ソードアート・オンライン-剣槍-   作:不可視の人狼

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負けない剣

「ミツキ先輩。お部屋のお掃除、完了致しましたが……本当に居間の方はやらなくてよろしいんですか……?」

 

「ああ、大丈夫だ。それじゃあ行こうか──」

 

 上級修剣士の部屋は1つの居間を挟む形で両サイドに寝室が設けられている。寝室は基本的に家主の傍付きが担当するのだが、共用スペースである居間の清掃は個々でマチマチ、といった形だ。利用している修剣士の傍付きが2人掛りで協力して掃除することもあれば、当番制になることもある──因みに去年の俺の場合、ユージオと日替わりでベル先輩とゴルゴロッソ先輩が生活する居間の掃除をしていた──のだが。レイラには傍付きに就任して以降、寝室以外掃除はしなくていいと伝えてある。理由は単純、ラッディーノの存在だ。

 

 顔合わせの日にある程度互いの事を話し合った俺達だが、レイラとラッディーノの関係性──彼女が義兄である彼をどう思っているのか、等──に関しては中々踏み込む機会に恵まれずにいる。選考会の時のラッディーノの言葉の真意も分からない状態で、2人を引き合わせるのは少々リスクが高いと言わざるを得ない。

 ラッディーノ本人に話を聞ければ早いのだが……最も単純でありながら最も難しい方法だという事は言うまでもないだろう。

 

 そういう事情があり、俺はレイラを出来る限りラッディーノの目に触れさせないよう、上級修剣士寮を出歩く時は必ず同行し、掃除も俺の寝室のみに限定していた。勿論、だからといって居間の掃除をラッディーノの傍付きに任せ切りにするわけにもいかないので、俺が適当に暇な時間を見つけては、ちょこちょこ掃除をしている。

 

 と、そんな日々を送っている俺がレイラを連れて向かったのは、隣にいる2人の上級修剣士達──キリトとユージオの部屋だった。

 

「キリト、ユージオ。いるか?」

 

「──あ、うん。どうぞ入って」

 

 すっかり聞き馴染んだユージオの声の後、扉を開ける。すると……

 

「──ユージオ上級修剣士殿、ご報告します!本日の清掃、全て完了致しました!」

 

 踵をぴったり揃えた気を付けの姿勢でハキハキと話す長い赤髪が特徴的なこの少女は、ティーゼ・シュトリーネン。先日ユージオの傍付きとなった初等練士だ。

 

「うん、お疲れ様ティーゼ。今日はもう戻っていいよ──って言いたいんだけど……」

 

 ユージオがチラと目を向けた先には、ティーゼ同様直立不動の少女──ロニエ・アラベル初等練士の姿が。言わずもがなキリトの傍付きである彼女もまた、清掃完了の報告をするべく待機しているのだが……肝心のキリト本人の姿がどこにも見えない。寝室にもいないようだ。

 

「……アイツ、()()か?」

 

「うん……()()

 

 俺とユージオが全く同時にため息をつく。傍付きである彼女達がこうして仕事をしに部屋へ来るようになってからというものの、キリトは放課後どこかへフラリと出かける事が増えた。出かけるといってもこの世界にゲーセンのような所謂遊戯場は無いので、大抵第7区のどこかの店で買い食いをして来るキリトに、ユージオは「せめて彼女達の掃除が終わるまでには戻れ」と再三言い含めているのだが……今しがた言った通り、「また」である。

 

「……ごめんねロニエ。その……同室があんな奴で、本当にごめん」

 

「い、いえ!ちゃんと報告を終えるまでが傍付き練士としての仕事ですから!」

 

「ロニエ。嫌な事はちゃんと嫌だと言った方がいいぞ。傍付きだからって遠慮する事はない。上級修剣士つっても相手はキリトだ。真面目なのはいいが、程々にしとかないと疲れるだけだぞ」

 

「何なら、僕から傍付きを代わって貰うよう先生に進言してもいいんだよ?」

 

「と、とんでもありません!」

 

「……それじゃあ、せめてアイツが戻ってくるまで座って楽にしててよ。今お茶淹れるね」

 

「あ、お茶なら私が!ユージオ修剣士殿はどうぞ座っていてください!」

 

「わ、私も手伝います!」

 

「で、では私も……!」

 

 立ち上がろうとしたユージオを制し、ティーゼとロニエ、そしてレイラ達傍付き3人がいそいそとポットの準備を始める。

 

