「ッ!!」
空中に投影された像の中でアルにレッドドラゴンの爪が突き刺さるのを見て思わず拳を握る。
俺たちも行ければ、そうしたら少なくともアルがやられる事は無かったはすだ。
「リゼ、ウル、助けに行こう」
「わかったわ。すぐに──」
「行かなくていい」
ウルが画面を見ながら呟く。
「なんでそんな事を言うんだ!?アルが死にそうなんだぞ!?」
アルは家族の様に接していたのに、まさかウルがそんな事を言うなんて思わなかった。
「大丈夫。アルは負けない」
「でも現に今やられているじゃないか!」
「あ、でもやっぱり行った方が良いかも。レッドドラゴンの肉を食べそびれちゃう」
「なんでそんな呑気に……リゼもなんとか言ってくれ!」
「あたしも言いたい所なんだけど、ウルがアルの事で外した事ないから本当かもね……それに見て」
リゼが指差した方を見ると、街を出る時に話していた6人の男女が森に向かっていた。
その内の2人は昔ライズで活躍していたハンクさんとレイナさんで、残りの2人は知らないドワーフとエルフにウルと同じくらいの少女と男の子がいた。
「ほら、急ぎましょ。折角のご馳走に間に合わなくなっちゃうわ。」
「わかったから待てって」
「久しぶりのドラゴン肉、楽しみね」
「その前に説教だ。俺の作ってやった装備を壊しやがって」
「ねぇねぇ、姉ちゃん。ドラゴンって美味いの?」
「実は私も初めて!母さんが言うには美味しいらしいよ?楽しみだね!」
呑気に話す姿に困惑する。
更にその後ろからギルド長が着いていっているのが見えた。
「あの!……心配じゃないんですか?アルの知り合いなんですよね?」
思わず声を掛けると、ハンクさんが振り返る。
「心配なんざしてねぇよ。一応俺の弟子だったんだ」
「でも、あれじゃあもう……」
「あー……口で説明すんのは苦手なんだ、お前も来い。現場で自分の目で確かめろ」
「……はい」
「あー……」
いっっっっっってぇなぁ……
どうなったんだっけ……ああ、ぶっ刺されてそのまま投げられたのか。
空を見上げたまま袋から上級回復薬を数本取り出して1本だけ口に咥えて残りは腹にぶっかける。
首を動かすとアリシアとリィルが懸命に戦っているのが見えた。しかし、対してダメージを与えられていない上に前衛もいないんじゃやられるのは時間の問題だろう。リィルもアリシアの補助に回っているのか大きな魔法を撃っていないみたいだ。
なんとか体を動かして弓を取り出して雷の魔法石をくっ付けた矢を番える。
軋む体に鞭を打ち、弦を引き、放った。
命中して、レッドドラゴンがこっちを向く。
「まだ終わってねぇだろ」
弓を戻して立ち上がり剣を抜く。
俺を睨みつけたレッドドラゴンが俺にトドメを刺そうと歩いてくる。
もう1本上級回復薬を取り出して呷る。
叩き潰さんと右前脚を振り下ろすのを横に飛んで躱し、すれ違い様に斬りつける。
鱗があるからか、肉質の問題か、傷は浅い。
「アリシア!回復頼む!」
「はい!」
「リィル!強化は力だけで良い!」
「あーもう!当たるんじゃないわよ!」
避けて右前脚だけを斬っていると傷が蓄積して右前脚が地面に崩れ落ちる。
すかさずグレートメイスに持ち替えて上から叩き潰す。
これでスピードは潰したが同時にグレートメイスも砕け散る。
今度は翼を広げて空を飛び、焼き払おうと口を大きく開く。
それを追い掛けるように木を駆け上り、顔面に向かって跳んで口に炎と雷の魔法石をたたきつけると、レッドドラゴンの顎を膝で蹴り上げて口を無理矢理閉じさせると大爆発を起こした。
俺自身も爆発に巻き込まれて地面に叩き付けられるがすぐに立ち上がり、落ちてきたレッドドラゴンの背中に飛び乗って翼の付け根を何度も斬りつけ、付け根から斬り落として地面に降りる。
「ふぅー……」
疲れた、腹も減ったし休みたい。
そんな事ばかりが頭に過ぎらせながら歩いてアリシア達の方へと向かう。
「あ、アルさんっ!」
アリシアの声を聞きつつ、足元のロープを剣で切ると後ろでぐちゃりと音がした。
「ドラゴンはプライドが高いからな。来ると思った。これでお揃いだな」
振り返ると石の杭に腹を突き刺されたレッドドラゴンが横たわっていた。
変わらず睨みつけて来るが、最初程の覇気を感じられない。
両手で剣を握り、喉に向けて振り下ろすと血が吹き出してきて、そのままレッドドラゴンが息絶えた。
「……はぁ、血が気持ち悪い。リィル、水」
「はいはい」
「ぶべぁ」
頭上から水を大量にぶっかけられる。もうちょっとやり方あったろ。
「アリシアー、こいつ解体するから手伝ってくれ」
「アルさん」
「どうした、疲れたから早く飯に──」
