オーバーロード~至高のもう一人は救済を望む〜 作:アバダケダブ郎
多くの方に本編に挟んでも良いと投票して頂けとても驚います
今回が難産なので簡単な概要しか書けず、本辺に載せられるような内容じゃないので活動報告にて掲載しました
作中でのオリ主の言動の理由づけみたいな内容ですが、宜しければ是非
アレな内容にも言及するのでR18です(念の為)
そのうち転移前のふうかのストーリー(主に至高の四十一人曇らせ)を書いてみたいと思います
「ば…馬鹿な!馬鹿な馬鹿な馬鹿な!!
魔法無効のスケリタル・ドラゴンがたった一つの魔法で倒れるなどあり得るか!
一体どんな手品を使った!?」
「どんなと言われてもな、第六階位魔法までしか無効化できないから
それより3つ上の第九階位魔法である
それだけだが」
なあ、とこちらに同意を求めてくるモモンガさん
いや、やれといったのお前。
「第九階位の蘇生魔法だと…?
…ふざけろ!そんな事ができるならそれは最早神そのもの
こんなところでカッパープレートの冒険者などしているはずがなかろう!
どんなペテンを働いたか知らぬが、個がダメなら数で押し切るまで
死霊術の真髄をみせてくれるわ!」
心を折るところか却って煽り焚きつけてしまったようで
骨片の瓦礫に遮られたカジットが何やら黒いオーブをかざすと
周りのアンデットが捻じれ、崩れ
ひどい悪臭をまき散らしながら腐肉の坩堝と化して渦巻き、
ボトボトと腐った人体パーツを滴らせ、うねりをあげながらながら押し寄せてきた
スケリタル・ドラゴンのサイズには及ばないが、地を覆い押し寄せるそれは
生命探知での無数の反応が
その一体一体がそれぞれ独立した無数の死体の集合体であることを示し
押し寄せる死の濁流を前に単体に作用する蘇生魔法では太平洋を裁縫針でかき回すようなものと否応に分からせられる
そしてなによりも
『モモンガさん!モモンガさん!
人間の死体で出来たモノホンのゾンビだけはソイレントグリ○ン騒動で本気で苦手なので
ナーベラルに体返してサポートに専念していいですか?いいですね?ご承諾ありがとうございました!』
ソイレントグリ○ン騒動。とある大手食品メーカーが人間の死体で培養した単細胞生物食品を販売していた事件で
眼前に広がる死体の海は 生産プラントに潜入した配信者が遺したライブ映像そのものだった
『ちょっ!?人が必死に気にしないようにしてたのに!
あれが本物の死体って考えたら一気に触りたくなくなりましたよ!』
『元々骨なんだから同類じゃないですか』
『全然違いますー!』
カジットの命令に従い一斉に押し寄せる腐肉巨人たちにヤケクソ気味に回復魔法を撃ち込み
まるで意味のない牽制をしつつ、脳内でモモンガと醜いタゲの押し付け合いを繰り返す
『…まあ、ふうかさんはともかく、ナーベラルを汚したら弐式炎雷さんに面目が立ちませんよね』
おい今なんつった
と噛み付く前に
ひと振り、ふた振り。
自分に言い聞かせるように軽口を叩きながら、振り抜いた対の大剣は押し寄せる死の海を切り開く
しかし、水が流れるように 空いた隙間は流れ込む血肉にすぐに埋め立てられ
「フーリン!」
「わかってます!
補助最強化・魔法強化・中級加速<マキシマイズ・エイド・エンハンス・マジック・ミドル・ヘイスト>!」
次々と埋まっていく死の壁せめぎ合うモモンガに加速魔法を掛ける
8倍速まで加速できる
加速した世界にモモンガをいざなう
それまで拮抗していたバランスが一気にモモンガさんに傾き
黒い影を残して動き回り、飛び散る血飛沫が降りかかる前に次の
「馬鹿な…!武技も使わず、魔法だけでそこまでの身体能力を与えたというのか!?
