ソードアート・オンライン-剣槍-   作:不可視の人狼

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約束

「──嘘、S級食材!?」

 

「何ッ!?マジか、ちょっと見せろ!」

 

 キリトが言うには、迷宮区からの帰り道に運良く超レアモンスターである《ラグー・ラビット》を発見したらしい。そのドロップアイテムである《ラグー・ラビットの肉》は、このSAO内で最高とされるS級食材に認定された超高級品なのだ。

 しかし基本的にNPCが料理を提供してくれるこの世界でわざわざプレイヤーが料理をしようとすると、専用のスキルが必要となる。スキルを取得していない俺やキリトがこの肉をどうこうした所で、焦がすなり腐らせるなりするのがオチだろう。

 

 そこでキリトが目を付けたのが我らがアスナ様。なんと彼女、SAOに於ける趣味スキルTop3常連である《料理》スキルを先週完全習得(コンプリート)したと言うではないか。

 

 そんな彼女になら安心してS級食材を任せられる。ということで、キリトは一口分けるのを条件に調理を頼んだのだが──まずアスナとキリトで半分。そこへ護衛の件のお礼とお詫びという事で俺とアリスも加えた4人で分けようという事に。

 当然キリトは自分の食い分が減る事に不満げだったが、恐らくこのアインクラッドでただ1人であろうS級食材を調理できるアスナシェフの要求は断れず、俺達もご相伴に預かる事を許された。

 

 ……因みに、アスナが来なければ肉を買い取っていた筈のエギルも「味見くらい…」と申し出たが、流石にこれ以上食い分が減るのは看過できない、と無情にも感想文で手打ちにされてしまったのは余談である。

 

 こうして、いざS級食材を食べようという話になったわけだが、差し当たって問題が1つ。

 

「──それで、どこで料理するつもり?どうせキリト(きみ)の部屋には道具も何も置いてないんでしょ」

 

「う……それは確かに」

 

「まぁ。今回は食材に免じて、特別に私の部屋を提供してあげなくもないけど?」

 

「えと……じゃあ、頼む」

 

「──そういう事なので、今日はもう大丈夫です。お疲れ様」

 

「アスナ様。このような素性の知れぬ奴をご自宅に伴うなど……!」

 

 俺とアリスが一緒にいながらもここまで付いてきた所を見て分かるように、護衛のプレイヤーは簡単に引き下がらない。

 

「この世界じゃ本当の意味で素性が分かる人なんていないでしょう。キリト(この人)とはボス戦で顔だって合わせてるし、何より腕は確かだわ。多分あなたより10はレベルが上よ、《クラディール》」

 

「私が、こんな奴に劣ると?──いや、そうか。貴様も《ビーター》だな!?」

 

《クラディール》と呼ばれたアスナの護衛はキリトを《ビーター》と見るや、一層語気を強める。

 

「アスナ様、コイツら自分さえ良ければいい連中ですよ!もし妙な事を考えるような奴らだったら──!」

 

「つまり、攻略組トップギルドであるKoBの副団長は一介のソロプレイヤーにも劣る、と──そう言いたいのですか。クラディール」

 

 ピシャリと言い放たれたアリスの言葉に、クラディールは狼狽する。

 

「い、いえ。その様なことは決して……!」

 

「アスナの身を案じるのは分かりますが、言動には気をつけなさい」

 

「し、しかし《ビーター》と一緒にいてはお2人の評判まで……!」

 

「とにかく、今日はもう帰りなさい。副団長としての命令です」

 

 アスナ本人に副団長権限まで持ち出されては流石に逆らえないらしく、クラディールはそれ以上付いてくる事はなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 場所は移り、61層《セルムブルグ》──夕日に照らされた城塞都市の街道を歩く俺達は、道中で軽い買い物を挟んでからアスナの家に案内された。

 

「どうぞ」

 

「お、お邪魔します……」

 

