オーバーロード~至高のもう一人は救済を望む〜 作:アバダケダブ郎
モモンガさんが村長の家に招待されている間、サイズ的に入れないデスナイト<わたし>は
談話の内容を伝言<メッセージ>で共有して貰いつつ、村の復旧作業を手伝うことにした。
リジェネのお陰でなんとか命を取り留めた村人達の手当をして回っているうちに
村人達も警戒を解いてくれたようで「骸骨の騎士様」と呼んでもらえる程度には打ち解けてきた
それでも死者が出なかったわけではない。
村についた時点でそれなりの死傷者は出ていて、この村に来るきっかけとなったエンリの両親も既に亡くなっていた
遺装を整え、仰向けに寝かされた犠牲者たちのそばで遺族たちが涙する光景に胸が痛くなる
『だめですよ、ふうかさん』
まだ何も言ってないのに、さきに釘を刺された
『どうしてですか?』
『死を与える魔法詠唱者<マジックキャスター>と死者を蘇らせることができる魔法詠唱者
どっちが厄介事に巻き込まれるか、想像してみてください』
『厄介事ならさっきの騎士達に名前を晒して、国相手に喧嘩を売ったばかりじゃないですか
死の恐怖では敵しか作れませんけど、復活の奇跡なら味方を作れます』
とりわけ死を恐れている権力者たちという力強い味方が。
それが自分だけ生ながらえたい、ギラギラした欲望によるものであっても
『…蘇生魔法がこっちの世界でも通用するのは、さっき送った隊長でデミウルゴス達が実践済みです
ゲームの時と同じようにレベルダウンが起きるみたいなので、レベルの低い村人に通常の蘇生手段はやめた方がいいですよ
プレイヤーと違って灰になりますからね
この世界の平均レベルがどれぐらいか分かりませんけど』
普通に真なる蘇生<トゥルー・リザレクション>を唱えかけた所で、さりげなく忠告され
慌てて詠唱を中断する。長い間引退していたから、こういう細かい仕様をすっかり忘れてた
『忠告感謝です、モモンガさん
それじゃいつものやつ、お願いしてもいいですか?』
『ええ、せっかく良好な関係を築いたのに、灰にして気まずくなるのは嫌ですしね』
やっぱりモモンガさんは優しいな
本当は嫌でも、なんだかんだ言いながらこちらの希望を優先してくれる
だからこそ、みんな彼について行こうと思えたんだろう
父親の亡骸に覆い被さり、慟哭しているエンリ姉妹の隣にしゃがみ、冷たくなった骸に手を当てる
不安そうに見上げてくるエンリを一瞥して、意識を集中し 残り少ない魔力を掻き集める
憎しみだけで動き続けたこの体でも、その笑顔を守られるなら
例え朽ち果てても構わない
その願いに呼応するように暖かい光が天から降り注ぎ、私を光へと変えていく
遠のく意識の中、ほぼ光になりかけた手でエンリの父に触れる
あなたに 救済<サルヴェーション>を――
瞬間、光の奔流が全てを飲み込んだ
「骸骨の騎士様…?」
信じられないと、目を見開いたエンリの瞳からツー、と一筋の涙が流れ落ち
その雫が触れた瞬間
「ゴホッ!ゴホッゴホッ…!」
「…!お父さん!!」
よかった、ちゃんと助けられた――
薄れゆく意識の中、「ありがとう、骸骨の騎士様…」と涙を浮かべながら満面の笑みを咲かせたエンリの姿を幻視した
『良い…!最高に尊い!死に別れた最愛の家族を引き合わせるシチュ、最高にエモくないですか!?』
『台無しですよ!ちょっとうるっときたのに!台無しですよ!!』
「奇跡だ…」「骸骨の騎士様…」と涙を流す村人たちを遠巻きに
デスナイトから抜け出してモモンガさんに憑いて、一部始終を眺めていた私はあまりのエモさに興奮が止まらなかった
さっき使ったのは第十階位の信仰魔法 救済<サルヴェーション>
自身を犠牲に対象を復活させ、蘇生ペナルティを肩代わりする自己犠牲魔法だ
術者自身も死ぬためデスペナが二倍、一回で10レベルもダウンしてしまう上、15以上レベルが低い相手にしか使えないので
大人しく真なる蘇生<トゥルー・リザレクション>で1〜2レベル下がった方がずっとマシという存在意義が迷子の地雷魔法なのだが、
占拠<オーバーライド>といった完全憑依系のスキルと併用すると勝手が違ってくる
なぜならデスペナを受けるのはあくまでも実際に魔法を発動した憑依対象だから
詠唱時間が長すぎてプレイヤーに憑依して自壊させようにも詠唱中に憑依が切れてしまうため変則PKには悪用出来ないが、NPCに憑依して低レベルのプレイヤーを蘇らせることはできるので
