キリトと明日奈の娘を名乗る《ユイ》という少女からの突然の連絡を受け、 兎沢 深澄は深夜の六本木に繰り出していた。
端末越しに聞こえた声はおよそ10歳そこらの幼い少女。にも関わらず、その印象にそぐわぬ豊富な語彙と知識。何故か
人間の魂を読み解く《ソウル・トランスレーター》なるフルダイブマシンの存在。
それを用いてダイブする《アンダーワールド》なる世界の存在。
その中で文字通り「生きている」という真性の人工知能《人工フラクトライト》。
それを巡って、日本のとある極秘機関と、恐らく米国と思しき武装勢力が争っており、何の因果か、それにキリトと明日奈、翠月が巻き込まれている。
特にキリトと翠月は今現在、ただならぬ状態にあり、先行して助けに向かった明日奈1人では手に余る状況となってしまった。
故に、新たな助けが必要なのだ──と。
「──ほんの数か月前にもオーグマーの件で大変な目に遭ったって聞いたけど……あの子も大概巻き込まれ体質ね……」
「アスナさんの事ですか?あー、まぁ確かに言われてみると……」
「キリトとミツキが大抵何かしらトラブルを引っ掛けてくるから、アスナもそれに引っ張られてる感じは、確かにあるわね──まぁ、本人達も不本意極まりないでしょうけど」
そう言って苦笑するのは、深澄同様ユイの要請を受けてラースへ出向いた2人の少女──《リーファ》と《シノン》。まだ本名も知らないこの2人は、見た感じ深澄よりも年下だと思うが、得体の知れないビルの階段を上がる足取りは、思いの外落ち着いているように見受けられる。
「……2人共、すっかり慣れてる感じね。あの子達とは結構長いの?」
「長い、って言う程長いわけじゃないですよ。お兄ちゃん──キリト君は家族なんで別として、アスナさんとミツキさんとは……知り合って1年ちょっとですかね」
「私は丁度、去年の暮れ頃に──あぁいや、ミツキの方は一応夏頃が初対面だから、もうすぐ1年経つくらいかしら」
「……にしては随分仲が良いのね。こんな時間にこんな所に来て……あんな現実離れした話、信じられるの?」
「ここ1年で色々ありましたから……第一、傍から見てても、SAO事件の時点で十分現実離れしてたっていうか」
「それに、この件に関して、触り程度に話を聞いてはいたしね。まさかここまでの大事になるとは予想してなかったけど。何より、あいつらには大きな借りもあるもの──ミトさんだって、だから来たんじゃないの?」
「借り……そうね。思い返せば、ちゃんとした形でお礼言ってなかったっけ」
深澄がここにきた理由は、明日奈が──かつて自分が過酷な世界へ引き込み、多くのプレイヤーを解放すべく懸命に戦った大事な親友が──助けを必要としているから。
そして……その親友と永遠に離別するのを危うい所で引き止め、引き返すよう諭してくれた少年に、その恩を返す為でもある。
やがてたどり着いた扉を開き、部屋の中に鎮座する3機のSTLを目の当たりにした深澄の胸を、嫌な緊張感が締め付ける。
あの時の深澄の選択が、自らを、そして無二の親友をあの世界に2年間縛り付ける事になった。ならばせめてと心に決めた約束も、一度は自分の手で投げ出してしまった──だからこそ、与えられたチャンスを手放すわけにはいかない。二度も自分を裏切るのは……新たにした誓いを破るのは御免だ。
「──行きましょう」
ひとつ深呼吸した深澄──ミトの言葉に頷いたリーファとシノンは、太平洋上の《オーシャン・タートル》から通信を繋いだ比嘉の声に耳を傾けるのだった。
──斯くして、アンダーワールドにダイブしたミトは、視界に飛び込んできた世界のリアルさに驚くのもそこそこに、謎の禍々しい奔流が飛竜に跨る騎士を飲み込もうとしているのを目にする。
詳細な戦況については直接確認しなければ──果たしてあの竜騎士が敵なのか味方なのかも判然としないが、少なくともあの黒いナニかが善いものだとはお世辞にも思えない。ミトは左手を掲げ、この世界で自分が身を窶す女神の力を発動させた。
彼女の使うスーパーアカウント04──《月神ルナリア》に与えられた管理者権限は、《空間リソース操作》。指定した領域内を対象に、手甲として左腕に装着された月齢盤を動かすことで、領域内の空間リソースを自由に操ることが出来る。
月齢盤を満月にすれば、月明かりによってリソースを生み出し……新月状態にすれば、領域内は闇に満たされ、空間リソース及びそれによって発動された神聖術を問答無用で抹消する。
遍く地平を照らす太陽を司るソルスと違い、光と闇の二面性を有する月の女神の前では、あらゆる攻撃、防御術式が跡形もなく消え去るのだ。