くっ、なら元凶を叩くまで…!
死者の束縛<コープスバインド>」
「詠唱折断<インタラプト>」
ヘイトをこちらに向け、詠唱を始めたカジット
死体を組み付かせて来そうな不穏な魔法を反射的に打ち消す
「なっ、わしの詠唱を打ち消したというのか!?」
「気持ち悪い名前の魔法を使おうとしてたので
次にそんな魔法使ったら溺死させますよ」
炎矢<ファイヤーボルト>や雷矢<サンダーボルト>を発動した徒弟達の攻撃を障害障壁<ダメージバリア>で弾きながら
驚愕に目を見開くカジットに釘を刺す
その間にも黒い旋風と化し、疲れを知らずに次々と剣を振るうモモンガ
フードプロセッサーに巻き込まれたニンジンのようにあっという間に粉微塵に刻まれ、巻き上げられた死肉の残骸が雨のように降り注ぐ
圧巻という他ない光景を放心しきった目で見上げ、わなわなと震えるカジット
「なぜだ…
このわしが5年かけて作り上げた努力の結晶が…
すべてがこの僅かな時間で崩壊するというのか」
どこに出しても需要の無い動く死体の山のために5年とか
努力の方向性を本気で考え直したほうがいいぞ
「チェックメイトだ
最後に何か言い残すことは?」
死体集合体<コープス・レギオン>を悪臭漂う集積物に変えて
こびり付いた汚れを払うように剣を振り払ったモモンガがカジット達にその鋒を突きつける
「ま、まだだ…!
まだこんなところでは終わらんわ!」
先ほどのオーブを取り出すカジット。またグロいものを召喚される前に詠唱折断<インタラプト>を唱えるが
そんなことお見通しとばかりに詠唱する事なくそのままオーブを地面に叩きつけてきた
水晶が砕け破砕音が響く、次の瞬間
膨大な負のエネルギーが暴発を起こし、視界を埋め尽くした
「っ!?聖域<サンクチュアリー>!」
反射的にモモンガさんの所に駆け寄り、外部の干渉を一切遮断する結界魔法を発動させて二人を隔離する
天に昇る円筒の聖域の表面をエネルギーとも腐肉とも付かないおどろおどろしい濁流が流れていくこと数十秒
漸くエネルギーの放出が収まり、視界が晴れると
カジット達の姿が跡形もなく消えていた
「逃げたか」
「ええ、あそこから地下に逃げたみたいですね」
驚くことなく、こちらを見てくるモモンガにお望みの解を返す
人間でいる限り、このアンデット塗れの墓所のどこに逃げようとも
青いシルエットは際立って目立つ
荒れ狂うエネルギーの奔流の中で墓石を押し倒して地下に逃げていくその一連の行動はくっきりはっきり見えていた
「流石だなフーリン
ならすぐに追撃を」
「その人気絶してるからロールプレイは要らないですよ
それよりモモンガさん、このまま
これみよがしに地面に
「術師達が逃げたのに、あの建物の中ではアンデットが増え続けてるんですよ
嫌な予感がするので、手遅れになる前に助けてあげてください
ナーベラルなら雷系の攻撃魔法も使えるからまるごと灰に出来ますし
それに、追撃なら私のほうが得意ですから」
と自傷男に手をかざす
「分かりました。でも無茶はしないでください
取り逃しても、あとからNPC達に追わせればいいので
危なくなったらすぐに逃げてください」
渋々ながら同意したモモンガにノープロブレムと親指を立てて、占拠<オーバーライド>を発動する
またしても打ち合わせ通り即座に上位転移<グレーター・テレポーテーション>を発動させようとしたナーベラルを慌てて制止し
こびり付いた不快な残骸を軽く払ってから
地下に続く墓石の階段を降りていった
■■■■
「クラウ…何しに来た」
真っ暗な地下道を、生命探知を頼りにカジット達に追いつくと
黒い棺桶の前で作業をしていたカジットが振り向くことなく問いかけてきた
「師よ…」
「その名で呼ぶな、破門したのを覚えておろう
まったく、あのまま聖女に頼っておれば良かったものを戻ってきよって」
咄嗟に声を掛けられ、こいつが普段どんなキャラなのか掴めず
身バレしないように顔を伏せて、申し訳ないオーラ全開で次の言葉を待つ
「本物じゃよ、あの聖女は
スケリタル・ドラゴンを葬ったあの魔法は法国の伝承に残る、光の神アーラ・アラフのそれと同じじゃ
連れの男はともかく、あの聖女は治してくれたのじゃろう?自傷したお主を
なら、その本質は善のはずじゃ…お主の妹も救ってくれたじゃろうて」
それがギルドで言ってた酷い傷の家族、か
妹を治すために金が必要で、バイオハザードを引き起こして火事場泥棒を?
