【完結】山田リョウ♂による結束模様   作:koum

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これにておしまい
ご愛読ありがとうございました!




【 VS 】 side:伊地知虹夏 (終)

 

喜多ちゃんに指摘され、リョウに連絡をとったらタイムリーにもぼっちちゃんと一緒にいた。

 

リョウは野良猫みたいな生態をしていて、色んなところをフラフラしている。

 

リョウがぼっちちゃんちにいることも珍しくないけれど、今だけは嫌な想像をしてしまう。

 

ないとは信じたいんだけど、リョウがもしぼっちちゃんに強引に迫って関係をもっていたとしたら、結束バンドのリーダーとしてどういう対応をとったらいいんだろう。

 

「虹夏先輩、ひとりちゃんのおうち、着きましたよ?」

 

「そうだね、喜多ちゃん。よし! いこう!」

 

ぼっちちゃんちのドアチャイムの前で思わず立ち止まっていたら、喜多ちゃんに急かされてしまった。

 

気を取り直してチャイムを押す。

 

「はーい」

 

返事があって、ぼっちちゃんが顔を出した。

 

・・・高校生のころと比べて、ぼっちちゃんは大人っぽく綺麗になった。

 

フロントマンにはビジュアルも大事だからと、喜多ちゃんに手を引かれて美容院でウルフカットにして。

 

いつの間にかバチバチにピアス開けてて。

 

身長も胸囲も成長を続けていて・・・普通中学ぐらいで止まらないっけ・・・でもぼっちちゃんだしな・・・

 

低身長かつ控え目な胸の身からすると少し分けて欲しい。

 

「突然ごめんね、ちょっとリョウ共々話したいことあってさ」

 

「へっ・・・? 喜多ちゃんも・・・?」

 

「ええ! ひとりちゃんの彼女も来たわよ! 嬉しい?(キターン)」

 

「うっ! ええ、嬉しいです」

 

ぼっちちゃんは私の後ろにいた喜多ちゃんにびっくりしていた。

 

喜多ちゃんの放ったウインクにふらついている。

 

ぼっちちゃんの顔色は悪く、青ざめている。

 

「やっぱりそのこと・・・っ 。覚悟はしてました。中に入ってください」

 

執行前の囚人みたいな覚悟を決めてる風のぼっちちゃん。

 

そう言って案内してもらった室内は・・・違和感があった。

 

自室のように寛いでいるリョウのことは置いとこう。

 

鼻につくほどに濃いあからさまな芳香剤の香り・・・換気された室内・・・妙に整ったベッドシーツ。

 

『証拠隠滅』という単語が浮かぶ。

 

「なに? そんなにジロジロ見て」

 

そして部屋の主のようにしているリョウを改めて見る。

 

これは『黒』じゃないの?

 

喜多ちゃんという彼女?ができて断ろうとぼっちちゃんを、何らかの弱みを元にリョウが強引に組み敷くイメージが湧いた。

 

LINEの連絡が来たからその痕跡を消した後なんじゃないの。

 

もしかして私が気づかなかっただけで、ぼっちちゃんはリョウに辛い目に合わされてたんじゃ。

 

仲間を疑うなんてって気持ちもありはする。

 

しかしながらもし無罪だったら申し訳ないけれど、普段のリョウの生態を振り返れば疑念は強まるくらいだ。

 

鍵をかけて戸締りをしたぼっちちゃんと、ニコニコと寄りかかってる喜多ちゃんも席に着く。

 

ぼっちちゃんちはよくたまり場になっているので、それぞれが定位置についた感じ。

 

「突然、おじゃましちゃってごめんね、ぼっちちゃん。

・・・ところで、今までリョウと何してたの?

窓空いて換気して何らかの匂いを消そうとしてるし・・・

普段は適当なベッドのシーツまで変えてピッシリ整えてるね。めずらしい」

 

顔色が悪いぼっちちゃんは、ついに思い詰めた顔をして俯いてしまった。

 

「虹夏ちゃん・・・やっぱり気づいているんですか?」

 

ボソリとぼっちちゃんが言葉を漏らした。

 

よく分からないけど知ってる体のブラフでうなづく。

 

「うん、なにかがおかしいことにはね」

 

「ぼっち・・・もう無理だよ。虹夏は黙せない。さっさと白状して楽になろう」

 

「リョウさん・・・」

 

なんか知らないけど、リョウが援護射撃してくれた。

 

え、なんで? 当事者じゃないの?

