分けようかとも思ったんですが、キリの良い所が見つからずぶっ通しとなりました
──
鈍色の鎖でその身を縛られ、纏うのは質素なボロボロのワンピースのみ。そんな身なりに反して、身体は綺麗そのもの。乱暴に掴まれた髪にも、散々殴られた顔にも、締め上げられた腕にも、跡なんか1つも残っていない。ただ、時折意識が途切れる事はあった。最近はその頻度も多くなっている。多分、限界が近いのだろう。
沢山、沢山苦しい思いをした。消えてしまった方がずっと楽なのに。一体何故、自分はそれを拒んでいるんだったか。不運にもこんな冷たくて不快なだけの場所に放り出された、空っぽの影法師に過ぎない自分が、何故?
……あぁ、そうだ。思い出した。役目があるのだ。託されたものがあったのだ。
何を託されたんだっけ……えっと……そう、伝えなきゃ、彼に。
「彼」って、誰だっけ……いや、これは覚えてる。けど、万が一にも忘れてしまわないように、ちゃんと覚えておかないと。
もう暫く言葉を発してない。まぁ、ここに来てから発したのなんて叫び声だけなのだけど。彼に会った時、ちゃんと喋れるだろうか。今なら誰もいない。少しだけ、練習をしておこう。
まずは名前…彼の、名前は……
──Mi ツ き……
ただひたすらに、
アルヴヘイム南西部に位置するシルフ領《スイルベーン》を旅立った俺達は、世界樹の足元に広がる央都《アルン》目指して中立域の古森を横断していた。途中何度かMobと遭遇したが、俺とキリトが突っ込んでいく後ろからリーファがしっかりサポートしてくれるお陰で、然程苦労せずに森の中程まで到達した所だ。
「──にしても、2人揃って中々無茶な戦いかたするねぇ。普通あの手のモンスターとの空中戦は、ヒット&アウェイを意識するものなんだけど」
「アウェイする前に倒せれば問題ないだろ?」
「そうそう。ヒット&ヒットの方が早く終わるし」
「……まぁ、理論上はね」
「それに、そんな無茶な戦いが出来るのはリーファのサポートがあるからだ。ホント、助かってます」
「流石、シルフ最強プレイヤー」
「ちょ、やめてよ…──けど、ここからはそれだけじゃ通用しないと思った方がいいわ。ここまでみたいに単一種だけならまだしも、異種混合だったり、なんならまたサラマンダーの連中と鉢合わせる事だって考えられるもの。ALOの本気の対人戦は中々厳しいわよ」
「その心は?」
「ズバリ魔法ね。威力重視のやつなら軌道が直線的だから見切って避ける事も出来るけど、ホーミング性能に特化してたり、広範囲の面攻撃は原則回避不能。対抗属性で
「……漫画とかでよく見る、槍をグルグル回して防御するのは……?」
「魔法は非実体なんだよ?防げる訳ないでしょ──あぁでも、魔法属性が付加されてる武器なら可能な場合もある……のかなぁ?前例無いからはっきりとした事は言えないけど」
俺が購入した《ウィンド・パルチザン》は、まさに風の魔法属性が付与された武器だ。もし機会があれば試してみることにして、移動を再開する。幸か不幸か、以降Mobとのエンカウントは無く、翅の限界が近づいてきた所で一時着陸して小休憩を取る事に。
翅を動かす骨と筋肉というのはあくまでイメージなのだが、長時間飛行していると不思議と背中の筋肉に疲れを感じる。腰から背中にかけてを手の甲でトントンと叩いていると、リーファから「おじさん臭い」と笑われてしまった。
「──さて、空の旅は一旦ここまでよ。厳密にはあと少しだけね」
「ありゃ、何で?」
キリトの言葉に、リーファは木々の間から覗く前方の空を指さした。
「あの山、見えるでしょ?あれが飛行限界高度より高いせいで、山越えするには下の洞窟を通らなきゃなの。シルフ領から世界樹に向かう1番の難所、って話よ。あたしもここからは初めてなの」
「洞窟か……どれくらいの規模なんだ?」
「かなり長いのは確かね。途中に中立の鉱山都市があって、そこで休めるみたいだけど……2人共、今日は時間大丈夫そう?」
メニューで時間を確認する。リアルの時刻を表す時計は午後7時を示しており、丁度夕飯時だ。
「俺は当分平気。ミツキは?」
「特に門限的なものはないけど……家族にひと声かけるくらいはしといた方がいいかもな」
「なら丁度いいわね。ここでローテアウトしよっか」
「ローテアウト?」
「……ああ、なる程。ログアウト中のアバターを持ち回りでガードするのか」
以前俺が中立フィールドでログアウトした結果、戻ってきたらサラマンダーに捕まっていたのは記憶に新しい。
ローテーションの最初をリーファに譲った俺達は、彼女の意識が現実世界へ帰っていくのを見届けてから芝生の地面に腰を下ろす。
「リーファのお陰で、思ったより順調だな」
「ああ。彼女が親切なプレイヤーで良かったよ──…なぁ、ミツキは、どう思う?」
「何が?」
「あの写真──世界樹の上にいるのは、アスナだと思うか?いやまぁ、それを確かめに来たわけなんだけどさ」