ミトはあの竜騎士の周辺の空間を《新月》に設定。すると内部にいたあの黒い奔流が跡形もなく弾け飛ぶ──思った通り、アレはこの世界に於ける魔法の類で生み出されたものだったようだ。
「──シノン!」
「えぇ──!」
続けて、背後のシノンが大弓に矢を番え、太陽神ソルスの固有能力である《広範囲殲滅攻撃》を以て、先んじてログインしていた赤い兵士達──大量のアメリカ人プレイヤー集団を一掃する。それでもまだ敵は半数近く残っているが、突如齎された大量破壊で士気を削がれたらしく、動きを止めることは出来た。
ゆっくりと降下し地上に降り立った2人を迎えたのは、真珠色の装いに身を包む栗色の髪の少女──ミトが長らく会っていなかった、親友からの抱擁だった。
「──でも、何でミトまで?」
「ユイちゃんって娘に頼まれたの。あなた達を助けて欲しい、ってね──ってかそうよあなた達いつの間に子供なんてできた訳!? まだ学生でしょ……!?」
「あーえっと、それについては話すと長いからまた今度──それはそうと、今はとにかくあのアメリカ人プレイヤー達をどうにかしないと……」
シノンの作った突破口を今まさに駆け抜けている最中の馬車の上に、3柱の女神達が立っている。周囲を走る衛士達もその光景が気になって仕方ない様子だが、アスナという前例を知っている分、彼女達も同じような存在なのだろう、ということで納得させていた。
「それなら、このまま南に進んでいった所に古い遺跡みたいな廃墟が見えたわ。両側が高い壁になってるから、そこに陣取れば包囲されずにあいつらを迎え撃てると思う」
「わかったわ。ならこのまま包囲を突破して……って、そうよ──あのプレイヤー達を足止めしていた人はっ!?」
「うそ、あの中にいたの……!?」
そう聞くなり、シノンとミトは各々のアカウントに与えられた飛行能力で空に上がり、進路方向を見渡す。すると、先のシノンの攻撃でポッカリと穴の空いた群衆の中で、小さな人集が出来ているのを見つけた。恐らくあれが、アスナの言う味方だろう。
シノンの弓ならここからでも届くが、まだ威力調整の勘を掴みきれておらず、最悪味方に当たってしまう危険性もある。せめてはっきりと目視出来る距離まで接近しなければ……
出せる限りの全速力で、例の人集へ飛んでいく。
接近戦が可能なミトが先行して突っ込み、大鎌を振りかぶる。発動させた大鎌範囲技《クリーヴファング》が、周囲に群がる赤い兵士を斬り刻み、吹き飛ばした。周囲に残っている敵は、シノンが上空から正確な射撃で片付けていった。
瞬く間に消え去った兵士達──ミトはその中心にいた、単身でこの数を足止めしていたという人物の元へ向かう。手が届くほどの距離まで近づくと、生臭い鉄の匂いが鼻についた。
「大丈夫!? しっかりし──て……」
安否──無事じゃないのは明らかだが──を確認するべく、顔を覗き込んだミトの声が尻窄みになっていく。どうしたのかと、シノンも周囲を警戒しながら2人の元へ降り立った。
……酷い怪我だ、反射的に目を逸らしそうになった。自分のものか、或いは返り血か、とにかく全身が赤く染まっている。着ている服も染み付いた血で赤黒くなっており、元はどんな色だったのかさえ判別がつかない。膝をついて項垂れるように動きを止めているその人物──背格好からして恐らく若い男だろう──が前のめりに倒れそうになった所を、咄嗟に滑り込んだシノンが支えた。
肩を掴んで止めるつもりが、血で手が滑り、そのままシノンにもたれ掛かる。慌てて弓を手放し踏ん張ったシノンは、一先ず彼を寝かせようと──
「───ぇ?」
思わず、そんな間の抜けた声が零れた。この瞬間、シノンはミトが言葉を失った訳を理解した。
間違いない……どれだけ血に塗れていようと……どれだけ傷をつけられようと……見間違うはずがない。現実世界で出会ってから、シノンの脳裏にしっかりと焼き付いている。
べっとり張り付いた血の下にあるだろう、男にしてはかなり白い肌、青みがかった黒髪、そして名前を表したかのような色の瞳──間近に迫った彼の顔が……シノンのよく知る、「彼」の顔だったから。
「う、そ……そんな──嫌……いやぁ……ッ!」
腕から力が抜け、再びミツキの体がもたれ掛かる。反射的に背中へ回した手に違和感を感じた──手の平にあるはずのものが……無くてはならないはずの
どうすればいい?こんな酷い怪我の治療法なんて分からない。それ以前に生きてるのか?間に合わなかった?助けられなかった?
