本戦開始からじきに30分が経過する頃──俺はマップ東部に位置する田園エリアを移動していた。
最初のサテライト・スキャンでこのエリアに《死銃》候補の4人がいない事を確認した俺は、隣のエリアにいた《ペイルライダー》を追うつもりだったのだが……だだっ広い田畑が広がるこのエリアは射線を遮るものが少なく、油断すればどこからともなく銃弾が飛んでくるだろうことは想像に難くない。まばらに配置されてた納屋に身を隠しながら慎重に進まざるを得ず、想定より時間を食ってしまっている状態だ。
もうすぐ次のスキャンが始まる。この15分でどれだけのプレイヤーが脱落したか……
最寄りの納屋に駆け込んだ俺は周囲を警戒しながら手首の時計を確認。有事の際はすぐ脱出できるよう入口の近くに身を屈めて、運営から配布された《サテライト・スキャン端末》を取り出した。
スイッチを入れると、本戦の舞台である《ISLラグナロク》の全体マップがホログラム状に展開、続いて各プレイヤーの位置情報を示す多数のアイコンが表示される。
前回のスキャン時点で田園エリアにいたプレイヤーは俺を含め3人。その内他2人はエリアの境界線寄りの地点にいた為、地形不利を嫌って隣接エリアへ移動している可能性も考えられたが……北に広がる砂漠エリアとこことを隔てる川付近に1つ、そしてこことは地続きになっている南東の森林エリアを少し進んだ辺りにもう1つ、黒く色落ちしたアイコンがあった。どうやら移動を試みた先で脱落してしまったらしい。
「(近くに敵影も無し……後は──)」
第一目標だった《ペイルライダー》の位置だが……どうやら真南の山岳エリアへ向かって追撃戦を行っているらしく、スキャンの最中にあって2つの光点が移動していた。
そしてやがて彼らが行き着くであろう山岳エリアと森林を繋ぐ大きな橋の近くには──《シノン》の名前が。彼女が無事生存していたことに安堵したのも束の間、スキャン終了の時間を迎える。俺はドラグノフを抱え、一目散に駆け出した。
今このエリアにいるのは俺だけで、隣接エリアで俺を待ち伏せ出来る位置にもプレイヤーはいなかった。全速力で一直線に突っ切れば、ざっと3分前後で森林エリアに入れる。そこからはすっかり板に付いた《軽業》スキルを用いた忍者移動に移行し、《ペイルライダー》を目視出来る位置まで近づく。
ここからのプランを頭の中で確認した俺は、程なくして首尾よく森林エリアへ突入することに成功。手近な木に飛び乗って、枝から枝へと飛び移りながら橋を目指して森を横断していく。普通に駆け抜けていては音で誰かに気付かれる危険性もあるが、俺の敏捷ステータスと《軽業》スキル、そしてSAOで培ったスキルを動員すれば、移動時の音を極限まで抑えられる。後はたまたま通りがかった誰かに肉眼で見られる、というような不運に見舞われないことを祈るのみだ。
跳躍を続けること何度目か──鬱蒼と続いていた木々が途切れ、夕日の差す大河が見えてきた。対岸にはゴツゴツとした岩場が見受けられ、無事エリアの境界線に到着したようだ。
木から降り、茂みに身を潜めてエリア間を結ぶ橋を見据えると──丁度、橋の上で戦闘が行われている最中だった。向こう岸から何者かが銃を連射する中、それを読んで字の如く舞うように回避しながら橋を駆け抜けていくプレイヤー ──位置関係的に恐らく後者が《ペイルライダー》だろう。ポーチから携帯用双眼鏡を取り出し、状況を仔細に確認する。
ペイルライダーは見事な身のこなしであっと言う間に橋を渡りきり、迎撃態勢を取っていた相手プレイヤーの胸にゼロ距離でショットガンをぶっ放した。素人の俺とて「ショットガンの威力は凄まじい」という程度の事は理解している。それをゼロ距離で食らったとあればダメージもさる事ながら、システム的には強烈なノックバックないし怯み効果のようなものが付与されていると見るべきだろう。
