「セントリア市域統括、公理教会整合騎士──アリス・シンセシス・サーティです」
禁忌目録という絶対の法を犯した大罪人を連行しに来た人界の守護者が冷然と名乗る。
その名前に、その声に、その姿に、俺達は3人揃って言葉を失っていた。
──彼女だ。
陽の光を受けて輝く美しい金色の髪、吸い込まれてしまいそうな程に深いサファイアの瞳。
この静寂は勿論、戦の喧騒の中でさえもはっきりと響くだろう凛とした声。
身に纏う鎧こそ黄金色だが、腰に吊り下げた同色の片手剣といい、背にした群青色のマントといい、俺の記憶と完璧に合致した。
俺の知る彼女──あの鋼鉄の浮遊城で共に肩を並べて戦った《姫騎士》アリスその人が、今目の前にいる。
まず最初にどうすればいい?俺の事を覚えているか聞くか?それとも今までどこで何をしていたのかを?フルネームらしき名を名乗っていたが、SAO以前の記憶は無事に戻ったのかも気掛かりだ。
いや、そんな事よりまずは彼女を抱きしめるべきか?しかしもし俺の事を覚えていなければ……そもそも、こうして実際に顔を合わせて尚彼女の顔に何の反応も見られないということは、やはり俺のことは全て記憶から消えていると見るべきか……だが真面目な彼女の事だ、今は職務中ということで己を律しているという可能性も……
思考ばかりが先行して動けずにいた俺の横で、ユージオがフラフラと前に進み出る。
「アリス……?きみ、なのか……?本当に──」
8年前、図らずも禁忌を破ったことで央都へ連行された幼馴染……ユージオがここまで戦ってきた理由そのものであるアリスという少女。彼のこの反応を見るに、今目の前にいる整合騎士はその幼馴染と瓜二つということなのだろう。
容姿が似ているだけの別人なのか、はたまた同一人物なのか……俺が知りたいと同時に知りたくないとも感じる真実を確かめようと、ユージオが手を伸ばす。その指先が彼女に触れようとした瞬間──金色の一閃がユージオの頬を叩いた。
「ユージオッ!」
堪らず修練場の床に倒れ込んだユージオをキリトが助け起こす。冷ややかな目で自分を見下ろす黄金の騎士を、ユージオは信じられないといった表情で呆然と見上げていた。
「──言動には気をつけなさい。私には、お前達の天命を7割まで奪う権利があります。次に許可なく触れようとすれば、その腕を斬り落とします」
ユージオの頬を打った得物──文字通り瞬くような速さで鞘ごと剣帯から外した金色の片手剣を腰に戻した整合騎士アリス。
言葉遣いも、剣の冴えも、あの2年間で目にしたのと全く同じ──否、剣に関してはあの時よりも上か──ただ1つ違うのは、青々とした双眸に湛える光がどこまでも冷たく研ぎ澄まされている点だ。印象としては、俺がアインクラッド第1層で彼女と初めて出会ったあの時に近いだろうか。事実、あの頃のアリスは事ある毎に剣を抜こうとしては俺に止められていた。
「──ほう、天命を3割減らすつもりで打ったのですが、その半分しか減っていない──身の捌きだけで受け流したのなら、上級修剣士に任ぜられる……或いは殺人の大罪を犯すだけの事はある、ということですか」
「──違うな」
緊張の面持ちでようやっと口を開いた俺を、金色の騎士が冷ややかに見据える。温度らしい温度を感じない、突き刺すような冷たい視線に思わず小さく身震いした。
「……殺人を犯したのは俺1人だ。俺が3人の修剣士の……息の根を、止めた。こいつらは1人だって殺しちゃいない」
「殺していないだけ──でしょう。元老院からの報告には、そこの2人も他者の天命を故意に損じた咎人として名がありました。罪は罪、皆等しく裁かれるべきものであり、貴賎も例外もありえません」
「……教会ってのは随分と単調な組織なんだな。だから何の罪もない人間が──が……ッ!?」
突如息が詰まり、言葉が紡ぎ出せなくなる。一瞬で俺の前に詰め寄った彼女が俺の首を正面から掴み上げているのだ。
「我ら公理教会の神聖なる責務を愚弄しますか……その代償は高くつくと分かっての事でしょうね?」
背丈で勝る俺の体がつま先立ちになる。凄まじい力だ。
「最高司祭様の手を煩わせるまでもない。審問を待たずして、ここでお前の命を絶っても良いのですよ」
俺の首を掴む手に力が込められ、そのままへし折ろうと──
「──やめろッ!」