 緊張しつつ入った彼女の家は、様々な小物や家具で彩られていた。果たして内装にどれだけの金を費やしたのかキリトが聞いた所、「ざっと400万」という答えが返ってきて軽く鳥肌が立つ。

 

 俺達もソロとはいえ攻略組だ。最前線に潜っていれば自然と金は稼げるのだが、そもそも寝床を彩ろうという発想自体湧いてこない俺やキリトのような人種は、何か目的があって貯金するでもない限り、貯まる端から使ってしまう。

 もしアスナと同程度の調度品を今から揃えようと思ったら、丸一月は迷宮区でキャンプを余儀なくされるかもしれない。

 

「着替えてくるから、適当に座ってて」

 

 アスナが奥の部屋へ引っ込み、キリトが恐る恐るソファに腰を下ろす中、アリスは羽織っていた群青色のマントを解除する。

 

「先程からお前達は何をソワソワしているのです?」

 

「生憎、俺らみたいなタイプは異性の部屋に入るってだけでもボス戦並みの覚悟が要るんだよ」

 

「そういうアリスはなんていうか……勝手知ったるって感じだな。もしかして前にも来たことあるのか?」

 

「ええ。アスナの誘いで、何度か共に食卓を囲みました」

 

 何なら泊まったこともあるらしい。そこへ部屋着に着替えたアスナが戻り、俺達はいよいよ幻のS級食材とご対面する事に。

 

 アスナがメニューを操作すると、銀トレイの上に大きな生肉がオブジェクト化される。高級霜降り肉のように赤とピンクが美しいコントラストを奏でる《ラグー・ラビットの肉》は、調理前の段階で既に俺達の食欲をこれでもかと刺激してきた。

 

「さて、何の料理にしよっか。何か希望はある?」

 

「シェフお任せコースで頼む」

 

「右に同じ」

 

「私も。アスナの料理はどれも美味しいですから」

 

 少し考えた末、ラグー(煮込む)という名前に因んでシチューにすることに。作る料理が決まった所で、材料を次々とオブジェクト化したアスナは、手馴れた様子でそれらをカットしていく。といってもリアルのそれとは違い、包丁で材料を軽くタップするだけで自動的にカットされた状態に早変わりするのだが、SAO内は愚かリアルでも料理の経験に乏しい俺達にとって、その光景すらも新鮮に思えた。

 

「本当ならもっと色々手順があるんだけど、SAOの料理は簡略化され過ぎててちょっとつまらないのよね」

 

 切った各種材料を鍋に投入し、オーブンに入れる。隙間時間を使ってあっという間に付け合せを用意したアスナは、出来上がったシチューを取り出し、テーブルに乗せた。

 

 得意気な表情で鍋の蓋が開かれた瞬間──俺達の腹は、揃って音を上げていた。

 

 

「「「「いただきます」」」」

 

 

 まずは今回の目玉であるシチューを一口。

 

「う、美味い……ッ!」

 

「ああ。肉は勿論だが、シチュー自体もかなり美味いな。店開いてもやっていけるんじゃないか?」

 

「流石に大袈裟よ──でも今回のは本当に美味しい。自分でもびっくりだわ。お肉1つでこんなにも変わるのね」

 

「これなら毎日でも食べられますが……惜しむらくは、材料にS級食材が必要ということでしょうか」

 

「……暫くフィールドに張ってみるか?」

 

「またこいつが食えると思えば吝かじゃないが、流石になぁ……」

 

 S級食材がS級たる所以は、単に入手難易度──そもそも遭遇する確率が限りなく低い事が原因だ。それを掴んだキリトのLUK(幸運値)は今がピークなのではなかろうか。

 

「そういやお前ら、今日はお揃いだったな。何かあったのか?」

 

「えっと、話せば長いんだけど──」

 

 アスナが今日あった出来事を説明する。それを聞いたキリトはなる程、と苦笑いした。

 

「──凄いじゃないか。()()ミツキと初見で引き分けたんだろ?アリスの実力は本物ってことだ」

 

「そうそう、それについても聞きたかったのよ。ベータ時代のミツキ君ってどんなだったの?」

 