横行していた悪質な初心者PKへの救済処置という意味で運営に黙認されていた。
『というわけでワンスモア』
『はいはい。奇跡のバーゲンセールはウケませんよ』
それから下級火精霊召喚<サモン・レッサー・ファイヤーエレメンタル>で下級火精霊を呼び出しては自壊させ、死んでいた村人全員を蘇生させた頃には
村人たちはモモンガさんのことを神様もかくや崇め称えていた
「アインズ様!どうか我々をお導きください!」
「え!?いやいや、彼らを蘇らせたのは私ではなく、…そう、私が信仰している女神だ」
おい、急に何を言い出すんだ
「なんと!よろしければ女神様のお名前を伺いしても…?」
『私の名前を出したら殴る。グーで殴る』
『ぐっ…その名は、女神ウール』
『アインズ様と同じ名前なのですか?』
「この名は洗礼名だ。何しろ遥か遠い地の宗教なのでね、宣教も兼ねて神たちの名を名乗っている
だから恩義を感じるなら、アインズ・ウール・ゴウンの名を広めて貰えるとありがたい」
「はい、かならずや!このリ・エスティーゼ王国、ひいては全大陸に知らぬ者がいないほど、広めてご覧に入れます!」
一斉に片膝を突き、胸に手を当てモモンガさん見上げる村人たち。あれ、既視感
『何さらっと新興宗教でっち上げてくれちゃってんですか!?』
『いやぁ、流れでつい…でも言っちゃなんですが、我ながら妙案ですよね
個人の名前だと厄介事に巻き込まれかねないですが、実体のない宗教ならこちらの存在を掴ませないまま
アインズ・ウール・ゴウンの名前を広められますよ』
それもそうか
『…ふうか様と呼んでくれてもいいんですよ?』
『怪我の功名ってことわざご存知でない?』
早速女神ウール様を称える神殿を立てましょう!とマルチ勧誘セミナーの参加者のように目をギラギラさせた村人たちに気圧され、
あろう事か先日送ったラッフィーのスクショを道具創造<クリエイト・アイテム>でプロマイドにして手渡しやがったモモンガさんにネチネチと抗議していると
村人の一部がざわめき始めた
「どうしますか?村長」
「逃げるべきかも知れないが、ここは女神ウール様が奇跡をお示しになられた言わば聖地
命に代えてでも死守するべきだが、それではアインズ・ウール・ゴウンの教えを広めるという我々の使命が…」
なんて既視感しかない会話なんだ。背中がかゆい
もう関わりたくない気持ちで一杯だが、『ここまでやったんですから最後まで責任を持ってください。私はもう覚悟を決めましたよ』
と疲れた声のモモンガさんに引っ張られ、村長たちの方へ
「どうかされましたか?村長殿」
「ああ、アインズ様…実は、騎士風の者たちが近づいてるそうで」
さっきの連中だろうか?懲りずにまたやって来たということは、今度は本隊か
思ったよりも早い報復だ
「なるほど。わかりました
村長殿は私と共に広場に、残りの者たちは村長殿の家に至急集めてください」
命に代えても女神ウール様の聖像を死守します!
とラッフィーのプロマイドを大事に抱え、壮絶な覚悟を顕にするエンリ一家と村人たち。物凄い複雑な気分
『今からでもモモンガさんの肖像に変えません?』
『ふうかさんのスクショならいいですよ』
撮れるもんなら撮りたいが?
なんて伝言<メッセージ>を飛ばし合ってるうちに、ボロボロの装備を着た、先ほどとは毛色の違う兵士たちがやってきた
その先頭を率いる戦士風の男が乗馬したまま近づいてくる
「私はリ・エスティーゼ王国の王国戦士長、ガゼフ・ストロノーフ
この近隣を荒らしまわっている帝国の騎士たちを討伐するために王のご命令を受け村々を回っているものである
この村の村長だな?隣にいるのは一体誰なのか、教えてもらいたい」
ギロリと、こちらを威嚇するように睨んでくる
「この方は、アインズ・ウール・ゴウン教――」
「はじめまして王国戦士長殿、私はアインズ・ウール・ゴウン
この村が襲われておりましたので、助けに来たマジックキャスターです」
興奮気味に何か言いかけた村長に、慌てて言葉を被せるモモンガさん
それを怪訝な表情で見ていたガゼフだが、ごほん、と咳払いすると
馬から降りてこちらに向き直り、深々と頭を下げた
「この村を助けて頂き、感謝の言葉もない」
馬の上から偉そうに、と思っていたが
村民を助けたことを心から感謝しているその姿に第一印象のマイナスイメージは一瞬で消えた
「戦士長!周囲に複数の人影、村を囲むような形で接近しつつあります!」
ああもう!!なんでこう、次から次へとイベントがなだれ込んで来るんだろう