死刑囚坤音レキ   作:>∆<

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全然話が進んでないっす・・・申し訳ねぇ


決定の時間

 ──だが、この日の出来事によって、一つの"運命"が決定する。

 

 学園都市キヴォトス全体を揺るがしかねない、一つの爆弾の運命を。

 

 

 

 ────────

 

 

 

「──このシューズ良い。でも売ってるのは見たことない。もしかして特注?」

「お、分かってくれるか。オシャレは足元からだって言うだろ? 制服作るとき最初に拘ったんだよなぁ」

「いいセンスしてる。欲しい」

「ならミリツィアに入るか? あ、でもお前どっかの組織に入るって嫌なタイプだったりするんじゃないか?」

「確かに……でも欲しい。迷う。買えない?」

「売り物じゃないからなぁ」

 

 ──どうしてこうなった。

 

 それが先生の抱く正直な感想であった。

 

 現在何故かレキとリスがミリツィアのシューズについて割と仲良さそうに語っている。

 先生の傍には呆けた様子のピコもいる。それ以外の者たちは既に居なくなっている。

 

「……本当に買えない? 結構出そうと思えば出せる」

「売れはしないが、オレのでよかったら後で見てみるか? シューズショップなら椅子あるだろうしな」

「いいの?」

「あぁ、その代わりお前の欲しいって言ってるシューズとやらも見せてくれよ」

「それくらいならいい。汚さないなら」

「汚さねぇよ。お前にとっちゃこれからの宝物なんだろ?」

「お、わかってるじゃん」

 

 ──もう一度思ってしまう。どうしてこうなった。

 

 先ほどまでは両者……いや、ミリツィア側は警戒心マックスだったはずだ。

 当然だ。かつては敵同士。話では一方的に蹂躙されたと言っていた。加えてピコはレキという存在に対してトラウマを抱えているほどであった。

 

 それなのにも関わらず、その上司であるリスが死刑囚レキとああして仲良さそうにしている。隣のピコが困惑から帰ってきていないのも無理はないであろう。

 

 本当に、どうしてこうなったのか。

 先生は一度、さっきまでのことを振り返ってみることにした。

 

 

【第十一話:交流】

 

 

「坤音、レキ……ッ!!」

 

 ピコの発した言葉からミリツィアの一同がレキへ銃口を向けている。このまま撃たれてしまえば開戦は免れない。

 

 止めるべきか、と先生は声を掛けようとした時。

 

「……ん?」

 

 リーダーであるリスの目線が先生の方へ向けられた。その後、前に出ていたリスが腕を横に伸ばして後ろを静止する。

 

「──ストップ。全員武器を下げろ」

「ッ、ボス?!」

「『先生』がいる。巻き込んでしまう可能性もあるし、『先生』がいるってことは、何か事情がありそうだ」

 

 なんとなく察してくれたのだろう。ミリツィアの他の者らにそう伝達した。これを受けて、全員が先生の存在を認識。すぐにではなかったが武器が下げられていった。

 

「だが、警戒は継続。いつでも戦闘へ入れるようにしておけ。

 ……あとピコ、深呼吸をしろ。落ち着け」

「分か、ってる……っ!」

 

 だが、まだ完全に緩み切ったわけではない。強い緊張感が場を支配していた。

 

「"……何回もごめんねレキ。ちょっとだけ待っててね?"」

「……分かった。これ読んどく」

 

 雑誌の商品ページを見始めた。言い方は悪いが、しばらく放っておいてもよさそう。

 

「久しぶり……でもないか。こんなところで出会うとは思わなかったよ、先生」

「"……うん、私もだよ。リス、そして皆も"」

 

 望むならもっと和やかな場面での再会がよかったと互いが思っていることであろう。しかししてしまった。これは変えることが出来ない事実なのだ。

 

「何故坤音レキがここにいる? そして何故先生と一緒に居る? そんな情報は出回っていなかったはずだが。

 坤音レキが外にいるってのはキヴォトス全体にとって非常に大きい情報だ。こんな状況で何も情報がないだなんてありえない。そこに先生がいると来たもんだ。

 説明、してくれるよな?」

「"勿論。実は──"」

 

 ここにいる者は全員、元治安維持委員所属の子らばかり。故に坤音レキとの接触経験が多少はある。この場にいる坤音レキが本物と判断出来てもおかしくない。

 

 それに先生からしても、ここで説明を拒否する理由はない。そのため今日あったことを一から説明することにした。

 

「"──と、いう感じだね"」

 

 細かすぎる箇所は省きはしたが、粗方説明を終えた先生。

 これを受けて、リスを含むミリツィアの者らは──。

 

「……??」

「お、おぉ……なるほど、な?」

 

 まだ理解が追い付いていないというような感じであった。

 これもまぁ当然なのかもしれない。彼女らが出会ったのはあくまでキレている最中のレキ。戦闘モードの状態しか知らないのだ。そんなレキが、想定以上に幼い側面を持っていたことに驚きを隠せていないようだった。