「それは私も興味があります」

 

「別に聞いたってそんな面白いもんじゃないぞ……?」

 

 2人に急かされ、キリトは過去の記憶を回想する。

 

「そうだな……やっぱり1番覚えてるのは、デュエル周りか。コイツ、あの戦い方をモノにしてからはPvP(対人戦)じゃ負け無しになってさ。当たる相手は決まって嫌な顔をするようになって、そこから更に少し経つと、今度はデュエルそのものを拒否られるようになったんだよ」

 

「ちょっと気持ち分かるかも。だってアレ、ミツキ君の動体視力と反応速度あっての戦い方でしょ?キミってリアルで何か習ってたの?剣道とか」

 

 アスナの質問に、キリトは小さく笑う。その横で俺は質問に答えた。

 

「──いや、何も習い事はしてなかった」

 

「では、ベータテストで誰かに師事を?」

 

「ベータ時代にそんな余裕無かったよ。我流──って程大層なもんでもないな。ヤンキーの喧嘩殺法と同じだ」

 

 俺の答えに、アスナもアリスも揃って言葉を失っていた。

 

「──な。こんな答え返されちゃ、理不尽だって思うだろ?デュエルを拒否りたくもなるさ」

 

「つまり、研鑽された術理の下に成り立っているのではなく、ただ本能のままに戦っているというのですか……?」

 

「あー、まぁそうだな。感覚的には子供の棒振りに近い。ほら、経験無いか?その辺の棒きれ拾ってブンブン振り回したり」

 

「……私の剣は、子供の遊びと引き分けたと……」

 

「そりゃ考え過ぎだ。本能に任せて、なんてカッコよく言っても、土台はカウンターヒッターだからな。アリスがやったみたいに攻略されることだってある。──何よりアレ、使い所マジで少ないぞ」

 

 ベータ時代は皆気軽にデュエルしていたが、デスゲームと化した今のSAOではプレイヤーよりもMobと戦う方に主眼を置いている。今日のアリスとの一戦だって、ベータ以来初のデュエルだったのだ。

 

 そんなこんなで、気付けば料理を全て平らげていた俺達は、食後のお茶を飲みながら満足感に浸っていた。

 

「──なんだか変な感じ。私達、もっとずっと前からこの世界で生きてきたような…そんな風に思う時、ない?」

 

「……そうだな。俺も最近、リアル(向こう)での事を思い出さない日が増えてきたように思う」

 

 キリトと同じ感覚は、俺も少なからず感じていた。2年前は一刻も早くこの城から脱出しようと、休む暇も惜しんでひたすらレベルアップに邁進したものだが、今年に入った辺りからだろうか、気まぐれに攻略をサボる日がポツポツと増えてきた気がする。

 SAOが始まってからの1年間と比べて、攻略に心血を注いでいるプレイヤーの数──その熱量は間違いなく下がっていると見ていいだろう。あの頃から増えているはずの最前線で戦っているプレイヤーだって、今では500人いるかいないかといった所だ。

 

「……皆、馴染んできてるんだわ。この世界、この現状に」

 

「どんな非日常も、数年経てば日常になる、か……確かにな」

 

「でも、私は帰りたい。だってリアル(向こう)でやり残した事、まだ沢山あるもん」

 

「……だな。出来れば今月中にはこの層を突破して、攻略組の連中に発破でもかけるか。でなきゃ、サポートしてくれる商人や職人クラスに怒られそうだ」

 

「……アリス、どうした?」

 

 何やら考え込んでいたのか、先程からずっと黙ったままのアリスは俺の声に小さく反応する。

 

「い、いえ。何も──話は変わりますが、お前達はギルドに入る気はないのですか?」

 

 真剣なアリスの言葉に、今度は俺とキリトが小さく反応した。

 

「お前達が《ビーター》と揶揄されている事、敢えて集団から外れている事は承知の上です。しかし……」

 

