死刑囚坤音レキ   作:>∆<

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僅差でしたが出来次第投稿のほうが多かったので、そのようにさせていただきます。


お風呂の時間

 ふと、彼女は自身を振り返る時間を設けた。ここ最近の生活の流れを。

 

 起床、食事、趣味、昼食、趣味、たまに昼寝、夕食、趣味、そして就寝。気分が乗ったときだけ趣味の時間にダンスや遊戯が加わる。

 

 なんて隙のない最高の日々。食事や睡眠など生きるために必要な事柄を除き、趣味だけの生活だ。趣味のために生きていると言っていい彼女にとってはこれ以上ない流れといえよう。

 

 だが、この生活の流れには生活にほぼ必須と言っていい事柄が一つ存在していない。

 

 ──すんすんすん

 

 それは、お風呂である。確かにお風呂は最悪入らなくても生きてはいける。しかし、彼女も一応女の子なのだ。汚くあり続けるのは嫌と思うことは非常に自然なことなのだ。

 

 ──がちゃり

 

 ケースオープン。取り出すのはタオル。以前取り出した汗拭きタオルよりも大きいバスタオルだ。

 

 バスタオルとケースを持って立ち上がり、シールドの方へと歩きノックする。

 

 ──こんこんこん

 

「ど、どうしましたか? 4番」

 

 ここ最近で彼女の看守になっていることが多い看守だ。あの看守はまだ療養中みたいだ。

 

 ──スッ

 

 バスタオルを掲げて見せる。それだけで看守は意図を察することが出来た。

 

「お風呂……ですか? えっと、ちょっと待ってくださいね」

 

 入れないわけではないらしい。しかしちょっと準備がいるようだ。彼女はキレることなくこれをその場で待つ。

 

「……はい、準備出来ました。ですがその前に」

 

 ──スッ

 

「は、はい。ありがとうございます」

 

 両手を差し出す彼女。そこに掛けられる手錠。おそらく規則なのだろうが、素直に従っている。手錠などいつでも外せるからいいやということなのか、はたまた別の意図もあるのかもしれない。

 

 がらがらと開けられるシールド。そして先導するように看守が手で合図をする。

 

「で、では案内しますね」

 

 先を行く看守に着いて行く彼女。逆らう様子は微塵も感じられない。ただ看守のほうはびくびくしているようだが。

 

 地下の道をひたすら歩いていく。こつんこつんと音が響く。

 向かっている風呂は牢獄と同様に彼女専用。もっと言えば死刑囚専用のもの。

 

 風呂としての設備は最低限。湯舟ではなくシャワーで、安物のシャンプーとボディソープがあるだけ。また、質はそこまで高くないが洗濯機も併設してある。

 

 しかし、汗は流せる。洗濯も出来る。彼女にとっては最低限のラインを超えなければ問題ないのだ。

 

「と、到着しました。私はここで待っていますので、行ってきて大丈夫です。着替えは準備してあります。

 また、以前と同様に洗濯物は洗濯機に放り込んでおいてください。乾燥した後お届けしますので」

 

 看守の言葉に従って、一人で風呂場へと入っていく。

 その様子を看守はただ見ていた。一応、脱走の可能性がないわけではないからだ。

 

 しかし彼女は洗濯機に洗濯したいであろう衣服やタオルなどを入れ全裸になり、普通に風呂へと入っていく。しゃーというシャワー独特の音が聞こえ始めた。

 

 これまでの行動、言ってしまえば死刑囚らしく……いや、凶悪犯らしくない。突発的な怒りによる犯行はありはするものの、それは一部の看守による彼女へのいじめみたいな何かによって起こるもの。今の看守のような大人しい普通の看守の前では凶行は一切見られない。やろうと思えば、ここの制圧など容易いはずなのに。

 

 また食事、風呂、睡眠、どれも最低限のもの以上は求めてこない。加えて先ほどのように、手錠を掛けられることも自分から差し出していた。

 

 それらの行動が、この看守に違和感を持たせていた。

 

「うーん……」

 

 依然としてシャワーの音は続いている。実に3日ぶりくらいのシャワーだ。汗を流す喜びを味わっているのだろう。別に制限しているわけではないが、彼女はこのペースで入るのを繰り返している。

