オーバーロード~至高のもう一人は救済を望む〜   作:アバダケダブ郎

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25.知識に貪欲なのは良いことだ

「それは少し過激ではないか?

先日この村を訪れたときは、生を司る女神ウールと死を司る神アインズの教えに従い、戦火に巻き込まれ理不尽に生活を奪われた持たざる者が互いに支え合い助け合う

 

そんな教義にかなり感銘を受けていたのだが…」

 

はぁぁ!と露骨に深いため息をルプスレギナに吹きかけ、諭すモモンガ

 

「はい!勿論っす!アインズ・ウール・ゴウン教は不幸のどん底に落ちぶれた哀れな人間に救いの手を差し伸べ、負け組同士思う存分傷口を舐めあう場を提供するっす!」

 

ダメだこいつ早く何とかしないと

ささ、こちらへどうぞ!と露骨に贔屓してくるルプスレギナの言葉に甘え、胡散臭そうに、可哀想なものを見る目を向けてくるンフィーレアや漆黒の剣と別れ

しっかりとOHANASHIするため、パンテオンの上にある見晴らしの良い貴賓室についていく

 

「ルプスレギナ。この数日間一体何をしてたのですか?」

 

パンテオンから見下ろせる広場で目のところだけ穴があいた白い三角の被り物をした村人達が刺突訓練しているのを横目に捉えながら口を開く

 

「ルプーって呼んでくださいっす!

ナザリックの世界征服の尖兵となるよう、村人には徹底的な戦闘訓練を施してるっす

村人全員に狂信者<ファナティック>のクラスを習得させ次第、エ・ランテルに進軍し支配下に置いた後王都に聖戦を仕掛けるっす!レコンキスタっす!」

 

わーい、どうしてこうなった?

 

「…すみませんアインズ、これは完全に私の采配ミスですね

ルプーも、説明不足で丸投げしてごめんなさい」

 

「そんな!ウール様が間違えるなど断じてありえません!

頭の悪い馬鹿な私が悪いんです!

こんな役立たずの馬鹿に生きる意味なんてありません、今すぐここから飛び降りて大地のシミになってお詫びします!」

 

「わー待って待って!今回は不幸な情報の行き違いだから早まらないで!ルプーは悪くないからちゃんと話しよ!」

 

躊躇なく手すりを乗り越えようとしたルプスレギナを慌てて引き止める

 

「ウール様…うう、ウール様ぁああ」

 

「わーよしよし、泣かないの」

 

これ以上責めたら本当に思いつめてその場で舌を噛み切りかねないので

えっぐえっぐと嗚咽するルプスレギナを宥めつつ、アインズ・ウール・ゴウンの教え

 

つまり誰かが困っていたら助けるのは当たり前。

異形種というだけで理不尽にPKされたマイノリティが正義を振りかざすマジョリティに抗うため結成され、巨悪に立ち向かった華々しい経歴を教える

 

「という経歴から、弱きを助け、強きを挫くはギルド・アインズ・ウール・ゴウンの成り立ちにまで遡る由緒正しい教えなのです」

 

「私は――至高の御方々を負け犬呼ばわりしていたということですか!?

今すぐこの舌引っこ抜いて死んでお詫びいたします!!」

 

「本当にやめような!?

ごほん、付け加えると我々は絶対数が少ないから数で押されてただけで断じて負け犬というわけではないぞ?

 

アインズ・ウール・ゴウンに敗北はありえない。

故にその一員たるお前も

敗北を敗北と潔く受け入れるのではなく、圧倒的な勝利を持って敗北の屈辱を濯ぐのだ。いいな?」

 

「私なんかになんて慈悲深い寛大なお言葉!

アインズ様、ウール様!このルプスレギナ、必ずや御二方の期待に応えてみせます!

 

このカルネ村を、いいえ、この世にあまねく全ての救われぬ者に必ずやアインズ・ウール・ゴウンの福音をお届けしてみせます!

そしてそれを虐げるありとあらゆる強者に生まれてきたことを後悔させてやります!」

 

さっきまで泣き腫らしていた目が一変、使命に燃える目つきで宣言するルプスレギナ

だからどうしてそう極端なのかな!?