「何というか……やっぱり慣れないね」

 

「だな。少なくとも去年の俺はあんな真面目じゃなかった」

 

「僕もだよ。先輩達、あんまり部屋でお茶とかしなかったもんね」

 

 ソファに腰掛け待っていると、ものの数分でお茶とお菓子が用意される。彼女達も修剣士権限で座らせ、短い談笑の時間が始まった。

 

「まだ入学してひと月も経ってないけど、学院生活はどうかな?」

 

「慣れない事も多いですけど、何より……正直、入学できた事がまだ信じられないと言うか」

 

「あぁ……わかるよ。僕も去年、同じ気持ちだったから」

 

「その割には、結構楽しんでたっぽかったけどな?歴史の授業の時なんか興味津々で聞いてたじゃないか」

 

「そ、それとこれとは別だろう!?」

 

 恥ずかしそうにお茶を啜るユージオに笑みを投げつつ、視線を後輩達に戻す。

 

「授業の方はどうだ?剣術関係なら多少教えられるし、神聖術ならユージオに聞けば大抵の事は教えてくれるぞ」

 

「おい、君だって先輩で、神聖術の成績も悪いわけじゃないんだから教えてあげればいいだろ──まぁそれはともかく、何かあったら相談してね。僕じゃ出来る事は多くないかもだけど、話を聞く程度なら出来るから」

 

「あ、ありがとうございます……!」

 

 こちらとしては「では早速…」と質問を飛ばしてくれてもよかったのだが、やはりまだまだ気後れの方が勝るか。まさかベル先輩のように胡散臭く見えている訳では無い……と思いたい。

 

 何はともかく緊張を解すことから。と、彼女達の学園生活の感想を引き出しては、俺達の時の経験を話す……そんなやり取りを繰り返すこと数回。後輩3人の顔に気安い笑みが浮かぶようになってきた頃、突如部屋の窓が開かれた。俺でもユージオでも、後輩達でもない──()()()()から開けられた窓からストンと入って来たのは、漆黒の修剣士服に身を包んだ黒髪の少年だった。

 

「よっ、と……おぉ、ミツキ達も来てたのか。丁度良かった」

 

 キリトの姿を見たロニエは、口の中のお菓子を慌てて飲み込み立ち上がる。

 

「キリト上級修剣士殿!ご報告します、本日の清掃、全て滞りなく完了しました!」

 

「ん、ご苦労さん」

 

「やっと帰ってきた……あのねキリト、彼女達は僕らの何倍も忙しいんだから、掃除が終わるまでに戻ってこいって何度も──」

 

「はいはい悪かったって──ほれ」

 

 ユージオを軽くあしらったキリトは、抱えていた袋からある物を取り出し、彼の口に突っ込む。同じものを2つ、片手で器用に取り出したキリトは、まだまだ中身が入っているらしい袋を後輩達に差し出した。

 

「これ、《跳ね鹿亭》の蜂蜜パイ。寮に戻ったら部屋の皆で食べろよ。因みに、店がある東3番通りから帰ってくるならこっち側の窓が最短コースだ。ロニエ達も覚えとくと来年役に──」

 

「むぐ──彼女達にまで余計なこと吹き込むなよ!」

 

「何だユージオ君?そんな物欲しそうな目をしたって俺の分はやらんぞ──ほら、ミツキ」

 

 キリトの持っていた2つの内片方を受け取った俺は、ノータイムでパクリと一口。キリト程ではないにせよ、俺もこの2年で色んなものを食べてきたが、やっぱりこの蜂蜜パイが1番美味しく感じる。濃厚ながらもしつこ過ぎない絶妙な蜂蜜の甘さがお茶とよく合ってクセになるのだ。

 

「こ、こんなに沢山──ありがとうございます!上級修剣士殿!」

 

「頂いた物資の天命が減少しないよう、可及的速やかに寮へ戻ります!」

 

 一礼したロニエとティーゼは踵を返し、部屋を出て行く。扉越しに楽しげな声が遠ざかっていくのを感じながら、俺は蜂蜜パイ最後のひとかけを口に放り込んだ──と、ここで向かいのソファーの端にレイラがちょこんと座ったままなのに気付く。ティーゼ達と一緒に帰ったものと思っていたが、俺に「帰っていい」と言われていないからか、徐にお茶の片付けを始める。

 