 

 まぁ何にせよ、看守が出来ることは業務をこなすことのみ。仮にここで彼女が脱獄しようとしてもどうせ止めることはできないのだから。

 

 ──きゅっ

 

「!」

 

 シャワーを終えたようで、お湯を止め身体を持ってきたバスタオルで拭き始める。手錠はかかったままであるが、全身を拭くことが出来ている。何回かのお風呂で培ってきた技術なのかもしれない。

 

 そのままお着換え。牢獄に戻る準備は出来た。

 

「さ、さっぱりできましたね? じゃあ、戻りましょうか。またついてきてください」

 

 再び地下の道を歩く二人。何事もなく部屋に到着。同時に手錠を外してやり、両手はフリーへ。だがやはり危害を加えるなどはせず、ベッドに座りいつもの趣味の時間をやり始める。

 

 ──きゅっきゅっきゅ……

 

 少しの間、看守は見ていた。彼女を。

 こうしてみると、シューズ好きのただの女の子にしか見えない。偏愛が過ぎる節もあるが、それで他人が迷惑しているとかは全くない。

 

「4番……いや、坤音レキさん」

 

 とうとう違和感に耐え切れず、看守は問いかけてしまった。

 

「貴女はなんで……ここにいるんですか?」

 

 色んな意味を含めての言葉。言ってしまってから看守は自らの発言に気が付き、思わず口を塞いだ。変なことを聞いてしまったのではないかと感じたからだ。

 

 ──きゅっきゅっきゅ……

 

 しかし、返答はない。まるで最初からそんな発言など無かったように趣味を続ける彼女。少し待ってみても、これに対して何かリアクションを見せるということはしなかった。

 

 安心すると同時に、ちょっと残念な気持ちになる看守。答えてくれれば、何か良い情報が得られたかもしれないと感じていたからだ。

 

「……ボスだったらもっと上手く聞けたのかなぁ」

 

 誰にも聞こえないようにぼそりと零す看守。彼女は聞こえていないのかやはり反応を示さない。

 

 ただ、いつも通りの日常が流れていくだけであった。

 

 

 

 ────────

 

 

 

「ようこそ先生、オレの部屋へ……なんてな」

 

 案内されたのは、個人の部屋というよりは書庫と呼んだほうがいいのではないかと思えるほどに大量の本が存在してる空間。

 加えてシャーレの先生の部屋にも存在している執務用であろう机もある。かなり使い込まれており、今でも多少の書類の山が確認できる。一組織のトップであることがここでも十分伝わってくるほどだ。

 

「ま、疲れてるはずだし立って話し続けるのもきついだろ。そこにでも掛けてくれ」

「"……うん、わかった"」

 

 部屋に圧倒された様子の先生だが、リスの言葉に答えて近場の椅子の腰かける。

 

「"すごいね、この本の量……全部リスが?"」

「あぁ、ちょっとした趣味でな。後はあいつらの勉強に必要なやつだったり、調べたいものが書かれてるやつを取り寄せてここに保管してる。電子よりかは紙のほうが好みでな」

 

 確かに、よく見れば高校や中学の教材なんかも見られる。もしかしたらこれを使って模擬授業だったり模擬テストだったりをしているのかもしれない。

 

「まぁこうして雑談に花を咲かせるのもいいが……先生はそのために来たんじゃないだろ?」

 

 自身の椅子に腰を掛け、先生へと向き合うリス。空気が、がらりと変わった。

 

 

【第七話:疑念】

 

 

「早速本題に入りたいが……その前に聞きたいことがある」

「"何かな"」

「何で火の海事件……もっと言えば、シーノヴォについて調べてるんだ? 滅んだ後に先生はやってきたはずだ。なら先生にとっちゃ終わったことだろ?」

 

 じっと先生を見つめて問いかけるリス。非常に鋭い目つきだ。

 単純な疑問からくる問いかけではない。何か多くの意図が含まれていそうだ。

 

「"依頼、だね。その関係で火の海事件やシーノヴォが関わってくるから、情報が欲しくて"」

 

 依頼者にもプライバシーがある。内容を伏せて理由を告げた。

 嘘は付いていない。だが先生の発した言葉から受け取れる情報量は少ないはず。

 