キリトも内心では不安なのだろう。俺だってそうだ。もしあの写真が、アスナ本人ではなかったら……全ては振り出しに戻ってしまう。
「……第三者的な確証は無い。けど、そうであって欲しいと思うよ。──気の利いた答えを言えなくて悪いな」
「いや。こっちこそ困らせちゃったな。今はとにかく、あの上にアスナとアリスがいると信じるしかない。信じて、進むだけだ」
キリトがそう言った所で、近くの木々がガサガサと揺れる。風ではない、何か動的なオブジェクトによるものだ。揃って武器に手を掛けると、森の中から飛行型Mobが飛び出してきた。
「俺が相手する!ミツキはリーファの護衛を!──ユイもここに残れ!」
「は、はい!」
ユイがポケットからスルリと抜け出したのを確認したキリトは、翅を出現させて飛び立っていく。まだ飛行能力は完全回復していない筈だが、短期決戦ならギリギリ行けると判断したようだ。
「ユイちゃん。周りに他の敵はいるか?」
「いえ、あのモンスターのみのようです」
「なら、すぐ片付きそうだな。変に深追いしなきゃいいんだが」
「その時は、私の方から警告出来ますので心配いりません!」
プライベート・ピクシーにはそんな機能も備わっているのかと舌を巻いた俺は、ユイに予てより気になっていた事を聞いてみる。
「……少し無神経な質問だけど、いいかな?」
「はい……?」
「あの世界──SAOのシステムの一部だった頃の君は、カーディナル・システムの事をどこまで把握出来ていたんだ?」
「と、言いますと……?」
「その……例えば、の話なんだが──現実世界からナーヴギアを使ってログインしているプレイヤーと、システム上はプレイヤー扱いになっているAIを見分ける事は出来るのか?」
ユイは俺の質問の意図を図りかねているようだったが、やがて可愛らしくも真剣な声で回答を口にする。
「私はかつてのアインクラッドに於いて、プレイヤーの精神状態をケアする目的で生み出された存在です。その都合、プレイヤーデータの閲覧及びナーヴギアを介しての脳波チェック等も行う事が出来ました。NPCは勿論、ミツキさんの言う『システム上はプレイヤー扱いのAI』というものが存在したとして、脳波情報の有無でプレイヤーと非プレイヤーを判別する事は可能ですが……」
質問にまだ続きがあるのだろうという事を彼女も察しているようで、俺の次なる問いを待つ。対する俺は、その続きを口にする事に躊躇いがあった。
もし……もし、違ったら?俺のこの問いが、彼女はただのデータで、もう消えて無くなったのだと決定づける事になったら?──そう思うと、上手く言葉が紡ぎ出せない。
「ミツキさん……?」
「……いや、何でもない──つまり、少なくともユイちゃんはそういった存在を知らない訳だな?」
「はい。SAOにはNPCを始め様々なプログラムが設定されていましたが、個体情報をプレイヤーに偽装したAIは存在しないと断言出来ます。そもそも、そのような事をする意味がありませんから」
「そうか……ありがとう。その言葉だけで十分だ」
ユイの目から見て、アリスがどう映っていたのか──俺達と同じ人間のプレイヤーか否か。そこまで問い質す勇気は終ぞ出なかったが、求めていたものに極めて近しい回答を得ることは出来た。
1つだけ懸念点があるとするなら、ユイですら知りえないシステムの存在だ。もしアリスがそれによって生み出された存在であるなら、文字通り全てがひっくり返る──希望から、絶望へ。
……それでも信じて進むしかない。今の俺が歩める道は2つに1つなのだから。
程なくしてキリトが戻り、次いでリーファも帰還。次は俺の番だ。
「じゃ、サクッと行ってくる。長くても30分そこらで戻れると思う」
「うん。行ってらっしゃい」
メニューから《LogOut》を選択した俺の意識は、妖精の体から切り離された──。
現実世界で目を覚ました俺は、ナーヴギアを外して起き上がる。長時間寝たままだった体を大きく伸ばし、部屋を出る。もう夕飯は出来ているらしく、下のキッチンからカレーの匂いが漂ってきた。
とっとと食べてしまおうと足早に階段を下り、ダイニングへ向かった俺を出迎えたのは、
「──スイ。食べながらでいいから、ちょっと話しましょうか」
いつになく真剣な──それでいてどこかホッとした様子の叔母だった。
「……話って?」
カレーを食べつつ聞くが、叔母の表情から、話の内容は大方の見当が付いていた。
「さっきね、ご飯出来たから部屋に呼びに行ったの。何言っても返事が無かったんでドア開けたら……思わず叫びそうになったわ。理由は、分かるわね?」
「……驚かせてごめん。その、事情があって」
「事情って?」
「………」
正直、どこまで話したものか。まだ一切合切を話せる程の確証を得たわけではない。かと言って、何も言わないでいてはダイブ中にナーヴギアを強制解除させられる可能性もゼロではない──SAO事件の事を考えれば、そんな真似したくても出来ないかもしれないが。