「──70層を越えた辺りから、フィールドをうろつくMobのアルゴリズムにもイレギュラー性が増してきてる気がするの」

 

 言葉を引き継いだアスナの意見には、俺達も心当たりがあった。基本的に単調な思考ルーチンで動いていたMobを相手にする際、俺達のようなソロプレイヤーはMobのAIを誘導したりと、様々な工夫を凝らして戦ってきたわけだが、ここ最近はその誘導が上手く嵌らないケースも散見されてきている。

 

「ソロでは不測の事態に対処するにも限界があります。《転移結晶》での脱出も、今となっては確実ではありません」

 

 これまでにも、各所ダンジョンや迷宮区に《結晶無効化エリア》という罠が仕掛けられた区画がいくつか確認されている。その中では結晶アイテムの効果が全て打ち消され、緊急時の生命線であった《転移結晶》も使えなくなってしまうのだ。

 

「安全マージンはしっかり取ってるよ。それに……俺達の場合、パーティメンバーは助けよりも邪魔になる事の方が多いし」

 

 ふと俺の脳裏にチラついた光景を振り払うように──キリトの言葉に頷いて同意を示す。次の瞬間、俺達の眼前にそれぞれナイフとフォークが突きつけられた。

 

 食器の持ち主──アスナとアリスの目は「これでも実力不足か?」とでも言いたげな雰囲気を放っている。俺もキリトもそういう意味で言った訳ではないのだが。

 

「わ、分かったよ。アスナ達は例外だ──でも、やっぱりギルドに入る気はないよ」

 

「そう…──なら、久し振りにまたこの4人で組みましょ」

 

 そう言って、アスナはこの場の3人へパーティ加入申請を送る。最初にアリス、次いで観念したキリトが申請を受諾したのを見て仕方ない、と俺も続こうとしたのだが……

 

「……っ」

 

 ウィンドウの前で、凍りついたように俺の手が止まる。そしてまたも「あの光景」が脳裏を過ぎった。

 

「……ミツキ?」

 

「ッ──あ、ああ。何でもない。ボス戦以外で誰かとパーティ組むのは久しぶりだから、なんか緊張してるみたいだ」

 

 静かに息を飲み、意を決して《○》ボタンを押す。パーティ編成が完了し、視界の左上に俺とは別のHPバーが3本追加表示されたのを見て、俺はそっと息をついた。

 

「それじゃ、早速明日からよろしく。朝の9時に74層の転移門広場に集合ね」

 

 

 

 

 

 

 

 アスナに礼を言って帰路に着いた俺達。キリトは買い物があるといって道具屋へ向かった為、転移門までの道を俺とアリスの2人で歩いていた。

 

「──まだ、アスナにも話してなかったのか」

 

「……余計な気を遣わせたくありませんから」

 

 アリスにはリアルでの記憶が無い。てっきりアスナには打ち明けているものと思っていたが、先の食卓でリアルの話が上がった際の反応を見るに、そうではなかったようだ。

 

「……強いですね。アスナもキリトも、お前だって──元の世界で叶えたい事、やりたい事があって、その為に諦めず戦っているのでしょう?」

 

「……アリスは違うのか?」

 

「どうでしょう……私は元より、戦う事しか出来ませんでしたから。そうすることで多くの人々を救えるのなら是非もない。ゲームクリアを目指す事に異論はありません。しかし……」

 

 ふと足を止めたアリスに、俺も後ろを振り返る。

 

「同時に、この世界──お前達と過ごす日々を心地よく思う自分もいるのです。いつかこのゲームをクリアしたら、この日々も終わってしまう……それを惜しんでいる自分が」

 

「アリス……」

 

 彼女の言いたいことは、俺にも理解できる。仮想世界内で直接顔を合わせ、会話し、触れ合う事の出来るVRMMOで形作られた人間関係は、なにか特別なものに思えるのだ。ましてやこの世界で生きる事を余儀なくされた俺達にとって、ここは最早もう1つの──いや、この世界こそが現実と言えるのかもしれない。リアルでの記憶を持たないアリスにとっては尚更。