そんな言葉ばかりが脳裏を駆け巡る。耳元で微かに呼吸音が聞こえることから、驚くべきことに生きてはいるようだが、この怪我ではそれもいつまで持つか。
このままミトと2人で抱えてアスナ達の元に飛んで戻るか?しかし少しでも力が加われば容易く崩れてしまいそうなミツキの身体は、下手に動かすことも躊躇われた。
泣きそうになりながら、震える手で、恐る恐るミツキを地面に寝かせる。自分の手を見れば、白い手袋がミツキの血で赤く染まっていた。
「ッ──ぅ……アアアアアアアアアアアア──ッ!!!」
その手で傍らの弓を握り締めたシノンは、湧き上がる感情のまま上空に矢を放った。真っ直ぐ飛翔する一条の光は50メートル程の高度で弾け、放射状に無数の矢の雨を降らせる。まるで今のシノンの心情を表したかのような、涙の如き破壊の雨は、問答無用で赤い兵士達を消し去っていった。
それだけでは終わらず、シノンは大弓《アニヒレート・レイ》に射撃可能な最低限のエネルギーが充填される端から弦を引き、放つ。目に付く赤い兵士に向けて、手当たり次第に矢を放つ。射撃に必要なエネルギーがリチャージされるまでの僅かな時間が、異様に長く、煩わしく感じた。
シノンが更に赤い兵士達を一掃したことで、程なくして後続のアスナ達が合流、ミツキは急ぎ治療用の馬車へ運び込まれた。付き添おうとしたシノンだったが、門外漢の自分がいても役に立たない、と歯痒いながら踏み止まる。どうやらその程度の冷静さは戻ってきたようだ。
「……この世界はゲームじゃない、っていうのは聞いてたし、覚悟もしてきたけど……実際目にすると、キツいわね。あんな……」
「うん……修道士の人達が、きっと助けてくれるわ。ミツキ君の頑張りを無駄にしない為にも、先に進みましょう──詩乃の……シノン、大丈夫?」
アスナの気遣わしげな視線を背中に感じる。大きく深呼吸して己を鎮めたシノンは、短く「ええ」と一言だけ返した。ミツキが運ばれた馬車へ視線を投げる──
「(ほんと、変わらないわね……1人で抱え込んで、どうにかしようって無茶して──でも、そうまでしてでも守りたいものなんでしょ。この世界と、そこに生きる人達は。なら──あなたの代わりに、私が戦う。あなたが守りたいものを、私も守る。あなたは1人じゃないわ……例えあなたが嫌だって言っても、絶対、独りになんかさせてやらないんだから)」
正直言えばやはり心配ではあるものの、今のシノンは援軍として駆けつけた身だ。ならばその役目を果たさなければユイに申し訳ないし、何よりミツキとキリトに顔向けできない。
「それじゃあ、私は先に廃墟に行って地形を確認してくるわね」
「ねぇ──2人の飛行能力って、時間制限はあるの?速度に限界とかは?」
アスナの問いに、シノンとミトはキョトンとしつつ答える。
「ダイブ前に一通り説明は受けたけど……そういうのは聞いてないわね。ALOと同じ感覚で飛んでるから、最低限あっちと同じスピードは出せると思う」
「あるとしたら《2人同時には飛んでられない》とかだろうけど……現にさっき一緒に飛べたし、問題ないわ。──太陽と月の神様だし、多分、飛行能力はおまけって事でしょ」
「なら、お願いがあるの──!」
そう聞くなり、アスナは2人に現在の状況を簡潔に説明した──この戦いの鍵を握るアリスが敵の指揮官に連れ去られてしまい、こちらの指揮官であるベルクーリがそれを追っている──と。
「それを助けに行って欲しい、ってことね──なら私が行くわ。飛ぶのにも慣れてるし、アカウントの能力的にも適任でしょ」
「そうね……悔しいけど、そっちはお願い。アリスのこと、頼んだわよ」
2人揃ってベクタを追えれば一番だが、まだ赤い兵士達は半分以上残っている。対するアスナら遊撃部隊は700そこらだ。最低限、迎撃態勢を整えるまでの間だけでもミトの助けは必要になるだろう。ブランクを感じさせない頭の回転で意図を汲んだミトに後を任せ、シノンはここから更に南へ向けて全速力で飛翔していった。
「…………」
「……どうしたの、ミト?」
「……私とシノンの他にもう1人、《リーファ》っていうキリトの妹さんがダイブしてるはずなんだけど……どこに行ったのかしら?」
「リーファちゃんが……?」
本来なら3人とも同じ座標でログインする、という予定だったのだが、ここに来てから今に至るまで、彼女らしき姿は確認できていない。何かトラブルがあって弾かれてしまったのだろうか……?
