全然嘘のつもりなかったけど幕間は別腹って事で2連投目よろしくぅ
春休みも終盤となった4月──暖かな陽気が降り注ぐ皇居は、多くの花見客で賑わっていた。
『うわぁ、キレー!どこ見ても桜だよ!』
「もう、ユウキってばはしゃぎ過ぎだよ」
『ホント、ユウキはまだまだお子ちゃまだねぇ。こういうのはもっと風情ってモンを楽しまなきゃ』
『ノリの言う風情って、どーせお酒でしょー?ボク飲めないもん』
『チッチッチ、アタシくらいになるとその場の気分だけでも酔えるのさ~』
『ノリさん、それ自慢げに言う事ですか……?』
『……捉え方次第では、飲んでなくてもその場にいるだけで悪酔いするタチの悪い酒飲み──あ、ちょ、止めてください!』
『わぁ、ノリストップストップ!そんなカメラ動かしたらボクらまで目ェ回る~!』
アスナの肩に乗った通信プローブから、多くの声が聞こえてくる。ユウキだけではなく、ノリやシウネー、タルケン達スリーピング・ナイツ全員がプローブに並列接続しているのだ。
そんなアスナの周囲には、キリトに直葉、リズとシリカにシノン、クライン、エギルといった馴染みの面々も揃っており、去年の冬にキリトと2人で皇居を訪れた際に交わした「ここでお花見できたらきっと楽しいね」という話をこうして実現する事が出来た。
「──ミツキ君も来れれば良かったねぇ」
「用事があるなら仕方ないさ。一応場所は教えてあるんだろ?」
「うん。来れそうだったらいつでも来てね、って」
「へへっ!アイツが来る前に俺らで全部食っちまおうぜ!」
「止めなさいよ、いい大人がみっともない!ってか、何でまだ乾杯もしてないのに飲んでんのよ!?」
「いいじゃねーかよぉ、折角の満開の桜、折角のアスナの手作りだぜぇ?」
「悪ィ、止められなかった……」
早くも酒が回り始めているのか、ほんのり顔を赤くしたクラインにリズとエギルが呆れたような息をつく。
「もう……ほらキリト、早いとこ乾杯しちゃいましょ。このままじゃクラインにお弁当を荒らされるわよ」
「そ、そいつは困る……!えっと、皆飲み物は行ったな?それじゃあ改めて、スリーピング・ナイツ全員の病状回復を祝して──乾杯!」
「「「カンパーイ!!!」」」
キリトの音頭で、皆思い思いの飲み物が入ったコップを掲げた。
先の言葉通り、今回の花見は単に春の行楽というだけではなく、スリーピング・ナイツの面々の回復祝いも兼ねている。
例えば、かなり難しい癌と診断を受けていたジュンは、新しく服用するようになった薬がかなり効果を発揮しているし、再発した白血病に苦しんでいたシウネーに至っては完全寛解という文句無しの勝利を収め、ギルド内で最初の完治者となった。
ユウキも順調に免疫機能が回復しているらしく、そう遠くない内に無菌室から出られるかもしれない、と嬉しそうにアスナへ報告していたのは記憶に新しい。
「──そういえばユウキ、メディキュボイドのテストはどうなるの?このまま行けば、あのマシンの機能に頼らなくても良くなるわけじゃない?」
『んぇ?あぁ、どうなるんだろ。ボク全然気にしてなかったや』
「テストデータ自体はもう十分過ぎる程集まってるから、これからは製品化に向けてメーカーと協議していくそうだ」
ユウキに代わって答えたキリトに、アスナはきょとんとする。
「……何でキリト君が知ってるの?」
「あぁ、そういえば言ってなかったっけか──倉橋先生とは、通信プローブの件で最近メールのやり取りをさせて貰ってるんだ。医療用フルダイブ機器に活かせないかって」
「なる程、そういう……」
『そっか。それじゃ多分アスナの言う通り、あの部屋から出られたらメディキュボイドともお別れだね』
「じゃあ新しくアミュスフィアが必要になるね。その時は私からプレゼントするよ」
『えぇっ!?それは嬉しいけど……大丈夫なの?結構お高いんでしょ?』
「任せて。伝手ならあるから」
アスナの父親はアミュスフィアの開発メーカーである《レクト》の元CEOだ。ALO事件を受けてその座を退いた今でも、現役時代に築いたコネクションは生きている。兄の浩一郎は今もレクトの幹部候補として懸命に働いているし、新品のアミュスフィア1つ程度は融通が利くだろう。
我ながら随分強かになったなぁ……とアスナがそんな事を考えていると、キリトが再び口を開く。
「先生が言ってたよ──あのマシンの被験者になったユウキの名前は、歴史に残る。初期設計の外部提供者と並んで、何か凄い賞を贈られても良いくらいだ──って」
『う~ん、光栄ではあるんだろうけど……アスナの料理と違って、賞は食べられないしなぁ……』
ユウキの言葉に2人揃って笑った後、アスナはふとある事に気付く。
「──ねぇキリト君。今、初期設計の外部提供者、って言った?メディキュボイドを設計したのって医療機器メーカーじゃないの?」
アスナの質問に、キリトの表情が真剣なものへと変わる。言葉を選ぶように少し考えてから、ゆっくりと質問に答えた。
曰く──試験機の作成自体はメーカーが担ったが、マシンのコアになる超高密度信号素子は外部からの無償提供だったそうだ。
「最初に聞いた時、俺も驚いたよ……その人の名前は、神代凛子。今は海外の大学で研究職に就いてるそうだけど──彼女は2年前、ダイブ中のヒースクリフの体の世話をしていた人だ。もっと言えば、かつて彼と同じ研究室でフルダイブ技術の研究をしていた。……俺とミツキは、去年の春にその人と会って話したこともある」
それを聞いたアスナの表情も強張り、背筋をゾクリとしたものが駆け抜ける。
「じゃあ……メディキュボイドの本当の設計者は、団長──
あ、そういえば凛子さんの件触れてないじゃん…と書き終わった後に気づいて、でも話の締め方としてはアレでいい感じに思えたから急いで幕間を書いたという裏事情は内緒です。
改めまして、良いお年を~