リリカルマジカルに恋焦がれ   作:遊戯君

1 / 1

 勢いで描いた作品

 


運命の出会い

 

 「「ブモオオオオオオオ」」

 ドスドス

 

 迷宮都市オラリオ。地下迷宮ダンジョンを保有し、採掘した鉱石等による貿易により、莫大な利益を得た巨大都市である。

 

 現在、その地下迷宮で異常事態が起こり、現場は混沌を極めていた。

 

 「しゃっ!」

 「楽チーン!」

 

 オラリオ最強ファミリアである【ロキ・ファミリア】。彼らが中層で遭遇したミノタウロスのモンスターパーティー。これを格の違いを見せつけるが如く一撃で葬っていった。しかしそれがいけなかった。自分たちとの格の違いに臆し、一斉に逃走を図ったのだ。しかも逃走先は運悪く上層へ続く道。何十頭といるミノタウロスを上層へ送るという最悪の事態に発展してしまったのだ。

 

 「すぐに追うんだ。絶対に犠牲者を出す前に狩尽くせ!!」

 

 ミノタウロスは上層の冒険者たちの手に負える相手ではない。急がねば被害は被害は相当なものとなるだろう。だが、流石はオラリオ最強ファミリア。迅速な対応で1体1体確実に仕留めていく。お陰で犠牲者は出さず大半の駆除は済み、ほとんどの者が各々が追っていたミノタウロスを仕留め終えていた。

 

 「はぁ!!」

 

 金髪の女剣士も一撃でミノタウロスの魔石を砕いていく、が最後の1頭の姿を見失ってしまった。

 

 「こっち!」

 「うん!」

 

 自分の後方から栗毛の女魔法使いが自分を呼ぶ声がする。女剣士は主語がなくても彼女の言葉の意味を理解し、彼女の後を追い5階層へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 確かにあの時は自分は調子に乗っていた。でもだからってこんな目に遭うなんて誰が想像できるか。

 

 冒険者になって半月の新人冒険者である【グラン・アラン】は同じファミリアの【ベル・クラネル】と共にミノタウロスから逃げまどっていた。

 

 ミノタウロス、体長は3mを優に超える怪物。奴の雄たけび1つで身体の芯が恐怖で震えるのを感じる。本来なら中層に出現するモンスターで、レベル2以上の上級冒険者による戦闘が推奨されている。そんな奴がレベル1の冒険者が大半を占める上層、ましてや駆け出し冒険者御用達の5階層出現していい相手ではない。バグもいいところである。

 

 「おいベル!お前何とかしろよ!団長だろ!!」

 「団長って言ってもジャンケンで決めた書類上の役職でしょ!!グランだって僕が団長になったとき悔ししかった癖に『お前が何者だろうと関係ない。お前のことは俺が、俺のことはお前が、お互い支えあい、助け合っていこうぜ』って言ってたよね!?ジャンケン負けて悔しかったのごまかす為にかっこつけてたよね!?」

 「おおぃ!?今そんな恥ずかしいこと暴露しなくてもいいんだよ!」

 

 死と直面しているという極限状態、冷静さをすっかり失ってしまったベルは普段なら思いもしないことを口走ってしまう。

 

 「そもそもグランは行き当たりばったりで行動起こしがちなんだよ!この単細胞!」

 「なんだとぉ!?そういうお前は後のこと考えすぎなんだよ!この臆病者」

 

 グランも同じく極限状態で既に精神が限界なところにベルの一言で臨界点を突破、ベル本人が気にしていることを言ってしまった。これを皮切りにヒートアップ。二人の醜い言い争いは責任の擦り付け合いという最悪な展開を生んでしまった。

 

 「今日だって5階層降りる階段見つけたからって『降りてみようぜ』なんて危険も顧みずに軽はずみな発言をしたのが事の発端でしょ!エイナさんにまだ危ないからダメって言われてるのに……降りるなんて言わなきゃこんな目に遭わずに済んだのに!」