 

取り敢えず誰に鉄鎚を振り下ろすかはこちらが命令するのでまずは村民と頼ってきた人たちの生活基盤を整え

自活自衛できるよう導き、無闇矢鱈宣教しない押し付けない、金品お布施は厳禁、ナザリックの干渉は最小限、本人たちで対処できないトラブルは介入しろ

 

と考えうる限り曲解の余地がない命令を紙に書き連ねて押し付け

 

久々のデスクワークに精神的に疲弊しきった体を引きずって地上に降りると

こちらに気付いたンフィーレアがエンリたちの所から小走りで駆け寄ってきて出会い頭に頭を下げてきた

 

「モモンさん!

モモンさんは…アインズ・ウール・ゴウン宣教師なのでしょうか?」

 

「なっ」

 

どこからバレた?やっぱりルプスレギナのあからさま過ぎる対応か?

顔を見合わせる私たちにンフィーレアは再び頭を下げ

 

「ありがとうございました!この村を救ってくださって」

 

「違います、私達は――」

 

「あっ、はい 勿論お二人の正体を言いふらしたりはしません

正体を隠されているのには訳があるんですよね

 

それでもこの村を…いえ、エンリを助けてくれたことにお礼を言いたかったんです

僕の好きな人を助けてくれて、その家族を生き返らせてくれて――本当に、ありがとうございました1」

 

「あ、頭をあげてください!」

 

周りが何事だって見てるから!

 

「それと――実は隠していたことがあるんです」

 

改まったンフィーレアに思わず身構える

 

「実は…アインズさんが宿屋で女性に渡された赤いポーション、あれは通常の方法では作れない非常に希少なものなんです

だからそんなポーションを持つ方がどんな方なのか、それとその製法を知りたくて今回の依頼をしました

 

本当にすみません」

 

「うん?別に悪いことではないだろう?

今回の依頼はコネクション作りの一環ということだ

それに仮にその作り方を知った場合、君はどのように使う?」

 

「そこまでは考えてませんでした…あくまでも知識欲の一環だったので」

 

言われ、はじめて気付いたようにポカンと口を開けるンフィーレア

 

「それならば何の問題もない

悪用するならともかく、知識に貪欲な姿勢は技術者として正しい」

 

私たちの正体は誰にも言わないでくれ、と念押しされ

再度エンリのことで頭を下げてきたンフィーレアをなんだなんだ?と茶化しながらすっかり信徒――じゃなくて村人達と打ち解けた漆黒の剣が合流し

 

本来の依頼である薬草採取をこなすべく森に向かった

 

■■■■

 

「あの、モモンさん

森の賢王が現れたら殺さずに払ってくださいませんか?」

 

「それは何故ですか?」

 

唐突なリクエストに全員が怪訝な顔をする

 

「これまでカルネ村がモンスターに襲われなかったのは、森の賢王がこの辺りを縄張りにしていたからです

それを倒されてしまわれますと…」

 

「それは無理だろ、相手は何百年も生きる魔獣だぞ?」

 

手加減できるような相手じゃない、と反論するルクルットに一同は頷く

 

『どうします?』

 

『出会わなきゃ良い――って言っても探しに行きますよね、モモンガさんは』

 

『はは…実は既にアウラが目を付けてたりして』

 

だろうな

 

『ほら、ルプスレギナも居ますし、居なくなっても大丈夫ですよ…多分』

 

多分とか付け足すほど信用してないなら最初から言うな

ちゃんと念書みたいに曲解のしようがないほどきっぱりはっきり書き残してきたから

流石に大丈夫と信じていたいのに これ以上不安を煽らないでくれ

 

渋々ながら結界を張る名義で暫く一同から離れ、森の奥でアウラと合流する

 

「…ということで、私がその森の賢王なる魔獣を、アインズ様たちにけしかければ良いんですね?」

 

「そうだ、できるか?」

 

「ええ、大丈夫です。多分あいつの事だと思います」

 

ペットにしたかったのに、残念だな

と言い残し、一礼して森に消えていくアウラを見送り、一同に合流する

 

『というか、なんでそんなに倒したいんですか?データクリスタルが落ちるわけでもないのに』

 

『名声作りですよ

オーガを一撃で両断した、というのと森の賢王を撃破した、というのではあまりにも違いますからね』

 

『それならアウラに他のヤバイ魔物けしかけて貰ってもいいですよね

…モモンガさんが戦いたいだけじゃ?』

 

『うっ、それはですね、ほら、ヤッバーイ魔物を他所から連れてきたら周りの魔物に迷惑ですし?

