オーバーロード~至高のもう一人は救済を望む〜   作:アバダケダブ郎

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22.パーティーは賑やかな方がいい

「ところでお二方はどのような関係なんでしょうか?」

 

「「ただの仲間です」」

 

リーダーのペテルが依頼の受注に行ってる間に絡んできたルクルットが昨日の赤髪女と同じような勘違いをしてそうなので

キッパリとハモッて否定する

 

「ホレました!一目惚れです!付き合ってください!」

 

だろうね。ナーベラル美人だもんね

 

「冷めました。生理的に無理です。金輪際関わるな」

 

「厳しいお断りの言葉ありがとうございました!ではお友達から始めてください」

 

「友達料一時間5金貨からとなります。はよ」

 

「くうう~そのマジな眼差しがまた…え、まさか本気じゃないよね?」

 

金さえ貰えれば別にいいぞ?右耳で聞いて左耳から流すだけの簡単なお小遣い稼ぎウェルカム

 

「それで借金拵えて鉱山奴隷になっても絶対身請けしないからな

 

仲間がご迷惑をおかけしました」

 

冷ややかな視線のまま、受注を済ませたペテルが横っ腹に肘打ちを入れつつルクルットの隣に立つ

 

やっぱり奴隷制度とかあるんだ

 

「あ、いえ大丈夫です。なんか逆に新鮮で」

 

ナンパなんて生まれてこの方されたことないので

 

「はは。それじゃお互い用意も揃ってますし、すぐに出立しましょうか」

 

頷き、それぞれが荷物を背負ったところで追ってきた職員に声をかけられる

 

「モモンさん!ご指名の依頼が入っております」

 

「…一体どなたが?」

 

こちらを一目見て、警戒気味に職員を睨むモモンガ

 

「ンフィーレア・バレアレさんです!」

 

「「ええ!?」」

 

ついさっき話題になっていた人物の名に全員が驚く

 

「はじめまして、僕が依頼させていただきました」

 

職員の後ろからひょっこり現れる、長い前髪で両目を隠した少年が、恥ずかしそうに髪を弄りながら名乗りをあげる

 

「大変申し訳ないが、私は既に別の仕事の契約を交わした身

光栄な話だとは思いますが…」

 

そう言いながら極自然に視線を遮るように前に立ってくるモモンガ

 

『怪しすぎます』

 

 

『ですよねー…でもこの街じゃ有名人らしいし

案外ちゃんとした依頼かも』

 

「モモンさん!名指しの依頼ですよ!」

 

ネガティブな反応を見かねて思わず声を荒げる職員さん

契約成功させたらポイント高そうだもんね

 

「そうかもしれませんが、それでも先に依頼を受けた方を優先するのは当然でしょう」

 

「しかしせっかくの指名を…」

 

なおも食い下がる職員。そんなにノルマキツいのかな

 

「…であればどうでしょう?バレアレさんのお話をきいてから考えるということで」

 

その必死な態度に何かを感じたのか、憐憫の篭った視線を送り渋々妥協したモモンガに

よかった、と含羞んでンフィーレアは自己紹介を始める

 

「僕はンフィーレア・バレアレ、この街で薬師をしています

今回薬草最集のためにカルネ村近くの森まで行くつもりです

 

そこで薬草採取の手伝いを依頼したいのです」

 

「なぜわざわざ私を指名した?」

 

「それは…

実は、薬師として、第六階位の信仰魔法を使えるという、フーリンさんの魔法にとても興味があるのですが

そういった依頼はアダマンタイトクラスから、らしくて

 

それならパートナーであるモモンさんを指名すれば

同行してもらえるかなって…」

 

「それであわよくば負傷して、魔法を間近で見られるかも知れない、と」

 

せこいですよね、と自嘲するンフィーレア

 

『ふうかさんはどう思います?』

 

『昔のエロゲ主人公みたいな見た目してんなーって点を除けば

人畜無害そうな見た目して考えることセコイですねーって感想ぐらい』

 

昨日襲ってきた人もこんな感じで依頼してくれたらやりやすいのに

 

まあ、変に搦め手なんて使ってきたら多分本気でキレてたけど

短絡的な方法を取ってきたぶん、必死さが伝わって同情したわけで

 

「恵まれた環境のやつほど世渡り上手になるのはどこも同じ、か」

 

「え?」

 

思わず毒づいてしまった独り言を引っ込め

 

「分かりました、その依頼受けましょう」

 

モモンガに目配せしつつ、依頼を受託した

 

■■■■

 

荷運び用の馬車を伴い、7人で平原を進む

 

護衛、索敵は私が、戦闘はモモンガで事足りるけど

せっかく出来た縁だし、現地の知り合いを作りたいので

索敵や採取の手伝いという形でニニャ達のチームと共同で依頼を受けることにした

 

最初は渋い顔をしていたモモンガさんだけど

この世界の常識の情報源が村長と穴だけじゃ偏るので、現役冒険者から色々学んだり

冒険者しか知らない情報を共有してもらえるかも、と色々言って納得させた

 

なによりパーティーは賑やかな方がいい

ソロプレイほどつまらない作業はないから

 

「この辺りで休憩しませんか?」

 

道なりに進むことしばし、不意に依頼主がそんな提案をしてくる

 

「もう野営ですか?」

 

「いえ。そうじゃなくて…ここからはちょっとした危険地帯になって来ますので

その前に一度、準備を」

 

言われてみれば、生命探知で地平線の向こうで赤いシルエット達がチラチラと動き回っている

まだまだ安全圏だと思って無視してたけど

 

コンソール操作で装備を変更できるゲームと違って、ここは現実だ

魔法で生成したモモンガさんの鎧や軽装の私と違って

鎧だって一つ一つ留め具を締めていかないと、いざという時外れてしまうことだってある

 

「なあ、フーリンちゃん そんなに心配することはねぇって

俺が耳であり目である限り問題ナッシング!