 それにも関わらず、リスは考えるしぐさをした上で、問うた。

 

「……ニツか?」

「"!?"」

「あー、やっぱしか。大方、坤音レキをなんとかしろみたいな依頼だったりするんじゃないか?」

「"ッ!!?"」

 

 流石に驚きを隠せなかった。僅かにしかない情報から依頼者である琴原ニツの特定に加え、依頼内容まで言い当ててしまったのだから。

 

 一度反応を見せてしまった。ならば取り繕ったところであまり信じてもらえなさそうな状況である。

 仕方なしで、先生は告げた。

 

「"……うん、大体合ってるよ。でもこの内容をあまり他の子には"」

「あぁ、それは百も承知。分かってるさ」

「"ありがとう。でも、なんで……"」

 

 与えられた情報は非常に少ない。それなのに何故、リスはこれを言い当てることが出来たのだろうか。

 

「さっきも似たような言ったが、シーノヴォってのは殆どのやつにとっちゃ終わったことなんだよ。そんな状況で依頼するやつなんて大分限られてくる。

 後はちょっとズルいかもだが、顔見知りなんでな。オレら治安維持委員会とニツとは」

「"え、そうなの……?"」

 

 治安維持委員会と顔見知りということは、結構危ないことをニツはしていたのではないかと心配になる先生。心を読んだのか、リスは続ける。

 

「心配するなよ先生、あいつは毎回被害者だ。トラブルメーカーの逆というか、そういう体質でな。んで保護したりちょっとした話相手になってやったり、たまに武器の改修を頼んだりな。んであいつから話してきたんだよ。恩人な友達が出来たってな。

 ……と、話が逸れちまったな。大体先生の理由は分かった」

 

 下側に目線をやり、引き出しを開けて何かを探し出すリス。下手に動くのは良くないと判断し、先生はリスからの言葉を待った。

 

「そういえば、先生はどこまでシーノヴォについて知ってる? ピコから聞いたか?」

「"えっと、ピコ以外にも数人に話を聞いたね。治安が悪くて、でもゾロフがやってきて若干良くなって、そして火の海事件が起こった……そういう風に聞いてるよ"」

「まぁ、大体合ってるな。んでここで露骨に怪しいのが『ゾロフ』ってわけだ」

「"……そう、だね"」

 

 未だに先生がゾロフへと抱いた疑問──『何故シーノヴォに進出してきたのか』は晴れていない。それらしい理由にたどり着くことが出来はしたものの理由の深掘は出来ておらず、納得できる理由は現在まで出てきていない。

 

「"ゾロフがシーノヴォに進出するって話になったとき、その対応をしたのは治安維持委員会だと思うんだけど、来た理由とか言ってたりした?"」

「そうだな……治安が良くないって当時から有名だったからな。その助けになりたいって話だったはずだ」

「"……へぇ"」

 

 誰がどう聞いても建前だ。そりゃそういう場で真実ではなく建前を語るものだということを理解している。だが、先生の中で怪しさで言えば若干増した。

 

 また、ゾロフが火の海事件に関わっていることは先生も知っている。概要には兵を使って治安維持委員会と組み坤音レキと戦ったとあった。

 

 だがそれだけなのだ。先生にとってゾロフは怪しく見えるもの。しかしこの概要を見る限りは、そこまで火の海事件の根底に、坤音レキに関わっているようには感じられない。そのため先生は一旦ゾロフを保留とし、坤音レキが強く出てくる火の海事件についての情報を集めていたのだ。

 

「んでちょっと話は変わるが、シャーレってのは、連邦生徒会直属の何でも屋。そういう認識でいいんだよな」

「"平たく言えば、そうだね"」

「相応の強い権限は持っていそうだな。……なら、いずれ分かることだ。時期が早まっただけだな」

 

 探し物は見つかったようで、探すのを辞めて一つの書類を取り出したリス。

 

 それを見るため、先生は近づく。

 表紙には、『証言書:火の海事件』との記載があった。

 

「"これは……"」

「まんま、火の海事件の証言書だ。何もかもぶっ壊されてしまったからな、事件概要は全部証言から作られてる。その証言が集められたやつだな」

 

 おもむろにページをめくるリス。見せたい場所があるようだ。

 