ガクリと膝をつく相手にペイルライダーは弾を装填しながら近づき、今度は額に銃口を突きつける──無慈悲にもトリガーは引かれ、力強い発砲音と共に相手プレイヤーのアバターは大の字になって倒れた。
率直に言って強い──シノン曰くあれでBoB初参加というのだから大したものだ。あの身のこなしは一朝一夕で身に付くものではない。相当な期間訓練してきたのだろう。
ペイルライダーの戦闘を観察してみたが、今の所《死銃》に結びつくような行動は見られない。もしや彼はシロなのか──と双眼鏡の倍率を下げた瞬間、青白い迷彩柄のスーツに身を包んだペイルライダーの体が突如崩れ落ちた。
「(ッ……なんだ。撃たれた?どこから──?)」
ペイルライダーが倒れた方向から考えるに、恐らく俺のいる森林エリアの方から撃たれたのは間違いなく、対岸にいるシノンが撃ったものではない。直近のスキャンで確認した森林エリアのプレイヤーは、ペイルライダーと奴が追っていた名も知らぬプレイヤー、そこに後から入ってきた俺と、確かにもう1人居はした。しかしそいつは中央の廃都市寄りの位置にいたし、仮にわざわざここまで移動してペイルライダーを撃ったのだとしても、銃声で気づくはずだ。この静寂の中、火薬が炸裂する音を聞き逃すなどあるはずもない。では、一体どこの誰が……?
──答えはすぐに分かった。
橋を構成する柱の陰から揺らめくように現れた黒い影──ボロボロのマントに身を包んだプレイヤーが、持っていた狙撃銃を背中に背負い直した。ペイルライダーを撃ったのはアイツということか。
「ボロマント……ッ」
まさか『奴』なのかと思い、双眼鏡の倍率を最大にして覗き込む。マントのフードから覗く顔は悪趣味な道化の顔ではなく、赤い双眸を怪しげに光らせる金属質なドクロ型のマスクだった。不気味なのは同じだが、『奴』ではない。はだけたマントの下に隠れていた腕も、ひょろりとした細腕に包帯を巻いているという出で立ちだ。あのピエロマスクとは違う。
ボロマントのプレイヤーは空いた腕をマントの中に差し入れ、引き抜く──その手に握られていたのは、1丁のハンドガンだった。
てっきりあの狙撃銃の一撃でペイルライダーを仕留めたものと思っていたが、狙いがズレでもしたのだろうか?ボロマントの立ち姿は見えているが、この位置からでは倒れ込んだペイルライダーがどんな状態なのかまでは確認できない。
ボロマントは銃のハンマーを起こし、ペイルライダーに差し向ける。そのまま撃つかに思われたが、今度は左腕を持ち上げ、指先を額、胸、右肩、左肩と順番に移動させた──教会勤めの聖職者が行う、十字を切る仕草だ。
そして奴が両手で銃を構え──ドォン、というような、おおよそハンドガンには似つかわしくない轟音が鳴り響いた。
それもその筈、この音の主はあのボロマントの銃ではない。対岸にいるシノンのライフルだ。単に漁夫の利狙いか、或いはあのボロマントに何かを感じたのかは定かでないが、彼女の操る対物ライフルならばプレイヤーを一撃で葬り去れる──当たりさえすれば。
銃弾がコンクリートの地面を砕き、大穴を穿つ。粉塵でよく見えないが、俺の視覚が正常なのであれば──
「嘘だろ……避けたのか、あの距離で……!?」
シノンの銃声が聞こえる直前──銃口から噴き出す炎が瞬いた瞬間、あのボロマントは上体を大きく仰け反らせ、襲い来る銃弾を避けてみせたのだ。俺は昨日、アレと同じ銃弾を僅か10メートルという超至近距離で迎え撃とうとしたわけだが、シノンとボロマントの間には少なくとも100メートル以上の距離が開いている。いくら距離が10倍以上になったとはいえ、死角から襲い来る銃弾を避けられるとは思えない。
戦慄する俺の視界が再び奴を捉えた時には、もう攻撃準備が完了していた。