考え込むこちらを咎めることもなく、黙々と作業を続けるカジット達
二人の徒弟が黒柩の蓋を退かすと、中から青白い光が溢れ
美しい女性が眠るようにして――死んでいた
生命の兆候を示すシルエットはなく、ともすれば精巧な人形と思いたくなるそれの頬に手を沿え
「母上様…申し訳ありません
生きてあなたに合うことは…もう、できそうにありません」
生気のない落ち窪んだ顔に涙を這わせ、震える肩を必死に制して
悲痛な言葉を絞り出すカジット
仰向けに眠る女性の額に自身の額を押し当てる師から目を逸らし
二人の徒弟も嗚咽を漏らす
「師よ…我々はこれからどうすれば…」
「…もうどうにもならんて
死の宝玉を砕き、これだけの失態を犯した以上
ズーラーノーンからの断罪はもはや免れん
…わしは、ここまでよ」
「どこまでもお供します!」
迷わずに答えた徒弟達を制し
「ならぬ お主たちは生きろ。
盟主より
お主らなら逃げられる」
「し、しかし!師の導きなくして我々だけでは…!
それに、師の居ない世界をご母上が喜ぶはずがありません!
どうか師も一緒に…!」
「くどい!
何のために徒党を組んだと思っておる!
こうなった時に一人でも生き延びて実験を続けるためじゃろうが…!
例え一生掛けても、子孫、孫の孫、その孫の孫に研究を引き継いでも
十年かかろうが兆年かかろうが亡くした最愛の人を必ず取り戻す…そのためにはどんな犠牲をも厭わない!
組織に背き、盟約を交わしたあの日の誓いを忘れたか!」
一片の淀みもなく、迷いもなく言い切るカジット
しかしその熱意とは裏腹に、気圧され、しどろもどろになる徒弟達に目を細め
「…最愛とはなんじゃ?
文字通り、最も愛するということじゃろうが!己の全てを投げ打ってでも、世界で最も幸せにすべき存在だろうが!!
それをこの程度で諦めるのかお主らは!
五年掛けてもダメだった?師がなければ歩めぬ?
それで納得して諦める程度の覚悟なら最初からはっきり申せ…!
見込み違い…!わしの見込み違いじゃ…!」
逃げ場を探すように視線を逸らした徒弟達に失望したように自嘲し
こちらに振り向くカジット。その目から一筋の涙が流れる
「…わしが馬鹿だった
お主の言葉をもっと真に受けていれば…
母上様と共に歩む未来が、救済の手がすぐ目の前に差し伸べられていたのに
くだらないちっぽけなプライドと高々5年の積み重ねを無為にすまいと目を曇らせてしまった…!
