オーバーロード~至高のもう一人は救済を望む〜   作:アバダケダブ郎

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23.あなた達には"絶対"見つかって欲しくない

ニニャ達の連携は完璧だった

ルクルットが矢でオーガを挑発し、釣りだしたゴブリン達をダインが魔法で生やした蔦で搦めて足止めし

動かなくなったところをニニャとルクルットが狙撃

撃ち漏らしはペテルが防ぐ

 

その間にモモンガがボス格のオーガや他のモンスターを一刀の元切り伏せていく

 

「くらいやがれ!」

 

「えっ!?障害障壁<ダメージ・バリア>!」

 

第三者の声に驚いて振り向くと、陰に隠れていたゴブリンがニニャに投石して来たので慌てて障壁で弾く

というか、こっちのゴブリンは喋れるんだ

 

「っ!ありがとうございます、フーリンさん

魔力の矢<マジックアロー>!」

 

「ぎゃっ」

 

障壁に攻撃を弾かれ、呆気に取られていたゴブリンに魔力の矢が突き刺さり絶命する

 

「良いパーティーだ

互の能力を知り連携が取れてる

 

――まあ、私達ほどではないがな」

 

ニヤリと何かを呟いたモモンガさん。

なんか言った?聞こえない!と言おうとして、ゴブリン達の行動に注意を引き戻される

 

「「「逃げる逃げる逃げる!!」」」

 

「待てー!逃がすか!って、うおっ!?」

 

「傷治療<キュア・ウーンズ>…ちょっと、怪我してましたので

邪魔してしまいすみません」

 

ボス格のオーガを倒され、圧倒され

次々と仲間が屠られ、恐怖に駆られて必死に逃げるゴブリン達が気の毒過ぎて

つい追撃の邪魔をしてしまう

 

逃げる相手を追撃するのはどうも罪悪感が半端ないので

 

ゲームの時のように最後までモンスターらしく、意味不明な奇声を上げながら死ぬまで攻撃を続けてくれたら良いのに

 

 

戦闘が終わり、ゴブリンやオーガの死体の傍で屈んで何やら切り取っていくペテル達に近づく

 

「何をしているんですか?」

 

「倒したモンスターはこうしてパーツを組合に提出すると――報酬が貰えるんです」

 

ザクリ、とオーガの耳を切り取りながら答えるペテル

うわ、グロ…と言いたい所だけど、穴を改造した時に比べたら全然マイルドで特に何も感じない

 

「クリスタルなどのアイテムがドロップする訳じゃないんですね」

 

「オーガがクリスタルを持ってるという話は聞きませんね」

 

そうですか、と落胆するモモンガ

 

「でも凄いですね、モモンさん!

まさかあれほどとは思ってもみませんでした!」

 

「王国の騎士長に匹敵する強さであるな!」

 

ニニャとダインに賞賛され、皆さんならすぐこれぐらいになれる、と謙るモモンガさん

謙虚すごいですね

 

格の違いを見せつけられたせいか、どこか気まずい沈黙の中黙々と剥ぎ取り作業を終え、それからもうしばらく進んでから野営の準備に移る

 

剥き出しの土の上に骨格を組立、革を被せただけの簡素なテントの中に荷物を置いて一息

服を登ってくる虫に驚いて振り払うと、それも風情と喜ぶモモンガにけしかけ

街で買い込んだ食料を準備していく

 

ペテルとダインが森から薪を、ルクルットが川から魚を獲って来て

ンフィーレアとニニャが組み立てた即席のバーベキューセットに放り込んでいく

 

「名指しの依頼に誘って貰っただけじゃなく、こんな新鮮な肉までご馳走して貰って

本当にありがとうございます」

 

パタパタと団扇を扇ぎつつ、肉の角度を調整しながらペテルが感謝してくる

 

「大丈夫ですとも

こんなに量が多いと私たちだけでは食べきれませんし

何より食事は賑やかな方が楽しいですからね」

 

これもどうぞ、これも、と昼間屋台で爆買いした食材を次々と追加するモモンガさん

まだお酒入ってないはずだから雰囲気で酔ってるのだろうか

 

「それに火起こしや魚はペテルさんたちに投げっぱなしですし

このクリームシュワ?でしたっけ こんな美味しいお酒を紹介して貰えましたしね」

 

「お酒じゃないんですけどね…

冒険中に酔っ払ったら大変なので、喉越しだけお酒に似せたものなんですよ」

 

とモモンガが勢いよく仰いだのは所謂ノンアルコールビール

 

現実世界でも昔はあったらしいんだけど、依存性がないから売上が伸びない

とかなんとかで生産停止になったやつだ

 

「それじゃ、俺たちも奮発しないとな!

