オーバーロード~至高のもう一人は救済を望む〜 作:アバダケダブ郎
『ふうかさん!ふうかさん!
起きてますか?いえ、起きてください!
大変です、すぐに玉座の間に来てください!』
ハムスケのお腹の上でラッフィーを抱きしめて寝くるまり、
魔法で再現した陽光を浴びつつ、デミウルゴスの料理の余韻に浸りながら微睡む。
『起きてません、起きれません。
ピーという音の後ご用件をお話しください。がちゃ』
そんな至福のひと時を大音量の伝言<メッセージ>で無遠慮にぶち壊してくれたモモンガさんに精一杯の抗議を入れる。
『…とにかく、玉座の間でみんな待たせてますので、
急いで来てください。真面目な用件なんです』
とても面倒くさいけど休日でも呼び出しが掛かれば即座に対応する、長年身に染みついた社畜の本能に突き動かされ、洗脳電波のように等間隔で繰り返されるモモンガのチクチク催促に突き動かされ、
嫌々ながら着替えを済ませ、単身 玉座の間に向かう。
ーーーー
「それで君は、そんな大事な情報を持つ相手を血の狂乱——要するに興が乗ってしまい、跡形も無く消し去ってしまった、と。
愚かな!あまりにも愚かすぎる!
アインズ様がなによりも望んでおられるプレイヤーの情報をそのような形で無に帰すとは!」
「ほ、本当に申し訳ないでありんす!ですが、このようにワールドアイテムは回収せんし、それに…完全に跡形も無く、じゃなく、血は残してあんす」
「……………」
反省しながらも不服そうに頬を膨らませるシャルティアに、ピキピキと青筋を浮かべる守護者一同。
「ま、まぁ、
過ぎてしまったことはしょうがない。
それに、ワールドアイテムである傾城傾国を回収できた功績は大きい。
故にシャルティアよ、お前の失態を許そう」
「流石わらわが全てを捧げし愛しき御方、どこぞのネチネチ眼鏡とは違って話が分かるでありんす」
モモンガに飛びつきベーっと舌をだすシャルティア。
おおう、アルベドとデミウルゴスが凄い顔してるぞ。
もうここままこいつらに漫才やらせて私帰って良きか?
「遅れてすみません。
何があったんですか?」
『人が気持ちよく寝てるのを態々叩き起こしてまで』
とはいえここまで来たんだから、理由ぐらい聞かないとスッキリしない。
言外に黒い念を乗せ、玉座に鎮座する骸骨魔王に送りつける。
『………ふうかさん、その人、誰?』
『通り魔女を改造した奴です。
で、なんの話ですか?事情が全然飲み込めないんですけど…』
『うわぁ…どんだけ願望を詰め込んだんですか『あ゛?』いえなんでも無いです
実は、現地人の戦力調査に向かわせたシャルティアがワールドアイテムを持つ勢力と衝突しまして…
戦闘には難なく勝てたみたいなんですが、
パッシブスキル、血の狂乱のせいで原型を留めないほどオーバーキルしてしまいまして…
ふうかさん、こうなった場合、蘇生って出来ますか?』
それは難しいかも。
ヒーラーが無限に蘇生してゾンビアタックできないように、ユグドラシルには死体損壊という状態異常があって、
もしそうなったら最後に祈った神殿でしか蘇生が出来なくなる。
第一階層守護者で対プレイヤー特化のシャルティアは当然そのあたり織り込み済みなわけで。
『やるだけやってみます』
テーブルに並んだ銀の盃に盛られたドス黒い血液の前に立つ。
「これで全員分ですか?」
「正確な人数は覚えせんしが、最後に殺した集団の血はちゃんと入ってると思うでありんす」
上位死者探知<グレーター・デテクト・デッド>
探知の魔法を掛けても盃の中身に変化はない。
死体じゃ無く、オブジェクト扱いになっている。
「ウール様、如何でしょうか…?」
心配そうに声を掛けてくるデミウルゴスの顔をちらりと見て閃めく。
もしかして、あれなら
「刻印<マーク>」
ティトゥスから貰ったスクロールを取り出し、盃に掛ける。
続けて
「特定<サーチ>」
もう一つのスクロールを使用すると、
盃が青のオーラに包まれ、
同時に遙か遠方に、後ろ髪惹かれるような存在感を感じるようになった。
その方向を向くと——
「覆水盆に返らず——と言いますか。
成層圏にまで散っていった粒子を全部回収出来るマンパワー、流石に無いですよね。
無いから頑張らなくて良いです」
ズィッと身を乗り出してお任せください!と言いたげなデミウルゴスを制し、
「馬鹿シャルティア!あんたなんてことを」
「不可抗力でありんす!」
喧嘩を始めたアウラとシャルティアに苦笑いしつつ、
デミウルゴスに話を振る。
「とはいえ、ユグドラシルの魔法だけでは追跡自体出来ませんでした
オブジェクト化した遺骸をしっかり探知できる。
カジット達の魔法は軽視すべき存在じゃない、ということがハッキリしましたね」
「いと尊き御身の深遠なる慧眼、このデミウルゴス感服致しました」
おお、とその場の誰もが感服する中、
「そのカジットとかいう人間達ですが、最古図書館<アッシュールバニバル>で望むように研究をさせていると聞きますわ。
あのような下等生物が我々の脅威になど到底なり得ないと確信しておりますが、それでも至高の方々が集めし叡智を下賜されるのは如何なものかと…」
デミウルゴスとは反対に、不服そうに異議を申し出るアルベド。
