死刑囚坤音レキ 作:>∆<
「"ヘルメット団……?"」
「いわゆる不良の連中だ。地味に厄介でもある」
突如店に突入してきた『くつくつヘルメット団』を名乗るヘルメット団を被った生徒たち。店の外にも数人いるような気配も感じる。
「さぁ店主さんよぉ、今日発売のシューズを渡してもらおうか?」
「ご、ご購入でしたら順番に」
「はっ、誰が買うって言ったよお? こっちはよこせって言ってんだがぁ??」
空気は完全に相手が支配している。店内の客のことなど見向きもせず、店主に詰め寄り続けている。
──……ごごご
「れ、レキさん……?」
そんな中、レキは静かにキレかけていた。
理由は単純明快。目の前の集団がシューズに対してのリスペクトを一切感じさせない行為を行っているためである。
店に置かれたシューズの棚を複数倒し、管理者である店主に恫喝、さらに対価を支払おうとせずにシューズを奪おうとするその心構え。全てに対して怒りを感じているのだ。
無論、折角のシューズ布教時間を邪魔されたこともこの怒りに含まれている。ニツと二人で選んだシューズを興味を持ってきていた先生に見てもらえる時間であったのだから。
今にもくつくつヘルメット団に殴り掛かりそうな勢い。静かにその拳が形成されてきていたその時。
「──まぁ待てよ」
リスが小さめの声でレキを制した。止められたことに反応してか、キレかけの表情のままリスへ顔を向ける。邪魔をするなら一緒に殴ると言わんばかりに。
だが、なんでもないようにリスは続けた。
「こういう荒事は、オレたちの仕事なんだ。それに、アピールのチャンスでもあるしな」
「"アピール……?"」
「先生に戦闘面でもある程度やれるってのを見せつけられるってわけだ。
──ピコ」
「分かってる。いつでもいけるよ」
ピコの名を呼んだ瞬間からリスの纏う雰囲気が変わる。ピコも同様。
顔つきはまさに、長いこと戦ってきた者のそれでしかない。
「店の被害を抑えることを最優先にするぞ」
「ならまずはあいつらごと外に出さないとね」
「そうしよう。──じゃ、作戦開始」
二人が動き出す。
瞬間、ヘルメット団の者らは二人による殴りと蹴りで店の外へ。
突然のことながら何が起こったか把握できず、そのまま次々と投げ出されていくヘルメット団たち。
全員を追い出したのと同時に二人も外へ。多少店は荒れはしたものの、重火器未使用のため被害度合いで言うとそこまでではないだろう。
「"──っ、行かなきゃ"」
今の素早い動きや、話で聞いていた経歴から二人は強いことは十分に理解している先生。しかしだからといって彼女らも大切な生徒だ。まかせっきりにしておくわけにもいかない。
それにヘルメット団も生徒であるならば、先生として対処もしていきたい。外に出ない選択肢はなかった。
故に、駆ける。自分のことは後回しにする、いつもの先生であった。
【第十四話:帰還】
「な、なんだお前らぁ!」
殴られ蹴られ、外に放り出されたヘルメット団の一人がリスとピコに向かって叫ぶ。
「んなことどうだっていいだろ。くつくつヘルメット団とやら」
「人に迷惑をかけちゃダメって教えられなかったの?」
「う、うるさい! たった二人、叩きのめしてやる!!」
人数がさらに集まってきており、全員が銃を装備。まさに戦闘開始の前触れ。
「はぁ。説得はムリそうだな」
「分かってたでしょ。やるっきゃないよ」
「だな。んじゃ、後方は任せた」
「今日はそっちなんだ。オッケー」
武器をそれぞれ持つ。リスは自動小銃、ピコはバズーカ。接近戦と遠距離戦に合わせた武器を装備している。
相手へ駆けるリス。バックステップと同時に照準を定め始めるピコ。
リスがスルーした相手をピコが、逆にピコを狙ってる相手をリスが撃って次々とヘルメット団らをなぎ倒している。
まさに磨き上げられたコンビネーションといったところだろうか。
「く、くそぉ、応援を呼べ! もっと人数を増やせばなんとかな──ファギュゥ!」
ここでまた一人が叫ぶ。様子から察して、まだまだ人数は増えてしまいそう。
「……だとさ、ピコ」
「増えちゃうのか。それはちょっと面倒かもねー」
「二人のままだと、な。さて……」