 「ミノタウロスなんて普通5階層にいないだろ、そもそも冒険してこその冒険者じゃねーか!てか最終的にお前の方が先に降りたの忘れてんのか!『ビビってんのか?』ってちょっと煽ったら俺のこと追い抜かして降りて行ったくっせに!」

 「でもミノタウロスに見つかったのはグランのせいでしょ!投げナイフなんて投げなければ見つからずに済んだのに!」

 「でも投げナイフは投げてなんぼ…」

 「その結果が今の状況だよ!」

 「うぐッ!?……でもあの時はまだミノタウロスはこっちに気付いていなかったじゃねーか!ベルが石ころ蹴飛ばして音鳴らしたからばれたんだろ!最終的にはベルが悪いんじゃねーか!」

 「いや!グランが悪い!」

 「ベルが悪い!」

 「グラン!!」

 「ベル!!」

 

 責任を擦り付け合う姿は正しく滑稽であった。そんなことしても全くの無駄、ダンジョンでは常に冷静に状況判断をしなければいけない。そうでないと想定外の障壁が自分たちの前に立ち塞がってしまう。

 

 「だいたいグランはいつもいつも…」

 「ッ!?ベル前!ベル前ッ!」

 「え?えええええええ!?」

 前に立ちはだかるは壁、2人は知らぬ間に行き止まりの道に入ってしまったらしい。引き返そうにもミノタウロスがそれを許してくれるはずもなく万事休すである。

 

 「ブモォ…」

 

 ミノタウロスが大きく鼻息を吹き、ゆっくりとこちらへ向かってくる。それはまるで処刑人の様であった。

 

 「あ……あ……」

 

 逃げ場はどこにもないベルは恐怖で腰を抜かし、その場にへたり込んでしまった。辛うじて立っているグランも正直立っているのが不思議なくらいである。二人の違いを強いて言えば、生に対する執着の差であろう。ベルはこの状況でも生きることを諦めてはいない。その思いが強いが故に絶望もまた大きい。対してグランは生きることをほとんど諦めていた。平たく言えば開き直っているのだ。

 彼の恐怖心はマヒして俗にいうハイな状態になっていた。どうせ死ぬのだから最期にミノタウロスに一太刀浴びせ一矢報いて死んでやろうと思ったグランは、背中に背負う背丈ほどの大きな刀を抜き切っ先をミノタウロスへと向ける。そんな姿を横目で見たベルはグランの腰をホールドし、グランのバカな考えを阻止しようとする。

 

 「グラン!?何してるの。そんなことしたらますます刺激して」

 

 しかしベルの静止の呼びかけを無視するグラン。その代わりと言うように自分の腰を掴んでいるベルの腕を引き剝がすとそのまま引っ張り上げる

 

 「ベル、立て」

 「え?」

 

 グランに引き上げられ、力が入らないながらもふらふらと立ち上がるベル。グランはミノタウロスから目を逸らさずベルに言った。

 

 「俺が奴の注意を引く。その間にお前は逃げろ」

 「な…何言ってんの…?そんなのだめだよ二人で逃げなきゃ」

 「無理なんだよ!」

 

 未だに二人で逃げようと甘い戯言を吐くベルを怒鳴って黙らせる。

 

 「あそこを突破して2人でここから逃げ出す実力は今の俺たちには無いんだよ!どちらかが犠牲に片方が生き残る、もこれしか方法はない!同時に左右から仕掛けて運頼みをするか、片方が奴のヘイトを稼ぎそいつに意識を向けてるうちにもう片方が逃げるか、選択肢は2つに1つだ!」

 「な…なら、僕が囮になるよ!」

 「……お前じゃ無理だ」

 「なんで!?」

 

 ドン!