それに森の賢王なんて、どんな魔物か気になるじゃないですか』

 

まあ、それは気になるけど…

 

打ち合わせを済ませ、一同の元に戻ってすぐ

 

「まずいなこりゃ…デカいものがこっちに向かってきてる」

 

ルクルットの視線の先には確かに、黄色い(・・・)シルエットが高速で迫ってくる

仕事早いのはいいけど、一応結界を張ってきたって筋書きなんだから、なんというかさぁ…

 

「森の賢王でしょうか?」

 

「あとは私たちにお任せ下さい」

 

待ってましたとばかりに武器を構えるモモンガの後に続く

 

「とはいえ、目撃する者がいなければ意味ないんじゃ…?」

 

あとは任せた!と当たり前のように森の外に退避した仲間を見てポツリと呟くモモンガ

おい、喜べよ。もう全部こいつ一人でいいんじゃないかなって認められた証だぞ

 

なんて呆れてると、森の奥から何かが飛来し

 

「補助最強化・上位障害障壁<マキシマイズ・エイド・グレーター・ダメージ・バリア>」

 

しなるそれは障壁を擦り、引き戻される

――障壁は緑のまま、ダメージは低いようだ

 

「某の初撃を完全に防ぐとは見事でござる」

 

ござる?

 

「さて某の縄張りへの侵入者よ、今逃走すれば見事な防御に免じて追わないでおくが、どうする?」

 

おお、話が通じるタイプだ

だから賢王なのか

 

「申し出はありがたいけど、折角こうして言葉を交わしてるんだから

姿を見せてくれてもいいじゃないですか?」

 

ここまで律儀な魔物がどんな姿なのか、俄然興味が沸いてきた

 

「それもそうでござるな

では某の威容に瞠目し畏怖するがよい」

 

ズシンズシンと草木が揺れ、巨大な図体がのそのそと現れる

 

おおう

 

「フフフ…恐怖のあまり言葉もないでござるか」

 

「一つ聞きたい、お前の種族名はジャンガリアンハムスターとか言わないか?」

 

「なんと!某の種族名を知っているでござるか?」

 

姿を現したのは蛇の尻尾を生やした巨大なハムスター

その姿に既視感を感じる

 

「知ってるというか…かつての仲間がお前によく似た動物を飼っていたというか…」

 

うん、餡ころもっちもち(もっさん)が毎日スパムのごとくSNSに写真上げてたやつ

それに…

 

「なんと!もし同族がいるのであれば教えて欲しいでござる

子孫を作らねば生物として失格でござるがゆえに」

 

「いや、それはサイズ的に無理だ」

 

それ以前に種族がおかしい。ジャンガリアンハムスター…この際ジャイアントハムスターは分類上獣

生命探知した際の色は赤色のはず。それなのに、異形種を意味する黄色

 

まさか…

 

「ああ、そうでござるか。残念でござる

…それよりも、何のつもりでござる?」

 

「ちょっと確かめたいことがあって」

 

攻撃が通じないのは確認済み。念の為に障壁を五重に張って、ハムスターに近づく

 

「それ以上近づくと某も攻撃するでござるよ?」

 

「子を為したいんでしょ?だったら黙って突っ立ってて」

 

面識はない…のは仕方ない、今はナーベラルの体だし、モモンガさんとはそもそも初対面のはずだ

 

「警告はしたでござるよ」

 

ヒュン、と蛇の尻尾が障壁を掠める

 

「ふうかさん!

ええい、大人しくしろ!絶望のオーラ レベル4!」

 

「ぴぎぃっ!」

 

障壁は全くダメージを受けなかったが、過剰反応したモモンガさんのオーラで白目を剥いて気絶してしまった

 

…まぁ、こっちの方が調べるには好都合か

 

尻尾の付け根を掻き分けて、そこにあるであろう物を探す

 

「…やっぱり」

 

予想通り、それはそこにあった




ストックが切れて来たのとモチベーションがヤバいので来週から更新頻度を落としていきます
こんなつまらない小説をここまで読んでいただき本当に感謝です

需要なんてどこにもないかもですが、これからも細々と続けていきたいと思います
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