オーバーロード~至高のもう一人は救済を望む〜   作:アバダケダブ郎

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09.戦力的にはこちらが圧倒的に不利

上位生命探知<グレーター・ディテクト・ライフ>で感知すると確かに村を等間隔で囲うように複数のシルエットが展開していた

しかも人間種を示す青色の隣に異形種を示す黄色が二人一組で。

 

「確かにいるな」

 

「一体彼らは何者なのでしょう?」

 

「あれだけの魔法詠唱者を揃えられるのはスレイン法国…それも神官長直轄の特殊工作部隊、六色聖典のいずれかだろう」

 

窓の隙間から外を覗き見てガゼフは断定する

 

「この村にそんな価値があるのでしょうか?」

 

「アインズ殿に心当たりはない、狙いでないということなら、答えは一つだな」

 

「憎まれてるのですね、戦士長殿は」

 

本当に困ったものだ、と笑い合う二人。

 

『え、今ので何を分かり合えた??』

 

『村々を襲って回ってるのは、この人をおびき寄せるためだったんですよ

さっきナザリックから報告があったので、間違いないですね』

 

なんでもリ・エスティーゼ王国を潰したいがこのガゼフという人が強すぎて邪魔なので

暗殺してしまおうという作戦らしい。

どうしてこういうファンタジーの宗教ってロクなことをしないんだろうな

 

『気になるのは、なぜユグドラシルのモンスターがいるかってことですね

炎の上位天使<アークエンジェル・フレイム>ですよね、あれ』

 

『穴に聞いてみたらどうです?』

 

耳元に指を当ててどこかに伝言<メッセージ>を飛ばすモモンガさん。すぐに返事が帰ってきたようで、

ゆっくり首を横に振る

 

『ユグドラシルとの関係は分からないですが、

ただ、少なくとも昔から当然のように存在していたらしいですね』

 

意外と使えるなあの穴

 

「アインズ殿、よければ雇われないか?報酬は望む額を約束しよう」

 

「お断りさせて頂きます」

 

そこまでする義理はないとばかりにきっぱりと断る

それはそう、命令で無理やり戦わされてる兵隊同士、どっちに肩入れしても胸糞悪いだけだ。

 

「ではアインズ殿、お元気で。この村を救ってくれて感謝する。

 

…本当に、本当に感謝する。

 

そしてわがままを言うようだが…もう一度だけ村の者達を守ってほしい。

今差し出せるものはないが、何とぞ!…何とぞ!!」

 

断られて気を悪くするでもなく、あくまでも村人のことを案じて深々と頭を下げるガゼフ

これが計算ずくの演技で、情に絆されるのを狙ってなら大したインテリ体育会系だ。

 

「了解しました。”村人は”必ず守りましょう」

 

「ならば後顧の憂いなし!私は、前のみを見て進ませていただこう」

 

モモンガさんの誓いに、心の底から安堵したように、晴れやかな笑顔で死地に振り向く

本当に、村人を思っての願いだった?

 

…こんな人が現実に存在するなんて

こんな人を、国を潰すのに邪魔だからって、おびき寄せるためだけに無関係な村人を虐殺して

 

――気づけば私の心は、とっくに傾いていた。

 

『モモンガさん』

 

『ええ、わかってます

行ってらしゃい…違うか、ご武運を、ふうかさん』

 

なんか染まってる…

 

約束通り村人を守るため、防壁魔法を展開し始めたモモンガさんから抜け出し

部下のもとに向かうガゼフの背中に乗り移った

 

■■■■

 

「行くぞ、奴らの腹わたを食い散らかしてやれ!!」

 

「「「うおおお!!!」」」

 

雄叫びを上げ、待ち構える天使の軍勢に吶喊するガゼフの軍隊

 

作戦の内容は悲壮だった。

ガゼフ達が囮になって敵を村から引き剥がし、最後にガゼフが残って敵を引きつけ、味方の兵士が逃げる時間を稼ぐ

 