 

「"ところで、リスたちミリツィアは何でここに?"」

「あ、あぁ。オレたちは依頼でな。この辺りでカツアゲの被害が多発していて、その犯人を捕まえるために来たんだが……」

「……後ろ姿が見えてね。というか、先生そいつら見てない?」

「"……えっと、もしかしてそこにいる子たちだったりする?"」

 

 先生がレキの後ろを指さす。未だ埋められ気絶している集団がいた。

 

「──うぉ?! いる!」

「……先生もしかして?」

「"うん、そういうことだね"」

 

 もう皆まで言うまい。状況を見れば大体把握できる。カツアゲの被害に遭って、それをレキが返り討ちにしたことくらい。

 

「"このままにはしておけないから、ヴァルキューレの子たちに連絡しようと思ってたんだ"」

「あー……なら先生。そいつら、こっちに預からせてもらえるか?」

「"え?"」 

「そのほうが色々と都合が良いんだ。あぁ、安心してくれ。悪いようにするつもりはない」

 

 リスからの提案。ミリツィアは怪しい組織ではないことは以前分かったため、先生としてもこれを断る理由は特にない。

 

「"うん、わかった"」

「すまん、ありがとな先生。……と、いうわけだ。そいつらを連れて行ってくれ。オレとピコはここに残る」

「……え? ボス?」

「すまん、ピコ。……あと、ここでの出来事は誰にも言うな。忘れろ。オレたちはパトロールの継続をしてるとでも伝えてくれ。いいな?」

「……そうだね、分かったよ」

「気を付けてね、二人とも」

「分かってるさ。命を大事にだ」

 

 そのままスポッと地面や壁から引き抜かれ、ミリツィアの子らによって連れて行かれる。場に残ったのは先生、リス、ピコ、レキのみとなった。

 

「"えっと、二人は何で……?"」

「先生の護衛……ってのは建前すぎるな。オレらも監視側に入れさせてくれ」

「ボス、何を勝手に……ッ!」

「それはすまない。でもなピコ。このまま帰ったとしてお前は大丈夫か? さっき話を聞いたとはいえトラウマは残ってるだろ。坤音レキがいつまで外にいるのか分からない状況で平常に過ごせるか?」

「っ……」

「それならまだ視界に入れ続けたほうがマシだろ。大丈夫だ。オレもいるし先生もいる。指一本触れさせないさ。なぁ先生?」

「"そう、だね……"」

 

 とりあえず同意をする先生。そこまでのトラウマなら帰らせても良かったとも思うが、リスの言っていることも分からなくもない。それにもしかしたら、あわよくばトラウマを克服して欲しいという意図も込められているのかもしれない。

 

「"……レキ次第かな、一応聞いてみるよ"」

 

 そう言って、レキの方へと歩み寄る先生。

 

「"ねぇ、レキ"」

「……ん? 何、やっと終わった?」

「"あぁうん、もうすぐ出発できると思うんだけど……"」

 

 先生の後ろにいる二人のほうへ手を向けた。

 

「"あの子たちも一緒でいいかな? レキにも聞いておこうと思って"」

「別にいい」

「"嫌ならアレだけど……って、え?"」

「どうでもいい。シューズが買えるなら」

 

 そうして、先生は雑誌を手渡される。

 

「さっさと案内して。シューズが買えればそれでいいから」

「"わ、わかった……"」

 

 先生は察する。先ほどで仲を深められたと思っていたのは勘違いであったと。

 

 あくまでレキは、先生もニツと同じように話をするだけだ。そこにニツのときにはあった友情はない。ただ言葉でのコミュニケーションをしてくれるようになっただけなのだ。

 

 以前と関心の度合いはあまり変化していないのだ。

 

「"……うん、いいみたい。よし、出発しようか"」

 

 だが、希望は潰えていない。話せるということは大きい。ノンバーバルのみよりも、その二つを組み合わせたコミュニケーションのほうが関係は互いのことを良く知れ、関係を深めやすいはずだから。

 それに、これだけじゃない。

 

「"……ねぇレキ、良かったら二人とも私やニツみたいに話をしてくれないかな?"」

「「ッ?!?」」

 

 リスやピコからの強烈な視線が先生に刺さる。しかし、それは敢えて無視。レキの返答を待った。

 

「……なんで?」

「"普段レキはあんまり話をしないっぽいよね。だったら、こういう経験があるんじゃないかな? 『言葉でだったらもっと早く伝わったかもしれないな』って経験"」

 

 ──むー……

 

 顎に手を置き、思考する構え。少し経って、レキは告げた。

 

「ない」

「"そうだよね、あるよ──え、あ、ない……?"」

 

 レキの思い出せる範囲ではなかったらしい。確かに大体すぐに意図を読み取ってくれる察しのいい人ばかりがレキの周りにいたから、そう思っても仕方ないかもしれない。

 

「"で、でもこれからそういうこともあるかもしれないよ? 