現在アスナ達が居る地点から北へ戻り、イスカーンら拳闘士団とシェータが奮戦する地点より更に北──開戦の場となった《東の大門》のある峡谷付近。
皇帝ベクタが《光の巫女》を求めて場を離れ、暗黒騎士団と拳闘士団も丸ごと姿を消した赤い荒野に、ポツンと存在する群衆──ポツンと、と言っても3000はいるオーク族は、長である《リルピリン》を筆頭に沸々としたものを胸に抱えていた。
皇帝ベクタが最後に残していった「オーク族はここに残り、敵の本隊へ攻撃を続けて足止めしろ」という命令を守った結果、当初は8000いたオーク族のおよそ3割が命を落とした。
敵方の実力が想定より高かったのも少なからずあるだろうが、原因の多くを占めるのは「足止めをしろ」という皇帝の命令だ。この命令があるせいで、オーク族は本格的な攻勢に出られず、どっちつかずの中途半端な動きしか出来なかったのだ。
この上、皇帝が本陣を離れて暫くした後、先代のフ・ザに代わる暗殺者ギルドの長がリルピリンに接触し、こう要求してきた──総力を以て敵に攻撃を仕掛け、暗殺者ギルドが敵陣へ潜入する為の陽動を行え──と。当然拒否しようとしたリルピリンだったが、皇帝から許可を得ている、と言われてしまってはそうもいかない。止むなく残ったオークの兵士を総動員して強襲を仕掛け、決死の陽動を行ったのだが……結果は酷いものだった。
「ッ……ヒトめ……人めらッ──許すものか……殺す、殺しでやる……ッ!」
大方、整合騎士に感づかれたのだろう。潜入した暗殺者は長を含め1人として帰ってこず、奴らが何か戦果を挙げられたわけではないのも明らか、そして陽動に際するオーク族の被害は全体の半数にも上った──およそ4000近いオーク達の死が、一瞬で無意味になってしまったのだ。真っ先にその責を追求されるべき暗殺者ギルドの長は討ち死に、作戦の許可を出したという皇帝には異を唱えることも出来ない。やり場のない気持ちだけが、ひたすらにリルピリンの胸を焦がしていた。
固く握り締められた彼の拳に、そっと重なる手が1つ──ハッと顔を上げたリルピリンの傍らには、オークとしてはかなり細身の女オークが寄り添っていた。
「リル……」
「レン……おでは──おでは長失格だ……部族の皆を守ってやれなかっだ……人族なんかの為に、沢山の仲間を無駄死にさせぢまっだ……!」
「……誰がなんと言おうと、あなだは我らオークの長であり、希望です。だからどうか、そんなに自分を責めないで」
リルピリンの幼馴染である《レンジュ》という女オークは、嘆く長を励ますように、彼の手を握る手に力を込める。
「それに──優しいあなだが、復讐に心を燃やす姿は見たくない。死んでしまった皆の魂を鎮める方法は、他にもあるはずよ」
「レンジュ……」
今は亡き暗黒将軍シャスターが、人界との和平を結ぶに当たって大きな障害になると考えていた存在の1つが、まさにオーク族だ。
亜人の中では比較的話の出来る部族といえど、暗黒界ではゴブリン共々特に激しい差別に晒されている彼らは、人界、暗黒界を問わず、人間という種族に対する憎悪を滾らせている。
勿論、一般的な人間とオークが戦えば、身体能力的に勝つのはオークだ。事実、オークもまた人族の間では、遥か昔の《鉄血の時代》に於いて破壊と殺戮の限りを尽くした凶暴な種族として伝わっており、彼らへ向けられる差別の目は、そんな前時代の凶行に対する恐怖心の顕れ、という側面が少なからずある。
結果から言えば敗北した種族である彼らを蔑み、虐げる事で各々の意識に上下関係を構築し、《力の掟》によって従属させる……十候会議の掲げる《五族平等》を表向きには了承しつつ、内心では自分達よりも劣った種族と見下すことで、薄氷のような均衡を保ってきた。
そしてその薄氷を無情にも踏み砕いたのが、皇帝ベクタ──彼は《光の巫女》とやらを確保した者の願いを叶えると言った。その権利は種族も部族も関係なく、平等に与えられた筈だった。
しかし実際はどうか──皇帝が《光の巫女》確保の為に同行させたのは暗黒騎士と拳闘士、いずれも人族ばかり。実質的に亜人部隊唯一といっていい生き残りであるオーク族に与えられたのは、敵の足止め。加えて暗殺者ギルドのお膳立ての為に犠牲にされる始末だ。
暗黒界の頂点に君臨する皇帝がこの決定を下したことで、人間達は更に調子づくだろう──やはりオークは醜悪な人豚なのだ、だから皇帝は巫女の確保に連れて行かなかったのだ──と。
レンジュの言葉を聞いても、リルピリンの中に渦巻く怒りは収まらない。百歩譲って自分が指を指され笑われるのはいい、だがレンジュが──大事な幼馴染である彼女まで嘲笑の的にされるのは看過できなかった。