どうよ、俺すごくね?」

 

「わあ!凄いですね!」

 

「うっ、そ、そうだろ?」

 

案の定顔を引きつらせ後ずさるルクルット

笑顔を男除けと自覚して使ってる自分が虚しくなる

 

「ルクルット、馬鹿やってないでちゃんと索敵してください

この辺は確か、森の賢王のテリトリーなんですから」

 

「森の賢王?」

 

「数百年の時を生きる強大な魔獣で、蛇の尻尾を持つ白銀の四足獣と伝えられています

英知に溢れ魔法も使えるそうですよ」

 

「それは…会ってみたいですね」

 

モモンガさんの目が光る。あ、これレアモンスターの情報に食いついた時の目だ

とはいえ、周囲を見渡してみてもそれらしいシルエットは見当たらない。小さい赤い粒々――多分ゴブリンか何かが遠方よりこちらを伺ってるだけだ

 

言動はああだけど同じ方向を警戒しているルクルットが口先だけじゃないことに感心しつつ、生活魔法という、ユグドラシルにはない魔法についてニニャの講義に聞き入る

 

なんでも掃除、料理、照明など、戦闘とは関係ない日常的な部分で使える魔法群の総称で

極めた例ではローブル聖王国の王女が生活魔法で美容してるとか

あくまでも噂程度の話と付け加えるニニャ。この子貴族に偏見ありありだから、ただの僻みかもだけど

 

「やっぱりフーリンちゃんも美容魔法には興味あったり?」

 

「セクハラです、慰謝料請求しますよ?」

 

美容なんて今日びアーコロジーのお嬢様だってしない。顔にホログラム影射すれば済む話だ

本当に肌荒れが酷いなら効果が薄い上周期が長く持続的に金の掛かる治療より人工皮膚に取り替えた方が安上がりだし

 

でも本当にあるのならラッフィーに覚えさせておきたい

表皮に使ってる極地幼雪竜<ベビー・ノーザン・ムシュフシュ>の尻皮、そんなにストックないので

もし現実になったせいで肌のトラブルも生じるようなら、スキンケアが必要になるかも知れないからだ

 

「お、悩んでる悩んでる

やっぱり恋人のモモンさんに可愛いところを見せたいよね」

 

「これを見て恋人にしたいと思いますか?」

 

にへらと笑ってみせる。ほら、顔が引き攣った

 

いくら二人だけで転移して吊り橋効果があっても限度というものがある

こんな顔面凶器に惚れる物好きなんていない

 

ましてや美人なナーベラルの顔でもこれだぞ?

…言ってて悲しくなってきた

 

「あー、ルクルットさん。フーリンさんは私の大切な仲間です

が、そういう関係ではありません。揶揄うのはやめてもらえませんか?」

 

「あー失敬」

 

咳払いしながら割り込んだモモンガにバツが悪そうに頭を掻くルクルット

 

「仲間が本当に申し訳ない…」

 

「いいですよ、悪気があってのことじゃないですし

ただ、あまりにも無神経だとガチで軽蔑しますよ?」

 

なんだかんだで、やってる事が職場の若い人同士をくっつけようとするアレなんだよね

ありがた迷惑でしかない

 

「はは、耳が痛いや…っと動いたな」

 

「どこだ?」

 

「アレだよアレ」

 

おっちゃらけた雰囲気が一変、気を引き締める一同

ルクルットが指す先は先程からずっとこちらを伺っていたグループ

さっきまでなかった大きいシルエットもあるが、流石にアレが森の賢王とは思えない

 

「こりゃ戦闘は避けられないな

ンフィーレアさんはそのまま馬車に体を伏せていてください」

 

素早く依頼主を庇い、馬車の前で陣形を組む四人

 

「分担はどうしましょう、ふうk――フーリンさん」

 

ブレイン役という訳じゃないけど、後衛の更に後ろからチームを俯瞰するヒーラーが指示役なのは良くある話

特に私の場合、そもそも誰かに憑いてて直接戦闘には参加しない分暇――もとい客観的に見れるので、担当になることが多い

 

「MTはモモンさんが、STはペテルさん

DPSはニニャさんとルクルットさんで

CCとAIDは私がしますので、ダインさんは++をお願いします

INITも私がやります」

 

「え、えむてぃー、さぶてぃー…でぃーぴーえす…?」

 

「あー、つまりフーリンさんが敵を誘き寄せ、私とペテルさんが敵を防ぎ

ニニャさんとルクルットさんが遠距離で仕留めるってことです――ですよね、フーリンさん」

 

「え、ええ…」

ついゲーム感覚で指示してしまったのをフォローしてくれる

 

「でもこのまま戦闘を始めると、森に逃げられる可能性があるけど」

 

それは激昂<フューリー>を掛けて逃げられないように…と思ったけど

ここはニニャ達の作戦に従おう

現地の冒険者先輩の戦い方を学ぶのも同行した理由なのだから

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