【完結】山田リョウ♂による結束模様   作:koum

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次回か次次回が最終話です。


【 OR 】side:後藤ひとり

 

リョウさんのスマホがピロンと鳴った。

 

リョウさんはそのスマホを見て、ピコピコとやり取りをしている。

 

「なんかよくわかんないけど今からここに虹夏が来るって」

 

リョウさんは一通りのやり取りが終わったのか、スマホを置きながら言った。

 

「虹夏ちゃんが? じゃ、じゃあ、とりあえずカップラーメンのゴミを隠蔽しないと!」

 

机の上には、サメ映画を再生するパソコン、そして食べ終わってそのままのカップラーメン。

 

昼過ぎに起きてぼんやりギターを弾いていたら、お腹を空かせたリョウさんが家にやってきてサメ映画を見だしたのだ。

 

非常食・・・もはや主食になりつつあるカップラーメンを一緒に食べ始めて今に至る。

 

カップラーメン生活を見られたら虹夏ちゃんに幻滅されちゃう!

 

部屋がラーメン臭いからこのままだったらバレる!

 

「わたしは溜めちゃった食器片付けるんで、すいませんがリョウさんは換気お願いします! ファブも!」

 

「え〜、そんなの取り繕うほどのことじゃないじゃん。素直に怒られなよ」

 

「うっ、で、でも虹夏ちゃんにこれ以上生活力無さすぎって呆れられたくないし・・・」

 

「虹夏はむしろ私がお世話しなきゃって燃えると思うけど」

 

「結束バンドのメンバーが、わたしたちなせいで虹夏ちゃんの負担が大きいじゃないですか。バンドとしての手続きとかスケジュール立てとか・・・ただでさえ学業に家事にで忙しいのに・・・」

 

分担して、わたしもやった方がいいのは間違いないけど・・・すいません、無理です。

 

「作曲やライブの構成は僕、歌詞制作にギターヒーローアカウントでの宣伝としてぼっち、事務手続きは虹夏ってそれぞれ適材適所でいいと思うだけどな」

 

「そうは言っても、ちゃんと自立して対等でいたいんです。もう二十歳も超えたたんですし、赤ちゃんみたいに頼るのは違うっていうか・・・」

 

「そっか。実態はカップ麺漬けじゃんって思わなくもないけど・・・ぼっちの心意気は伝わったよ」

 

リョウさんはうなづいて窓を開けてくれた。

 

そして驚くべきことに、壁に立てかけていたスティック掃除機を取って、掃除機をかけ始めた?!

 

「リョウさん! 掃除機の使い方わかるんですか?!」

 

「僕のことなんだと思ってるのさ。・・・子どものころぶり、それこそ10年ぶりぐらいな気がする」

 

「さすがベーシスト! け、結婚って言葉から遠いところにいますね」

 

「照れるぜ」

 

「へへっ・・・」

 

リョウさんは慣れていないと言いつつ、手際よく片付けしながら掃除機かけてる。

 

やらないだけで、やろうと思えば人並み以上になんでもこなすんだよなあ。

 

「ぼっち。手が止まってる。僕に掃除機をかけさせておいてそれはないよ」

 

「あっはい!」

 

カップラーメンの匂いが薄まっていき、スプレーから放たれるフローラルな香りが部屋を浄化していく。

 

洗い物を終えて一息つく。

 

リョウさんが部屋に吹いてくれた消臭スプレーのフローラルな匂いが漂っていた。

 

せっかくだから、ベッドシーツもピッシリ整えておこうかな。

 

キレイ過ぎて虹夏ちゃん驚くかな、へへ・・・

 

そういえば。

 

「虹夏ちゃん、なんの用で来るんです?」

 

「知らない。相談したいことがあるって言われて、ぼっちの家にいるって言ったら来るって、それだけ」

 

なんとなく違和感。

 

虹夏ちゃんだったら家主のわたしに一言ありそうなもんだけどな。

 

らしくない虹夏ちゃん。

 

そして今のわたしには、虹夏ちゃんがそうなってる心当たりがあった。

 

「虹夏ちゃんがリョウさんにしようとしてた相談内容に心当たりがあります・・・」

 

「へぇ、そんなの?」

 

「実は・・・わたし、喜多ちゃんと付き合うことになったみたいなんですよ」

 

喜多ちゃんが結束バンドのリーダーである虹夏ちゃんに報告したのかも。

 

そしてその問題を持て余した虹夏ちゃんがリョウさんに相談しようとして、ちょうど良かったからこれから査問会が開催されるのかもしれない・・・

 

