オーバーロード~至高のもう一人は救済を望む〜   作:アバダケダブ郎

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02.ユグドラシルII?いいえ現実です

どこまでも冷たく、虚で 伽藍堂の空洞にいるような違和感

個室の中は到底思えない異質な感じに目を開くと

 

先ほどまでと殆ど変わらない景色の中、派手なローブに身を包んだ髑髏の大魔王が、

あんぐりと口を開いたまま白骨化した指を宙に泳がせていた。

 

「おかしい…コンソールが呼び出せない…GMコールも、ログアウトも…!

ふうかさんの方はどうですか!?」

 

そういえばインターフェースなくなってますね。なにかの不具合かな

 

あれ、声が出ない?

 

「…あの、モモンガ様…いま、マスターの名前を…?

マスターが、戻ってきたのですか…?

教えてください!」

 

相手の気持ちを窺いながら、一句ずつ選んで組み上げたような、

儚げで、透き通った小鳥のような声が、耳元から聞こえた

 

驚いて振り向くと、ヨークシャーテリアを彷彿とさせる毛先の乱れた桜色の髪に、身体中ツギハギだらけの、

まるで不器用な手先で修繕に修繕を重ね、大事に大事にしてきた人形のような少女、ラッフィーがモモンガさんに迫っていた

 

「ラッフィー!いくら至高の御方の従者といえど、無礼が過ぎますよ!

モモンガ様、いかがなさいましたか?」

 

「あ、ああ…GMコールができないようなのだ」

 

ラッフィーを引き下がらせ、袖の皺を払ったモモンガは

白衣のNPC、守護者統括アルベドに問いかける

 

NPCが喋ってる?

それにモデリングが物凄く精巧になっている

髪の毛の一本一本、服の網み目までくっきりはっきり見える

 

問題は、さっきから必死に声を出してるのにまるで声がでない

体がないのだから、当たり前と言われたらそれまでだけど

さっきまではそれでもモモンガさん達と問題なく話せていたのに

 

これが物凄くリアルな夢じゃないのなら

サービス終了に合わせてユグドラシルIIへの移行だろうか

そうだとしても、不自然な点が多過ぎるけど

 

システムの不具合か、もしくは課金額の差?

重課金兵のモモンガさんと違い、定価のドーピングアイテムや有償NPCしか課金していない私は、お客様としてカウントされません、とか?.

 

とにかくGMコールは通じないし、何も出来ないなら強制ログアウトするしか無いか

 

ログアウトログアウトログアウト

 

強く念じていると、意識を引き上げられるような浮遊感を感じ

その感覚を掴んだままもう一度強く念じると

 

「…マジ?」

 

視界がモノクロ覆い尽くされた

さっきいた玉座の間に違いないのに、周りの景色がゆらゆらと陽炎のように揺れ動き、蜃気楼とも白昼夢ともつかない異質な雰囲気を放っている

そして何より異質なのが、さっきまでこの場にいた誰もが居なくなっていることだ

 

正直この状況に覚えはある

ターゲットされない、ダメージを受けない、死亡できない、代わりにターゲット出来ない、攻撃できない、特殊な空間に飛ばされ実質死亡扱いの特殊状態異常、放逐<エグザイル>

 

私のPC、風鈴菓の種族は深淵の凝視<アビスゲイズ>

常時放逐<エグザイル>状態にある特殊クラスで、お散歩ゴーストやライドンニートのあだ名が指すように、何の役にも立たない置物種族だ

 

通常の空間に干渉するには憑依系のスキルで誰かに憑依する必要があり、単体では何も出来ない

さっきまでの私は深淵の凝視<アビスゲイズ>向けに仕様変更した騎乗<ライド>スキルで自作NPCであるラッフィーに取り憑いていたから

いちいちコマンド命令で動かしていたんだっけ

 

でも、ターゲットが出来ない、そもそもターゲットが見えないのに、どうやって騎乗<ライド>のターゲットを取るんだろう?