「話せないような事なの?」
「……詳しい事は、言えない。ただ、少なくともSAOの時みたいな危険は無いよ。アレはSAOのゲームシステムの問題で、今やってるゲームは別だ。こうしてちゃんとログアウトも出来る」
「でも、絶対ではないんでしょ?普通より詳しいとは言え、アンタはその道の専門家ってわけじゃないし」
ALOはSAOのコピーサーバーだという事実が脳裏を過ぎる。表向きには正常に運営されている人気ゲームな以上、SAOのようにHP全損で脳を焼かれたり、ログアウト不能だったりという事は無い。だが叔母の心情を考えると……絶対に大丈夫、という言葉すら気休め程度にしかならない。
「……ごめんカナさん。本当に詳しい事は言えない。ただ──俺にはまだ、やらなきゃいけない事が残ってるんだ」
「それは、アンタじゃなきゃダメな事なの?」
「ああ。それをやり遂げないと、本当の意味で俺の現実は始まらない。だから……母さんには、黙ってて欲しい」
「……分かったわ」
「勝手なこと言ってるのは分かってる、でも──…えっ?」
「姉さんには黙っておく。ただし、アレを被るならせめて一声かけて。心臓に悪いわ」
「……いい、のか?」
「何、止めて欲しかった訳?」
「そうじゃないけど……」
「ただし条件よ。今後もゲームを続けるつもりなら、ちゃんと安全な方のハードを使う事──といっても、人気だから届くには数日かかるのよねアレ。だから、それまでの繋ぎとしてだけ使う事を許可します──そんで、ちゃんとやり遂げて帰ってきなさい。私が姉さんに殺されないようにね」
「……ありがとう、カナさん──ご馳走様でした!」
手を合わせた俺は、部屋に駆け戻る。ダイニングに残された佳苗は、
「変わらないわね、ホント……」
開封したビール片手に、そう独りごちるのだった。
「──悪い、遅くなった!」
急いでALOに再ダイブした俺を、リーファとキリトが迎えてくれる。
「おかえり。まだ30分も経ってないし、大丈夫だよ──じゃあ、最後はキリト君ね」
「おう。すぐに戻るよ」
キリトがログアウトし、その場には俺とリーファだけが──いや、正確にはもう1人いた。キリトの胸ポケットからモゾモゾと出てきたユイに、リーファが驚いた顔をする。
「あなたって、ご主人様がログアウトした状態でも動けるの……?」
「そりゃあそうですよ。私は私ですから!それと、ご主人様じゃなくて、パパです!」
そう言って得意げな顔をするユイ。
「……気になってたんだけど、どうしてキリト君のこと『パパ』って呼ぶの?その、彼がそう設定した、とか?」
「えっと、どう話したもんかな……」
ユイの出自は中々複雑で、一から説明しようと思うとSAO時代まで遡る必要がある。そして最終的にはこのALOサーバーはSAOのコピーという事も明かす必要があるだろう。リーファに要らぬ心配を植え付けない為にも、全てを打ち明けるのは止めた方が良さそうだ。
「……パパは、私を助けてくれたんです。その時言ってくれました、『俺の子供だ』って──だからパパです!」
「……まぁ、そういう事だ。決して
「そ、そう…──ねぇ、パパの事、好きなの?」
リーファの問いに、ユイは小さく首を傾げる。
「んー……リーファさん、ミツキさん、『好き』ってどういう事なんでしょう?」
「うぇッ?ど、どういう、って……」
「あー……まぁ巷じゃ2種類あるって言われてるな。LoveとLikeで、恋愛感情と友愛感情に分けられるんだとか」
「ですが、Loveという単語は『愛情』を表すものです。その分け方では、友愛という概念そのものに矛盾が生じてしまいます」
「む、難しい事言うなぁ……えっと、女性目線ではどうなんです、リーファさん?」
「わ、私もよく知らないわよ──んと……いつでも一緒にいたい、一緒にいるとドキドキワクワクする……とか、そんな感じ……?」
知らないと言いつつも律儀に答えたリーファ。その顔が急に赤くなり、熱を冷ますようにブンブンと頭を振る。
「どうしたリーファ?」
「──なっ、なんでもないッ!」
もしや、リアルに意中の相手でもいるのだろうか?そんな事を考えていた折、ユイが質問の矛先を俺にも向けてくる。
「ミツキさんはどうなんですか?」
「え、俺?」
「はい。ミツキさんとアリスさんはパパとママに引けを取らない程ラブラブでした!ミツキさんがアリスさんに抱いていた好きの感情は、どのようなものなんですか?」
「へ、へぇ?ミツキ君にもそんな相手いたんだぁ?」
チャンスとばかりに話題を逸らしたリーファに「ずるッ!」と思いながらも、興味津々の様子で回答を待つユイの手前、突っぱねる事も出来ない。
「……確かに、彼女の事は好きだよ──その、1人の女性として。彼女の近くにいると、こう……心が安らいで、笑ってる顔を見ると、こっちも自然と笑顔になる。その笑顔をずっと見ていたい──そんな気持ちになるんだ」