修練場に響いた制止の声はキリトのものだ。
「騎士アリス、あんたの目的──上から受けた命令は、俺達を連行する事のはずだ。正しい手順を踏まずにここで俺達を殺せば、あんたは私情によって与えられた命令を守らなかったって事になるぞ。人界の守護者である整合騎士がそんな真似をしていいのかッ……?」
「……なる程──本来なら罪人の言葉など聞くに値しませんが、お前の言う事にも一理あるのは事実です。どうせそう遠くない内に処断されるのですから、今ここで私が手を下すまでも無いでしょう」
パッと俺の首は解放され、たたらを踏む俺を気にも留めず、アリスは修練場の出口へ向かう。
「上級修剣士ユージオ、並びに上級修剣士キリト、上級修剣士ミツキ。そなたらを禁忌条項抵触の咎で捕縛、連行し──審問の後、処刑します。ついて来なさい」
ここで逆らっても意味はないと、俺達は大人しくついていく。打たれた頬を摩りながら歩くユージオに、キリトが囁きかけた。
「……ユージオ、お前が探していた《アリス》は、本当に彼女で間違いないのか……?」
「……うん。性格とか言葉遣いは変わってるけど、外見はそうとしか思えない。一体、何があったんだろう……」
「そう、か……とにかく、今は彼女の言う通りにしよう。形はどうあれ、これでセントラル・カセドラルに入れるんだ。そこでなら事情が分かるかもしれない」
その言葉はユージオだけでなく、俺にも向けられているようだった。
本当にSAOでの──俺達の事を忘れてしまっているのか。だとしたら何故そうなったのか──それが分かれば、或いは俺達の想像もつかない最良の解決法が見つかるかもしれない。
そんな意思を込めてこちらを見るキリトの視線に小さく頷いた俺は、まだ足取りの覚束無いユージオをキリトと共に支えながら、アリスの後を追った。
連れてこられた学院の広場には、古より整合騎士と共に戦場を駆けるとされる飛竜が待機しており、荷入れから太く頑強な鎖とベルトを取り出したアリスは、手際よく俺達を拘束していく。
あっという間に両腕を縛られた俺達。最後に鎖の末端を飛龍の両脚と胴についた留め具へ固定され、連行の準備が整う。
「──お待ちください騎士様ッ!」
と、そこへ飛んできた声。俯けていた顔を上げると、4人の人影がこちらへ走ってくるのが見えた。灰色の初等練士服に身を包む少女が3人と……緋色に染め上げられた修剣士服の少女が1人。
息を切らしながら飛竜の傍まで到達した4人。代表して前に進み出たメディナが、恭しく礼をしてから口を開いた。
「整合騎士殿、不遜ながらお願いがございます。この剣を、彼らに返却する許可を頂けないでしょうか」
後ろでは、俺達の剣をそれぞれの後輩が懸命に抱えおり、手の平には薄らと血が滲んでいた。
一旦飛竜から降りたアリスは、思いの外これをあっさりと了承。しかし当然俺達に帯剣させる訳には行かないと、彼女達から剣を受け取り、拘束具の入っていた荷入れに収めた。
「……最後に何か話があるのなら、1分間に限り許可します。手短に済ませなさい」
先程ユージオの頬を打ち、俺の首をへし折ろうとした苛烈な一面が嘘のようだ──冷ややかな印象そのものは変わっていないのだが──と感じる俺達に、それぞれの傍付きが走り寄る。
キリトにはロニエ、ユージオにはティーゼ、そして……俺の前には、レイラが。
「先輩……」
「……俺はもう、君の先輩じゃないと言ったはずだ」
「いいえ。私にとって、先輩はいつまでも尊敬する先輩です。私は、あなたの傍付きになれた事を……その教えを少しでも授かれた事を、心から誇りに思います──不肖の小娘を熱心に指導していただき、ありがとうございました」
「……体には気をつけてな。怪我をしないよう、頑張れ」
「っ──…先輩も、どうかご自愛下さい。私、頑張りますから……ちゃんと整合騎士になって、先輩達が無実だと証明してみせますから……それまで、どうか……ッ」
レイラが深々と頭を下げる。あんな酷い目に遭って尚、先輩として不出来極まりない俺をこうも慕ってくれている事に対する感謝と、最後まで面倒を見られなかったこと、何より彼女を守れなかったことへの懺悔が俺の胸を満たした。
……ふと、メディナがアリスの元へ歩みを寄せる。
「……騎士殿。恐れながら、重ねての無礼を承知の上でお願いがございます」
