オーバーロード~至高のもう一人は救済を望む〜   作:アバダケダブ郎

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06.そんな奇跡を私は願わずにはいられない

試しにまだ起きている守護者たちに招集をかけたら、五分もしないうちに全員が集まってしまった。

涼しい顔で鎮静<カーム>を自分に掛けるのが最近のマイブームらしいモモンガさんを横に、打ち合わせ通りラッフィーを前に

 

「みなさん、お集まり頂き、ありがとうございます

これよりいと尊き御方、フーリンカ様の言葉をお伝えします

 

こんな夜遅くによく集まってくれた。私がいない間、ナザリックを、モモンガさん…様を、そしてアインズ・ウール・ゴウンを支え続けてきたその果てなき忠誠心に感謝を」

 

守護者全員の前に出ると精神が持たないので、ラッフィーには悪いけれど、代弁者になって貰った

それに、ラッフィーになら自然体で喋れるので、威厳のある言い回しをさせられる

 

「勿体ないお言葉感謝します。

いと尊き御身に再びお仕えすることができると知れただけでも、これまでの忠義が報われた思いです

フーリンカ様に認めて頂き、いと尊き御声を直に拝聴する栄誉を賜れますよう、いっそうの忠義を捧げる所存です」

 

ぎゃあああ、霊体なのに冷や汗が止まらない!

でもモモンガさんがいるとはいえ、ラッフィーにだけ喋らせて私が顔を出さないと

「こいつ主人が空気なのを良いことに、虎の威を借りて好き放題言ってんじゃね?」って思われたら嫌だから

気配だけでも出さないと示しが付かないか

 

とりあえず成功率が一番高い…って、全員自動成功!?ラッフィーだけじゃなくて全員好感度MAXってこと!?

…深く考えるのはよそう。とにかく、一度顔を合わせてるユリ・アルファの体を少しだけ借りて

 

「こ、これは…!」「ムッ、まさカ、これほどハ…!」「…!」ジョロロロ…

 

占拠<オーバーライド>に即座に気づき、一斉に頭を下げる守護者たちにはもう引き攣った笑いしか出なかった

とにかく、顔見せは済ませたので、急いで離脱。

 

伝言<メッセージ>をラッフィーに繋げ、話を続ける

「その忠誠心への見返りとして、我々四十一人で定めた、ナザリックの新たな法を伝える

その一、労働には対等の報酬を

その二、一日の労働は8時間まで、更に1時間の休憩を挟むこと

その三、週に三日の休暇を設ける」

 

『ちょっ、休暇は週に二日って決めましたよね?』

 

すかさずモモンガさんから伝言<メッセージ>が飛んできた

 

『以前みんなで理想の職場について語り合った時、万場一致で週休三日だったじゃないですか』

 

『それは、そうですけど…でもそんなことしたら、ナザリックの運営が立ちいかなくなりますよ?』

 

『それって来もしない敵に備えて各フロアをパトロールしてるだけですよね

あれれー自分が社畜の時は"やってます感がー"って愚痴るくせに、いざ支配者になったらそれを容認しちゃうんですか〜?』

 

『ううっ…わかった、わかりましたよ!その代わり、ちゃんと詳細を詰めて貰いますからね!』

 

上司の代弁者という大役を押し付けられて、未だ緊張が止まないラッフィーを労って、モモンガさんが前に出る

 

「ということだ。デミウルゴス、各守護者と情報を交換し、各部署が今ある人員で回るようにシフトを組み、その草案を作成し、提出しろ」

 

「御命、しかと拝命いたしました。至高の御方々が定めし新たな法を、一刻も早くナザリックに徹底させるよう、全力で向かわせて頂きます」

 

心なしか声が弾んでいるデミウルゴス。よく見ると尻尾が犬のようにふりふりしている

しれっと四十一人を出すことで、いつか私のようにみんなも帰ってくるかも知れない、そんな希望を与える目論見は成功したようだ。

 

たとえゲームの設定で植え付けられたものだとしても、創造主に仕えることを心の底から幸せと信じて疑わないなら

醒めない夢にどっぷりと浸からせた方がこっちも気が楽だ

 

それにモモンガさんもみんな<ギルメン>の探索に乗り気だし、今から士気を高めておくのも悪くないはず

 

それから3時間後、ナザリック中のNPC達のスケジュールを纏めた報告書を抱え、

ウキウキで提出しに来たデミウルゴスにセルフ沈静の謎儀式を行ったモモンガさんが1日強制休暇の刑を言い渡し、

どうか使命をくださいと、この世の終わりのような顔で縋ってきたのでスクロールの原料調達をお願いしたのはまた別の話。

 

■■■■

 

「うん…うーん…」

 

あれから数日。自室(執務室)の机に鏡を浮かべ、ああでもないこうでもないと手を泳がせるモモンガさん

遠隔視の鏡<ミラー・オブ・リモートビューイング>という遠くの景色を見渡せるマジックアイテムで、安全優先で迂闊に偵察部隊を送り出せない今の方針でかなり役に立つアイテムだ。

 

今日はラッフィーが休みなので、朝から霊体状態でモモンガさんに憑いてる

 

アンデットになったせいか、モモンガさんも私も眠気を感じないので、連日好奇心が赴くままゲーム時代との違いを検証している

 

とはいえアンデットじゃない異形種、たとえば人造物で元人間のラッフィーはやっぱり眠いのか、一度注意してからは毎晩同じ時間に寝ている

やはりNPCにも休息が必要なのだろう

無理矢理にでも休暇の概念を押して正解だ。

 