 その現実が壊れる──ゲームクリアによってこの浮遊城が消滅すれば、そこで紡がれてきた多くの物語も、人と人との繋がりも、全てが無に帰してしまうのではないか……と。

 

「……終わりじゃないさ」

 

「えっ……?」

 

「ゲームをクリアして、この世界が消えてなくなっても、俺達が仲間だった事実まで消えて無くなるわけじゃない。リアル(向こう)でも会おうと思えば会えるだろ、多分」

 

「そう、なのですか?」

 

「──ま、アリスは良いトコのお嬢様っぽいし、そういう意味じゃ難しいかもだけどな」

 

「ふふっ……そういうお前は、ご両親も手を焼く悪戯息子といったところでしょうね」

 

「うむ、強ち間違ってはいない」

 

 クスクスと笑ったアリスは、

 

「──ミツキ」

 

「何だ?」

 

「1つ、約束をしてくれませんか?私がこの世界で、迷わず戦い抜けるように」

 

「そんな大事な約束、俺とでいいのか?」

 

「お前とがいいのです。お前は、この世界で初めて私に手を差し伸べてくれた人間ですから」

 

 そう言って微笑むアリスの笑顔は、すっかり日の落ちた夜道でも眩しく見えて──俺はつい視線を逸らした。

 

「……まぁ、お前がいいならいい。──それで、約束ってのは?」

 

「そうですね──ではまず、現実世界で会う所から始めましょう」

 

「まるで引きこもり脱却のステップ1だな」

 

「お前のレベルに合わせたのです、感謝なさい」

 

 言われてみれば確かに、リアルでアリス程の美少女と会う事になったら緊張どころではないかもしれない。そこは気遣いに感謝すべきか。

 

「それから2人でお茶をしたり、買い物をしてみたり──ああ、現実で立ち合ってみるのも面白そうです」

 

「おい、1つじゃないのか?」

 

「……いざ考えてみると、1つでは足りませんね。仕方ありません、全て纏めて1つという事にしましょう」

 

「んな欲張りな……」

 

「少しくらい欲張りな方が、励みになるというものです──それで、お前はどうなのです?」

 

「俺?」

 

「元の世界で叶えたい何か──この世界で戦う理由です」

 

「理由、か……」

 

 思い返せば、元の世界に帰る為にここまで戦ってきた俺は、帰った後を考えた事は一度としてなかった。精々元の生活に戻りたい、程度だ。

 自慢ではないが俺は友達が少ない。だから学校に通っている以外の時間は基本的にゲームや漫画といった、1人で没頭できる物に費やしてきた。それを踏まえるなら、「あの漫画の先が気になる」とか「あのゲームは新作が出たのだろうか」とかになるわけだが、我ながらあまりにも即物的過ぎる。漫画の続きが読みたいから命を懸けるというのも馬鹿みたいな話だ。

 

 では、この世界ではどうだろう。俺がこの世界で手に入れたものは、何か戦う理由にならないだろうか。

 どんどん記憶を過去に遡っていくと、1つの記憶に思い至った。あれはそう、第1層のボスを倒した直後の事だ。

 

 カッコ付け過ぎではないか?と思わず笑ってしまう。そんな自分に、それでいいんだと答えた。

 

「ミツキ……?」

 

「ああ。あるよ、戦う理由なら。──アリスと似たようなもんだ」

 

 流石に雑だったろうかと思ったが、当のアリスは、

 

「そうですか……私と同じですか。なら、嬉しいです」

 

 と、言葉通り嬉しそうに笑う。

 

「(()()だよ──)」

 

 

 第1層を突破したあの時も、60層ボス戦の直前も──俺は、泣いている君を見たくなかった。

 

 全ての悲しみを取り除く、なんて真似は到底出来ないが、せめて悲しむ事が少しでも減るように。

 

 この世界でも、リアルでも、アリス(きみ)には笑っていて欲しい。

 

 その為なら、俺は折れずに戦える。

 

 

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