「お前の懸念も尤もだ。
だが、武技やタレントの存在があるように、ユグドラシルにはない知識がこちらの世界にも数多く存在する。
新しい知識を取り込み、前進しなければ衰退する一方。
故にこれはナザリック全体に利益をもたらす重要な研究だ。
わかってくれるな、アルベドよ」
「アインズ様…!勿論ですわ」
名指しで呼ばれ、恍惚とした表情でモモンガを見つめるアルベド。
この態度の差よ
…そもそもモモンガさんが好きって書かせたのは私だし、完全に自業自得なんだけども。
「それに人間達が裏切らないよう、手筈は既に整えているのだろう?」
「ええ、彼らの目的は最愛の人を蘇らせる、その一点。
その奇跡をお膳立てすることで我々への感謝を植え付け、
恐怖や信仰に寄らない、新しい支配の形を模索するという試みも兼ねています」
「流石だな、我が至高の友ウールよ。
恐怖による支配は簡単ではあるが、その心まで屈服させることは出来ないからな。
感謝からなる忠誠がどれほどの物か、結果を楽しみにしていよう」
おお、と感慨するNPC達を横目に、二人で視線を合わせてフフフと笑い合う。
これでモモンガの頭痛の種の一つになんとか釘をさせただろう。
冒険から戻って久々に執務に手を付けたモモンガを待ち受けていたのは
命令を曲解したNPC達が現地人に行った残虐行為の数々。
嬉々として提出されるえげつない報告書に正気を削がれ、食事を放棄してでも本来の身体に戻って沈静を計ったモモンガから相談が来たのがさっきの会食前。
特に酷かったデミウルゴスにはさっきのでしっかり釘を刺せたと思うけど、
こうして守護者会議の場で明言することで、
他のNPC達にも私達のスタンスを伝えられたはずだ。
「それで、これからの方針についてだが——」
こちとら寝てるところを叩き起こされたってのに、その事を忘れたブラック支配者は、
そのまま会議を続行するのであった。
◼️◼️◼️◼️
「なあ、あんた
喉乾いてないか?そろそろ日が暮れる。
何か飲んだ方がいいぞ、丸一日なにも口にしてないだろ」
ガタガタ揺れる馬車の中。
覆い被せたシーツを分けて、鉄格子の間から山羊の胃袋水筒に入った水筒を差し出してくるターバンの男——死を撒く剣団の一員に扮したロンデスを一瞥し、
ボロ切れの布を纏った金髪の女性——クレマンティーヌは虚な目のまま奥の鉄柵に持たれ掛かり、気を失った。
「って、おい!しっかりしろ!」
驚き、反射的に鉄格子に近づいてしまったロンデスに、
キッと目を見開いたクレマンティーヌは猫のような素早い動きで組みつき、鉄格子にから腕を回して彼の頭を抱え込み、両目に指先を突き出す。
「心配してくれてありがとーね♪
それでお願いなんだけど、この鉄格子の鍵を開けてくれないかなー?
水なんかより外に出してくれた方がずーっと元気になるのよね」
ジリジリと爪先をロンデスの眼球に近づけて、嬲るように猫撫で声で畳み掛ける。
「おい、聞いてんのかよ!あの化け物達が来る前にさっさとこのクレマンティーヌ様を解放しろつってんだよ!」
あちゃー。やっぱりこうなるか。
占拠<オーバーライド>
一瞬だけクレマンティーヌの身体を奪い、ロンデスを解放する。
『私達は常にあなたを見ています。
俄に逃げられると思わないことですね』
「ひっ!ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」
身体を丸めてガクガク震え始めたクレマンティーヌ。
あまりにも痛々しい姿に耐えられなくなったロンデスは水筒を鉄格子の中に投げ入れ、キッとカーテンを閉じた。
…ホムンクルスだから水飲まなくても死にはしないし、これからのことを考えるとまた暴れられても厄介だから、このまま弱っていてくれた方が良いんだけど
『飲んでいいですよ、いえ、飲んでください』
ロンデスの好意を無碍にするのは悪いと思い、水を飲む許可を出すと、
弾かれたように水筒に飛びつき一心不乱に飲み始めた。
そんなに喉が渇いてたなんて…
危ない危ない、ホムンクルスだからって過信し過ぎた。
ロンデスの気づかいが無かったら計画がパーになってたところだった
今この馬車は王都にある八本指の隠れアジトに向かっている。
デミウルゴス達の調査で、ニニャの姉——ツアレニーニャ・ベイロンは腐れ領主に散々弄ばれた後、奴隷として八本指に売られた事が分かっている。
その後の足取りは分からないが、組織的な犯罪組織なら取引記録のような物が残ってるはず。
なのでクレマンティーヌを奴隷として売り飛ばし、内部から流通ルートを探ることにした。
そこで潜入工作に明るく、裏社会にもコネがあるというロンデスを思い出し、ルプスレギナを通して確認したら案の定八本指と面識があるようで、
奴隷販売を潰すためと知って、出来ることならなんでも協力すると言ってくれたので、お言葉に甘えて売人役をやって貰うことになった。
エ・ランテルを通過して更に一晩、漸く見えてきた王都の城壁
聳え立つ城壁の中にまだニニャの姉がいることを祈りながら、疲弊した馬に回復と強化魔法を掛け直し、道を急がせた
不定期になりますが更新を再開しようと思います
つまらない文章ですが、評価や感想を頂けると幸いです