オーバーロード~至高のもう一人は救済を望む〜 作:アバダケダブ郎
転移門<ゲート>の先を村人がエンリとネムと呼んだ少女たちに指定し、急いで駆けつける
暗闇を抜け村はずれの森に出た、まさにその瞬間に鎧の騎士が少女に向かって剣を振り下ろそうとしていた
『上位傷害障壁<グレーター・ダメージ・バリア>!』
脳裏に浮かんだ魔法を反射的に唱えると、菱形の障壁が全方位から少女を守るように現れ、騎士の攻撃を跳ね返した
一定ダメージを吸収するこの障壁は、レベル100の両手剣持ち戦士職の通常攻撃なら二回ほどは防げる第九回位魔法だ
騎乗<ライド>の影響で第三階位魔法程度にまで弱体化していても、一撃で破れないならレベル40以上という事はないはず
といっても、子供相手に油断していただけかも知れないので油断は出来ない
「なんだ?」「なっ…」
攻撃を弾かれ、唖然とする騎士にモモンガさんが骸骨の手を翳す
「心臓掌握<グラスプ・ハート>」
即死魔法を受けた騎士が崩れ落ちる
これも第九階位魔法――抵抗<レジスト>出来ないということは、格上じゃなさそうだ
「ひっ、化け物!?」
「ふむ…人を殺しても何も感じない」
仲間を一瞬で殺され、浮き足立つ騎士を見下し、呟いたその言葉にハッとなる
そう、何も感じない。ゲームの時と同じ、倒れる敵を平然と眺めている
…今はそんなことを悩んでる場合じゃない。それにこいつらは無抵抗な村人を殺している、躊躇うことはない
残りの騎士を雷魔法で倒し、死体に中位アンデット作成・死の騎士<デスナイト>をかけると
黒い魔力の塊が騎士の死体を飲み込み、干からびた腐肉がこびり付いた骸骨の騎士へと変化させた
「死の騎士<デスナイト>、この村を襲っている騎士を殺せ」
その命令に咆哮で応え、村の方に向かって走り出すデスナイト
「え?盾になるモンスターが守るべき者をおいてってどうするよ!?」
『ゲームの時と同じに考えない!
ちゃんと見てないと、村人も襲いそうなので先に行ってますね
モモンガさんはこの子達のケアをお願いします!』
『あ、はい わかりました!気を付けてください、ふうかさん!』
心配そうなモモンガさんの声を背に、飛翔<フライ>の魔法でデスナイトを追いかける
歩幅が広いからか、騎乗<ライド>できた時には既に村で騎士たちを攻撃し始めていた。
『抵抗してこないやつは後回し、村人を襲ってるのと、逃げ出そうとしてるやつを倒して!』
通じるかどうかも分からない伝言<メッセージ>でデスナイトに命令しつつ、倒れている村人たちの回復を行う
補助持続時間延長化<エクステンド・エイド>、魔法持続時間延長化<エクステンド・マジック>、
補助対象複数化<マルチ・エイド>、上位生命力持続回復<グレーター・リジェネレート>
スキルのデメリットで効果が大きく半減しているから、一人ずつ治すのを諦め
とにかく今は死なさないように、持続回復で繋ぎ止めるしかない
命令を聞いてくれたのか、指定した対象だけ切り捨て、それ以外の騎士は盾で無力化していくデスナイト
ゲームの時のようにターゲットロックが働かず、目眩苦しく変化する視界でなんとか村人に照準をつけては治癒を掛けていく
「神よお助けください」「神よ…」
自分から襲っておいて、困ったら神頼みとは呆れた
いや、兵士だから、命令されたら拒絶権なんてないか
「貴様らあの化物を抑えよ!俺はこんなところで死んでいい人間じゃない!
お前ら時間を稼げ!俺の盾になるんだ!」
「ベリュース隊長…」
命令を出してるのはあいつか。自分だけ助かろうなんて、お約束過ぎて笑えてくる。
占拠<オーバーライド>:デスナイト
ぞわり、体が中から腐り落ちていく悍ましい感触に思わず吐きそうになる
取り落としそうになった曲線剣を握り直し、威嚇するように一歩ずつ、そいつに近づく
「ひ、ひいー!か、金をやる!200金貨…いや、500金貨だ!」
「あ?私に言ってるのか?」
体中から湧き上がる苦しみに、憎しみに感情を突き動かされ
初対面の相手にも関わらず自分でも驚く程強気に出れた
「は、はひ!その通りでございます!お金をいくらでも差し上げますので、どうか命だけはぁ!」
うわぁ…テンプレ通りの命乞いで一瞬ニヤけそうになる
「なぜ村を襲った?誰の命令だ?」
「そ、それは…バハルス帝国!バハルス帝国の命令だ…でひゅ」
嘘ぶっこいてんじゃねーよ
ツッコミでどつくような、そんな軽いノリで――グサリと剣でそいつの腹を貫く
!! 返り血を浴びて初めて、自分がしたことに気づき 急いで回復魔法を唱える
大治癒<ヒール>
「ばかな、信仰魔法!?」「アンデットが信仰魔法を使ったのか!?」
騎士たちがどよめく。うん、言いたいことはわかる。
出来ちまうんだからしょうがない
「もう一度チャンスをやる。誰の命令だ」
完全に竦み上がったベリュースを踏み倒し、目先に剣を突きつけてやる
「スレイン…法国…です
お、俺、いや、わたし、わわわたしは!命令で!仕方なく!!無実の村人たちを襲わせられていたんです!」
「そうか。命令なら仕方ないな」
「そそそそうなんです!それに俺は、村を焼き払えと言っただけで殺せとまでは言ってない!!