じゃじゃーん!」

 

「おお、それは

この前リザードマンから貰った魚の燻製であるな」

 

「ああ、魚の養殖方法を学びたいって人間の村に入り込んで

何か企んでるんじゃねぇかって監視のために雇われたんだが

話してみると意外と良いやつでな

 

このスモークサーモンってのもすげー美味しいんだぜ」

 

これをこうして、とスライスしたチーズと一緒にパンの上に乗せていく

 

「ほーら、フーリンちゃん、サーモンのカナッペだよーん

はい、あーん」

 

「自分で食べるから結構です」

 

差し出された料理を引ったくるようにして口にする

 

『美味しい…!』

 

『本当ですね…!サーモンってアーコロジーでも超がつくほどの高級食材ですよ!?

こんな味なんだ…わあ』

 

楽しい食事の時にそんな気の滅入る名前を口にするんじゃない

批難の視線にも気づかず、板前寿司みたいに作られたそばから口に運んでいくモモンガ

かくいう私もしれっとお代わりをせがんでいるが

 

「こっちの肉も美味いな!生肉なのに半日以上経っても全然酸っぱくないし、どうやって保存してるんだ?」

 

「?」

 

質問の意図が分からず思わず顔を見合わせてしまう

 

「ハーブを擦り込むと腐るのを遅らせられますよ

あとは、氷鉱石とかで低温に保つのも効果的です

ですよね、モモンさん」

 

「ん?ああ…」

 

ンフィーレアのフォローでやっと鮮度のことだと分かったものの、インベントリに入れてただけなので

なんと答えたら良いのか分からず訛るしかないモモンガであった

 

「それにしても、

冒険者の皆さんって、こんなに仲がいいのが普通なんですか?」

 

居た堪れなくなったモモンガに代わって話題を逸らしてみると、ペテル達は当然と頷く

 

「ええ、命を預けますからね」

 

「それにうちのチームは男だけだしな、女がいると揉めたりするって聞くぜ」

 

お前みたいな奴がいるから揉めるんだよ

 

「みんなの意思が一つの方向に向いてると全然違いますよね」

 

感慨深そうに頷くモモンガ

ギルドマスターが言うと説得力が違う

 

確かにギルド武器を作る時なんか

強制されたわけでもないのに、少しずつ組み上がっていくスタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンが楽しくて

何時間狩場に篭っても全然苦じゃなかったな

 

「お二人もチームを?」

 

「冒険者、ではなかったですね

 

かつて弱くて一人だった私を救ってくれたのは…純白の聖騎士でした

彼に案内されてはじめて仲間と呼べる人たちに出会えたんです」

 

たっち・みーさん…

 

「私も…虐められてたところをその人に助けて貰いました

モモンガ――モモンさんやみんなと出会えたのも、その人のおかげです」

 

「ええ、素晴らしい仲間達です

そして最高の友人達です

 

彼らと過ごした日々は忘れられません」

 

思い出に浸るように、焚き火を見つめながら遠い目で語るモモンガ

 

気持ちは、わかる

家族をなくし、屍のように会社と家を往復するだけの日々

 

希薄すぎる人間関係のなか、唯一居場所となってくれたのがユグドラシルだ

 

正直、ユグドラシルより面白そうで——運営がクソじゃ無い後発ゲームは幾らでもある

それでも私をあの世界に引き留め続けたのはみんなとの繋がりと願掛け人形(ラッフィー)

依存していたのは、人間関係だ

 

「いつの日か、またその方々に匹敵する仲間ができますよ」

 

「そんな仲間はできませんよ」

 

キッパリと断言したモモンガに失言したと、視線を伏せるニニャ

 

「…だから一刻でも早くみんなと再会できるように、こうして世界を旅しているんです」

 

「それがモモンさん達の旅の目的であるか…」

 

「ええ」

 

焚き火を見つめる決意と、期待に満ちたその目に、漆黒の剣のみんなの表情が和らぐ

 

「きっと見つかりますよ!俺たちも手伝いますから!」

 

「ははは、それは難しいですね

特にあなた達冒険者には…”絶対に”見つかって欲しくないものです」

 

冗談交じりに断言するモモンガさん

まあ、全員異形種だもんね。冒険者に見つかったら討伐対象だ

 

ナザリックの偵察やこうして実際に冒険に出てみて、この世界の平均レベルが低いと知って

万が一見つかっても倒される可能性は低そうと、多少は楽観視できるようになって来ているモモンガ

 

正直、その執着が、少し怖い

この世界に来て、慕ってくれるNPCも、こうして談笑できる現地の仲間もいるのに

どうしてそこまでギルドメンバーに固執するのだろうか

 

…なにより、カルネ村や自傷男への無関心と冷徹さ

私に向けてくれる気遣いが、

彼が心を開ける人間がギルドメンバーだけなら

 

彼を一人にしてはいけない——そう思った

 

 

「僕は、二人に是非見つかって欲しいんですけどね…」

 

魚が焼けたのである!と焼き魚をそれぞれ手に取り、肉汁の滴る川魚にみんなが悪戦苦闘する中、ポツリと呟くニニャ

 

「食べないんですか?」

 

気になって声をかけると、

ありがとうございます、とぎこちなく笑い、バリボリと尻尾から齧り始めた

 




主人公とモモンガにフラグが!?立たないです
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