 

…やばい。忘れた。詰んだかも

 

■■■■

 

あれから色々試行錯誤してみたけど、全部徒労に終わった。

スキルを発動する感覚というか、なんとなく使い方が分かった気がするけど

 

ターゲットがないので空打ちに終わるだけだ

他に何のスキルがあったか記憶を掘り返していると

何処からともなく何か線のようなものが伸びてくるイメージがして

それに意識を向けると、ツーンと、何かが繋がるのを感じた

 

「!…もしかして、モモンガさん…?」

 

「ふうかさん!よかった…!本当に良かったぁ~!急にいなくなって心配しましたよ!

今どこにいるんですか?」

 

「玉座の間です。ログアウトしようと念じてたら騎乗<ライド>を解除しちゃったっみたいで」

 

「ああ、それで…

それより大変なんです、NPC達が自我を持ったみたいで

いや、違いますね、どうやら私たち、ゲームの世界に入り込んでしまったようです」

 

「救急車呼ぼっか、黄色い方の。

…と言いたいところですけど、私も同意見です

ラッフィーとアルベトの掛け合い、生きてるようにしか見えませんもんね」

 

近くで見てたからわかる。あのデータ量の塊のわしゃわしゃな髪の毛の一本一本、表情筋や汗まで再現するなんてゲームじゃ絶対に無理だ

 

「見てたんなら助けてくださいよ…中身がこんなのってバレたらどうなるか分からないから

上位者らしく振る舞って誤魔化すのに苦労したんですから」

 

「そうしたいのは山々ですけど、声が出せないんですよね」

 

「ああ、そういえば。ふうかさんの種族って伝言<メッセージ>でしか発言できないんでしたね… 

ゲームの時と違って、魔法の仕様が変わってますから

使いたい魔法をイメージしてください

名前を唱えると、もっと発現しやすいみたいです」

 

「なるほどです。

実は発動だけならなんとなくこっちでも出来るみたいですけど、

放逐<エグザイル>されて周りに人がいないから、発動出来ないんですよね

どうやってターゲットを指定するんでしたっけ」

 

「放逐<エグザイル>状態だとまず生命探知<デテクション>の魔法でサーチする必要がありますね

 

すみません、ちょっとこっちでも大変なことになってまして、

ラッフィーさんをそちらに待機させてますので、騎乗<ライド>したらギルドの指輪で闘技場まで急いで来て貰えますか?」

 

切羽詰った声で早口で切り上げるモモンガさん。何かあったかな?

言われた通りに上位生命探知<グレーター・デテクション>を念じると、体の中から魔力のようなものが流れていく感じがして、

玉座の横と天井に無数のシルエットが浮かびあがった

サイズから見て玉座のがラッフィーだろう。そわそわしたように周りを見渡す仕草が如何にもそれらしい

 

そのシルエットに近づき、意識を集中させる

騎乗<ライド>

 

スゥーっと吸い込まれるように周りの世界が急速に色彩を取り戻していく。騎乗<ライド>成功だ。

 

あとは、伝言<メッセージ>を繋げて

 

「きこえますか…私は風鈴菓、今あなたの心に直接語りかけています…」

 

「…マスター…? 本当に、マスターなのですね…!帰って来てくれたんですね…!

2年4ヶ月17日7時間9分11秒ずっと、ずっと待っていました…!

嬉しいです…!とても!」

 

「え、ええー。…。ちなみにその時間って、システム的なログ的な何かをそのまま読み上げてる感じ?」

 

「えと、すみません…システム、とはどういう意味でしょうか…?時間のことは、マスターから頂いた、この懐中時計でずっと、数えていました」

 

重っ!?いきなり重いよこの子!?

