転生冒険者と聖女の覗き見珍道中   作:黒色エンピツ

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11話:会敵

 

 

翌日、装備を受け取ったり、装備を普段よりも多めに揃えて森へ続く門へと向かう。

 

「来たか」

 

ギルド長が門の傍で待機していて、すぐ後ろにもう1人いた。

 

「お前に話があるそうだ」

 

そう言って横にズレると、後ろにいた人物の顔が見えた。

 

「君がアルフレッドだね?」

 

「……これはどうも。まさか領主様直々に来るとは」

 

俺とアリシアが頭を下げようとすると、手で止められる。

長身で少し痩せ型であり、少し長い金髪で目つきの鋭い青年、ウェイド・エクセンス。

このライズの領主であり、普段は表に顔を出してこない事で有名だ。

俺も顔をこの目で見たのは数度しかない。

裏では一体どんな事をしているのか……。

 

「この度はどういった御用で?」

 

「クエスト前ですまないが少し頼み……いや頼みとも呼べないか。こちらへ着いてきてくれ」

 

アリシアと顔を見合せてウェイドについて行き、小屋に入る。

……消音魔法が掛かっているな。何か行動を起こした時にはすぐにでも━━

 

「頼むッ!必ずレッドドラゴンを討伐してくれ!」

 

「「……はい?」」

 

次に見たのは何とも情けない顔だった。

今にも泣きそうな顔で言ってくるものだから剣を握っていた手から力が抜ける。

 

「情けない話だが……私は臆病でね。昔から兄達に脅かされていたのもあるのだが、独り立ちした今でもちょっとした事で驚いてしまったりするくらいさ」

 

「はぁ……」

 

「父からライズの領主という地位を譲り受ける時は驚いたものだよ。まさか兄達ではなく自分が選ばれるとは思ってもいなかった。正直、領民や冒険者達から何か言われるんじゃないかと気が気じゃなかった」

 

それはいくら何でも気にし過ぎでは……?

 

「しかしね、そんな事は一度もなかった。荒事なんかな警備隊や冒険者がやってくれていたから私はのんびりと穏やかに過ごすことが出来た。領主としてもそこそこやれるようになったのではと思っていたんだ」

 

まあ、確かに最近のライズは色々と新しいものが入ってきたりしてたな。お陰でウルにあげるお菓子に困らなくて済んだ。

 

「私は今の生活に満足している。仕事に勤しみ、秘書とのんびりティータイムを過ごす。それだけで良いのだ。それを魔物に邪魔されたくない」

 

ん?流れが変わったな……?

 

「……長々と喋ってしまったな。」

 

「いえ、ところでその秘書はどこに?一緒に行動していないんですか?」

 

「ああ、彼女には黙ってこっそりと出てきた。君に頼むのに私直々に出向いた方が誠実だと思ってね」

 

なんだこの人、ただの良い人じゃん……それより秘書の人を一目見たかったな。もしかしたらもしかするかもしれない。

和んでいると、扉側から気配を感じて鋭く振り返る。

 

「そうだと思いましたよ。ですが、護衛も付けずに出向くのは良くありませんね」

 

俺よりも艶やかな黒髪、やや吊り上がった目をしておりその上から眼鏡を掛けた、クールな印象を受けるメイドが立っていた。

 

「見つかってしまったか……昔から、君にはいつもすぐに見つけられてしまうな」

 

「当然です。メイド兼秘書兼護衛ですから」

 

「2人は幼馴染なんですか?」

 

疑問に思ったアリシアが質問をする。俺はその横で脳内をぶっ飛ばしていた。

マァァァジィィ?幼馴染の有能そうなクールメイドかよぉ!?おいおいおい、自分が安心したいとか言っておきながら実はメイドに危険が及ばないようにしたいって事か?