ボロマントのハンドガンから、パァン、と乾いた発砲音が響き、先の一射と比べてなんとも可愛らしい銃弾がペイルライダーに放たれる──それだけだ。続けて引き金を引くことも、その場から退避することもせず、奴はジッとペイルライダーを見下ろしていた。
突如──倒れていたペイルライダーの身体がバネのような勢いで跳ね起き、携えたショットガンの銃口が奴の頭に突きつけられる。先程と同じゼロ距離。きっとあの不気味なアバターの頭を吹き飛ばせる筈だと、誰もが思った。その予想は正しい。正しいが──それは、銃を撃つという大前提の下に成り立つものだった。
ペイルライダーの手から銃がこぼれ落ち、崩れ落ちた体までもが地面に転がる。撃たれたのではない、まるで凄まじい苦しみに耐えかねたかのような倒れ方だった。ただならぬ事態である事を感じた俺は、少しだけ身を乗り出してペイルライダーの状況を確認する。
横たわったペイルライダーは胸を押さえ、苦しみに喘ぐように右腕を持ち上げ──そして、消えた。通常、この戦いでHPがゼロになった者は、死体のアバターはそのままに赤い《
結果だけ見れば、回線の不具合等によって切断されてしまっただけのように見える。しかし状況的には全く違う──
そしてその死を呼び寄せたのは、恐らくあのボロマント──間違いない。奴が、奴こそが《死銃》なのだ。
ボロマントは現場を中継していたカメラに向かって銃口を突きつけた後、柱の陰へと消えていった。一先ず、《死銃》がこの大会に潜んでいることは確認できた。ならば次にやる事は1つ。奴を倒して犠牲者が増えるのを防ぐ事だ。
「(……そうだ。これ以上は、絶対に……!)」
本当ならあの時、怪しいと思った時点で動くべきだったのだ。そうすればペイルライダーは死なずに済んだかもしれない。しかしあのボロマントが《死銃》かどうかに関わらず、割って入ったことで逆に俺が脱落、キリト1人を残してしまうリスクを天秤にかけた結果……愚かしくも、俺は様子見という択をとってしまった。
みすみす後手に回ってしまった自分への叱責と、助けられなかったペイルライダーへの追悼の意を胸に、俺は腕の時計を一瞥する。次のスキャンまでもう秒読みだ。ここで《死銃》の正体を確定させる。
端末のスイッチを入れ、マップを展開。スキャン開始と同時に、多数の光点が次々と表示される──対岸の2つに触れると、《シノン》及び《キリト》という名前が表示された。どうやらキリトと一緒だったらしい。さしずめ、あの射撃はキリトの指示だったのだろう。
さぁ続いては《死銃》だ、と橋の近くにある光点へ手を伸ばした俺は、思わず声を漏らした。
「……どういう事だ」
奴は隠れた柱から一度も姿を現していない。移動できるとすれば川岸に降りて南下か北上するかの2択だが、橋の近くにはキリトとシノン、そしてペイルライダーに倒されたプレイヤーの暗い光点が存在するのみ。川沿いを上から下まで注視しても、プレイヤーの反応は見られなかった。
「(まさかあの一瞬で他の誰かに殺された……?もしくは、何かスキャンを回避する手段があるのか……?)」
もし後者なら厄介だ、と歯噛みする俺は端末を切り、軽く周囲を見回してから橋を渡ってキリト達との合流を図る。あちらも直近のプレイヤーということで俺の存在は把握しているはずなので、敵と勘違いして撃たれる心配は無いだろう。
橋の中程まで到達した辺りで、対岸の岸壁を身軽な動きで降りてくる人影が見える。風に揺れる長髪と、黒いコンバットスーツ、そして腰にぶら下げた光剣──キリトは、小さく手を挙げて俺を出迎えた。
「ミツキ。例の、ペイルライダーだけど……」
「ああ、見てたよ……奴が──あのボロマントが《死銃》って事で間違いないだろうな」
「他に犠牲者が出る前に早くあいつを止めないと。多分、この川沿いに北上していった筈だ」
「その先は都市部か……急ぐぞ」
キリトを伴い走り出そうとした瞬間、
「──待ちなさいよ!」