だというのに……何も出来ない。死んでいった同胞達の仇を取ることも、同胞達を守る事も出来ない……オーク
歯噛みするリルピリンが、遂に抑えきれなくなった感情を空に向けて吐き出そうとしたその時だった──
「きゃあああああああああ───ッ!?!?」
悲鳴と共に、空から何かが落ちてきた。ドスン!と盛大な土煙をあげて墜落したソレは──1人の若い女だった。微かに緑がかった鮮やかな金髪、若草色の装束の上に纏う、暗黒騎士よりもずっと上等そうな鎧。何より──真っ白な肌の色が、彼女が暗黒界人ではなく人界人であると雄弁に物語っていた。
「痛ったァ……!もう、だから新品の機械は嫌なのよ……!」
文字通り突然降ってきた人界人の女を目にしたリルピリンは、不覚にも彼女を美しいと感じてしまった己の感覚を激しく叱責するのもそこそこに、レンジュを背後に庇いながら抜剣する。
「……んぇ?」
間の抜けた声と共に、女がこちらを見る──背後にレンジュがいたお陰だろうか、部族の長として、人間に対する劣等感から反射的に口をしそうになった「見るなッ!」という言葉をどうにか飲み込むことに成功した。
訝しむような目で暫しこちらを見ていた女は、ひょいと立ち上がって埃を払うと、
「えっと……こんにちは──あ、それともおはよう……かな?」
開口一番出てきた言葉は、気兼ねのない挨拶だった。
「あれ……言葉、通じてる……よね?──も、もしかしてあたしの声だけミュート状態……!?」
ぽかんとする2人のオークを前に、女はこれといって警戒する素振りも見せず、1人で勝手にアタフタと狼狽する。敵意は愚か、腰に携えた立派な長剣に手を伸ばす気配すら無い。挙げ句の果てにはブンブンと身振り手振りで意思疎通を図ろうとしてくるではないか。
「……何故、逃げない。何故悲鳴を上げない──人族の、それも人界人のくせに、何故……?」
危機感の欠片もない女に、リルピリンが問いかける。すると女はまず、安堵の表情で胸を撫で下ろした。
「よかったぁ、ちゃんと通じてた──で、えっと……どうして逃げないのかって?そりゃあだって──あなた達は人間でしょ?」
あっけらかんと答えてみせた女に、今度こそリルピリンもレンジュも絶句した。
「に、人間……?何を馬鹿な──見れば分がるだろう!おで達はオークだッ!お前達イウムが家畜だ人豚だと罵って笑うオーク族だッ!」
半ば自棄になって言い返すリルピリン。しかし女は小首を傾げて、
「うわ、ひっど……見た目の違いなんて大した問題じゃなくない?こうしてちゃんとお話も出来てるわけだし……うん、やっぱり人間と変わんないよ」
きっぱり言い切った女に、またも絶句する。彼女の言っている意味が理解できなかった──言葉を話せれば、人間?そんなの、オークどころかゴブリンにだって出来る事だ──彼女の言葉に照らし合わせるなら、亜人族全てが等しく人間だと、そう言うのか?
「取り敢えず、ここがどこなのかと、今どういう状況なのかだけでも教えてもらえる?……っと、その前に自己紹介か──あたしはリーファ、あなた達のお名前は?」
リーファと名乗った女を怪訝な目で見つめるリルピリン。彼女の目には、相変わらず敵意は見られない。それどころか、これまで嫌という程感じてきた侮蔑と嘲笑の意思すらも感じられなかった。本当にこんな人間がいるのか、幻か何かではないのかと、いっそ実在すら疑い始めた所で──
「──私は、オーク族族長の側近を務める《姫騎士》レンジュといいます。そして……彼こそは全てのオークを取り纏める長、リルピリン」
背後のレンジュが、緊張の面持ちで2人の名を告げる。それを聞いたリーファは、
「リルピリンとレンジュ……いい名前ね──よろしく!」
そう言って、手を差し出してきた。
「……あれ、もしかして握手する文化、無い……?」
「あっ……いえ、すみません。人族の方に握手を求められるのは初めてだったので、つい面食らってしまいました──こちらこそ、よろしくお願いします」
リーファの手を握り返すレンジュに、リルピリンは小声で囁きかける。
「おいレンジュ、握手なんがしてどうする気だ……!? こいつは明らかに人界軍の騎士だ、捕虜にして皇帝の所に連れて行けば……!」
「……それで、どうなるのですか?《光の巫女》でもない彼女を差し出して、皇帝が何か報酬を齎すと?」
「そ、そでは……」
「皇帝が私達に下した命令は、人界軍の足止め──現にこうしであちらからの攻撃が止んでいる以上、残り少ない兵士達をむざむざ戦わせる必要はありません」
「──ねぇ。その皇帝って、暗黒神ベクタの事よね?」
どうやら届いてしまっていたらしい言葉を耳にしたリーファが、会話に割って入ってくる。
「……ああ、そうだ」
「なら──いいよ。あたしをその人の所へ連れて行って」