好きじゃん……!絶対好きじゃんそんなん!ティータイムってイチャイチャしてるんでしょ?俺もお呼ばれして横から見ていたいんだが???不意にウェイドが言った言葉にドギマギしてほしい……いや、澄まし顔でその場を乗り切って終わった後に全てを思い出して影で赤面してるのも有りか……。

うーーーわーーー!……狩ろ……殺ろ……殺る気出てきた。

 

「ああ、彼女はセリア。古くから私の家に仕えてくれている家系でね。昔から落ちこぼれだった私と仲良くしてくれていてね。ライズに来る時にも、本来であれば優秀な彼女は兄達のどちらかに着いていく話だったんだが、父に我儘を言って私と共に来てもらったんだ」

 

「なんだか素敵ですね」

 

アリシアが少し憧れたようにセリアを見ると、肩程に切り揃えた髪を指で弄って目をあちこちへと散らしていた。

 

「……ふへっ」

 

「ん?どうかしたかね?」

 

「失礼。くしゃみが出そうになったもので」

 

「そうか。これからレッドドラゴンと戦うのだから、くれぐれも体調には気をつけてくれたまえ」

 

「はい」

 

あっっっぶねぇ!思わず口から色々と漏れそうだった!

横からジトッとした視線を感じたが無視する。

 

「話しを戻そう。ギルド長は撃退でも構わないと言ったが、私としては討伐してほしい。勿論、別で私からも報酬をだそう。出来る限りの事であればなんでも言うといい」

 

あなた達の結婚式への招待状をくださいッ!!!

 

「……では、時間停止、または遅延効果の付与されたアイテムボックスをお願いします。形状は持ち運び出来る大きさの袋で、容量は可能な限り多めがいいです」

 

口から吐いて出ようとした言葉をなんとか止めてとりあえず欲しいものを口にする。旅をするならアイテムボックスはいくらあっても良いし、時間操作された物はあまりに高過ぎて手が出せないからな。いけるかわからないがお願いするだけならタダだ。

 

「ふむ……確か、屋敷のどこかにあったはずだ。探しておこう。聖女アリシア、君はどうする?」

 

「私もよろしいのですか?」

 

「当然だとも、君もこのクエストに参加するのだ。権利はある」

 

「……少し時間をもらってもよろしいでしょうか?」

 

「あまり時間をかけ過ぎなければ構わない」

 

うんうんと頭を捻りながら考え、顔を上げた。

 

「馬車と馬を1頭頂けますか?」

 

「わかった。頑丈な馬車と私が知る中で最も優秀な馬を贈ろう」

 

「あ、あの、そこまでしてもらうのは……」

 

「良いのだ。私はその馬に乗れないのでな。あの馬ならば長旅にも十分に耐えてくれるだろう」

 

「気性が荒いのなら俺達でも扱うのは難しいのでは?」

 

「いや、荒くはない。寧ろ穏やかで、誰でも乗れるだろう。しかし、私が乗って試しに走らせてみると驚くべき速度でな……率直に言って怖かった。あの馬をここに繋いでおくのは勿体ないだろう?貰ってくれ」

 

「は、はぁ……」

 

なんとも情けない理由だが、貰えるものは貰おう。

 

「ところで、2人は馬には乗れるのか?」

 

「俺は田舎の農村の出なんで問題ありません」

 

「私も農村出身ですので大丈夫です」

 

えっ、アリシアもそうだったの!?

 

「ならば御者は必要ないな。話は終わりだ。時間を取らせてすまないな、頼んだぞ」

 

「はい」

 

「お任せください」

 

2人で小屋を出る。まさか、消音魔法が掛かってたのはあの情けない声を外に漏らさない為だったりしたのか……?