制止の声と共に、狙撃銃を抱えたシノンが岸壁から降りてきた。
「……私も行くわ」
「は……?」
「ミツキだって見てたでしょ。いくら予測線が見えてたとはいえ、死角からのヘカートの弾を避けられた……その上あの狙撃の腕だもの。あの《死銃》って奴、シンプルに強いよ。スタンバレットで動きを封じられれば、あなた達でも勝てない。それじゃ私との約束が果たせないでしょ」
「シノン、今はそんなこと言ってる場合じゃ……」
「だから──あまり気は進まないけど、ここは一時共闘してあいつをBoBから叩き出す。HP無視で強制切断なんて真似されちゃ大会も滅茶苦茶だしね」
シノンの考えは概ね俺と同じだった。しかし……
「ダメだ。キリトから聞いてないのか?あのペイルライダーは──」
「──現実世界でも死んでる……でしょ。……正直、まだ100%信じられた訳じゃない。でも全部作り話とも思えない。どっちにせよ、あんなのがいたら堪ったもんじゃないわ。危険だっていうのはわかるけど、アイツがどこに逃げたのかも分からない以上、私があなた達と一緒にいようがいまいが危険度は変わらないでしょ」
シノンの言い分にも一理ある。仮にここで別れたとて、《死銃》が彼女を狙わないとも限らない。であるなら、そうなった時すぐカバーに入れるよう、一緒に行動しておくのも手ではあるが……
「……ミツキ。気持ちは分かるけど、ここは協力してもらうのもアリなんじゃないか?彼女はGGOのベテランだし、俺達じゃ気づけない視点から物事を見れるだろ。俺も警戒はしとくからさ」
キリトからのひと押しを受け、俺は大きく息をつく。
「……分かった。ただし約束してくれ。俺達が逃げろと言ったらすぐ逃げろ。《死銃》を倒す事と同じくらい、犠牲者を増やさない事が重要だ」
「逃げろって……私を子供扱い──」
「──これは絶対だ!拒否するなら連れていけないし、今ここで君を倒したっていい」
シノンが超遠距離専門のスナイパーなのに対し、俺は近距離特化だ。この状況なら、彼女が銃を構える暇も与えずにウィークポイントの首を狙える。
互いに譲らない俺とシノンを見かねたのか、キリトが仲裁に入る。
「……シノン。くどいようだけど、もう一度言うぞ。あの男は危険だ。アイツは俺とミツキが昔いたVRMMOの中で、多くの人を殺した。HPがゼロになれば本当に死ぬと分かった上で、本当に……本当に多くの人を殺した、正真正銘の殺人者なんだ。そんな奴との戦いに君の力を借してもらう以上、俺達にも譲れない一線は生まれる。君の命を危険に晒すわけには行かないんだ。そこは分かって欲しい」
「……分かったわよ……なら、その犠牲者にならないよう
キリトの説得を受け、渋々ながらも引き下がったシノンだが、俺の返事がないことに眉を潜める。
「……ちょっと、聞いてるの?」
「──キリト。今、何て言った……?」
掠れた俺の声に、キリトは目を丸くする。
「えっ……?何て、って……ミツキだって分かってるだろ?……昨日
それを聞いた瞬間、体の芯を冷たいものが駆け抜けるのを感じた。
「……そう、か──そういう、事かよ……」
「ミツキ……?」
「……移動しながら話す。行くぞ」
思った以上に長いこと話し込んでしまった。先程のスキャンからまだ数分しか経ってないが、俺達3人を一網打尽にしようと他のプレイヤーが寄って来ている可能性もある。一先ず《死銃》は川沿いに北上したと仮定して、俺達は急ぎ移動を開始した。
「──それで、何なんだよ?」
「……2人だ」
「えっ……?」
「確認するぞ、キリト。昨日、お前が会ったっていう元ラフコフのメンバーは、
「……ああ。アイツは俺を知っていた。俺の名前も、剣技も──何より、手首にはあのマークがあったんだ。間違いない」
キリトの言葉を聞いて、確信が更に深まる。