ここで二人は元いた店の──先生の方を向く。
「アピールすると言った手前、申し訳ないが先生……お力添えしていただけるか?」
「"勿論"」
先生の戦闘指揮能力は抜群である。これはキヴォトスで情報を握っている生徒であるならば常識になりつつあるものであった。
無論二人もこのことは知っていた。しかし、実際どの程度なのかは分からない。今回のことで体験してみたいという意図も兼ねてこれを提案したのだ。
「──面白そうなことしてるじゃあない。仲間に入れてちょうだいな」
「げ、正気にもどっちまったか」
「あら、不満?」
「不満」
「んんぅー、辛辣ぅ」
ここでマコの復活。何故か縄は解かれており、いつものようにくねくねしてる。
左手にはソードオフショットガン。積極的に相手に接近していきそうなマコにはちょうどいい武器なのかもしれない。
「わ、私も戦います!」
「ニツ」
さらにニツからも戦う宣言。見た目的にも性格的にもニツは前線向けではないはずなのだが……。
「ストーカーさんは分かりませんが、確かピーちゃんさんたちは多くの武器を使うんでしたよね? 多少でしたらチューンアップできると思うので、お役に立てるかと!」
「そだね。治安維持委員会時代は武器の整備とかお願いしてたもんね。頼んでもいい?」
「はい、お任せください!」
「……え、待って? ストーカーさんってアタシのこと?? 悪意は感じられない……でもこれもこれで……っ!」
サポートという意味での参戦らしい。もの弄りが得意なのであれば確かに適しているとも言えそうだ。
「"うん、二人ともお願いね"」
「──はっ。え、えぇ。任せてちょうだい」
「頑張ります! レキさん、見ててくださいね!」
「うん、見ておく」
レキはもう完全に任せる気でいた。
おそらくぶっ飛ばしてほしい相手は二人によってぶっ飛ばされて気が少し晴れたという感じであろうか。
ニツが参戦すると言い出さなければ、店に戻って再びシューズ議論をする想定だったのかもしれない。しかし見てくださいとも言われてしまった。そのためかニツにのみ目を向けて始めた。
ある意味レキの弱点はニツと言ってしまえそうだ。
「"……っと、来たね"」
向こうから大群が押し寄せてきている。姿からして、ヘルメット団の者たちであろう。
「"相手も生徒だから気は進まないけど……落ち着かせなきゃ話も出来ないからね"」
シッテムの箱を取り出す先生。そして起動。協力してくれる目の前の生徒らの情報に目を通し、"接続"する。
これによりリス、ピコ、マコ、ニツの四人は先生の指揮下に入った。
「"いくよ、皆"」
第二回戦の開幕の瞬間であった。
──────
「"マコは前線、リスはミドル、ピコは後方でお願い"」
それぞれのポジションに一人ずつの構成。マコは前線で暴れてくれるだろうとの推測から、ミリツィアの二人はマコの見逃してる相手を的確にやってくれるであろうという狙いからのものであった。
「"それと、多分二人ともバズーカを持ってるよね? それをニツに預けてくれない?"」
「バズーカを?」
「まぁ、分かった。というか先生、よく持ってること分かったな」
「"さっきピーちゃんが『今日はそっち』って言ってたからね。訓練もしてるって聞いてたから、もしかしたらミリツィアはどの距離でも戦えるようにしてるんじゃないかなって"」
「ご明察。流石だな」
事実、ミリツィアでは訓練志願者にはどの距離でも対応できるように訓練をしている。故に持ち武器も多い。全員が同じ武器を同じ量だけ抱えているのだ。
「"あまり近隣の方々にご迷惑をかけたくないからね。短い時間で済ませるよ"」
もう間もなく襲来する。人数は軽く見積もって先ほどの五倍はいる。
「"ニツは二つのバズーカの整備をお願い。どれくらいかかりそう?"」
「これでしたら三分でいけそうですね」
「"なるほど。ちなみにドローンとかの輸送手段を持っていたりする?"」
「あ、いいえ。今は持ってきてないです……」
「"オッケー。じゃ、始めよう!"」
作戦開始。マコがうっきうきで前線に走り出し、タンクの役割を果たし始める。
「さあさあさあ! どんどんちょうだぁい!!」
「うげぇ! なんだこいつ!」