こうなったのはあいつらが勝手にやったことだ!俺のせいじゃない!」
「そうか。それは災難だな」
命令に従っただけの兵士を〆ても本当の首謀は痛くも痒くもない。
「下民が殺し合っててワロ」って見世物感覚で嘲笑うだけだ。
だけどこいつは違う。
鏡に映った中で、娘達を庇った父親を何度も切り付けたのをよく覚えている
殺すか。
「アアーッ!」
剣を突き刺しては抜いて、さらに刺す。一回、二回、三回…
「あった…助けて!お願いします 何でもします…!」
「ん?今なんでもするって?」
ネタ振りみたいなセリフに思わず乗ってしまった。
「ガッ、はひっ、な、なんでも じまず…! お願いでず だずげてぐだじゃい…ごろざないで…!」
体中の傷口から血を噴き出し必死に懇願する、その姿に私は…殺虫剤をかけられたゴキブリみたい、としか感想が出なかった
でもこっちから乗った手前、反故するのもなー。
…処遇はモモンガさんに投げよう。もうどうにでもなーれ
「死の騎士よ、そこまでだ」
お、噂をすればなんとやら
「だ、誰だ…?」
恐る恐る問いかける騎士たち。その視線の先には…
「ブフォッ」
何でよりによって嫉妬マスク!?シリアスなシーンでなに大真面目にふざけてんの!?
「フフフ…誰だ、か
初めまして諸君。私は――「正義だ!」アイン義!ウォッホン!!…アインズ・ウール・ゴウンという」
『お願いしますから自重してください!今真面目なシーンなんですから!』
間髪置かずにすっ飛んでくる伝言<メッセージ>
『この場で一番自重してないモモンガさんに言われたくないですー!
というかなんですかアインズ・ウール・ゴウンって!
誰かが困っていたら助けるのは当たり前、合言葉は”正義降臨”のAOG精神を忘れたんですか!?』
『それはたっち・みーさん個人の精神ですー!勝手にAOGをヒーロー戦隊にしないでください!
どちらかと言うとウチは悪役PKギルドで通ってるんですからね!』
なんて茶番の応酬をしばし。ぞわぞわと騎士たちの戸惑う声に現実に引き戻された
「諸君には生きて帰ってもらおう。そして諸君の上司…飼い主!に伝えろ
この辺りで騒ぎを起こすなら、今度は貴様らの国まで死を告げに行くと
行け!そして確実に我が名を伝えよ!」
その言葉を合図に蜘蛛の子を散らすように逃げていく騎士たち
「ぐぇっ」
どさくさに紛れて逃げようとしたので、足元のゴミを踏みつけておく
『その人は?』
『なんでもすると誓った穴です』
『うわ…』
『ついでに連中の指揮官です。ほら、情報は必要じゃないですか』
それもそうか、と納得してくれたモモンガさんは、
下手に暴れないように、転移門<ゲート>で穴をどこかに飛ばした。
「あ…あなた、あなた様は…?」
転移門に驚き、こちらを警戒しつつ恐る恐る声をかけてくる初老の男
「この村が襲われているのが見えたのでね、助けに来た者だ。
君たちはもう安全だ、安心して欲しい」
おお…!と村人たちから安堵の声が上がる
「とはいえ、ただというわけではない…それなりの礼を頂きたい」
『まだ穴が足りないんですか!?』
『いい加減穴から離れて!?…営利目的と思われた方が、よけいな疑いを掛けられずに済むんですよ』
話しかけてきたのはこの村の村長らしく、報酬について詳しく話そう
と切り出したモモンガさんに、それなら是非自分たちの家へと案内してくれた
…ちなみにあのふざけた顔<嫉妬マスク>については、助けた少女たちが骸骨の顔を怖がったためやむなくとの供述。
よく考えなくても骸骨が動いてたらそりゃ怖いに決まってた
…周りが異形だらけのここ数日で完全に感覚が麻痺してるな 反省
モモンガ「そういえばふうかさん嫉妬マスク一枚も持ってないんですね」
オリ主「クリスマスイブにウキウキで待ち合わせ場所行ったらデートをドタキャンされて、L◯NEで問い詰めたら貞子がいたから逃げたって返って来た女の子の話聞きます?全部で3話あるんですけど」
モモンガ「すみませんでした!」