反対する部下達に頭を下げ、国を任せたとまで言い切ったガゼフに反論できる者はいなかった

 

蹄の音が一陣また一陣と胸を震わせ、瞬く間に敵が眼前に迫る

 

剣戟の音が交差し、天と地が激しく入れ替わり、平衡感覚を保とうとする三半規管は飛び交う怒号に狂わされ、状況の把握がままならない

 

これが本物の戦い――ゲームのそれがどれだけ生温い児戯だったかを思い知らされる

 

目眩苦しく入れ乱れる敵味方に、あてにしていた集団強化特化のクラススキルも発動がままならず

対象複数化に範囲拡大を重ねた障壁魔法を敵味方関係なくバラ撒き、割られたかどうか確認する間もなく次の障壁を重ねるのを繰り返すしかできない

 

「誰だ、障壁魔法を乱発している馬鹿者は!?」「詠唱を止めろ!敵にも掛かってるぞ!」

 

ようやく魔法と剣戟の応酬が凪ぎ、肩で大きく息をするガゼフを囲む無数の天使たちに遮られ、味方の兵士たちが見えない

気がかりではあるけど、これでやっとガゼフ一人のサポートに専念できる

 

補助最強化<マキシマイズ・エイド>、上位全能力強化<グレーター・フルポテンシャル>

 

攻勢に出たガゼフに合わせて補助魔法を唱える

 

「武技!戦気梱封!」

 

武技?聞き慣れない単語の意味を反芻する間もなく、

剣に気のような物を纏わせたガゼフのひと振りで天使の集団が一掃される

 

「……。み、見事だ。一つの武技をそこまで極めるとは…

し、しかしそれだけだ。次の天使を召喚せよ!」

 

敵の隊列をかき分け、マルフォイ…じゃなくて、隊長格の男が前に出る

その号令に合わせて再び天使が召喚され、ガゼフを取り囲む

 

「舐めるなよ、俺は王国騎士長!

この国を愛し守護する者!王国を汚す貴様らに負けるわけにいくか!」

 

「そんな夢物語を語るからこそお前はここで死ぬのだガゼフ・ストロノーフ

お前一人で何ができる?

お前を殺したのち村人も殺す。無駄な足掻きをやめてそこで大人しく横になれ」

 

嘲るような隊長格の言葉に呼応するように

三体の天使が一列に並んで波状攻撃を仕掛けてくる

 

まずい!上位敏捷強化<グレーター・デクスタリティ>

 

「邪魔だあああ!武技・六光連斬!!」

 

またしても未知のスキルで六人に分身し、空間ごと天使たちを切り裂くガゼフ。

遅れて自分の役割を思い出した気圧が辺り一帯に吹き荒れる

 

「…さ、さすれば村人たちの命は見逃してやろう」

 

自分の剣をマジマジと見つめ、何かを確かめるように軽く振っているガゼフからそっと距離を取りつつ、

部下にあらたな天使を召喚させ一斉攻撃を命じる隊長格

 

今度こそ絶体絶命だ!上位筋力強化<グレーター・ストレングス>

 

「ふん!」

 

ひと振りで天使の大軍が割れた。モーゼの海割りもきっとこんな光景だったのだろう。

 

「…………。

そ、それからお前の部下達も見逃してやろう…!」

 

もはや化物を見るような目でガゼフを警戒しつつ、パサりとマントを翻し、馬を走らせる隊長

その隙間を埋めるように新たに召喚された天使たちが割り込んでくる

心なしか法国兵たちの顔が土気色だ。

 

「戦力的にはこちらが圧倒的に不利…ならば狙うは指揮官のみ!」

 

うおおおお!と吶喊を始めたガゼフに天使たちが殺到するも、突進で発生したソニックブームに巻き込まれ、バラバラに解体されてしまう

 

「ひっ!来るなあ!!プリンシパリティ・オブザベーション!私を守れ!!」

 

主の命に応じ、振り下ろされた上位天使のメイスとガゼフの剣と拮抗し、共に砕け散る。

 