 

「虹夏ちゃん・・・ごめんなさい。お昼ご飯にまたカップ麺食べてました・・・。しかもラーメンの匂い誤魔化そうとしましたぁ・・・」

 

ぷるぷる震えながら、ぼっちちゃんが自白する。

 

えっ? ラーメン??

 

そりゃこの前来た時に、ゴミ袋と台所に流し場に空き容器溢れさせてたから注意はしたけど・・・

 

それだけ???

 

そうなの?

 

「あー、そなんだ。ダメだよ、ぼっちちゃん。ちゃんと野菜食べなきゃ」

 

「はい・・・野菜スティックかじります・・・」

 

「そうよ、ひとりちゃん。お肌のケアは食べ物からよ。私も協力するわね!」

 

「喜多ちゃん・・・ありがとうございます」

 

喜多ちゃんとぼっちちゃんがほんわかした雰囲気を醸し出してる。

 

この二人の関係性にも触れるつもりだったけど・・・なんだかメンドウになってきちゃったな。

 

内心だけとはいえ、リョウも疑っちゃって罪悪感すごいな。

 

私生活めちゃくちゃなのは直して欲しいけどさ。

 

私が口出しできるものでもないし。

 

はぁ・・・心配して損した。

 

ん? なんか喜多ちゃんがいつになく真面目な顔してる。

 

「ひとりちゃん、リョウ先輩・・・無粋を承知で教えて欲しいんだけど二人ってどういう関係なのっ?! 教えてください、お願いしますぅっ!」

 

「えっ・・・喜多ちゃん・・・?」

 

ちょっとどうしたの。

 

邪推ってわかったじゃん。もうやめなよ、見苦しい。

 

「ひとりちゃんが『経験者』だって感じて、思い返して思ったの。リョウ先輩との距離感、近すぎじゃない?! ひとりちゃんってば私が抱きついたら身を固くするのに、リョウ先輩に触れたりぶつかったりしても何も反応しないわよね。あのパーソナルスペースのなさ、えっちなことしたんでしょ?! どういう関係性でそうなってたんですか?リョウ先輩!!!」

 

喜多ちゃん、ヒートアップしてる!

 

暴走って感じだ。

 

その勢いはなんなの?

 

根拠も喜多ちゃんの直感だけだし、フィルター歪んでるでしょ。

 

「ちょっと喜多ちゃん、落ち着きなよ。ぼっちちゃんやリョウは困っちゃうって。もし付き合ってたらどうしたらいいのーって躊躇したのはどうしたの?」

 

 

「改めて二人が並んでいるところ見て思ったんです。ひとりちゃんの恋人としての私は、最後にひとりちゃんが腕の中に入ればいい。昔の恋人を気にするなんて狭量なところは見せたくない。

・・・それはそれとして! ひとりちゃんの恋バナ聞きたいし、推しのリョウさんとなんかあったんなら知りたいの! これってダメなことですか虹夏先輩!!!」

 

喜多ちゃん、声がデカいって!

 

いくらここが防音マンションだからって苦情が来るって!

 

まくし立てられたうちの一人であるリョウは平然としている。

 

「だってよ、ぼっち」

 

そのまま動じることなく、話をぼっちちゃんに振った。

 

ぼっちちゃんの顔色は悪い。

 

「も、黙秘します・・・!」

 

「それはないでしょ、ひとりちゃん! わたしたち、親友じゃない?!」

 

「い、今はこ、恋人ですよ? 喜多ちゃ・・・い、郁代」

 

よっぽど言いたくない、あるいは関わりたく話なのか、たまに見せるぼっちちゃんはキメ顔を披露していた。

 

わざとらしくて嘘っぽいなぁ。

 

なんか隠そうとしてる?

 

喜多ちゃんの指摘も完全に的外れでもないってこと?

 

え、ぼっちちゃんとリョウが??

 

「ひ、ひとりちゃん、なんてイケボ・・・。それはそれとして名前呼ばないで」

 

「あっはい」

 

「ひとりちゃんがダメならリョウ先輩! 」

 

「僕は別に話しても良いけど。ぼっちが隠したいなら言えないな」

 

「そ、そんなぁ・・・」

 

「もう昔のことはいいじゃないですか? ほら、ね。今はこ、恋人なんですし」

 

「嫌ァ! そんなに隠されると気になってしかたないわ! どんな風に過ごしてたの?! 想像が膨らんで脳が壊されちゃう・・・っ」

 

待って。

 

わちゃわちゃやって喜多ちゃんは言いくるめられそうになってるけど・・・

 

ぼっちちゃんとリョウがってところの推測までは当たってたってこと?