「……昨日、俺が会ったのはアイツじゃない。ボロマントってのは同じだが、顔を気色悪いピエロマスクで隠してた。ラフコフのエンブレムも、手首じゃなく手の平だった。同じように、俺の名前と戦い方を知ってる風だったからな。こっちも確定と見ていいだろう」
「それって……じゃあ──!?」
「ああ──恐らくこの本戦の中に、元ラフコフのメンバーが2人いる。しかも片方は《死銃》ときた。最悪、あのピエロマスクも……」
「ちょっと待ってよ……あんなのがもう1人いるかもしれないって言うの……!?」
「実際の所は分からない。だが偶然にしちゃ出来過ぎてる。少なくとも通じてないって事はない筈だ」
俺とキリトの遭遇した相手がそれぞれ別人だった事実に気付いた事で、やる事が増えた。言葉にすればそれだけだが、事態は言葉以上に面倒だ。
まず最優先事項として《死銃》──あのボロマントを仕留める事。次いであのピエロマスクにも対処する必要がある。しかし後者に至っては情報が全く無い。極端な話、奴が宣言通り本戦に進めているのかさえ定かでない状態だ。既に別の誰かによって倒されていてくれれば楽な事この上ないのだが……
「──でも、そのピエロが《死銃》の仲間なら、やっぱり例の候補の誰かなんじゃないの?」
「だったらいいんだけどな……」
こればっかりは考えても埓があかない。残る候補3人──《銃士X》《Sterben》《ENDE》を片っ端から当たるしかないだろう。
「そうだ──シノン。質問いいか?」
「何──?」
走りながら、俺は背後のシノンへ確認したいことがあったのを思い出す。
「サテライト・スキャンを掻い潜る方法はあるのか?」
俺の質問の意図を汲んだらしいシノンは、聞いた以上の回答をくれた。
「結論から言えば、2つ。まず、北部の砂漠エリアにある洞窟。あそこに隠れていればスキャンされないけど、完全に袋小路だからグレネードを投げ込まれた瞬間アウト。もう1つが──そこの光剣使いがやったみたいに──水中に潜ること。《死銃》がさっきのスキャンを回避したのは、多分後者。普通に潜ったんじゃ装備重量でまともに動けないから、装備は全解除する必要があるわ。もし鉢合わせても、《
「──けど、だからといって軽視は出来ない。実際奴はあのハンドガンでペイルライダーを殺した訳だからな」
そこは俺もキリトに同意だった。武器と本人、プレイヤーを殺すという現象がどちらに起因するのか分からない以上、たかがハンドガン1丁と侮るのは危険だ。
他にも──そもそもどういう仕組みでゲーム内からプレイヤーを殺しているのか。あの銃が原因だとして、心臓さえ撃たれなければセーフなのか、或いはどこかに掠りでもすればアウトなのか──得体の知れない敵と戦うには情報が少な過ぎる。かと言って悠長に情報収集などしていられない。俺達の目標は《死銃》だが、敵は《死銃》だけではないのだから。
そうこうしている内に、凹凸の多かった山岳エリアの岩道が平坦に舗装されたアスファルトの道路になっていく──マップ中央に広がる廃都市エリアが近づいてきた証拠だ。
「取り敢えず、《死銃》が川沿いに北上した体でここまで来たわけだが……同じスナイパー的に考えて、奴はどう動くと思う?」
俺の問いに、シノンは少し考えてから答えた。
「そうね……いくら妙な力を持ってると言っても、ミツキの言う通り基本的に狙撃手なのは間違いないわ。だから、隠れる場所の少ないオープンスペースでの戦いは避ける筈よ」
「隠れる場所なら、都市部程お誂え向きな場所は無いな。多分次のスキャンで獲物を見繕うつもりだろう」
「あまりのんびりはしてられないな……もう少し急ごう!」
キリトを先頭に、俺達はギアをもう1段上げて街へと急ぐのだった。
フェアリィダンス編ではキリトをフォローする立場だったミツキですが、BoBが始まってからというものの、それが少しずつ逆転してますね。今回のように、キリトがどこか余裕のないミツキのフォローに回る事が増えてきた気がします。