「それを片付けたら、俺達も戻ろう。手伝うよ」

 

「えっ?いえそんな、片付けなら私1人で……」

 

「ここは他の修剣士の部屋で、押しかけたのはこっちだ。最低限の礼を尽くすのに、修剣士も傍付きも関係無いだろ?」

 

 レイラを説き伏せ、空になったお菓子の皿とカップを手早く回収。小さいながらも居間に備え付けられたシンクに持っていく。アンダーワールドは洗剤でしっかり洗わなくて済むのが楽でいいなー、なんて思いながら片付けを終え、キリトとユージオに礼を言ってから部屋を後にした。

 

「──少し安心したよ」

 

「はい……?」

 

 レイラを入口まで送る道すがら、俺の口からそんな言葉が漏れた。

 

「あー、いやその……レイラってあまり人付き合いが得意そうには見えなかったというか。どっちかって言うと1人で静かに本読んでそうな印象があったからさ。さっき部屋でロニエやティーゼと仲良さそうに話してるのを見て、全然そんな事なかったな。って」

 

「……はい。ロニエさんもティーゼさんも、私のような暗い娘にとても良くしてくださっています。彼女達だけでなく、キリト修剣士殿やユージオ修剣士殿も……傍付き練士と修剣士というのは、似た気風になるのでしょうか」

 

「そんな事はないと思うけどな……ユージオとティーゼはともかく、キリトは比べるまでもないだろ。ロニエの方が真面目で立派だ。俺だって、レイラみたいに気立てがいい訳じゃないし、品性の面じゃ雲泥の差だぞ」

 

「そんな事ありません!ミツキ先輩は、私のような出来の悪い傍付きに誰よりも親切にしてくださっています!正直……私なんかには、勿体無いくらいで……!」

 

 レイラは少し逡巡してから、おずおずと振り返る。

 

「先輩……先輩は、どうして私を傍付きに選んで下さったんですか……?」

 

「……ただの偶然だよ。目を瞑って、適当に選んだら君だった。それだけだ」

 

 本当の所では、彼女がラッディーノに指名されるのを防ぐ為だったのだが……少なくとも今知らせるべきではない……かもしれない。

 

「……運が悪かった、とは……?」

 

「何でだ?」

 

「……以前も申し上げた通り、私はおおよそ剣士に相応しくない人間です。腕は非力、技も未熟、騎士を志す気概にすら欠けている──そんな小娘が学院に入学し、あまつさえ傍付きという身に余るお役目を授かった──私よりも、ずっと相応しい方がいらっしゃったはずなのに」

 

「……言った通り、俺は君に何かを見出して傍付きにしたわけじゃない。だから……事と次第では傍付きを解任する事も出来る。全ては君次第だ」

 

「………」

 

「でも、もし君が強くなりたいと望むなら──今ここにいる意味を作りたいと言うなら、俺は出来る限りの協力をする。レイラ、君はどうしたい?」

 

 修剣学院の入口は狭き門だ。毎年多くの少年少女が受験する中から選ばれるのはたった120人。その更に上澄みである上位12人に、彼女は入った──入ってしまった、とも言えるか。

 志無き自分がこの場にいていいのかと、彼女は思っているのだろう。他の誰かにこの立場を明け渡すべきなのではないかと。だが一方で──

 

「さっき部屋で話してた時、ティーゼとロニエが言ってたよな──レイラは剣術も人一倍頑張ってる──って。『どうすべきか』じゃなくて『どうしたいのか』を聞かせて欲しい。君の言葉で」

 

「私……私は、強く、なりたいです。例え何かの偶然、何かの間違いの結果だとしても、私は今、こうしてここにいます。それを容易く手放すのは……きっと、私の後ろにいる多くの方々を侮辱する事になってしまうような……そんな気がするんです。だから──!」

 

 レイラは深々と頭を下げる。

 

「ミツキ先輩──私を、鍛えてください!私、頑張りますから……ッ!」

 

「……分かった。それじゃあ早速明日から、剣術の稽古を始めるとしようか。一緒に頑張ろう」

 

「……はい!」

 

 顔を上げたレイラと視線が交錯する。どこか自信なさげな印象こそ変わらないが、その奥に小さな灯火が揺らめいているように感じられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日放課後──上級修剣士寮の修練場で、木剣を握ったレイラが型の演舞を披露している。彼女の剣の方向性を見定める取っ掛りになればと俺の方から頼んでの事だったのだが……