ちなみに報酬の方は、ユグドラシル金貨はギルドの維持に使うため、お金の代わりに様々なサービスを利用できるポイントを配っている

 

問題はそういったサービス施設は第九階層に集中していて、他の階層のNPCが敬遠していることで、

一応墳墓エリアのアンデット達はあれを賭博のトークンに活用しているらしく、

溜めた後の使い道については、デミウルゴスの提案で班長に抜粋することになっている

なんでもギャンブルで磨き抜かれた駆け引きの強さが逆境でのパフォーマンスに繋がるとかなんとか

 

 憑依については、最初は41人いるホムンクルスのメイド達から交代でボランティアを募っていたけど、

話を聞きつけたアルベドやシャルティア、アウラまでもがどうぞ身体をお使いくださいと休暇の日に押し掛けてくるので、中止となった

 

決定打になったのは、「私にはマスターだけなのに、マスターはどれだけの方に憑けば気が済むの…」というラッフィーの寝言を聞いてしまったことだが

 

それに憑依した種族で味覚が全然違うようで、結局一番美味しく感じられたのは元人間のラッフィーだけだった。

 

とはいえモモンガさんが気の毒過ぎて、食堂には行かずユリ・アルファに部屋まで出前を頼んでいる。

 

 

…とここ数日に起きたことを一通り回想し終えても、まだ使い方がわからないらしい

 

『ああ、もう。じれったい!

いい加減セバスにやらせてくださいよ、どうせタッチスクリーンで骨に反応しないとかそういうのですから!』

 

かれこれ1時間以上なんの成果も得られずに試行錯誤を繰り返しているを見かねて、つい伝言<メッセージ>を飛ばしてしまう

 

『でも、それじゃ尊厳が――あ、動いた』

 

尊厳で飯が食えたら戦争は起きねぇ。

って、おお、本当に動いた。

鏡の中の景色がすいすいと変わっていくのは見ていて楽しい。それが緑豊かな自然だから尚更

 

ズームしたりスライドしたりして遊んで――周囲の地形を偵察していると、村を発見した

 

「ん?祭りか?」

 

「いえ これは違います」

 

なにやら人が走り回っているのを覗き込んで、険しい顔で否定するセバス

ズームして見ると、甲冑に身を包んだ騎士達が逃げまとう村人を虐殺している光景が映し出された

 

人の体が、四肢が血しぶきを撒き散らし飛び交う

あまりにも凄惨な光景。

 

「野党ではないようだが」

 

しかし、それだけ。嫌悪感はあるが、不思議と恐怖を感じない

カメラ越しに映像を見ているような感じだからだろうか

 

と、鏡が一人の村人を捉えた。

騎士に組み付き、必死の形相でこちらに向かってなにかを叫んでいる

 

『セバス、読唇術で読める?』

 

「勿論です。逃げろ エンリ 逃げるんだ うっ 早く行け…どう致しますか?」

 

『助ける』

 

「見捨てる。助けに行く理由も価値もないからな」

 

おい、何を言ってるんだこの人!?

 

『こちらの戦闘力も未知数なのに、戦争に介入するなんてリスクが高過ぎますよ』

 

『だからって、見殺しにするんですか!?』

 

「…どう致しますか?」

 

モモンガさんに問いつつ、セバスの視線は憑いてる私を真っ直ぐ見つめている

 

『…モモンガさん、私のお父さんは10歳の時仕事で亡くりました。

企業からの賠償は、チーズとフルーツの盛り合わせだけでした』

 

『…私も似たようなものです』

 

『期待したことはありませんか?

力のある資産家や、政治家が 助けてくれることを

21世紀初頭のような誰もが平等で、等しく尊重される世界にしてくれることを』

 

『そんなの夢物語ですよ…』

 

『でも、その力があるかも知れませんよね、今の私達には

…自分起きてしまった不幸を変える事は出来なくても、誰かに起きようとしている不幸ならまだ止められるかも知れない

 

それが巡り巡って、みんな誰もが手を差し伸べあう世界になれば

いつか何処かで この世界に来るかも知れない大切な人達に届くかも知れない』

 

都合の良い事を言ってるのは分かっている

でも、そんな奇跡を願わずにはいられない。

 

『それに、ちょっと試しに行ってみて、ダメだったら上位転移<グレーター・テレポーテーション>で逃げれば良いですし』

 

鏡を睨んだまま、低く唸って考え込むモモンガさん

 

「…この世界での私たちの戦闘力を調べるいい機会だ

私たちはこの村に行く、ナザリックの警備レベルを最大限引き上げろ」

 

椅子にもたれ、深呼吸するように肩を上下させて

 

『懐かしいですね、二人でタッグを組むのは』

 

『モモンガさんに憑くのは、前衛が全滅して後がない時だけですもんね

そこから負けたことなんて、一度もないですけど』

 

『ふふっ、そうですね

サポート、しっかり頼みますよ』

 

転移門<ゲート>の魔法が発動され、宙に黒い裂け目が現れる

 

「お二人方、ご武運を」

 

セバスの表情が和らいだ気がしたのも束の間、憑いていたモモンガさんにつられて私は黒い裂け目を飲み込まれていった




主人公ちゃんのカルマは50<中立>です
原作の誰かさんと同じような事を言ってますが、きっと波長が合うのでしょうね

余談ですがフランケン・シュタインは睡眠を必要としません
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