「え、そうなの? というか。なんでそんな不確かなのさ」

 

「実は喜多ちゃんと流れでえっちなことしちゃいまして・・・へへへっ・・・そして朝起きたら、これからは恋人なのね!(キターン)って」

 

喜多ちゃん、初々しくて可愛かったなぁ・・・。

 

恋人という事実をまだ飲み込めなくて胃もたれしてる。

 

呆気にとられるわたしは置き去り。

 

喜多ちゃんは一人で盛り上がるだけ盛り上がって、いつの間にかデートの日取りが決まっていて、それはそうと用事があるからと家に帰ってしまった。

 

「あー、郁代ってあれで重い女だからね。そりゃそうなるかもね」

 

「・・・リョウさんって喜多ちゃんに手を出してなかったんですね。あれだけ仲良さそうにしてるから、わたしが気づいてないだけでそういうこともあったんだとばかり」

 

「まぁね。郁代に手を出したら、ちゃんと付き合わざるを得ないだろうなって危機意識が働いてさ。真面目に付き合うって肌に合わないからね」

 

喜多ちゃんは普段はスキンシップ多いのに、ベッドの中では遠慮がちでおどおどと不安げだった。

 

経験ないんだな、わたしが喜多ちゃんの初めてなんだと思ったらめちゃくちゃ興奮して止まれなくなった。

 

喜多ちゃんにはいきなり無理させちゃったな。

 

・・・もしかしたらその件で、虹夏ちゃんにクレーム、もとい相談したのかもしれない。

 

そもそもだ。

 

「付き合う、恋人になるってどういうことなんですかね?」

 

「デートしてキスやSEXしたりすれば付き合うってことじゃないの」

 

「それだけで済むんだったら世に失恋ソングは溢れてないと思うんですよ。リョウさんなんてすぐ恋人できますけどフラれまくってるじゃないですか」

 

「ふむ、難しいことを言うね。ぼっちは郁代にフラれたくないんだ?」

 

「そりゃあ、まぁ・・・。友達だったらよっぽどじゃなければ終わりはないですけど、恋人は別れがあるじゃないですか。すぐに愛想をつかされそうで・・・そしてそれっきりになりそうで・・・」

 

「そこまで気にすることないと思うけど。破局なんてだいたいイメージと実物のギャップによるものだから、ぼっちと郁代は長い付き合いなんだから今さらでしょ」

 

「リョウさんが言うと説得力ありますね・・・」

 

リョウさんはパッと見クール系バンドマンだけど、サブカル趣味全開の音楽マニアかつ頭カラカラですもんね。

 

そっか、長続きしないなと思ったら、だいたいその理由なんだろうな。勉強になります!

 

「真面目に応えたのになんたる言い様」

 

「あの、せっかくなんで、恋って感覚教えてくれます? わたし、よくわかんなくて」

 

「ぼっちからバカにした気配を感じるから、もうあんまり深堀したくないんだけど」

 

「こ、これは作詞にも関わってくる有意義な会話です!」

 

「・・・じゃあいいけど。しかし恋かぁ。要するに『憧れ』じゃないの。憧れ故に手を伸ばして、恋人として所有したくなる」

 

「へへっ、わたしと喜多ちゃんの場合には当てはまりませんね。ダメなところ、喜多ちゃんにいっぱい見られてますし。いまさら憧れなんて・・・」

 

「いや、そんなことは無いんじゃない? 郁代はぼっちに憧れてると思うよ。遙か先をいくギターの腕前とか、ギタボとしての表現力とか、フロントマンとして音楽シーンで台頭してるとことか」

 

「見事に音楽ばっか・・・!」

 

「ぼっちが頑張ってきた轍じゃん。それ以上は郁代にどこが好きなのって聞いてみなよ」

 

「リョウさんも恋したことありますか?」

 

「そりゃあるね」

 

「へ、へぇー。正直意外です」

 

リョウさんが誰かに憧れるのって全然イメージ出来ない。

 

「僕は『山田リョウ』に恋してるよ。こうありたいって自分に憧れて、手を伸ばして、今もこうして一緒にいる」

 

「へっ・・・? そ、そうですか。リョウさんってやっぱり変わってますね」

 

な、ナルシスト!