あと首を180度周してこっちを向くんじゃない。

たしかに後ろに憑いてるけど、こっちの姿見えるの?自分でも見えないのに

 

「そ、それは大変だったねー。…。

とりあえず、首を正面に戻しときなさい

見ててヒヤヒヤするから」

 

「ご、ごめんなさい…マスターの声を、しっかり聞きたくて…

嫌な思いをさせたのなら、ごめんなさい…その、すぐに戻しますから…

だから、嫌いにならないでください…もう、いなくならないでください」

 

え、なにこのあざと可愛い生物。思いっきりハグしたい。抱き枕何処で売ってます?

 

言われたとおり素直に首を戻すラッフィー。…戻す際にゴキボキとか鳴っちゃいけない音鳴ってるのはスルーしよう。うん

 

「嫌いにならないから、安心して

それよりラッフィー、ギルドの指輪で6階闘技場に転移してくれる?

モモンガさんが呼んでるから」

 

「…分かりました。今すぐ、転移しますね!」

 

しっぽをぶんぶん揺らしているのが幻視できるほど素直に、弾んだ声で元気よく返事し、薬指にはめた指輪を前に翳すラッフィー

 

指輪が光った次の瞬間、目の前の景色が暗転した




キャラ紹介1

名前:風鈴菓
性別:女
年齢:22
レベル:100
種族:異業種(アストラル系)
種族レベル:亡霊<レイス>Lv.15
      告死精<バンシー>Lv.8
      深淵の凝視<アビスゲイズ>Lv.5
職業レベル:アーケイナー Lv.11
      奴隷主<スレイブマスター> Lv.9
      ドクター Lv.8
      マッドサイエンティスト Lv.4
      吟遊詩人<バード>Lv.13
      プリーステス Lv.15
      強襲者<アサイラント>Lv.7
      聖歌姫<クワイアーディーヴァ>Lv.5
説明:
座標を300mほど外したせいでアーコロジーの外に生まれ、煌びやかなアーコロジーの照明に照らされた汚水の中で卑屈に育った、社会人歴9年のベテラン社畜。小卒。
やまいことはSNSを通じて知り合ったペンフレンドで、かれこれ7年の付き合い。ユグドラシルも彼女に誘われて始めた
いろんなロケーション探索し、自作NPCを育てることに重みを置いたエンジョイ勢で、ろくな下調べもせず場当たりなビルドをしていたが
Lv63の時にうっかり特殊クラスのアビスゲイズに転職してしまい、デスペナによる振り直しができなくなり、
見かねたウルベルトに育成プランを立てて貰い、なんとかギリギリ実戦で通用するビルドに方向転換できた
悪質PKに繰り返し狩られて心を折られたところをたっち・みーに助けられ、正義降臨教の信者となっている。
ユグドラシルは好きだったが、現実で歴史的なインフレが起こり、家計維持のためにDMMO設備を売り払い、やむなく引退した。

外見:
不明。アビスゲイズは次元の狭間に肉体を囚われた存在が、精神だけ抜け出して現世に顕現している種族で、実体がない

ただ設定的には進化前の姿、告死精<バンシー>の姿で異次元に囚われており
こちらはくすんだ麻色の髪を垂らした口裂け女のようなアバターだったらしい

イメージはSAOのソシャゲに出てくるモーンフル・レイスというモンスター

戦闘スタイル:
NPCを育て、戦わせるテイマースキルに加え、回復や補助魔法を使いこなすバッファー
使える憑依魔法は二種類
騎乗<ライド>——本来は対象に騎乗するスキルだが、種族特性で対象の背後に取り付いて視界を共有するスキルに変化している。憑依中は攻撃行為は行えないが、本来の1/3に弱体化した状態で、補助系統限定だが魔法を行使可能
占拠<オーバーライド>——対象を完全に乗っ取り、対象のステータスと装備に加え、対象/自身のレベル(1/3〜1/1)に弱体化した状態で自身の全スキルを行使可能。第十階位魔法。
回復に加え各種バフや、敵の攻撃に合わせたカウンターサポートが得意で、対策をしていない相手ならほぼ完封できる
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