「リーファ、様……?」
戸惑うレンジュ。胸中を同じくするリルピリンもまた、大人しく拘束を受け入れようとするリーファの行動に愕然としていた。腰から引き抜いた飾り紐で彼女の両手を縛ろうとした手が、寸前で止まる。
「(本当に……本当にいいのか?もしかしたら、こいつは本当に俺達を人間として──いや、騙されるな!イウムは皆敵だ。みんな、敵……ッ)」
葛藤を振り切るように紐を手首に回そうとした瞬間──突如、リーファの体が掻き消えた。
「なッ──!?」
やっぱり騙された……そんなリルピリンの思考は、いい意味で裏切られた。リーファは霞むような勢いで抜剣し、横薙ぎに振り抜く──その切っ先が、どこからか湧き出していた黒いモヤを斬り払った。
「そこにいるのは誰──ッ!?」
背後にリルピリンとレンジュを庇いながら、リーファが虚空に向けて鋭い声を飛ばす。
モヤが凝集し、不定形なナニかを形作っていく……やがてその中から、人間の顔が覗いた。
「フーッ……フゥーッ……天、めい──てん、命を……ッ!」
辛うじて人のような形になった褐色の腕。焼けて色褪せた灰色の髪……そして、顔の半分を覆う焼け爛れた痕……以前と似ても似つかぬ様相ではあるが、間違いない。こいつは──
「ディー・アイ・エル……生きでだのか……ッ!?」
「はァ……はぁ……当然、でしょうッ……わたシは、必ずや、栄光を──安寧をッ……手に入れる……ッ!」
泥のような体で地面を這いずるディーに、リルピリンもレンジュも警戒の目を向ける。
「この人、あなた達の仲間なの──?」
「確かに、暗黒界軍の人間ではありますが……」
「仲間なんかじゃねぇッ!こいつは……こいつは敵だッ!」
「でも、同じ軍なんでしょ……!? だったら──」
「こいつには仲間達が散々苦しめられたんだ!弱ってる内にトドメを──」
「だッ……まれ醜い豚がァ──!」
伸ばされたディーの指がうねうねと動く触手状に変化し、リルピリンへ殺到する──そこへ、リーファが自らの腕を割り込ませた。
「うぅッ!? っぐ……ァ──!」
触手が腕を貫き、内部へ潜り込む。するとリーファの腕から、微かな光の奔流が触手を通じてディーに流れていき、その光を受け取ったディーの体が徐々に形を取り戻していく。
「アァ……なんて、なんて素晴らしい……!これ程までに芳醇な天命を有する人間がいたなんて……!もっと……もっと天命を──!」
恐らく、リーファの身体から天命を吸収しているのだろう。触手の蠕動が大きくなると同時にリーファの口からも苦悶の声が漏れ、彼女の身が凄まじい苦痛に苛まれているのは想像に難くない。
「リーファ!」
「ディー・アイ・エル殿、お止めください!この方は──!」
「黙りなさいメス豚!下手な動きを見せればこの娘の心臓を内側から噛み破るわよッ!」
「大ッ、丈夫……!あたしは、平気だからッ──あなた、傷を治したいんでしょう?なら好きなだけッ……持って、行きなさいッ……!」
そう言ってリーファが地面を強く踏みしめると、草の根1本生えてなかった暗黒界の荒野に、突如として草花が芽吹いた。その大地の恵みはリーファの身体へ流れ込み、天命消耗によって青白かった顔に血色が戻っていく。
これが、リーファの使用するスーパーアカウント03《地神テラリア》の能力──《無制限自動回復》だ。
大地の恵みを司るテラリアは、その場にいるだけで周囲から空間リソースを吸収し、自身及び他の動的、静的オブジェクトの耐久値を回復させることができる。リーファの意識が続く限り、その体は常に無限の天命で満たされているということだ。
そのことを見抜いたディーはお望み通りと言わんばかりに、一層激しくリーファの天命を吸い上げていく。激増しているだろう痛みに、彼女は歯を食いしばって耐え続けた。
「リーファ!こんな奴の為にアンタが苦しむ必要はねぇ!こんな奴、生かす価値なんざねぇんだ!」
「そんなこと、ない……!誰にだって、生きる権利はあるよ……あなた達にも、この人にだって……!」
「こいつは、おで達オークや他の亜人族を散々コケにして見下してきたんだぞッ!人族はいつもそうだ!腹の底でおで達を馬鹿にして笑ってやがる!」
「ふ……ふふ、アッハッハ!──やぁっと本性を現したわね獣!この娘を助ける為とか何とか言っておいて、結局は自分の鬱憤を晴らす為に体よく利用してるだけじゃない!お前達の方こそ、腹の底では無力な人間を殺してやろうと考えてるんでしょう!?──お前達人豚がどうして亜人の中でもとりわけ嫌われてるのか教えてあげましょうか!? 人間よりも強い肉体を持って生まれるくせに、裏では行き倒れた人間を遊び半分に殺してるくせに!いつまでも一方的に被害者ぶる、その浅ましさが気に食わないのよッ!!」