「その前に治療です!」
「いやでも鮮度が……」
「それなら俺らがやっとくから怒られてこーい」
声が聞こえた方を向くとハンクさん達がいた。ライト達もいるな。
「うげ……」
「お前らだけで楽しもうとしやがって、ズルいぞ。俺らにも食わせろ」
「目敏い……じゃあ解体はよろしく」
そのまま少し離れた所でアリシアの治療を受けることになった。
「いつもこんな戦いをしてるんですか?」
私怒ってますと言いたげな表情のアリシアに苦笑いを浮かべる。
「数年振りだ。前の時はなんだったっけ」
前の個体のレッドドラゴンはここまで苦労しなかったしな。
「もっと鍛えないとな」
「私もずっと足を引っ張ってましたから、もっと強くなります」
「今回は仕方ないだろ。事前にヒーラーとして連れてくって話だったんだから。それに神聖魔法は魔力を溜めるのに時間が掛かるって聞いたぞ。回復をしながらだったら難しいだろ」
「ウルさんにもっと魔法を教えてもらいます!」
「まあ、それなら俺も助かるぬぉあ……!?」
なんて笑っていると、ウルがやってきて腹をつついてきた。
「痛そう」
「……痛ぇよ」
ぐりぐりと拳をウルの頭に押し付けるとむふんと満足気な顔をする。
「それで、何しに来た?」
「レイナさんに魔法を教えてもらうことになった」
「良かったな」
「うん。……アリシアも一緒に教えてもらう?」
俺の背中に隠れて少し顔を出す。
前の事を気にしているみたいだが、勇気を出してみたみたいだ。
「はい、是非お願いします」
「……ん」
安心させるような笑みを浮かべてアリシアが言う。
ホッとしたのか俺の背中に顔を押し付けてくる。
「汗臭いだろ。離れろ」
「やだ」
「このちみっ子め……」
「ちみっ子じゃない」
「いでででっ!?」
ちょっと言ったらすぐに手を出しやがって、これだからまだまだ子供扱いされるんだぞ。
「ほら、解体の手伝いしてこいよ」
「後でご褒美」
「はいはい」
小さく手を振って解体している方に駆け足で向かっていった。
「心配だったんじゃないですか?」
「心配ねぇ……あんまりしてないんじゃないか?」
「そんな事言っちゃいけませんよ。ウルさんと家族同然だったんですから、そんな人がボロボロになってたら心配しますよ」
「わかったわかった」
「もうっ!」
怒りながらも治療を続けてくれる。
解体作業の方は手際が良いからか……手際良いな!?え、レイナさん何あれ、風魔法でスパスパ解体してるんだけど……こわ……
リゼとローナさんが既に肉を焼き始めていて、その近くでハンクさんとガントンさんが座って、フォークとナイフを構えていた。
ハンクさんに手招きされてライトも隣に座った。
「忙しくなるぞ。俺らも早く料理の手伝いに行くぞ」
「ダメですよ。今日は安静です」
「いやでも早くしないと腹空かせた連中が来るぞ」
「態々お肉を食べるためだけに来るんですか?……でも、仮にそうだとしてもそんなに早く来ませんよ」
「それもそうか」
袋から甘いベリーのような果実を取り出して口に含む。ガッツリ動いた後はやっぱり甘い物が美味い。
「私も頑張ったんですけどー?」
目の前にリィルが飛んでくる。
「助かったよ。ほら」
「ふふん、どういたしましてっ!」
リィルに渡すと、両手で抱えて美味しそうに頬張る。小さな果実でも妖精からすれば大きいからコスパとしては良いな。
「はい、終わりました。違和感とかはありませんか?」
「なんも無い。流石聖女だな」
「良かったです。お腹を貫通していたので何かあるかもと心配でしたから」
アリシアがほっと胸を撫で下ろす。
「頑丈さが取り柄だからな」
「普段は避ける戦い方ばっかで防御なんてしないクセに」
「俺に釘付けにさせるにはあれが1番だろ?」
「すみません、私が無理矢理着いて来たせいで……」
ふふふふ、と笑いながらもくらい影を落とす。
「そんな暗い顔するなよ。これからはああいう戦い方だって出来るって事がわかったんだからさ」
俺がヘイトを引き受けて後ろから回復を受けつつ殴り続ける。効率が良いな。自分の賢さに震えそうだ。
「良くないわよ」
「ダメです」
「ですよねー……いや、待ってちょっとふざけただけだから」
笑ったアリシアとリィルに詰め寄られる。リィルはベリーの汁で赤くなっているから威圧感が増している。
「お説教です!」
可愛らしい言い方だが、その内容は良心をチクチクと刺されるような心に来る話だった。
あんま戦闘長引かせてもなぁって思って2話で終わらせる事にしました。
それにしてもいい感じのタイトルが思い付かない……もっと読む気が起きるようなタイトルを付けられると良いんだろうけど出てこない!