「邪魔だあああ!!」

 

役目を終えた愛剣の残骸を握り砕き、拳を作り渾身のストレートを上位天使に叩き込むガゼフ

人間<下等種族>と天使<上位存在>の拳が真っ向からぶつかり――

 

次の瞬間、天使の背中が爆ぜた

 

「一撃…だと?ありえるかあ!上位天使が拳一発で滅ぼされるはずがない!」

 

本当になー…一人の抹殺にこんな大部隊を動員するわけだよ

 

「やああああ!!!」

「最後まで戦士長とともに!」「王国を守るのは俺たちだ!!」

「「「うおおおおお!!!」」」

 

上位天使がしめやかに爆発四散し、狼狽する法国兵達の背後から撤退したはずのガゼフの部下達が戻ってくる

切り札を倒され、茫然自失としていた隊長格はその光景に完全に目が死んだ。

 

「敵を引きつけたらそのまま撤退と言ったろうが…

本当に馬鹿で、本当に自慢の奴らだ」

 

感極まってグスッと鼻を啜るガゼフ

 

まずいな…ガゼフ一人ならなんとかなるけど、あんな人数に今の魔力で集団バフなんて掛けられない

幸いにも天使を湯水のごとく召喚しまくった法国兵達の方がさきに魔力切れしてくれたようで、

息も絶え絶えになったところをガゼフ軍に飲み込まれ、ボロ雑巾のように蹴散らされていく

 

 

「ニグン隊長!我々はどうすれば…?」

 

あっという間に形勢が逆転し、包囲されたマルフォイ――もといニグンはおもむろに懐に手を伸ばし

 

「狼狽えるな!…最高位天使を召喚する!」

 

水晶のような物を取り出し、誇らしげに構えた

 

「おおー!」

 

と法国軍たちが歓喜の声をあげる

 

『気をつけてくださいふうかさん!

あれは、輝きからすると超位魔法以外なら封じ込めることができる魔封じの水晶

レベル90台の熾天使<セラフ>を召喚してくるかも知れません!

今そっちに行きますから、着いたらすぐにバフをお願いします!』

 

え、それなら逃げるべきでは?と返事するより先にモモンガさんが転移してきた

 

「アインズ殿!」

 

「戦士長殿、兵を下げてください

あれはあなたの手に余るものだ」

 

アインズ殿がそういうなら、と素直に隊員を後退させるガゼフ

 

「何者だ?」

 

「初めましてスレイン法国の皆さん。

私はアインズ・ウール・ゴウン。

アインズと呼んでいただければ幸いです

あの村とは少々縁がありましてね」

 

補助効果隠蔽<インビジブル・エイド・エフェクト>

 

ただならぬ気迫に押され、言われた通りバフを盛っていく

 

「アインズ・ウール・ゴウン?ああ、先遣隊を襲撃した魔法詠唱者か

村人の命乞いにでも来たのか?」

 

補助三重化<トリプレット・エイド>、魔法二重化<ツイン・マジック>、上位傷害障壁<グレーター・ダメージ・バリア>

 

「いえいえ、実は…お前と戦士長の会話を聞いていたのだが――本当にいい度胸をしている」

 

「はあ?」

 

補助最強化<マキシマイズ・エイド>、上位異常耐性<グレーター・レジスタンス>

 

「お前たちはこの私が――私たちが手間をかけてまで救った村人を殺すと公言していたな

これほど不快なことがあるものか」

 

神聖魔法反射<リフレクト・セイント>

 

「不快とは大きく出たな、マジックキャスター

で?だからどうした?最高位天使の前ではお前など取るに足らない無力な存在」

 

守護天使<ガーディアン・エンジェル>

 

「見よ、最高位天使の尊き姿を――威光の主天使<ドミニオン・オーソリティー>!」

 

最後の強化魔法を掛け終えたと同時にニグンのクリスタルから眩い光が溢れ、辺り一帯を覆い尽くした――

 

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