【完結】山田リョウ♂による結束模様   作:koum

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この世界線は、喫茶店でのリョウの軽口がきっかけで、ぼっちが文化祭でダイブしなかった世界線です。

ダイブがバズることはなく、
ポイズンさんが突撃してくることなく、
未確認ライオットにも不参加です。

山田の希望通りに個性を大事に、結束バンドはマイペースに活動してきています。




【喜多ちゃん家出事変】 side:後藤ひとり

 

時はクリスマスにして星歌さんの誕生日。

 

STARRYのステージでわたしは窮地に追いやられていた。

 

メンバーから星歌さんへのプレゼント渡しというイベントが発生したのだ。

 

聞いてない、聞いてないよ、虹夏ちゃん!

 

このイベントが星歌さんへのプレゼントかと思っていた。

 

だから星歌さんへのバースデーブレゼントなんて用意していない。

 

あるのはポケットにレシートぐらい。

 

存在するのは、わたしとギターただそれだけ。

 

だからできることはひとつだけしかない。

 

覚悟を決める。

 

「ぼっちちゃん・・・」

 

観客席からはたくさんの視線に、その全てをまとめて凌駕するような熱量を星歌さんは向けてくる。

 

「わっわたしからは去年送れなかった歌を送ります!」

 

星歌さんの期待には応えたい!

 

マイクを手に取り、高さを口元に合わせる。

 

声を出すために背筋を伸ばして、ちょっとだけ広くなる視界。

 

これがギタボの喜多ちゃんがいつも見ている世界。

 

地面にふんばれるように、少しだけ足を開く。

 

今日がシンガーソングライター 後藤ひとりのデビューだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんだかんだで、星歌さんを祝ったライブを終えて。

 

「ぼっちちゃん、片付けお疲れ様ー!」

 

「あっはい」

STARRYの閉店作業に一区切りがついて、虹夏ちゃんと合流する。

 

「そうそう。ぼっちちゃん、歌上手いねえ。バンドでも歌えばいいのに」

 

「そんな・・・私の歌声なんて聞かせたらクレームで結束バンド解散になっちゃいます」

 

「いやあ、今日披露した曲を下回ることはないって! お姉ちゃんは喜んでたけどさぁ」

 

うっ!

会場に流れたお通夜の空気が胸に刺さる!

あばばばばばば!

 

「ぼっちちゃん、唐突に弾き語りしてくれることあるよね。元々結構好きだよ? ぼっちちゃんらしい曲でバッチリ感情乗ってるし。やっぱりギター上手いしさ」

 

「えへへ・・・それほどでもぉ・・・」

 

「考えてみたら今日LIVEのステージで、一人で一曲歌い切ったわけじゃん。いい経験なったんじゃない? 私の受験で活動が落ち着いちゃってるけどさ、再始動するときには『ギターボーカル』のぼっちちゃん見たいな〜」

 

「いや・・・それはちょっと荷が重いといいますが・・・」

 

ギターボーカル。

バンドのフロントマン。

 

わたしが一人で歌うのならともかく。

私なんかがたった一曲でもバンドの顔として歌うのは責任重大過ぎて怖い。

 

それに結束バンドのギターボーカルは喜多ちゃんだ。

 

みるみるギターの腕をあげてきた喜多ちゃん。

 

普段は可愛くて、

友達はたくさんいて、

女の子としての元気に溢れていて、

歌う姿はかっこよくて。

 

わたしが欲しいものを全部持っている遠い星。

 

喜多ちゃんを押しのけて、わたしがギターボーカルをやる意味なんて一つもない。

 

虹夏ちゃんは推してくれるけど、わたしにボーカルは無理だな。

 

結束バンドのフロントマン、喜多ちゃんの顔に泥塗っちゃうし。

虹夏ちゃんとそんな風におしゃべりしながら、出口に向かっていると、

 

「あれ、喜多ちゃん。どうしたの? もう閉めちゃうよ」

ガランとしたSTARRYのテーブル席に、喜多ちゃんがうつむいて座っていた。

 

声をかけられた喜多ちゃんが顔を上げた。

その眦には涙がにじんでいた。

 

「虹夏先輩・・・。今日は泊めてください! 家出してきました!」

 

「えぇぇぇ!」

 

突然のことに虹夏ちゃんと一緒に驚いてしまった。

 

・・・喜多ちゃんの話を聞いてみると、大学進学をせずバンドマンになるという進路希望に喜多ちゃんの両親が反対しているらしい。

 

 

そりゃ反対されるよね。

 

というか、喜多ちゃん大学進学しないの?

 

バンドマン一本でいくなんてのは、それしか道がない崖っぷちの人(わたし)か、実家が太くてやりたいことしかしたくない人(リョウさん)くらいだし。

 

一通り話を聞いて、喜多ちゃんが虹夏ちゃんの家に泊まるっていう話がまとまったところで、リョウさんが席から立った。

 

「そろそろ終電だから泊まるわけにもいかないし、僕は帰るよ。ぼっちはどうする?」

 

私は、なぜか喜多ちゃんの方を見てしまった。

 

喜多ちゃんはだいぶいつもの調子を取り戻していたけど、まだ元気がないように見えた。

 

わたしに何かできるわけでもないけど。

 

喜多ちゃんになにかしてあげたいと思った。

 

「ぼっちちゃんも遅いから泊まってったら?」

 

「あっはい。じゃあお世話になります・・・」

 

喜多ちゃんを気にしているわたしの心情を察してくれたのか、虹夏ちゃんが泊まるように声をかけてくれたので、その言葉に甘えることにした。

 

「えへへ。リョウさんには悪いですけどお泊り女子会って感じで楽しみですね♪」

 

喜多ちゃんが楽しそうにしている。泊まることにしてよかった。

 

「ちょっと元凶~~~~? まぁ、せっかくのクリスマスだしね。私が受験生なことは一旦置いといて今日は楽しく過ごそっか」

 

虹夏ちゃんは喜多ちゃんにジト目を送りつつ、クリスマスの夜は過ぎていった。

 

 

 

そして。

 

 

 

家出騒動の結末として、喜多ちゃんは結束バンドを脱退することになった。

 

 

 

 

 






材料が足りなかった。

例えば、未確認ライオットなんかのグランプリに出て、実績や人脈をつくっていたら違ったのかもしれない。

インディーズでも曲をリリースする予定があったり、知名度を十分に得ていてバンドが軌道に乗っていたりとか。

具体的な実績や知名度が絶対的に足りなかった。

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