「あった、このページだ。火の海事件()()部分」

「"前半?"」

「ざっくり言えば、火の海事件発生からオレら含めた部隊が坤音レキと開戦するまで。つまり事件のきっかけなんかが見えてくるはずのものだ」

「"!"」

 

 どのようにして事件が起こったのか、ということ。この部分は坤音レキの行動が見えてくる重要度合いの高いところだ。

 

「んでこの部分なんだが、証言者がなんと()()()()()()()()なんだよな」

「"……え?"」

「ここに書いてる名前と完全一致してるものしかない。つまり一般人はいないんだよ」

 

 そこに置かれるのはゾロフの社員名が乗ったリスト。

 目を通してみる先生。証言者に関しては名前しか記載されていないが、リスの言葉から察するに比較すればすぐ分かることなのだろう。

 また、内容も確認。するとあることに気が付いた。

 

「"……キレイに証言内容一致してるね"」

「そう、それもある。記憶ってのは結構曖昧で、多少の食い違いはあってもおかしくないのに、こいつらの証言は指し合わせたかのように一致してるんだよな」

 

 少し、先生は考える。ゾロフの社員名や証言書。こういうのは厳重に管理されているものであるはずだ。普通の者が手に入れることなどできない。

 だが前者に関しては、治安維持委員会がシーノヴォの実権を握っていたという点から入手しようと思えばできたものであろう。とはいえ相当無茶しないと難しそうではあるが。

 

 問題は後者。入手難易度が前者以上に高いはず。どうやって入手することが出来たのか。

 

「"これはどこから?"」

「ヴァルキューレに行ったやつらからちょっと、な。あんまり良くないことをしてる自覚はあるが、これを見た先生も共犯だ」

「"……何のために調べたの?"」

「どうしても違和感が拭いきれなくてな。納得できないんだよ、世間一般の火の海事件が。だからこうして調べた」

 

少し残念そうな様子をつくり、次の言葉を紡ぐ。

 

「だが、分かったのはここまで。これだけじゃあちょっとゾロフを問い詰めるにしては弱い。証言者が社員しかいないのは事件発生場所がゾロフの敷地内だからって説明されちまうしな。実際出動したのはそこだし」

 

「ただなぁ……」と漏らすようにして、リスは続ける。

 

「……違和感がずっとあるんだよ。絶対ゾロフは怪しいと思うんだが……」

「"……"」

 

 改めて、証言内容を確認する。やはり全員が「突然坤音レキが暴れ出した」というようなことを言っている。

 

「"『突然』、かぁ……"」

 

 予想外のことが起きた、ということ。加えて破壊活動をしていたのならば、相当混乱が大きかったはず。ならば、事件開始から開戦までは多少時間の空きがあると見ていいだろう。

 

 また、事件発生がシーノヴォのどこなのかについてはあまり言及されていない。だがリスの話によればゾロフ敷地内である可能性は高そうだ。

 

「"事件当時のことでいくつか疑問があるんだけど、大丈夫?"」

「あぁ。色々聞いてくれ。そのためにここへ呼んだんだからな」

 

 目の前にいるのは先生が気になる情報を持ち得る者、元治安維持委員長。ピコのようにトラウマを持っている様子はなさそうのため、ガンガン質問していってもいいのかもしれない。

 

「"当時、治安維持委員会が事件に関与したきっかけは?"」

「ゾロフからの出動要請だな。『バケモノが暴れている。力を貸してほしい』。そんな内容だったのを覚えてる」

「"じゃあ、治安維持委員会が現場に出動して欲しいという要請が入ったのはいつ頃だったか覚えてる?"」

 

 証言書には時間が14時頃であるという旨が書かれている。現場が混乱していたという仮説が合っているならば、ここから多少ズレた30分までの間に入っているのが妥当であろう。

 

「時間、かぁ……。確か、昼過ぎだったな。14時を過ぎていたのは間違いない。半にもなっていなかったはずだ」

「"そっか"」

 

 ここは普通だ。加えてそもそもゾロフには兵力を有しているともある。少しの間ゾロフだけで対処しようとして、厳しそうだったため治安維持委員会を要請した。流れとしては自然であるし時間としても妥当と言えよう。