 

「アルさん、さっきは何を考えていたんですか?」

 

「いや、それは……ほら、な?」

 

「もう、失礼ですよ。領主様相手に」

 

「悪かったって……そ、そうだ。アリシアも農村生まれだったんだな」

 

「誤魔化そうとしてますね?まあ、いいですけど。そうですよ。8歳の頃に聖女と発覚してからは王都で暮らしていましたけど」

 

「だろうな。ライトもそうだった」

 

礼儀作法とかも教えられるんだろうなぁ……勇者は羨ましいけど、それは嫌だな。

 

「アルー!」

 

声の方を向くと、ハンクさんとレイナさんとガントンさんとローナさんが机を囲っていた。少し離れた所ではシェリアがジールの相手をしていた。

 

「みんな揃ってどうしたんだ?」

 

「アルの活躍を見ようと思ってな!レッドドラゴンかぁ、懐かしいな」

 

「そうねぇ。それに私は契約している子達を渡していなかったから」

 

そりゃ当時の2人なら丁度いい相手だっただろうけどさ。

 

「こっちとしては責任重大なんだけど……」

 

「俺はたまには剣を実際に使っている所を見ておきたいからな」

 

職人としてはそりゃそうだろうな。

チラリとローナさんの方を見る。

 

「私は暇潰しだ」

 

「……よく言うぜ。心配だとか言ってたくせに」

 

「何か言ったか?」

 

「いいや、なんも」

 

仲が良いなぁ、と思っているとレイナさんが魔法陣を出してその中から小さな魔物が4匹……いや、4羽飛び出してきた。

見た目としてはかなり小さく、全身が真っ赤であり、羽の先は炎の様に揺らめいている。

 

「うげ、フレアスワロー……」

 

小さく、素早い。それでいて炎を全身に纏って突っ込んで来やがるから脅威となる。

 

「この子達を連れて行ってあげて。レッドドラゴンと接敵したら後はこの子達が勝手に散開して結界を張るのに丁度いい所まで広がってくれるわ。それに、この子達の目を借りる事でそっちの様子も見れるのよ?」

 

「そりゃあ便利なもんで」

 

人差し指に乗せて観察する。

クエストとしてはランク6だか、個人的にはもっと上に感じる。……初めて相手した時は酷い目にあった。

剣は届かないし、槍やグレートメイスも無理。矢を放っても軽く避けられる。最終的には突っ込んできた所を大盾を構えてシールドバッシュを叩き込んだ。

 

「アルさん、そろそろ行きましょう」

 

「ああ、そうだ……な?」

 

振り返るとアリシアが頭と両手にフレアスワローを乗せていた。それでいいのか……?

 

 

 

 

「……生き物の気配が無いな」

 

「どこかに隠れたんでしょうか?」

 

「そうだろうな。レッドドラゴンが歩いているのに態々殺されに出るわけがないだろうし」

 

正直言って、頭すっからかんなゴブリンすらいないとは思わなかった。

レッドドラゴンのいる方向は分かっていて、その方向へとそれなりに歩いているが、一向に会えない。

森に入る前に呼んだリィルも含めて3人と4羽で森を進む。

 

「こんなに天気が良いとレッドドラゴンなんか相手せずにのんびり日向ぼっこでもしたいな」

 

「気持ちは分かるけど、気を抜いてやられないでよー?」

 

「わかってるって」

 

「アリシアもよ?」

 

「え、あっ、はい!」

 

後ろを歩いているアリシアを見ると、フレアスワロー達と遊んでいた。

 

「……心配ね」

 

「だな。けどまあ、アリシアだって戦いになったら大丈夫だろ」

 

「くすぐったいですよぉ」

 

「「……」」

 

大丈夫……だよな?

少しの不安を抱きつつ森を進む。

レッドドラゴンもどこかで日向ぼっこでもしてんのかなぁ……。

大きく伸びをして、欠伸をしながら開けた場所に出ると、向かいの木々の間から前に見た個体よりもやや小柄だがレッドドラゴンが現れた。

 

「……あ、どうも」

 

「……ガアアア!!」

 

挨拶をすれば、腹の奥まで響く咆哮で返された。

 

 

 






戦闘になるとどのくらいだ1話区切ればええねん……わからん……
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