 

 ミノタウロスから目をそらさなかったグランが突如振り向きベルを胸を軽く突く。突き飛ばされたベルは受け身尾もとれず壁に激突、力なくもたれ掛かる。

 

 「グラン…なにを…?」

 「今ので分かったろ。あんな突きくらいで態勢崩すような立つだけでも精一杯のお前は囮にすらならないんだよ」

 「だからって…ッ!?」

 「グチグチうるせーんだよ!副団長命令だ!お前は生きろ!」

 

 泣きながら引き留めてくるベルを怒鳴って一括する。グラン力強い声色、表情に一転の迷いも見えないことから、ベルはグランの覚悟を感じ取る。そんなグランを見てベルは己を恥じた。一緒に冒険者になった、にも拘らず腰が抜けてまともに動けない自分と、仲間を逃がす為自己犠牲も厭わない。情けなくて涙が込み上げてくる。そんな姿を見たグランはこんな状況にも拘わらずつい笑みを零した。

 

 「お前は俺の初めての友達(ダチ)なんだ。空っぽだった俺の心を初めて埋めた…な」

 

 オラリオに来るまで特殊な環境に身を置いていたグランは、生き抜く為に身に付けた『嘘を見抜く』という特技がある。もちろん神たちの様に完璧とは言い難いが正答率はかなりのものだ。そんな特技があるグランだから分かる。この状況でもベルは心の底からグランが死ぬことを悲しんでいる。自分の情けなさを悔やんでいる。自分が生き残る可能性が増えたというのにだ。ベルの人の好さが垣間見える瞬間であった。だからこそグランはベルと友になって、仲間になって、家族になって本当によかったと思えた。

 

 もう思い残すことはない。グランは晴れた気持ちでミノタウロスと向かい合う。ミノタウロスはまるでヒーローの変身を邪魔しない悪役が如くただ静かに仁王立ちして待っていた。

 

 「・・・・・・」

 「はっ!待っててくれるなんてずいぶん気の利く奴じゃんーか。もう遠慮はいらねー。こっからは俺とお前、1対1(サシ)の勝負だ!」

 

 グランは走り出す。無謀にも真正面から。しかし、無策にも思えるこの行動には意味はある。この戦いはベルを生かす戦いだ。まずはミノタウロスの注意を自分に向けさせるなければならない。

 

 「ブモオオオオオ!!」ドゴォッ!!

 

 ミノタウロスはグランの思惑通り、自分立ち向かってくるグランに標準を合わせる。ミノタウロスの重く強大な右腕をグランは思惑通り間一髪で左へと避ける。

 

 「はぁ……はぁ……!?」

 

 ミノタウロスの拳が放たれた場所には小さなクレーターが出来ていた。あんなのを食らったら原型も留めず即死だろう。しかし作戦は上手くいった(・・・・・・)

 

 (よしこれで奴の視界からベルは消えた)

 

 ミノタウロスが俺の俺に注目していることで反対方向にいるベルは安全にここを離脱することができる。だというのに当のベルはミノタウロス越しに此方を心配そうに見つめている。グランは『さっさと行け』と目配せすると申し訳なさそうに1歩、また1歩とミノタウロスに気付かれないようにこの場から離脱を図る。

 

 (よし…それでいい。あのまま行けばベルは生きてここから去ることができるだろう。…ま、それも俺がこのモンスター相手に時間稼ぎできればの話だが…)

 

 実はさっきの一撃、直撃は避けたものの割れた地面の破片が右足にもろに刺さってしまったのだ。これでは避けることもままならない。

 

 「ブモオ!!」

 「ッ……ッ!?」

 

 ミノタウロスがまたも大きく右腕を振りかざす。横に飛んで攻撃を避けようとしたグランだったが、先ほどの傷が災いし出遅れてしまった。

 

 「しまっ…!?ぐぅぁぁああ!!」

 

 ミノタウロスの攻撃が怪我した右足に直撃。右足に振り回されるようにグランの身体が回転しながら壁に吹っ飛ばされる。

 

 ドガッ!