「……言ってみなさい」
「彼らは……確かに禁忌目録を破りました。それが紛れもない罪であること、処罰されるべき所業であることは、重々承知しています。しかし……彼らが罪を犯したことで、救われた者が──そうしなければ救えなかった者が確かにいるのです。寛大な判決を下されますよう、何卒お願い申し上げます」
そう言ってメディナは騎士に跪き、深く頭を垂れた。後輩達もそれに倣う。
「……我ら整合騎士は罪人を連行するのみで、実際に審問と断罪を行うのは元老院及び最高司祭様です。私の言葉が聞き届けられるか、保証は出来ませんが……友の為に進言するその勇気に敬意を評し、今しがたの言葉は胸に留めておきましょう──さぁ、時間です。離れなさい」
立ち上がった4人が飛竜から距離を取る。鞍に跨ったアリスが手綱を鳴らすと、飛竜は力強く翼を羽ばたかせ、飛翔した。
眼下の景色がどんどん遠ざかっていく中、宙ぶらりん状態で運ばれていく俺達。風に揺られる俺を後ろ手に捕まえたキリトは、ユージオには聞こえないよう小声で話しかけてきた。
「……ミツキ、あのアリスの事だけど……その、どうする気だ……?」
「どうするも何も……まずは、彼女がどういう状態なのかをハッキリさせない事にはな──この事、ユージオには黙っとけ。少なくとも今はまだ、な」
「や、けど……」
「いいから──それと、お前はちゃんとユージオに協力してやれよ。そういう約束でここまで来たんだろ」
ここで一際強い風が俺達を煽り、キリトの手が離れる。鎖に吊られて大きく揺れる俺は、前方に近づいてきた巨大な白亜の塔──人界の中心地であると同時に公理教会の本拠地たるセントラル・カセドラルを声もなく睨むのだった。
飛竜の発着場で下ろされた俺達は、体を縛る鎖はそのままにカセドラルの地下牢へ連れて行かれた。途中、人気の無い庭園を通る時にアリスがこっそりと俺にメッセージをくれた──なんて事は無く、少なくとも今の彼女に俺やキリトに関する記憶は無いのだという事を再確認。
外した拘束具の代わりに無骨な手枷を嵌められ、2人と分かれて隣の牢屋に鎖で繋がれた俺は、独り物思いに耽っていた。
まず、あのアリスはユージオの幼馴染であると同時に、俺やキリトの知る《姫騎士》アリスでもあると仮定する。先程の様子からして、彼女は俺やキリトのことは勿論、ユージオの事も全く覚えていない様子だった。それが単なる物忘れとは考えにくい。
クローンかよというレベルで似ている別人、という線は除外し、可能性としていくつか考えられるのは……実は彼女はどちらの事も覚えていて、その上で知らぬ存ぜぬを装っている線──俺達が殺人の禁忌を破った事に幻滅して他人として振舞っているという可能性だが、ユージオの話を聞くに、そもそも彼女自身が禁忌を犯した過去を持っている。内容に違いこそあれど、それで一方的に怒り、頬を叩かれ、首を折られそうになるのは流石に納得がいかない。完全にゼロとは言い切れないが、まぁ無しと見ていいだろう。
では次、もう少し現実的な話をすると……
……そう、この世界で生きて活動しているのは、俺やキリトも含めて
かつてのテストダイブ時に比嘉から聞かされた話が真実であるなら、現段階のSTL技術ではそこまで繊細なフラクトライト編集は行えない、ということだが……彼らが全て正直に話しているとも考えにくい。本当は既に記憶編集が可能な段階まで研究が進んでいる──或いは、このアンダーワールドに、それを行えるレベルまで至った者が存在している。その何者かによって、アリスは記憶を失った。
今の所、後者の説が有力そうか。そちらの方向で予想を立てるとして、最重要問題──失った記憶は戻るのかに関して考えてみる。
といっても、確たる事が分からない以上、推測も立てようがないのだが……単純に、奪われた記憶はどこかに保存されているのか、それとも綺麗さっぱり削除されたのか──前者なら希望があるが、後者なら絶望的だ。
どうにかして外部に連絡が付けば、GM(この世界はゲームではないが)権限で記憶データをリカバリーすることも出来るか……?しかしこれはゲームデータのような単なるプログラムコードではない、魂を読み解くSTL技術を以てしても、完全に失われた記憶を蘇らせるのは不可能なのではないか……?