…これは罰なのか?神の慈悲に背き、死霊術に救いを求め
邪道に身をやつしたわしへの…」
厳つい老師の仮面を捨てた、心の底からの心情の吐露
確かに、それは邪道だ
ゾンビの大群を作り、自分の幸せのためだけに大勢を不幸にすることは——
私利私欲を貪り、他者の人生を食い物にする
現世の権力者たちと同じぐらい、吐き気を催す邪悪
だけど、その理由を聞いてしまった今、理屈はどうあれ、心の底からどうしても嫌いにはなれなかった
それを
私も、出来ることなら両親を生き返らせたい
遠く離れた世界で、生き返らせる身体も残っていないけど
棺の中に眠るカジットの母親は、意識を向ければ蘇生可能と本能的に確信する
彼が追い縋ってやまない奇跡を、私は持ち得ている
私も彼のように真摯に祈れば、
「…!お主…お主は何者じゃ…!?」
え?ここで身バレ?
視線を体に落としてもクラウと呼ばれた自傷男のまま
なにも変わってないはず
それなのに確信めいた追及の視線を向けてくるカジット
「神様、といったら?」
フーリンと名乗っても、憑依とかで話がややこしくなるので
慈愛に満ちた笑みを浮かべてみせる
「そのような邪悪な笑みを浮かべる神がいてたまるか!」
「邪悪とは心外な」
どこからどう見ても赤子をあやす慈母の笑みだろうが
『取引をしてみませんか?』
「取引じゃと?それにその声は…!」
無性にカチンと来たので、意地悪をすることに決め、カジットの心に伝言《メッセージ》で語りかける
『このままあなた達を兵士に突き出せば、天変地異でも起きて重力が狂わない限り
あとは断頭台が幕引きをしてくれます
あなたの最愛の人とやらは誰にも顧みられず、忘却の彼方に沈むことでしょう』
「ふん、なら見逃してくれるのか?
いったじゃろう、わしは刻印を刻まれ逃げられぬと」
『ええ、そんなことはしませんよ
そもそも見逃す気ならこの男を解放した時点で去っています
…取引の内容は、あなたが悪魔と信じて疑わない私に魂を売り渡してみないか、です
見返りはあなたが必要と思う技術と知識の提供
それを使い、あなたの最愛の人を生き返らせればいい』
救済<サルヴェーション>を使えば、きっと簡単に蘇るだろう
だけど折角人が仏心抱いてやったのにこいつは二度も拒んだ
三度目をあげるほど聖人君主でもないので、折角だからその願い、利用させて貰うことにした
両親を蘇らせるには、世界を跨ぎ、既に肉体のない死者を生き返らせるには
魔法の原理——下手したら世界の真理を紐解かなければいけない
だけど私やモモンガは本能的に魔法を使えてもその原理を知らず、NPCに聞いても魔法というあやふやな概念、意味不明な禅問答になるだけだった
だけど
現代科学の常識を持つ私が解剖学を理解できたように
数年をかけて魔法を習得するこちらの人間なら、学問として魔法を理解できるかも知れない
「お主が人知を超えた何かであることは認めよう
じゃが、知識と技術の提供じゃと?お主にそんなものが与えられるとは思えんな」
『交渉は苦手なんですよ
面倒くさいことは抜きに、このまま最愛の人を諦めて死ぬか
蜘蛛の糸でもいいから希望に縋るか
この場で決めてください』
本当はこの場でカジットの母親を生き返らせ、見返りに協力して貰うのが一番良いかも知れない
だけど長年追い求めた奇跡が叶って、恩義の為だけに何十、下手したら何千年と時間を掛けて研究するモチベがあるとは思えない
それに、願いが叶ったら後はハッピーエンドしかあり得ない
今まで失われた二人の時間を奪うのは、バチが当たるというもの
「…ふん、もとよりこれ以上失うものなど何もない
お主の言う蜘蛛の糸とやらに、縋らせて貰うとしよう」
通路に反響する甲冑の足音に、深い溜息をついたカジットは
手枷をはめてくれとばかりに、自嘲気味に両手を差し出してきた
主人公暗黒面覚醒
あの殺伐とした時代で本物の愛情を向けてくれたのは親だけ(そう思っている)
一度知った蜜の味は思い出の中で昇華し、替えようのない存在になってしまった
どんなに愛されても、親が与えてくれたそれを上回ることは決してなく
主人公の時計は十年前に止まったままです