王国側だ」

 

そう言って何かのシンボルを見せたロンデスを、心底軽蔑しきった目で兵士が一瞥する

 

「死を撒く剣団…蛆虫が、この街にいる間は足元に気を付けるんだな」

 

「もうとっくに脱退したよ」

 

「ふん…通れ」

 

去り際に「あの男には気をつけろよ」と兵士に耳打ちされ、何が何だか分からず

適当に相槌を打つしかなかった。

 

■■■■

 

「死を撒く剣団というのは、この一体を根城にしている傭兵崩れの集団です」

 

検問を超えて冒険者ギルドに向かう道すがら、さっきのことを説明してくれるロンデス

商隊を襲い、人を攫う犯罪者集団だが、毎年行われる王国と帝国の戦いで王国に付いて戦うので

看過されているらしい

 

そんな集団のシンボルをなぜ持っているかと言うと、元々潜入工作になる可能性も考慮し調達してあるとのこと

なんでも彼が所属していた陽光聖典というのはただの兵隊じゃなく、特殊工作部隊らしい

意外とエリートなのかこの穴

 

『え、どうしたんです?じっとこっちを見て』

 

お前じゃねぇよ

 

冒険者ギルド前まで送って貰い、

このまま安宿に直行するエンリ夫妻とロンデスに別れを告げる

 

すっかり日が傾いてるというのに、人で賑わうギルドの暖簾をくぐると

一気に視線が集まるのを感じた

警戒、好奇

遠慮なく値踏みする視線に耐え切れず、モモンガの後ろに隠れるようにピッタリくっ付いてカウンターまで行く

 

「冒険者ギルドへようこそ、どういったご要件でしょうか?」

 

「冒険者に登録したい」

 

高価なフルプレートに威圧的な態度に気圧され、かしこまりましたと直ぐに書類を用意する受付

 

「ではお名前と、職業の記入をお願いします

魔法詠唱者の場合は、何階位までの魔法を使えるかも記入してください」

 

「ふむ…名前はモモン、職業はご覧の通り戦士だ」

 

『ンガは?偽名にするにももうちょっと捻ってくださいよ』

 

『下手な名前をつけると絶対茶化すから嫌です』

 

チッ、面白みのないやつ

というかこれ、こっちも似たような名乗りしか出来ないパターンじゃ

 

「フーリン、職業はディーヴァ…いえ、プリーステスです

第6階位の信仰魔法が使えます」

 

第六階位!?と受付が目を剥く

こちらの世界だと第三階位でも相当凄いらしいので、相当なんだろう

 

チマチマと下っ端冒険者をやるより、一気に名声を高めて目立つことが目的なので

自重しないことになっているが

 

視線が痛い…

 

「失礼ですが、何か証明する方法は?

階級詐称はかなりの問題になりますので」

 

「第六階位魔法の大治癒<ヒール>が使えます

損傷した四肢を再生できるので、負傷者がいれば証明できますが」

 

「それは…」

 

受付が難色を示す。まあ、急に身体欠損の負傷者を探してこいなんて難しいよね

 

「なあ、おい その話は本当か?」

 

遠巻きに見ていた冒険者達の中から、痩せこけた色白の魔術詠唱者風の男がおずおずと挙手する

 

「ええ、本当です」

 

「目は治せるのか?耳は?それから舌と、四肢と…っ、とにかく、酷い状況のやつを

治せるのか?」

 

「た、多分…」

 

嗚咽混じりに症状を並べていくその男に思わずゾッとする

目も耳も舌も、それに四肢も!?…どれだけ悲惨な状況なんだ

 

「…その人は今どこに?」

 

「この街にはいない…南の、かなり遠い場所だ

なあ、あんた 本当に…本当に治せるんだな?信じていいのか…?」

 

『ふうかさん、あまり深入りするのは良くないですよ

第一、そんな遠い場所に行く余裕も』

 

『それはそうですけど…でも、飛行<フライ>を使えば――』

 

そこまで言いかけて、モモンガに遮られる

 

「悪いが私達は冒険者登録に来たのだ

実力を証明するためだけにそんな南の遠い場所まで行くわけにはいかない」

 

「っ、それなら…!」

 

すっとナイフを取り出した男に、その場の全員が身構える

何をする気だ、と誰かが怒号を飛ばす間もなく――

 

男は自分の目と、耳を貫いた

 

「それなら、ここでやってみせてくれ…俺で!」

 

片目片耳から血を流しつつ、こちらに近づいてくる男があまりにも悍ましく、

思わずモモンガの後ろに隠れてしまう

 

「それ以上近づくな――」

 

チャキ、と抜刀し威嚇するモモンガ

違う、そういう意味じゃない

 

突き出した刃を残った片目で呆然と見つめ、乾いた笑いを漏らす男に手を向ける

 

「ヒール」

上位完全治癒<グレーター・フル・ヒーリング>

 