「なっ……おで達はそんな事──!」
「──やってない、なんて言わせないわ!私はこの目で見た!今でも鮮明に思い出せるわ!お前達オークが、行き場を失った浮浪者の人間を笑いながら嬲り殺しにしている光景を!お前達亜人族は全員、《鉄血の時代》から何も変わってはいない!本能のままに血と殺戮を望む野蛮な種族だ!これを獣と呼ばずしてなんと呼ぶのか!」
「……リル、ピリン……っ」
消え入りそうなリーファの声に目を向ければ、彼女の瞳がじっとリルピリンを見つめていた──先程の彼女の言葉の真偽を問い質す意思を込めて。
……実際の所、ディーの言葉も全くのデタラメという訳ではないのだ。
血の気の多いオーク達が、まともな仕事にありつけないような人間を人知れず痛めつけた、という話を耳にしたことがある──暗黒界では行き倒れも珍しくない為、こういった事は被害者が余程の重役か、衆人観衆の中で起きでもしない限り表沙汰になりにくいのだ──当然、そんな事をすれば十候会議で非難の的になるのは明白なので、リルピリンが族長になってからはそんな真似をしないよう厳命しているし、その時は責任を持って厳罰に処すと決めてあるのだが……それより過去に関しては、リルピリンもレンジュも全容を把握出来ていない。
考えたくない事だが、歴代族長の誰かが秘密裏にそれを煽っていた可能性というのも……絶対に無い、と断言することは出来なかった。
ディーと比べて自分達の方がリーファと友好的関係を築けている以上、きっぱり「否」と答えれば信じてくれる可能性は高い。そうでなくとも、「それは人間がオークを差別したからだ」と言えば或いは。
だが彼女は言ってくれた──自分達は
もしここでリルピリンが怨恨を理由にリーファを騙し利用するような事になっては……それは、今まで自分達が目の敵にしてきた汚い人間と同じになってしまうのではないか。
百歩譲って、自分がそうなるのはいい。だが……族長である自分がそんな真似をしては、オーク族全員にも同じ印象がついて回ってしまう。つい先週生まれたばかりの赤子にも、戦いを嫌う心優しい少年にも、子供達を温かく見守る老人にも、すぐ傍にいるレンジュにも……何より、自分達は同じ存在だと言ってくれたリーファの人間性まで汚してしまう事になる。
自分達が本当に人間であるのなら……真に望むべき「人間」の在り方を、示すべきなのではないだろうか。
「ッ──確かに、おでの知らない過去には、お前の言う通りの事が起きていだのがもしれねぇ。けどッ……少なぐとも、おでが族長でいる限り、そんな事は絶対に起こさせねぇ!これから先も、絶対に!」
リルピリンの言葉に小さく笑みを浮かべたリーファは、ディーに向き直る。リーファからたっぷり天命を吸収したことで既に身体の9割は元の姿を取り戻しており、残すは右前腕部だけとなっていた。
「それで……あなたはどうするのッ──ディー・アイ・エル、さん……傷を治したら、彼らを殺すの?それとも……ッ」
「──そうだ、と言ったら……?」
「その時は……ッ、あなたを、斬らなきゃいけない──でも、できればそうしたくない……」
荒い息をつくリーファの言葉に、ディーは小さく眉根を寄せる。
「さっきの、あなたの言葉を聞いて、思ったの──あなたは、亜人を怖がってるんじゃないか、って」
「私が?あんな豚共を?──笑えない冗談ね」
「最初に言ってたじゃない──安寧を──って。それってつまり、安心して暮らせるようになりたい、ってことなんじゃないの……?」
「……えぇ、そうよ。暗黒界は力こそ全て、弱い者は淘汰されていく。だから力を求めるの。私の持ちうる全てを使って、暗黒界の頂点に上り詰める。そして人界をも手中に収め、永遠の命を得るのよ!他の誰も逆らえない程の強大な力を手に入れた時、私は初めて──」
「──無理だよ」
静かに、きっぱりと断言したリーファをディーは睨みつける。
「あたしね、お兄ちゃんが、2人いるんだ……どっちも血は繋がってないし、1人は家族でもないけど……大事な、お兄ちゃん達が」
「……それが何?」
「お兄ちゃん達は……ある場所で、最強、って言われるくらい強かったの──そこは、強くならなきゃいけない世界……だったから」
リーファの独白に、ディーも、リルピリンも、レンジュも、黙して耳を傾けている。
「皆言うんだ……あの2人には怖いものなんか無かっただろう、誰が来たって絶対に負けないだろう、って……でもね、実際に聞いてみたら、こう答えたんだ──」
──どれだけ強くなっても、安心できた時なんて無かった。