知識も情報も不足していて、これ以上先に進めそうにない。俺は深々とため息をついて思考を打ち切った。
「──ミツキ、起きてる?」
石造りの壁を挟んだ隣の牢から、ユージオの声が聞こえてくる。
「ああ、ちょいと考え事をな──そっちこそ、大丈夫か?」
「うん。キリトのいびきがうるさくて、寝るに寝れない事以外は──いや、本当の所はまだ混乱してる。色んな事がいっぺんに起こり過ぎて、本当は全部、悪い夢なんじゃないかって」
「……そうだな……夢なら良かったのかもしれない。けど生憎、俺達がこうして喋ってるのは現実だ。ライオス達に剣を向けて、アリスに殴られて、飛竜に吊るされて牢屋にぶち込まれたのも、全部な」
「そう、だね……うん」
少しの沈黙を挟んで、ユージオが遠慮がちに聞いてくる。
「気を悪くしないで欲しいんだけど……ミツキ、君はどうして、あの3人を殺したんだい?こんな言い方になっちゃうけど、キリトはライオスを殺そうとまではしてなかったじゃないか。なのに君は──」
「──単純にあいつらの事が、嫌いで憎くて仕方なかったから──そう言ったら?軽蔑するか?」
ユージオは答えない。少し悪ふざけが過ぎたかと反省していると、
「──そうだね、軽蔑するかもしれない。けどそれ以上に、悲しいって思うかな」
「悲しい……?」
「うん──まぁ、学院の懲罰房で君がティーゼ達に言った言葉を聞いてたから、っていうのもあるけど……君がそうしなきゃいけないような状況になるくらい追い詰められていて、それを相談してもらえなかったのは……友達としては、やっぱり悲しいよ。ましてや、そんな君に助けられたお返しもさせてもらえないなら、尚更ね」
白状するなら、俺があそこでラッディーノだけに留まらず、手負いのライオスとウンベールまでもを手に掛けたのは、キリトとユージオの犯した《他者の天命を故意に減じさせてはならない》という禁忌を、俺の殺人によって上書きできないかと考えてのことだった。単に傷を負わせるだけよりも、殺人に至った方が罪が重くなるのは明白。要は俺が悪目立ちすることで2人が連行されるのを防ごうとしたわけだ──結果はご覧の通り、特に意味は無かった訳だが。
「……助けたような覚えは、特に無いんだが──じゃあ何か?もっと恩着せがましくご褒美をねだれって?案外強欲だなユージオ君は」
「そう言われるとなんだか聞こえが悪いけど……でも、誰かの為に頑張った人には、何かご褒美はあっていいと思う。労いとか、感謝の言葉とか、そういう些細なものでもさ」
「……まぁ、それは同感だ」
「だから──ありがとう、ミツキ」
「……だから、なんで俺だよ。学院じゃ優等生だと思ってたが、意外と馬鹿だなお前」
「……そういう君もね」
話が一旦の区切りを見せた所で、鉄仮面を被った屈強な獄吏がノシノシと歩いてくる。俺のいる牢の前で足を止めたかと思えば、腰から取り出した鍵で扉を開け、牢屋の壁に繋がれていた手枷を外す。
「おい……何だ?」
すぐさま片手だけではなく両手をがっちり拘束する為の手錠が装着され、これぞまさに、という状態で俺は牢屋の外へ連れ出された。
「ミツキ……!?」
「大丈夫、心配するな。……キリトのこと、頼んだ」
ユージオにそう言い残し、俺は獄吏に連れられるまま地下牢の階段を上がっていく。来た時は分岐路などは無かったはずなので、このまま行けば地上へ出るはずだが……