占拠<オーバーライド>中は魔法の威力が憑依対象/自分のレベルまで低下する

レベル60台のナーベラルでは大治癒<ヒール>を唱えても、第三階位にまで威力が落ちてしまうので、

第十階位の治癒を念じると、天空から注いだ光柱が男を包み、慈母の如き笑みを携えた石膏作りの天使像が舞い降り、その指先で男の目に触れる

瞬間、時間が巻き戻るように血も傷も癒えていく

 

フェードアウトしていく光のなか、

茫然自失と佇む男の目から一筋の涙が流れ、続いて耐え切れないとばかりに嗚咽が慟哭に変わった

 

「あれが第六階位の信仰魔法…!」「奇跡だ…」「聖女様…!」

 

荒くれ者ぞろいで信仰心の欠片もなさそうな冒険者たちが跪き祈りを捧げてくる異様な光景

 

『ふうか様?』

 

『…いやいや、あんなの不可抗力ですよ!目の前で目と耳を潰したんですよ!?しかも自分の言葉のせいで

やっぱり嘘でした!って言えるわけないじゃないですか!』

 

背中をこっちに向けたまま冷やしてくるモモンガに慌てて弁明する

 

『…まあ、ふうかさんらしいんですけど

ほんと、程々にしてくださいよ 女神ウール様だけじゃなくて聖女フーリン様まで掛け持ちする気ですか』

 

『マジでごめんなさい』

 

そんな伝言<メッセージ>をやりとりしてるうちに、慌てて姿を消した受付に連れられ、アフロの男が二階から降りてきた

 

「私はプルトン・アインザック。この支部のギルド長をやっているものだ

フーリン君といったね、さっきの信仰魔法は君が使ったのかね?」

 

「え、ええ…そうです」

 

「失礼だが、法国の巫女姫がお忍びで…という訳ではないんだね?」

 

「違います」

 

「それなら竜王国の…」

 

踏み込んできたアインザックの前にモモンガが立ちはだかる

 

「アインザック殿、冒険者というのは実力さえあれば過去は問わないと聞く

悪いが、そういった詮索はやめて頂きたい」

 

「あ、ああ…すまないね、あまりにも規格外の出来事に気が動転してしまった

君は、彼女の仲間のモモン君だったかな?

君たちのような実力者が冒険者になってくれるのは大歓迎だよ

ようこそ、冒険者ギルドへ」

 

と、二本の鈍い赤色の金属板を渡してくる

 

「カッパー…か」

 

「ああ、決まりでね、どんなに実力があっても

それに伴う実績がなければカッパーからだ

幸いここは辺境で、高難易度の依頼も多い。依頼をこなし実績を積めば、直ぐにでもミスリルになれるだろう」

 

「ミスリルとは随分と見くびられたものですね」

 

二枚のプレートを抜き取り、不満を隠すことなく声に載せるモモンガ

 

「ほう…自分たちなら、その上を行くと?」

 

「第六階位の信仰魔法を使える魔術詠唱者である彼女には想像の通り厄介事が絶えない

その全てをこの剣で叩き切ってきた…と、言っておこう」

 

「それは、楽しみだ」

 

フフフ、フフフ と大の男ふたりが不敵に微笑み合う

なんか妙に通じ合ってる気がしてホモ臭い

 

「あんた…いや、あなた様、さっきの…私の家族の話だが…」

 

すっかりホモホモしい雰囲気で打ち解けあっている二人の奥から

先ほど自傷した男がおずおずと声をかけてくる

 

「遠い南の国、でしたね ここから――」

 

「それ以上の話は正式な依頼を通してくれないか?

先程は実力を証明するために治したが、無償ではない

人一人治すために遥々南の国まで行くのだから、相応の報酬を貰おう

相場はどれぐらいかな、アインザック殿?」

 

また勝手に人の話を遮って、ギルド長に目配せするモモンガ

 

「そうさね、聞く限り法国の巫女姫でも難しい大奇跡の行使だ

少なくとも船で運ぶ量の金貨が必要になるな

当然、そのような額の依頼をカッパーに振り分けることは出来ない

アダマンタイトクラスの依頼になるだろう」

 

「ちょっ――」

 

遠まわしに不可能と二人がかりでこじつけるやり方に抗議しようとして

ガン、とモモンガのガントレットで顔を塞がれ 視界に火花が飛ぶ

 

「ということだ、依頼を受けられるランクに直ぐなれるようこちらも努力するので

そちらは報酬の工夫を頑張ってくれ」

 

『モモンガさん!』

 

『アダマンタイトになる頃には南の国までナザリックの探索網が広がってるので

転移門<ゲート>でもなんでも一飛びできますから それまで待ってください!

今から徒歩で向かったら逆に時間が掛かりますよ』

 

『そうじゃなくて顔!乙女の顔をフルプレートで何鷲掴みにしてくれてんですか!?

これで顔が潰れてお嫁に行けなくなったらナーベラルのことモモンガさんが責任とって貰ってくださいよ!』

 

『そこ――!?』

 

テメエの髪の毛真ん中だけぶち抜いて永久脱毛されても同じこと言えんのか おお?

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