「……本当に好きなんだね、その人のこと」
「……ちょっとくさかったか」
「ううん、素敵だと思う──その人は、VRMMOやってないの?」
「……ああ。その、最近会えてなくてさ。でもいつかは、一緒にアルヴヘイムの空を飛べたらいいなって、最近そう思った」
「そっか……そのアリスさんも、ALOを気に入ってくれたら嬉しいな」
「きっと気に入るよ。リーファとは結構気が合うかもな。彼女、剣持たせたら凄いぞー?」
「そうなんだ!楽しみだなぁ」
「──何が楽しみって?」
ここでキリトも休憩を終えて帰還。夕飯は家族が作り置きしてくれていたとの事で、予想よりも早い帰りだった。
「いや、こっちの話だ──さて、そろそろ出発しよう。洞窟は長いんだろ?」
「そうね。最低でも今日中には洞窟を抜けておきたいわ──」
リーファが飛び立とうとした矢先、俺は後方──ここまで飛んできた方向に何かを感じ取る。キリトも同様らしく、同じ方向をジッと凝視していた。
「……どうかしたの?」
「今、誰かに見られてたような気が……」
「ユイ、近くにプレイヤーはいるか?」
「いいえ、反応はありません」
「……もしかしたら、トレーサーが付いてるのかも」
「そりゃ何だい?」
「追跡魔法よ。大抵、鳥とかトカゲみたいな小さい動物型の使い魔で、術者に対象の位置を教えてくれるの」
「発信機みたいなもんか……取り除けないのか?」
「トレーサーを見つけられれば魔法とか物理攻撃で壊せるけど……術者が高レベルな程、対象との間に距離を置いて追跡出来るから、このロケーションを考えると現実的じゃないわね」
今俺達がいるのは森林地帯。小動物が姿を隠す場所には事欠かない。プレイヤーには何ら無害な環境オブジェクトの虫や鳥もいる為、確かに見つけられそうにない。
「まぁ、普通に気のせいって事もあるし。今はとにかく先を急ごうぜ」
「うん。じゃあ、洞窟までとばすわよ。遅れないようにね──!」
宣言通りのハイスピードで数分飛行を続けた俺達は、やがて山の麓でポッカリと口を開ける洞窟へたどり着いた。ここが《アルン》へ向かう際の最難所──《ルグルー回廊》だ。
ルグルーという名は中にある鉱山都市に由来しているらしい、というリーファの解説を聞きながら洞窟を覗き込むが、外からでも分かる程暗い。何かしら光源が無ければ足元すら危ういレベルだ。
「──キリト君、暗視魔法使える?スプリガンは薄暗いダンジョンでも活動するから、それ用の魔法があると思うんだけど」
「えっと……あぁ、あった。詠唱は……ユイ、分かるか?」
ユイに呆れられながらスペルを教えてもらったキリトは、辿たどしくも詠唱する。すると俺達の体を白い光が包み込み、視界がクリアになった。
「へぇ、流石スプリガン。思ったより優秀じゃない」
「それ、なんか含み無いか……?」
「あたしも余り知らなかったのよ。ほら、スプリガンの魔法って地味なの多いし……」
「うわ、傷つく……」
「ま、これで有用性を示せたってことで。いつか1パーティに1スプリガンな時流が来るかもしれないぞ。スプリガン希望の星として頑張れ」
「一体何をどうしたらスプリガンがウンディーネ並に重宝されるのかすっごい気になるけど……まぁそれはそれとして、スプリガンのしょぼい魔法も使いようによっては生死を分けたりするかもしれないし、練習はしといた方がいいわよ」
「うーん……ゲームの中でまで英語の勉強みたいな事するのはなぁ……」
「文句言わないの。基礎スペルくらいは使えないと、この先プレイヤーと戦闘になったら厳しいよ。言っとくけど、高位魔法は20ワードくらい唱えるのもあるんだからね」
「にじゅッ──うへぇ……」
「──ミツキ君もよ?風魔法は役立つのも多いし、シルフの本領は近接と魔法のオールラウンダーなんだから」
「うぐ……お、俺はいっそピュアファイターでもいいかなぁ、なんて……」
「俺も物理前衛に就職希望です……」
「もう、こんな調子でウンディーネ選んでたらどうなってた事か…──とにかく、鉱山都市に着くまでにそれぞれ基本スペルを1つだけでも覚えること。いいわね?」
まるで学校の先生よろしくリーファから宿題を出された俺とキリトは、揃って「へぇ~い…」と気の抜けた返事を返しながらリファレンスマニュアルを開き、魔法の勉強を始める。
「えと……アール・デナ・…レイ──なんだっけ……」
「そんな噛み噛みじゃ魔法が失敗しちゃうわよ。詠唱を丸ごと暗記するんじゃなくて、スペルに使われてるワードの意味を理解していけば、自然と覚えられるから」
「簡単に言うけどなリーファ先生……スペルワードって何種類あるんだよ……頭痛くなってくる……」
「ホント、ウンディーネにしなくて良かったわね~?」
冗談めかして笑うリーファ。そんな時だ──
「──パパ、後方から接近してくる反応があります!」
「