気持ち悪がられている影響で、その攻撃の殆どがマコへ。食らえば食らうほど気持ちよさそうにしているマコをさらに気持ち悪がり、攻撃が集中。ある意味悪循環だ。
「……あいつタンクとしても優秀なのかよ」
言葉を零しながら、的確に漏れ出てきた相手を撃つ。
「それにしても……やりやすいね」
それはピコも同様。しかし、感じるのはいつもよりも戦闘がしやすいという点。
時折やってくる先生からの指示通りに動けば上手い具合に相手を倒せてしまう。
マコの動きも計算に入れているとしか思えない指示。これが先生かということをひしひしと感じていた。
「"マコ。この先に広場があるからそこに向かうように相手を誘導。
リスはマコと反対からその広場に銃を使って誘導かけて。
ピーちゃんはこれから示すポイントで待機"」
冷静に場を見極めて指示を出す。既に先生の中では戦闘終了までの道筋が見えているかのようだった。
「"ニツ。これを今からピーちゃんのところに運ぼうと思うんだけど、いけそう?"」
「バズーカを持ってですよね……? ちょっと厳しいかもです」
「なら私が持つ」
「"……え、いいの?"」
まさかのレキからの提案。最悪自分で持って運ぼうと考えていただけに驚く。
「別にいい。ニツの整備も終わってちょっとだけ暇だったし」
「"ありがとう。じゃ、行こう"」
ひょいっと二丁のバズーカを抱えたレキ。あまりにも軽々しく持ち上げてたためさらに少し驚く二人。
「……? 行かないの」
「"! そ、そうだね。行かないとね"」
小走りで向かう三人。先生が指定したポイントはそこまで遠い位置ではないため、すぐに到着。
「──あ、センセ……っ」
そのポイントにて控えていたピコ。やってきた先生らの傍にいたレキを見つけた瞬間、少し怯む。
「"ごめん、少しだけだから……レキ"」
「はい、これ」
「あ……アリガト」
少しぎこちなさげに二丁のバズーカを受け取る。まだ戦闘中であるためかぎりぎりで踏ん張っているようだ。
改めてこのポイントを確認。目の前には広場がある。徐々にマコやリスによってヘルメット団の集団が集まってきていた。
「……なるほどね? ここで一網打尽ってわけだ」
「"そういうこと。でもまだ待ってね"」
タイミングを測る先生。その場をじっと見て、その時を待っている。
「"狙う先は二か所。二丁バズーカはいける?"」
「勿論」
「"なら大丈夫か。それぞれあそことあそこを目印にして撃ってね"」
指さす先を把握するピコ。しかし、まだ引き金を引かない。
さらに集団が集まってくる。
「"──今"」
「っ!」
放たれる二つの弾頭。
着弾と同時に爆発が起き、そこにいた者が悉く気絶していく。
──こちらの生徒らを除いて。
「……ふぅ、あらかじめ避けといてよかった。
というかあのバズーカ、威力上がってるな。流石ニツ」
「い、いいわぁこれこれ!! あの子が改良した結果の弾頭かしらぁ。もう最ッ高! レキ様に届かないにせよかなり良い所まで行ってる素晴らしい威力!」
先生らを発見し着弾の瞬間距離を取り身を隠したリスと、そんなの知ったこっちゃないと言わんばかりに自ら食らいにいったマコ。無事……ではあるようだ。
ヘルメット団の生徒らは倒れている。決着はついた。
「作戦終了だな。凄く戦いやすかった、ありがとう先生」
「うん、本当にそうだった。噂は本当だったね」
「"皆のおかげだよ"」
これにて戦闘は閉幕。さて、元の店に戻り買物を再開しようかとしたその時──。
「……くっそ、こんなことで終われるかよっ」
気絶したはずのヘルメット団の一人が、先生に向かって銃を構える。意識が朦朧としているのか、ターゲットがヘイローを持っていないことに気が付いてない様子。
「せめて、一人だけでも……ッ!」
ズガンッ、と弾が放たれる。
気配にすぐ気が付いたのはミリツィアの二人。急いで先生の盾になろうとするが、無慈悲にも弾はそれよりも速く先生へ向かっていく。
「ッ、しゃがめ!」
とっさに先生に指示もするが、それでも弾の方が速い。このままだと被弾してしまう。
着弾まで僅か──その時。
──ガシッ
弾を、キャッチした。
一同ポカン。そんな芸当が出来る存在はこの中では一人しかいない。
──ブォン!