「──無理なんだよ、強いだけじゃ。例え全部あなたの思う通りになって、この世界の王様になれたって……安寧なんか手に入らない。ずっと、ずっと、見えない敵に怯え続けるだけ。それを防ぐ方法はたった1つ──自分1人だけの世界を作ること──すっごく寂しくて、虚しいって、分かるでしょ?」
いつの間にかディーの指はリーファから抜け落ち、晴れて五体を取り戻した彼女は、突きつけられた現実を振り払うように叫ぶ。
「なら……ならどうしろというのッ!?」
「簡単だよ……人を頼ればいいの。1人じゃ出来ない事だって、誰かと一緒なら──」
「出来るわけがないでしょうッ!隙を見せれば殺される、それがこの暗黒界よッ!仲良しこよしのぬるま湯に浸かりきったあなたが、知ったような口をきかないでッ!」
「分かるよ──あたしも、そういう所にいたから」
新生する以前のALOは、運営の思惑によって種族間の抗争に明け暮れていた。
種族が違うというだけで他の種族から剣を向けられることなんて日常茶飯事だったし、たった1人が迂闊な行動をすれば、何百という同族のプレイヤーに影響が及んでしまう。何なら同じ種族でさえ、他の勢力の者が潜り込んでいるのではないかと警戒する者もいたし、挙句の果てには他種族に自陣営を売る者まで出た。
そんな息苦しい事この上ない妖精郷を、リーファは長いこと経験してきたのだ。
「でもね……そんな世界の中にだって、信じられるものはあるんだよ。損得勘定とか、利害関係とか、周りからの評判とか……そういうの全部抜きにして、困った時には助けに来てくれる──そんな人のことを、友達とか、仲間って言うの」
「知らないッ……そんなもの、私には……この世界には存在しない!」
「無いなら作ればいいじゃない」
そう言い放つリーファは、ゆっくりとディーの元へ歩み寄り、手を差し伸べる。
「友達を作る時はね、まずお互いの名前を名乗って、こうして握手をすればいいの。それから少しずつ、一緒に遊んだり、ご飯食べたり、お喋りしたりして、関係を深めていくんだよ──ね、簡単でしょ?」
差し伸べられた手を、ディーは疑心の滲む目で見つめる。
「……上手くいくはずがない。人界の奴らが暗黒界人の手を取るわけがない──それは、そこのオーク達だって同じ意見のはずよ」
事の行く末を見守っていたリルピリンは、小さく視線を下げて己の胸に問いかける。
今まで自分達を虐げてきた人間と手を取り合う……そんな真似が本当に出来るか?
自分達を怪物と恐れる人界人と友情を育むことなど、本当に可能なのか?
「おでは今まで、お前らイウムが憎くて仕方無がった。今だって、その気持ちは残ってる。けど──」
リルピリンは1歩、ディー達の元へ進み出る。
「けど──リーファと話して、こんな人間もいるんだって思っだ。最初はこいつもどうせ同じだって、思ってたけど……リーファがおで達に踏み込んできてぐれなきゃ、気づけなかっだことだ。憎んで、戦う以外に人間と関わる道があるなら……おでは、部族の皆が少しでも傷つかない道を選びたい」
「そうですね……歩み寄って、自分達がどんな人間なのかを教える──そうやって先入観を取り払う事が、融和への第1歩なのかもしれません」
リルピリンとレンジュは、ディーのすぐ前まで歩みを進めた。
「ディー・アイ・エル……おで達オークは、お前達人族から受けできた差別と迫害を忘れねぇ」
「……ええ。私達人間も、お前達亜人族のした事を忘れないでしょうね」
「でもそれを未来まで持ち越して、顔も名前も知らねぇ子孫に押し付ける気も、無くなった──時間は掛かるだろうけど……いつか、お前とも友達になれる時が来るかもしれねぇ。おではリーファの言葉を信じる。お前はどうだ」
そう言って、リルピリンはディーに向けて手を差し出した。
「……リーファ、といったわね──あなた、人間と亜人が……人界人と暗黒界人が有効的な関係を結べると、本気で思ってるの?」
「うん」
「何を根拠に?」
「だって──違う世界の人間でも友達になれたんだよ?同じ世界の人間が友達になれないわけないじゃない」
スーパーアカウント04《月神ルナリア》
固有能力:《空間リソース操作》
GM装備:大鎌《バイオレント・デュアリティ》
太陽神ソルスと対を成す、月の女神のスーパーアカウント。
異界戦争に際してはミトが使用する。
左手の月齢盤を動かすことで、指定した領域内を《満月》と《新月》の状態に切り替える。
前者であれば月光で空間リソースを生み出し、後者であれば内部のリソース及び素因を用いた術式の類を抹消できる(シンセサイズやディープ・フリーズ、天命凍結など、素因の絡まない特殊な術式を解除することは出来ない)。
リソース生成能力に関しても急激に増えるわけではないが、ダークテリトリーのような空間リソースの薄い環境でも犠牲を払わずにリソースを生み出すことが可能。