「プレイヤーです。数は……12人!」
ユイの警告を受けて即座にスイッチを切り替えた俺とキリトは、半ば条件反射で武器に手を伸ばす。
「野良のパーティにしては多い……あたし達と同じ目的でもない限り、わざわざこんな所を通るとすれば、スイルベーンからアルンに向かう交易キャラバンだけど、そんな告知聞いてないし──何となく嫌な予感がする。隠れてやり過ごしましょ」
「隠れるって、どこに?」
得意げに笑みを浮かべたリーファは、俺とキリトを手近な壁の窪みに押しやると、流れるように呪文を詠唱する。すると足元から風が巻き起こり、俺達を薄い膜が覆い隠した。隠蔽魔法だ。
「喋る時は最低限のボリュームでね。大きな声を出すと解けちゃうから」
「了解……なる程。確かに便利だな、風魔法」
ジッと息を潜めて問題のプレイヤー集団が過ぎ去るのを待つ最中、リーファがフレンドメッセージを受信する。差出人はレコンから、内容は──
「えっと──『やっぱり思った通りだった!気をつけて、s』──エス?」
書きかけで送信されたのか、要領を得ない文章に首を傾げるリーファ。
「もうすぐ視界に入ります……!」
ユイの言葉に、俺達は揃って後方を凝視する。やがて足音が聞こえてきた。次いで、そこに混じるガシャガシャというような金属質の音。そして──
「……見えたか、ミツキ?」
「ああ。何だアレ……?」
「え?まだ何も……」
「プレイヤーじゃないけど……あそこ、コウモリっぽいのがいる。赤くて小さいヤツ」
「コウモリ……!?」
リーファは俺が指差す方をジッと見据える。やがて、その視界が赤く光る眼を持つコウモリを捉えた。
「ああ、くそっ──!」
毒づいたリーファは道に飛び出すと、コウモリに向かって両手を翳す。
「おい、どうした!?」
「あれは高位魔法のトレーシング・サーチャーよ!とっとと潰さないと、隠蔽魔法越しでも位置がバレる!」
彼女は長めのスペルを素早く詠唱し、エメラルド色の針をコウモリ目掛けて打ち出した。コウモリは的の小ささを利用して数発は躱してみせたが、すぐ無数の針に貫かれて爆散する。
「2人共走って──ッ!」
「も、もう一度隠れ直すのはダメなのか──!?」
「トレーサーを潰したのは向こうにもバレてる。この辺に来たら山程バラまくだろうから、誤魔化すのは無理!──それに、あのコウモリは火属性の使い魔なの!」
「火属性って事は……」
「サラマンダーの連中か……!」
正体が分かった一方、疑問も残る。
まず、いつトレーサーを付けられたのか。《スイルベーン》を出てからはユイが周辺をサーチしてくれていたので、魔法の射程圏内に入るより先に気づく筈。であれば必然的に、街中で既に目をつけられていた事になる訳だが……シルフの街の中にサラマンダーが潜伏しているとでもいうのか?リーファ曰く、一応火属性魔法を使えるシルフもいるにはいるが、追跡と隠蔽看破の2つを兼ね備えたあのトレーサーを扱える程火魔法のスキルを上げているシルフというのは聞いたことがないと言う。
何にせよ、鉱山都市はもうすぐそこだ。中立都市であるそこに入りさえしてしまえば、どんな種族も一律でPKが出来なくなる。
都市が浮かぶ巨大な湖の上──陸から街までを繋ぐ長い橋を駆けながら、チラと後ろを伺ってみる。ここまでの全力疾走が功を奏したのか、追っ手の姿は見えない。
「どうやら逃げ切れそうだな──!」
「まだ油断しちゃダメ!向こうに手練のメイジがいるなら──」
リーファの言葉を遮るように、突如後方から2条の光が飛んでくる。直撃コースではないと安心したのも束の間、前方に着弾した光は橋の表面から巨大な石の壁を形成し、街への入口を塞がれてしまった。
「ちぃ──ッ!」
舌打ちしたキリトが大剣を手に飛びかかるが、振り下ろされた刃は敢え無く弾かれてしまう。壁の表面には傷ひとつ付いていなかった。
「無駄よ。これは土属性の魔法──それも対物理特化のやつだわ。魔法攻撃以外じゃ破れない」
「俺の槍でもダメか?確か風属性って土の対抗だったろ」
「出来るかもだけど、何時間かかるか分かったもんじゃないわ。その間に追いつかれる」
下には強力な水棲モンスターがうようよいるとの事で、湖に飛び込んで迂回する案も却下。当然、リーファもこの壁を突破出来る程の大威力魔法は使えないとの事で、残された道は迎撃戦だけだ。
「──リーファ、君の剣の腕を信用してないわけじゃないけど、ここはサポートに徹してくれないか?」
「そうだな。こっちはただでさえ魔法素人を2人抱えてるわけだし、専門外の土魔法を使えるようなやり手が向こうにいるなら、こっちも後方支援が必要だ。面倒かけて悪いが、頼めるか?」
「……まぁ、仕方ないわね。分かったわ」
シルフ領を出てから剣での戦闘を行っていないリーファには申し訳ない気持ちもあるが、ありがたい事に了解してくれた。一歩後ろに下がったリーファに目配せした俺達は、得物を構えて前方から走り寄る敵の姿を見据える。