 

「そんなに褒められると照れるね」

 

リョウさんが目の奥を覗き込んできた。

 

黄金の瞳と目が合う。

 

「それにしても変な男に捕まるぐらいなら、郁代なら安心かな。存分に郁代に『垂らす』といいよ」

 

「喜多ちゃんにそんな酷いことしません!」

 

何かと思ったら、リョウさんとの関係の終わりを当て擦ってくるなんて!

 

・・・『覚えたて』がサルになるってホントだったな。

 

しばらく頭がピンク色になって、お互いに気が向いたら身体を重ねる関係が続いていた。

 

その関係性の終わり、その出来事。

 

わたしが出来心で、通販で手錠と低温ロウソクを買ったことから始まったんだ・・・

 

〘回想〙

 

本格的な手錠と真紅の低温ロウソクを目にしたリョウさんは目を泳がせながら、

 

「まあ、1回ぐらいなら・・・」

 

とうなづいてくれた。

 

「ありがとうございます! じゃあ、とりあえず上半身脱がせますね!」

 

「待って、僕が垂らされる方なの?」

 

そりゃあ・・・いつも平然としているリョウさんの表情が歪むのってゾクゾクするだろうなって思ったから買ったんだし。

 

「だ、だめですか?」

 

「やだよ。趣味じゃないね」

 

「ど、どうしても? なんならかわりばんこでもいいですよ」

 

「熱いのヤじゃん。・・・ってか食い下がるね。好きなの?」

 

だってせっかく買ったし。この提案するのに勇気を振り絞ったし、ここまで来たら引きたくない。

 

ジャンケンなら・・・

 

いや運で負ける要素があるならリョウさんは乗らないな。

 

「じゃあ、あっち向いてホイで買った方が垂らす側で」

 

「いやだからやらないって」

 

「もしかして怖いんですか? それにあっち向いてホイに勝つ自信もない、と」

 

「しょうもない挑発だよ、ぼっち。それに反射神経、心理の読みあいがあるゲームで僕に勝てるとでも・・・・?」

 

不敵な笑みを浮かべるリョウさんと激闘を繰り返し・・・なんとか勝ち越し!

 

運の要素もあったな、へへ。

 

世界がこの男にロウソクを垂らせって言ってる・・・!

 

「僕を嵌めたね」

 

往生際が悪くリョウさんが言ってる。勝負は勝負ですよ。

 

「えっちでは私がハメられる方ですが、へへへ」

 

「そういう下ネタは反応に困るし、人によってはガチで引くから止めた方がいいよ」

 

「す、すみません・・・」

 

まあ、それはそうとして。

 

「覚悟はいいですか、リョウさん」

 

えっと、どこにライター置いてたっけ。

 

災害バック?

 

「そういえば急用あったわ。今日はもう帰るよ」

 

「あっ!逃げた。それはないですよ、リョウさん!」

 

「ホントにホントだから! じゃ!」

 

本当にあの人帰った、あの人・・・!

 

この件は忘れませんからね、リョウさん。

 

次に来たときには・・・っ

 

と思ってたら。

 

「彼女できた。だからこの関係はもう終わりにしよう・・・」

 

次に会ったときはシリアス顔で彼女らしき人の写真見せてきた。

 

〘回想終わり〙

 

とりあえず一発パンチは入れて、爛れた関係はそれっきりとなった。

 

いや、リョウさんの痴情のもつれに巻き込まれたくないし。刺されそうで怖い。

 

”ピンポーン♪”

 

ドアチャイムが鳴った。

 

多分、虹夏ちゃんが来たんだろう。

 

家主としてわたしが出迎えよう。

 

最後にリョウさんに振り返る。

 

「もしお昼ご飯の話になったら野菜スティック齧ってたみたいな感じでお願いします」

 

「ぼっちがそんなの食べてるとこ、見たことないんだけど」

 

今日から始めます! スーパーできゅうりでも買ってこよう。

 

来たのは虹夏ちゃんだった。

 

そして、なぜか喜多ちゃんもいた。

 

聞いてませんけど?!

 

やっぱり喜多ちゃんとラブっちゃった件?!

 

ひぃ、なんの心の準備もできてませんっ!

 

ヤバいヤバいヤバいヤバい!

 

「突然、おじゃましちゃってごめんね、ぼっちちゃん。

 

・・・ところで、今までリョウと何してたの?

 

窓空いて換気して何らかの匂いを消そうとしてるし・・・

 

普段は適当なベッドのシーツまでピッシリ整えてるね。めずらしい」

 

なんか顔怖いですよ、虹夏ちゃん。

 

もしかしてラーメン食べてたことにも気づいて怒ってます・・・?

 

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