 

「──そこまで」

 

「ど、どうだったでしょうか……?」

 

「うーん……頼んでおいてアレなんだが……正直に白状すると、俺は型というもの自体に懐疑的なんだ。勿論、ちゃんと実戦で使えるもんならいいんだけどな。ほら、型って実用性より見た目ばかり気にするだろ?」

 

「はあ……」

 

「で、まぁそんなひん曲がった俺の目で見た感じ──率直に言って、剣にキレが無い。こう、本当にただ動きをなぞってる感じだ。動き自体は滅茶苦茶滑らかで綺麗なんだけどな」

 

「そう、ですか……その、すみません……」

 

「あ、別にそれが悪いってわけじゃ……や、キレは確かに重要なんだが、えっと──」

 

 落ち着け、と自身に言い聞かせるように一旦深呼吸する。こういった事柄の言語化が苦手だった俺だが、この数年でだいぶマシになったはずだろう。

 

「──レイラ。多分だけど、君はこの世界で一般的とされる剣術がそもそも向いていない。勿論、秘奥義の発動は問題なく出来るだろうが、完成度で他と大きく差がつく事になると思う」

 

 キレに必要なのは、剣を素早く振ってピタリと止める為の筋肉。腕だけではなく、肩、腰、時には脚も使う。レイラ本人も言っていたように、彼女の身体は剣士としてはかなり非力なのだ。握る得物が木剣から実剣に変われば、剣に振り回されて怪我に繋がる危険性もある。

 

「だから君は、正統流派じゃなく他の流派──具体的には、俺やキリト、ユージオも使っているアインクラッド流を身に付けることになるんだが……そこに何か抵抗はあるか?」

 

「い、いえ。元々、剣術は教養程度でしたから……」

 

 分かった。と口元に手を当て思案する。最低限戦いに必要な筋力は今後地道に鍛えていくとして、それと並行して技を磨いていく必要もある。SAOやALOでは、筋力の低いプレイヤーは総じて短剣や細剣を始めとする軽量武器を得物にしていたものだが……だからといって短剣術に舵を切るのは早計か。秘奥義を使うには木剣も専用のものが必要になる。短剣ならまだしも、細剣は当然特注になるだろうから、ホイホイとあっちこっちに手を出すのは金銭的にもよろしくない。

 

「……うん、それじゃあ次は軽く打ち合ってみよう。勝ち負けは意識しなくていいからな。勿論、だからって遠慮も要らない。気持ち的には1本取るつもりで」

 

「は、はい……!」

 

 先手をレイラに譲り始まった模擬戦。しかし──

 

「……レイラ、いつでもいいぞ?」

 

「わ、分かっては、いるんですが……」

 

 型同士の攻防ならまだしも、いざ実戦となるとどう仕掛けたものか、ということか。

 

「じゃあ、こっちから行くぞ。避けてもいいし、受け止めてもいい。ただし一撃凌いだからって油断はしないこと」

 

「はい、お願いします……ッ!」

 

 緩い構えから、軽めのスイングで初撃を繰り出す。右上から迫る俺の木剣に対し、レイラは素早く自らの剣を掲げて防御した。カンッという小気味のいい音に続き、弾みを利用して引き戻した木剣を今度は逆サイドから──こちらもレイラは防御。その後も袈裟斬り、横薙ぎと続く俺の攻撃を、彼女は器用に防いでいくが……

 

「どうしたレイラ、攻めて来ないのか──?」

 

「ッ……!」

 

 俺の攻撃は別段手数が多いわけではない。明確に反撃を差し込める隙すら見せているのだが、レイラは防戦一方だった。そのまま数号の打ち合いを経て、俺は剣を止める。

 

「なる程……レイラはちょいと攻め気に欠けるな」

 

「す、すみません……反撃もしなければと、頭では分かっているのですが……」

 

「けど反面、防御は光るものがある。斬り掛られてもちゃんと目を開けてられるし、反応も良い。あとは──レイラ、君ってもしかしてかなり体柔らかいか?」

 

「えっ……あ、どう、でしょう……あまり意識した事がなくて」

 

 先の攻防の際、レイラが俺の剣を受けた時の手応えが、かつてリーナ先輩と立ち会いをした時のものと少し似ていた。剣を押し込もうとする力に逆らわず、腕や手首をクッションにして流すような──そんな感触だ。