「大盾のタンクが3人……かなりの重武装だな。こんな所までご苦労なこった」
「何、攻撃力ならこっちだって負けちゃいないさ──!」
腰を捻るようにして大剣を構えたキリトが、先陣を切って突っ込んでいく。
「ぅお──らぁッ!!」
強烈な踏み込みと共に大剣が横薙ぎに叩きつけられる。対するサラマンダーの戦士達は、突き出した大盾をピッタリ横一列に重ねてその攻撃を受けた。衝撃が空気を震わせ、辺りの水面を揺らす。手加減無しのキリトの一撃をしっかりと踏ん張って耐えたタンク隊。そのHPは1割強減少している。やはりというべきか、ああもガチガチに固められてはキリトといえど一撃で突破は出来ないようだ。
それだけではない。タンクの後ろにいる3人のプレイヤーが呪文を詠唱し、緑色の光がタンクに降り注ぐ──すると、削れていたHPが瞬く間に全快してしまった。
「間違いない……連中のあの編成、キリト君対策だわ!」
得物の大剣を見れば分かる通り、キリトの攻撃力は尋常でない程高い。例え数的有利を取られていようと、生半可な敵なら一刀両断して突破出来るだろう。そこでサラマンダーの連中は、前衛に硬い壁隊を配置。彼らには防御に専念させ、後ろからヒーラーに回復させるという策を講じた。
だがそうと分かれば単純な話だ。キリトが前衛の気を引いている内に、あのヒーラー達さえ潰してしまえば──!
槍を構えた俺はキリトの後ろで地面を踏み蹴り、タンク隊を軽々と飛び越す。そして回復魔法を待機させたままのヒーラーに向け、落下の勢いを乗せた一撃をお見舞いしてやろうと──…その瞬間、複数の火球が俺に降り注いだ。俺を撃ち落とした後にも次々と飛来する火球はキリトにも降り掛かり、2人の妖精を爆炎の中に飲み込んでしまう。
「キリト君!ミツキ君ッ!」
「ぐ…ッ……!」
「クソっ……後ろの連中、全員メイジか……ッ!」
後ろにもう何人か控えているのは予め目に入っていた。てっきり、タンクとヒーラーでこちらを消耗させた後に来る本隊とばかり思っていたのだが……2年間魔法無しのアインクラッドにいた弊害か、読みが甘かったと言わざるを得ない。
アレは砲台だ。攻撃を防ぐ壁と、壁を維持する回復役。その更に後ろから遠距離攻撃魔法で俺達をすり潰すのが狙いだったのだ。俺もキリトもバリバリの物理特化、リーファを加えても専門の魔法職がいない事は織り込み済み。加えて太陽や月の光が届かない洞窟内では飛べない為、俺とリーファで橋の外から強襲する事も不可能。狭い一本道で逃げ場のないこの橋での戦いは、俺達に数だけではなく地形面でも不利を強いてくる。
「キリト……まだ、やれるな……ッ」
「とう、ぜん……ッ!」
武器を支えに立ち上がる俺達へ、後ろから癒しの光が差す。リーファの魔法でHPを回復させた俺達は、もう一度突撃を敢行した──今度は2人同時に。
「おおおおお──ッ!」
外側へ切り払う様に繰り出された剣と槍。短期決戦を心がける以上、先程よりも力強く、また単純にダメージ源が増えた事でタンク隊はHPを半分強まで減らすが、それも即座に回復。攻撃後の隙に火球の雨が降り注ぐ──
「がァッ──!」
「ぐゥ──ッ!」
全身を叩くような衝撃に吹き飛ばされ、地面を転がる。すかさずリーファが回復魔法をかけてくれるが、如何せんジリ貧だ。俺達2人を対象に回復魔法を唱え続けるのは、魔法専門ではないリーファにとっても決して楽ではない。いずれは彼女のMPが底を突き、一気に押し切られてしまうだろう。
だが俺達の頭の中に「諦め」の2文字は無い。敵の布陣をどう崩すか──何度も何度も得物を振るい、同じ数だけ吹き飛ばされながら、その事だけを考える。
「っ……もういいよ!やられたってまた何時間か飛べば済む事じゃない!もう諦め──」
「──嫌だッ!」
負けを悟ったリーファに、キリトが真っ先に否を投げつける。
「ごめんリーファ。俺もコイツも、心に決めてるんだ──もう仲間は絶対に見捨てない。少なくとも自分が生きてる限り、絶対にパーティメンバーを
震える足で立ち上がり、キリトの肩を引き上げる。その後ろで、リーファは一体何故?とでも言いたげな目をしていた。
「ぅ──おおおおおおおおァァァ──ッ!!!」
獣のような雄叫びを上げて突っ込んでいくキリト。俺はその後ろにピッタリと追従する。奴らからすれば、キリトを盾にして強引に突破する作戦に見えているのだろう、最後方で攻撃を担当するメイジの1人が嘲るような笑みを零す──
──そんな訳ないだろ。
犠牲?生贄?それは俺達が──あの世界で生きた者が最も忌み嫌う言葉だ。お前達とは生きてきた世界が違う、潜ってきた修羅場の数が違う。武器に込めるものも、PK行為に対する気持ちも、「死」という言葉の重みさえ、お前達とはまるで違う。
見せてやる。一度として死ねない世界でずっと戦い続けてきた者の──俺達の足掻きを、諦めの悪さってやつを──ッ!!