「フギャッ!」
お返しと言わんばかりにキャッチした弾を投げ返す。
握っているものはかなり小さいはずなのにコントロールは完璧。クリーンヒット。ストライク。ゲームセット。何故だ、何故当たる。
「さ、戻ろう。まだシューズ見てもらってない」
「"そ、そうだね……"」
本当ならヘルメット団に対して何故こんなことをしたのか、このようなことはしてはいけないと諭すところまでやるつもりであった先生だったが、レキの圧に屈した。
せめてヴァルキューレを呼ぶくらいならとリスやピコに目線を送る。察してくれたようで連絡を開始していた。
「あ、そういえばまだミリツィアのシューズ見せてもらってない。戻ったら見せて」
「ん? あ、あぁ分かった。そうだったな、じゃあ代わりに買うシューズと先生に見せるシューズを見せてくれよ」
「それくらいなら全然」
レキとリスの会話。会話だけならば比較的仲良くなったと思えるよう。
「ふぅ、危なかったですね。あ、ピーちゃんさん! 最後のバズーカ二丁同時発射、カッコよかったです!」
「お? おぉ、ありがと。ニツもさ、整備上手くなった? 撃ちやすくなったし威力も上がってたよね」
「出来ることはこれだけなので……」
「んー、前から言ってるけどさもっと自信持ちなよ。これってすごいことなんだから」
「あ、そうですかね……? えへへ」
片やニツとピコの会話。一番面倒を見てたというのは本当のようで、ニツのほうも懐いている。どこかピコも微笑ましいものを見るかのような表情だ。
「今日は来てよかったわぁ。ここまでいい痛みを味わえるだなんて! ここ最近で一番ねぇ!」
先ほどの痛みを思い出しているのかくねくねし続けるマコ。その話題にはきっと誰もついていけない。
「"さてじゃあ、戻ろうか"」
先生の言葉で一同が店に向かって歩み始める。
もう少しだけ、買い物──もとい、青春の時間は続くようだ。
──────
この世界のものに基本的に無限というものは存在しない。それは例え、楽しい時間であったとしても。
時刻が夕方を迎えた現在、先生とレキは二人だけでレキの元いた連邦矯正局の方へと向かっていた。道中でミリツィアの二人、マコ、ニツとはお別れしている。勿論、今日のことは誰にも話さないようにと念を押した上で。
何せ本来レキのことは広めてはいけないのだから。先生もあくまで誰にも情報を開示しないという前提でレキの確保の依頼が出されていたのだから。レキを送り返す際には、先生しかそこにいてはいけないのだから。
これから元の牢獄へ帰ろうとしているのだが、レキはそのことについては何とも思っていない様子。むしろ今日手に入れることが出来たシューズなどでるんるん気分にも見える。無表情のままなのだが。
「"レキ、今日はありがとう。とてもいいシューズを選んでもらって"」
「大丈夫。気に入ってくれたなら選んだ甲斐があった」
「"うん、今度から履かせてもらうね?"」
「それがいい。たまに見せにきてくれる?」
「"もちろんだよ"」
今回のことで、レキは大分変わった。多少ではあるものの、先生と話をしてくれるようになったのだから。
それにシューズという話題により一気に距離が短くなった。まだまだニツほどではないにせよ、大きい一歩であろう。
そう、距離が近くなれたのだ。他人ではなく、会ったら話をする知人には最低でも上り詰められたことになる。
であるならばとして、先生は意を決してレキに向かって尋ねる。
「"ねぇレキ。いくつか聞きたいことがあるんだけど、大丈夫?"」
「聞きたい事?」
先生の方を向き、聞き返すレキ。深くそれに頷く。
「"うん、そうなんだ"」
あまり聞くべきではない質問なのかもしれない。だが、この質問の返答が大きい鍵となる可能性を秘めている以上、聞かない選択肢は大分選びづらいものとなっていた。
「"まずなんだけど……『火の海事件』のとき、レキ視点では何があったの?"」
すなわちそれは、直接的に動機を尋ねるものであった。
レキ視点で何があったか、つまりきっかけ。何かが起こったからこそ、火の海事件が引き起こされたと先生は見ているのだ。
それはこれまでの証言などからの推測情報でしかない。だが、大きい情報であることに違いはない。何せ、現状犯人本人からの証言であるのだから。
「『火の海事件』……?」
当の本人にはあまりこの事件名はピンときていない様子。この事件名が世間で言われる頃には行方不明であったり捕まっていたりしていたため、仕方がないことと言えばそうなのかもしれない。
「"あ、えっとね……レキが今の場所に入るきっかけとなった事件って言えばわかるかな?"」
「あぁ、あれね」
死刑になったというと少しデリカシーに欠けると判断したためか比較的マイルドに伝える。幸運にもそれで伝わった。
「あの日──」
そして次の瞬間、衝撃発言がレキの口から放たれた。
「──確かゾロフ? って名前の会社の方から飛んできた何かで、ルキが殺された。目の前で」
「"……え?"」
【次回→第十五話:監査】
なんちゃって戦闘描写ですまない。
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