 

今のやり取りはそういう風にしか聞こえなかった。

 

だとすればリョウは自分から言い出したバンド内恋愛の禁止を破ったこたになる。

 

「リョウ、約束を破ったの?」

 

「破ってないよ。僕とぼっちは付き合ったことはない」

 

 

でも肉体関係はあったんだよね。

「都合のいい関係だったってこと?」

 

「・・・ある意味では、そうかな。居心地は良かったよ」

 

「へぇー、見損なったよ、リョウ。バンドにだけは真面目だと思っていたのに」

 

失望した。

 

リョウに、そして全く気づかなかった間抜けな自分自身に。

 

喜多ちゃんが抜けた穴を埋めてくれたぼっちちゃんに手を出すなんて。

 

ぼっちちゃんはバンドメンバーから遊びで手を出されて汚されるなんて、全く気づかなかった。

 

結束バンドは私が始めたバンドだ。

 

もう十分かもしれない。

 

バンドとして有名になってSTARRYの名を知らしめるという目標は十分達したといえる。

 

ぼっちちゃんは結束バンドのフロントマンとして、ギターヒーローとして、十分に顔が売れている。

 

結束バンドが解散したとしても、代わりのベースとドラムを見つけて、喜多ちゃんに支えながらやっていけるはず。

 

リョウを睨んでいたら、焦った様子のぼっちちゃんが間に入ってきた。

 

「あのっ、リョウさんに酷いことされたわけじゃないので・・・! そんなに心配しないでください!」

 

「ふぅーん、そうなんだ・・・」

 

ぼっちちゃん、押しに弱いというか、おだてられて木に登るとこあるからなぁ。

 

イマイチ信用出来ない。

 

「でも細かい経緯は話せないんだ?」

 

「は、は、恥ずかしいので・・・っ」

 

まあ、確かに。

 

人の情事に踏み込んだことを聞くのは失礼か。

 

はあ、とため息をつく。

 

みんな経験しちゃってるんだよなあ。

 

まさかぼっちちゃんにも追い越されるとは。

 

・・・ロッカーのくせに私が硬すぎるのかなあ。

 

「キャー! 爛れた大人の関係だったんだわ。このままひとりちゃんの家で過ごしてたら、きっと気づいたら三人でくんずほぐれつしちゃうのかしら」

 

「安心してください。リョウさんを喜多ちゃんには、指一本触れさせません」

 

私からリョウを守るように飛び出してきたぼっちちゃんは、今度はリョウと喜多ちゃんの間に挟まっている。

 

忙しそうだな。

 

「郁代と付き合うってことでウジウジしてたくせに。ふっ、成長したな、ぼっち。免許皆伝だ」

 

 

「あっ、ありがとうございます・・・?」

 

ほら! リョウに簡単に言いくるめられてるじゃん。

 

本当に大丈夫なのかな。

 

「楽しそうだね?」

 

なんでこんな私ばっかりが気にしてるんだろという理不尽を感じながら、皮肉をこめてリョウの顔を覗き込む。

 

「うん、楽しいね」

 

人の気も知らないで。

 

リョウは朗らかに、子供みたいに純粋に笑った。

 

「いいじゃん、こんな繋がりがあってもさ」

 

リョウは、喜多ちゃんを見て、その喜多ちゃんに問い詰められてアワアワしてるぼっちちゃんを見て、私を見た。

 

「大丈夫だよ、心配しないで。だって僕――――虹夏との結束バンド好きだし」

 

 

END

 

 




あとがき

ヘンテコな話を書いた自覚があります

単純な山田ハーレムものが書きたかったわけではなく、だからこそ、はむきたすは女癖の悪さでクラッシュしたことにしてデバフをかけていたんですが・・・

喜多脱退から変な方向に走り出しましたね

ぼリョウは兄弟っぽくて好きです
ダメな兄と、兄がダメと知りつつ真似して付いていく弟
二人が並んでいるだけでほっこりします

書きたかったものと違う目的地に着いた気がするので、そのうちリベンジしたいです
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