「ッ…オオオオオ……ッ!!」
鬼気迫る形相でタンクに肉薄したキリトは、大盾を手で掴んで引き剥がしにかかる。隙間が出来たかと思えば、そこへ大剣を捩じ込んで無理矢理にでもこじ開けようと力を込めた。
「な、何なんだコイツ……ッ!?」
キリトの気迫に圧されたプレイヤーがそう呟いた瞬間──
「ミツキィ──ッ!!」
キリトが小さく屈み、俺はその肩に乗り上げる。その様子を確認したメイジ隊は先程と同じように跳躍した俺を撃ち落とそうと素早く詠唱を始めるが…──甘い。
俺は跳躍するのではなく、足場となったキリトの肩をほぼ真後ろに蹴った──!
まるで弾丸の如き勢いで一直線に突っ込んだ先にいるのは、散々こちらを焼いて炙ってくれた火球のメイジ隊──その最前列に立っていた1人の胸を、突き出した槍が深々と貫いていた。
「こッ、コイツ……ッ!?」
「おい、詠唱を止めるなッ──!」
「うおおおおおおおおおァァァ──ッッッ!!!!」
先のキリトに負けず劣らず獰猛な叫びをあげながら、引き抜いた槍を再度振るう。
そこからは、それはもう一方的だった。
懐に潜り込まれたメイジ達が詠唱速度重視で魔法を放とうとするが、ALOの魔法は最低3~4つのワードをシステムに認識されるよう
それに加え、後方ではスプリガン得意の幻惑魔法を用いて自らを巨大な山羊頭の悪魔に変じたキリトが、あちらも散々手こずらせてくれたタンク隊を蹂躙していた。
「ッ……た、たいきゃ──!」
重装備のタンク3人を
「ひッ……く、くっそおおおおおお──ッ!!!」
メイジ隊のリーダーらしいローブの男はヤケクソ気味に詠唱を始めるが、最初の1スペルを口にした瞬間、俺の手が彼の口元を鷲掴みにする。その状態でも尚詠唱しようとモゴモゴ声を発するが、開いた口に突っ込まれた俺の手が猿轡となって有効な詠唱にはならない。
その間にも背後では
「ァが……
「──セアー・スリータ・フィム・グローン・ヴィンド……ッ!」
覚えたばかりの詠唱により風の攻撃魔法が発動。リーダーを取り押さえる左手から放たれた5つの真空刃は、そのまま口の中で炸裂。赤髪の頭を内側からズタズタに切り裂いた。
いよいよ最後の1人となったサラマンダーのメイジだが、その命に幕が下ろされようとしていた。巨大な悪魔の手で握り潰されんばかりに掴み上げられ、首を捩じ切らんと頭に手を──
「あ、ストップキリト君!そいつ生かしといて──!」
慌ててこちらへ駆け寄ってくるリーファの声に、
「──さぁ。いったい誰の差金なのか、洗い浚い吐いてもらいましょうか!」
「こ、殺すなら殺しやがれ!」
「この期に及んで……!」
拷問よろしく痛めつけるつもりか、長刀の切っ先を彼の足に向けたリーファだったが、そこへスッキリした顔のキリトが割って入る。
「いやぁ、暴れた暴れた──ナイスファイト、いい作戦だったよ。俺達どっちかだけだったら、あのまま負けてたかもなぁ」
「そうか?あの悪魔モードなら無双出来てたっぽいだろ」
「俺、そんな凄かったのか…──ウォッホン。それはそうと、物は相談なんだがね君ィ?」
サラマンダーの元にヒソヒソと顔を寄せたキリトは、開いたウィンドウを可視化して見せてやる。
「コレ、今の戦闘でお仲間からドロップした金とアイテムなんだけどォ……質問に答えてくれたら、全部君にあげちゃおうかなぁ~?なんて」
「ちょ、キリト君!?」
せっかくの戦利品を!と口を開くリーファを静止する。そんな俺もまた、気持ちが揺れつつも煮え切らない様子の彼に囁きかける。
「足りないってンなら俺のもやろう。ほぅら、あのリーダーさんの持ち物だ。さぞいいアイテム沢山持ってるんだろうなぁ~?」
尚も逡巡する彼だったが、周辺に漂っていた仲間達の残滓──リメインライトが全て消えた瞬間、「マジ?」と小声で確認してくる……
交渉成立。という事で、彼から得られた情報は余り多くない上に大きなものでもなかったが、少なくともサラマンダーがあんな大人数で俺達を襲撃した理由に関しては明らかとなった。