 

「じゃあ、前屈してみてもらえるか?こうやって、立ったまま上半身を前に倒して──」

 

「こう、ですか──?」

 

 レイラは上半身を深く前に倒す──力みらしい力みを一切感じさせず、ぺたんと両掌が床に着いた。

 

「じゃあ、次は後ろだ。できる限り体を反らしてみてくれ」

 

「は、はい……ッ!」

 

 先程とは逆向きにレイラの上半身が倒れていく──ある程度まで仰け反った所で、彼女の制服の胸元が捲れつつある事に気付き、俺は慌ててストップをかけた。因みに、止めた時点でざっくり70度くらいは倒れていたように思える。

 

「あー、っとじゃあ次は……片足で立ってみてくれ」

 

 言われるまま右足だけで立つレイラは、ふらつく素振りが全く無い。バランス感覚も良いようだ。そのまま素早く足を入れ替えろ、という指示にも、彼女は難なく対応する。クルリと1回転してもバランスを崩す事はなかった。

 

「……驚いたな。これで腕っ節があれば完璧だ」

 

「ありがとう、ございます。あの、私……頑張りますから。せ、先輩を持ち上げられるくらいになってみせます……!」

 

「ははっ。そいつは頼もしいが、無理は禁物だ。それに──無理に腕力を鍛える必要も無くなった」

 

「え……?」

 

「誤解を恐れずに言うとだな──レイラ、君は流派云々以前に、性格からして剣士向きじゃない。一方的に攻められてるだけじゃ、いつか必ず押し切られる。ここまでは分かるか?」

 

「……はい」

 

 シュンとするレイラに、俺は言葉を続ける。

 

「防御に関しては今の時点で良いものを持ってる。あと必要なのは攻撃の術だ」

 

「で、ですが……私の力では大した攻撃には──」

 

「俺の生まれた所には『攻撃は最大の防御』って言葉があってな──相手が攻撃する暇がないくらい苛烈な攻撃は、実質防御と変わらない。って意味なんだが……それって逆も然りだと思わないか?」

 

「逆……『防御は最大の攻撃』……という事ですか?」

 

「正解。硬いものを手で叩くと痛いよな、天命だって減る。何でか分かるか?」

 

「何故、と言われましても……力一杯叩けば当然、としか……」

 

 おずおずと返ってきた答えに、俺はニヤリと笑う。

 

「そうだ──例えばレイラが滅茶苦茶頑丈な盾を持っていれば、わざわざ攻撃しなくても、相手の攻撃を防ぐだけで向こうが勝手に消耗していく」

 

「盾……しかし、学院の試験では原則木剣以外使用禁止のはずでは……?」

 

「ああ。けど防御ってのは盾の専売特許じゃない。やろうと思えば、そのへんにある物全てで攻撃を防ぐ事が出来る──当然、剣でもな」

 

 そして、頑強な盾など用いずとも防御による攻撃を行う術を、俺は知っている──敵の力を利用した、攻防一体の戦い方を。

 

「レイラ。俺が君に教えるのは、敵を討ち倒す為の剣じゃない。本質的に言えば、守る為の剣だ──アインクラッド流槍術、極意《カウンター》──自分だけじゃなく、君が守りたいと思ったものを守れるように、俺の持てる全てを君に教える。まぁ、自分でも教えるのが上手いとは思ってないから、苦労をかけることもあるだろうが……」

 

「──やります」

 

 時間帯も手伝い、俺達以外無人の修練場に透き通った声が鳴る。

 

「私、頑張ります……!例え偶然でも、先輩が私を選んで下さったご恩に報いる為に──ミツキ先輩の傍付きとして、恥じない剣士になってみせます……!」

 

「……分かった。改めて、これからよろしくな、レイラ。一緒に頑張ろう」

 

「はい……!こちらこそ、不束者ですが、よろしくお願い致します……!」

 

 差し出された俺の手を、レイラは両手で優しく握るのだった。

 




・反射神経○  ・柔軟性○
・体幹及びバランス感覚○
・腕力×  ・積極性×  ・経験×

UWの一般的な剣士として見るとイマイチなレイラですが、「相手の力を利用して戦う」というミツキがSAOで磨いてきたノウハウを受け継ぐ期待の新星となりました。
特に柔軟性に関してはI字バランスも余裕で出来るレベルなので間違いなくミツキ以上。
将来性抜群です。
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