 ほら想像してみて? どんなことしても全っ然言いたいことが伝わってないときを"」

 

 ──むー……

 

 再び思考。今回はすぐにレキは告げた。

 

「うん、その時は殴り飛ばせばいい」

「"……すぐに暴力は駄目だよ。それにこれが言葉だったら、殴るとかいう時間もそのやりたいことに使えるんじゃないかな?"」

「……それは確かに」

 

 情報伝達は早い方がいい。それによるイライラも少ない方がいい。それに折角言葉でコミュニケーションをするという文化があるのだから、それを使わないのはもったいない。

 

「"そういったことを考えるなら、色んな人と言葉で話すってのを練習しておくのもいいんじゃないかなって思うんだ。レキにも悪い話じゃないと思うんだけど、どうかな?"」

 

 あくまで提案は練習。レキにはこの部分のみを提示する。

 

 無論これだけが理由ではない。レキに一般的な感性を身に着けてもらうためでもあったりする。

 

 先生はレキのことを幼いと感じてしまった理由として、人間関係の少なさが挙げられると考えた。そのため先生だけではなく、ここにいるリスやピコにも話相手になってもらうことによって、人との関わりを増やして一般的な感性の獲得、そして罪の意識をしてもらうところまでつなげることが出来ればとも考えている。

 

 当然、レキと仲良くなることで火の海事件についての証言も得られればとも考えている。だが一番はこれであった。

 罪を意識させ、罪悪感を抱かせ、償わせる。これがレキのためになるのだと先生は考えたのだ。

 

「……分かった。やってみる」

 

 レキは承諾した。だが、先生と同様に話をするだけ。積極的に行く素振りは見せない。話しかけられたら対応する、というスタンスなのだろう。

 

 会話の切れ目、それを狙ってピコが先生に小声で話しかけた。

 

「あのさセンセ?! 何いきなり巻き込んでるの?!」

「"ご、ごめん。……でもピコももしかしたらトラウマ克服できるかもしれないから"」

「余計なお世話! それに誰が頼まれたって話しかけなんてするもんか!」

 

 ご立腹のピコ。これには先生申し訳なさが勝った。指一本触れさせないという話であったのに普通に巻き込んでしまったからだ。

 

「ねぇ、ボスもそう思うでしょ?!」

「……いや、これは──」

「……え?」

 

 レキの隣に自然な形で並ぶリス。そうして、リスはレキに向かって話しかけ始めた。

 

「なぁ、今から行くのはどこの店なんだっけか?」

「本に書いてる」

「今手元になくてだなぁ。教えてくれないか?」

「……ハットリ」

「ハットリってあの『ハットリ』か? 有名ブランドの」

「そう」

 

 会話をしている。あの話をして欲しいとは言ったが、いきなりこうしてくれるとは先生も思っていなかったため、驚いていた。

 

 というか、リス側がフランク過ぎる。何故そういう風に話しかけられている……?

 

「実はな、今オレとピコが履いてるこのシューズ、これもハットリ製なんだよ。結構長く使ってるがかなり長持ちする。いいブランドだよな、本当に」

「ふぅん」

 

 ──ちらっ

 

 ほんの一瞬だけ、レキの目線がリスの足元に向けられた。

 

 ──ぴくん

 

 ここで、レキが強い反応を見せた。

 

 そして、冒頭の会話に至る──。

 

 

 ────

 ──

 ─

 

 

「は……え、ボス……? なんで……?」

 

 ピコは未だ目の前の光景が信じられないのか、動くことすら忘れて二人の後ろ姿を見ている。

 

「"……ピコ? ねぇ大丈夫? ピコ?!"」

「っ……セン、セ?」

 

 先生はそんなピコを放ってはおけず傍により、身体を揺すったりして正気に戻るように働きかけている。これのおかげか、なんとかピコは戻って来られたようで、先生のほうに目線を向ける。

 

「"大丈夫……? 私から言っておいてあれだけど、しんどいなら無理しないほうが……"」

「……いや、大丈夫。ボス一人には出来ないしねー。ありがとセンセ、ちょっとだけ元気になれたかも」

 

 ピコに構っていたせいか、二人とは距離が出来てしまっていた。

 

「おぉい、何してんだよ二人とも。早く来いよー」

「もーボスったら、誰のせいだと思って……」

「"と、とりあえず行こうか。一応、私は案内役ってことになってるしね"」

 

 小走りで二人の方へ合流する。

 そのまま目的地まで向かっていく。先生が先を行き、その少し後ろに話しかけ続けるリスと答えるレキ、そのまた後ろに二人を困惑の表情で見つめ続けるピコ。先生は会話にこそ参加するものの、ピコは無言のままである。

 

 特にこれ以降は何の問題もなく、進んで行くのだった。

 

 

「……あら? あの姿はもしかして……」

 

 そんな集団を見つけたあるヒヨコのような生徒が、こっそりと後ろからついてきていたのを除いて──。

 

 

 

【次回→第十二話:青春】




次回でやっと脱獄編が終われそう
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