予想通り、暫くぶりに地上の空気を吸った俺は、深呼吸する間も与えられず獄吏に背中をどつかれた。空を見た感じ現時刻は夜らしく、俺達が収監されてからざっくり1日半か、とそんな事を考えながら歩いていると、これまた連行時に通ってきた庭園に2人の人影が。
1つは、記憶に新しい金色の鎧と群青色のマント、夜間でも美しく輝く金髪が特徴的な整合騎士、アリス・シンセシス・サーティ。そしてもう1人は……初めて目にする人物だった。
アリス同様に女性だろうか、灰褐色の長い髪を黒いリボンでポニーテールに結んだその人物は、身に纏う白い鎧と、背にした灰色のマントからして、アリスと同じなのは性別だけではないということが伺える。
「──あ、来た!こっちこっちー!」
2人の整合騎士の前で足を止めた獄吏は、握っていた鎖を名も知らぬ騎士へ渡す。
「はい、ご苦労様。後は私に任せてちょうだい」
獄吏はペコリと一礼した後、ノシノシと地下牢へ戻っていった。
「……俺はどうしてここに連れてこられたんだ?散歩って時間でもないだろ」
「罪人にカセドラルを散歩などさせる訳がないでしょう。最高司祭様直々のご命令で、お前の審問を少々予定を早めて行う事になったのです」
「珍しい事もあるものよねぇ。私の記憶が確かなら、今までそんな事なかったのに」
「……なる程、水先案内人に整合騎士2人、喜ぶ事なのかねコレは」
「自惚れも大概になさい。それに、私は同行しません。お前を最高司祭様の元へ連れて行く役目は、このイーディス殿が請け負います。くれぐれも、無駄な抵抗をして彼女の手を煩わせることのないように」
「武器があるならいざ知らず、こちとら丸腰だ。端から無理ってモンだろ」
先程はマントに隠れて見えなかったが、イーディスと呼ばれたもう1人の騎士も腰にしっかり帯剣している。迂闊な真似をすれば、命までは取られなくとも腕の1本くらいは落とされるかもしれない。
「わかっているなら良いのです──ではイーディス殿、私はこれで。大丈夫だとは思いますが、念の為ここにはエルドリエを待機させておきます」
「りょーかい。アリスもお疲れ様。ちゃんとお風呂入って、ゆっくり休んでね」
ペコリとお辞儀をして去っていくアリスの後ろ姿を無言で見送っていると、イーディスが小さく手を叩く。
「さて、と── 一応、自己紹介だけしとくわね。私は整合騎士イーディス・シンセシス・テン。これからあなたを最高司祭様の所まで連れて行きます。短い間だけどよろしくね。えっと……罪人君、名前なんだっけ?」
「……わざわざ聞くのか?」
「見ての通り、カセドラルって長いからねー。上がってる最中、結構暇になるだろうし、連行ついでに話し相手になってもらいたくてさ。『罪人君』じゃなんかほら、アレでしょ?」
同じ整合騎士でも性格は個人差があるという事か、アリスが謹厳実直の厳格な性格であるのに対し、イーディスは騎士というには結構ざっくばらんな質のようだ。
「……ミツキだ。こちらこそ、よろしく頼む」
「おぉ、意外と礼儀正しい──それじゃ早速行きましょうか。しゅっぱーつ!」
イーディスに連れられ、俺はこの見上げる程に巨大な白亜の塔を登り始めるのだった。
さぁ、答え合わせと行きましょう。
…あぁ、大丈夫かなぁ…