──曰く、先程俺が倒したメイジ隊隊長の《ジータクス》氏から今日の夕方に強制招集があり、その理由がまさに俺達の襲撃だったらしい。俺とキリトがALOにログインした初日──リーファと戦闘を行っていたランス使い──シルフ狩りの名人こと《カゲムネ》氏を負かしたという俺達の事を、この先の計画の邪魔になる存在として危険視していたようだが、その計画の内容等、詳細はサラマンダー上層部内で秘匿されており、彼のような下っ端は何も知らないとの事だ。
「──でも、相当デカい事狙ってるんだろうぜ。今日インした時、俺達のパーティなんか目じゃねぇ数の大部隊が北へ飛んでくのを見たよ」
「……確か、サラマンダーの領地ってアルヴヘイムの丁度真南だったよな?そこから北上するとなると──」
「──世界樹に行き着くわね。グランドクエストに挑むつもり?」
「まさか。流石に前ので懲りたっぽいよ。今は諸々の装備を整える為に資金集め中で、まだ目標の半分もいってないって話だ。とまぁ、俺が知ってるのはこんなトコ──さっきの話、本当だろうな?」
「勿論。取引で嘘はつかないさ」
約束通り、先のドロップを全て彼に譲渡した俺達は、壁が消えて通れるようになった鉱山都市《ルグルー》の門へ向かう。
「──ねぇ、さっきの悪魔ってキリト君……なんだよね?」
「ん?あぁ、多分」
「多分……?」
「いやさ、たま~にあるんだよ。戦闘中にブチギレて記憶トんだり……」
「何それ、怖……もしかして、ミツキ君も……?」
「一緒にしてもらっちゃ困る、俺はいつだって理性的だぞ。勿論さっきの戦闘も」
「……ジータクスさんにえっぐい方法でトドメ刺したの、見てたよ……?」
「アレはほら……折角覚えたんだし、使ってみよっかな~っていう……」
「こっちも怖……バーサーカーとサイコパスで大して変わらないじゃない!」
「失礼な!喜々としてプレイヤーを丸齧りする奴とは違うぞ!」
「武器がなかったんだから仕方ないだろ!そっちこそ、槍あるんだからわざわざ魔法で仕留める必要無かったじゃないか!」
街の入口でギャーギャーと喧嘩を始める俺達。それを収めようと、リーファは考えた末に──
「あー、えっと……そう!丸齧りといえば、その……味とか、したの?」
本人は「しまった間違えた…!」とでも言いたげな顔だが。幸か不幸か俺もその答えが気になった為、喧嘩は中断する。
「確か……ちょっと焦げかけの焼肉の風味と歯応えが……」
「ごめんやっぱいい。言わないで」
想像してしまったのか、キリトの言葉を遮るように手をブンブン振る。ふと悪戯っぽい笑みを浮かべたキリトは、そんなリーファの手を掴むと──
「──ガブッ」
冗談めいた擬音と共に、彼女の指先をぱくりと咥えた。
「ギャーーーーーーッ!!」
事件性のある悲鳴と共にリーファの腕が振り上げられる──彼女渾身の平手は、キリトの横面を見事に捉えてクリーンヒットした。
「まぁ……うん、普通にお前が悪い。──因みに、どんな味だった?」
頬に見事なもみじマークを刻みつけたキリトにこっそり感想を聞く俺の脳天へ、鞘ごと外されたリーファの長刀がガツン!と叩きつけられる。
そう言えばシルフは耳がいいんだった──遅まきながら、我が種族の特徴を思い出す俺なのであった。
メイジビルドのプレイヤーは呪文を唱えないと何も出来ない。
↓
詠唱失敗すると魔法がストップ。
↓
じゃあ詠唱させないか、ミスらせればいいじゃない。
後方に突っ込んで来られたら詠唱前にやられてしまうのがメイジの弱点なら、後にALOに君臨するバーサクヒーラーさんって実は理に適った支援職の完成形なのではと思ったり。
そして皆さん絶対気になったであろう「あそこ」…
そう、今回のサブタイについてなんですが…
バーサーカー⇔狂戦士みたいな、サイコパスをいい感じに言い換えた言葉が見つからなかったんですよ…かと言ってあんまり直接的過ぎるのもアレなので、結果マイルドな「変質者」に落ち着きました…w