 

「"出動場所はゾロフの敷地内で間違いない?"」

「あぁ、それも間違いない。なんなら他のやつらにも聞いてみてもいい。同じような答えが返ってくるはずだ」

「"……なるほど"」

 

 そこまで自信を持っているなら疑う必要は無さそうだ。

 リスの言葉を受け止め、先生は改めて思考する。

 

 シーノヴォ崩壊の原因である『火の海事件』。世間では良い会社とされているシーノヴォに進出してきた会社『ゾロフ』。犯人とされてる『坤音レキ』。

 

「"──!"」

 

 これらを総合的に考えた時……先生は一つの疑問を思い起こした。

 それは、以前話を聞いた千根マコが抱いたものと似たような疑問。

 

「"──『坤音レキ』はゾロフの関係者だったりする?"」

「……いや、そんなことないはずだ。ある意味あいつはうちで有名で……」

 

 少し黙り込んで考え込む。質問を意図を読み取ろうとしているようだ。

 

「……ッ! そうか、なんで気が付かなかったんだ」

 

 気が付いた様子のリス。それに先生は、頷いて言葉を発する。

 

「"そう、()()()()()()()()()()()()()()()()()んだよね"」

 

『坤音レキ』とゾロフの関係性は薄そうであることを先生はこれまでの話からなんとなくでしかないが感じていた。

 また、ただ単に破壊活動が目的であったのであれば、人が多い場所を狙えば良い。わざわざゾロフの敷地内でやる意味がない。

 

 ならば何故レキはそこにいたのか?

 

 もっと言うならば、そこでなければならなかった理由は何か?

 

「"ちなみになんだけど、その敷地内で騒音とかはなかったの?"」

「……出動した場所は、シーノヴォの中でさらに辺境の場所だったんだ。元々最初から騒音が出てしまうことを懸念した上ってのは聞いてる。加えてシーノヴォが元々騒音そのものの自治区だったから、気が付けなかった可能性はあるな」

「"なら、事件は証言より早く始まっていた可能性もあるわけだね"」

「! 盲点だった。そうか、その可能性もあるのか……」

 

 この時点で二人の中で一つの結論が出てきていた。

 

 内容は未だ不明であるものの──ゾロフには確実に『何か』がある。

 

「"ゾロフ……もう少し深く調べてみるべきなのかもね"」

「だな。……なぁ、先生」

 

 言葉をかけるリス。振り向き、先生は次の言葉を待つ。

 

「これ、持ってってくれないか? 多分、オレが持ち続けても宝の持ち腐れだ。続けて火の海事件を追っていくなら、何かしらに役立つと思う」

 

 火の海事件の証言書、ゾロフの社員名のリストを手渡される。確かに、この資料を上手に生かせるのは、勝手に立ち上げられた一組織のトップよりかは、連邦生徒会直属のシャーレにいる先生のほうであろう。

 

「"いいの?"」

「あぁ。だがその代わり、何かあったら知らせてくれ。オレも真実は知っておきたいからな」

「"……うん、分かった"」

 

 書類を受け取り、同時にモモトークを交換。

 

「まぁ、事件の真相とか抜きにしてミリツィアに依頼したいこととかありゃ言ってくれ。こっちもまた今日みたいな勉強会に来てくれって頼むかもしれないしな」

「"分かった。あと、リス個人も何かあったら頼ってね?"」

「そこは持ちつ持たれつってやつだな、了解した」

 

 握手を交わす。これにて本日の依頼内容は全て終了したと言っていいだろう。

 

 さて、帰ってから今日の話の整理でも行おうかと考えていた。……そんな時だった。

 

『先生! お知らせが届きました!』

「"っ!?"」

「? どうしたんだ? 先生」

 

 シッテムの箱から発せられるアロナの声。この声は先生にしか聞こえない。勿論これは先生も理解しているが、突然のことであったためどうしても驚いてしまったようだ。

 

「"あ、いやなんでもないよ。ちょっと通知が来たみたいで、びっくりしただけ"」

「それならいいが」

 

 シッテムの箱にアクセスし、通知内容を確認。内容は──

 

 ──《死刑囚坤音レキへの面会許可について》。

 

 

 

【次回→第八話:面会】




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