 

 「う…ぐぅ……ッ!?」

 

 何とか気絶せずに済んだと安堵したグランだったが、攻撃をもろに食らった右足を見て絶句する。それはすでに脚と呼べる代物ではなかったからだ。膝から下がまるでプレス機に潰されたかのようにぺしゃんこに潰されていたのだ。

 

 「は…はは……」

 

 もう逃げることも出来ない、正真正銘ここが最期だった。気を失いそうに激痛に耐え最期の確認としてベルがまだいるか辺りを見渡す。そして姿を視認できないことが解ると安心して瞼を閉じる。ドス、ドスとゆっくりミノタウロスの足音が近付いてくる。

 

 「じゃあなベル、ごめんなヘスティア様…」

 

 ミノタウロスの拳が振り下ろされる。しかしグランが潰されることはなかった。

 

 「うわああああああ!!」

 「んなっ……ベル!?」

 

 なんと逃げたはずのベルが助けに戻ってきてしまったのだ。はずのベルは壁にもたれ掛かるグランめがけて飛び込み胴体をがっちりホールドして転がり、間一髪ミノタウロスの攻撃から救い出せたのだ。グランは本来この場にいちゃいけない男に自分のしたことがどれだけ愚かなのか諭そうとする。

 

 「なに馬鹿なことして…!?」パンッ!

 「馬鹿はどっちだよ!まともに時間かせげてないじゃないか!」

 「…!?」

 

 グランがあれこれ言う前にグランの頬を捕まえこちらの話を強制的に聞かせる。

 

 「よくこんなんで僕じゃ囮は務まらないなんて言ったね!たった2発でグロッキーじゃないか」

 「う…うるせぇ!誰のためにこんなことしてると…」

 「僕はそんなこと頼んでない!」

 「………」

 「君は初めて出会った時からそうだった。ちっぽけなプライドの固まりで強がり。自己犠牲がカッコいいとでも思ってんじゃないの?」

 「うっせ」

 「僕が英雄譚好きなのは知ってるよね。英雄はね、ただ強いんじゃない。みんなを笑顔にさせるんだ。グランのやり方じゃ誰も笑顔になれないよ、悲しむだけ」

 「…それじゃどうすればいい。このくそったれな状況をどうすれば打破できる!?」

 「分かんない」

 「はぁ!?」

 「でも片方が犠牲になるなんて間違った選択肢なんて絶対に選ばない!」

 「……どこまでも甘ちゃんだな」

 「それでも友達を見捨てるよりましだよ」

 

 馬鹿みたいに舞い戻ってきたベルに説教を食らわそうとしたグランだったが、逆に説教を食らってしまった。それでもどこか晴れやかな気分になっていた。

 

 しかし現状は先程と何も変わっていない。むしろグランが動けない分悪化している。

 

 「で?この状況どうすんだ?英雄様よ」

 「うーん、ミノタウロスの攻撃を利用してみるのはどうかな?」

 「利用?」

 「うん。ミノタウロスのパンチの軌道に僕達の剣を合わせるの。それで攻撃が当たる瞬間に僕らだけ逃げる。でもミノタウロスのパンチは止まらないし、剣もその場に置いてきぼりだから壁を支えにミノタウロスは自らのパンチの威力で自らに剣を刺しちゃうわけ。どお?明暗でしょ!」

 「…確かに明暗だな。奴の攻撃をしっかり避けられて、尚且つパンチの威力で剣が壊れなかったらな」

 「ああ!?」

 「でも今はその案に賭けるしかねーか。来るぞ3・2・1で避けろ」

 「うん!」

 「ブモォォォオオオオオ!!!」

 

 なんともギャンブル性の高い賭け。しかも結局この賭けがいくら成功しようと、ミノタウロスを倒すまでには至らないという落とし穴がある。グランはそれが解っていた。それでもよかった。どんな策を練ろうとミノタウロスは自分たちでは倒せない。まともに走れない自分では奇跡的に逃げることも出来ない。これが正真正銘最期のカッコつけだ。

 

 「3!」

 「2!」

 「1!」

 

 ヒュン!ザシュ!

 

 今だ!そう言おうとした瞬間、突如飛来してきたピンク色の球体がミノタウロスの胸元を貫通、それとほぼ同時に金色の鎌がミノタウロスに肉体を粉々に切り裂いた。一瞬の出来事過ぎてで何が起きたか理解できなかった。それでも一つだけ分かったことがある。

 

 「「大丈夫?」」

 

 自分たちは奇跡的に助かった。

 

 

 

 

 





 ご愛読ありがとうございました

 もし人気なら続き書きます

 変換ミスあったら教えて下さい
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。