魚座の運命   作:影後

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激突!黄金聖闘士対黄金聖闘士

「おとーさん!」

 

「おかえりなさい、アルバフィカ」

 

ユグドミレニアの古城へと戻れば、待っていたのかジャックに抱きつかれ、玲霞から優しさの籠もった言葉をかけられる。

 

「あぁ、今もどった」 

 

ジャックの頭を撫で、微笑みを返す。

冷酷な処刑人としての顔ではなく、まるで娘を持った父親の様な顔であった。時間が経てば、赤のランサーの情報は共有される。

カルナ、マハーバーラタにおける大英雄。

此方のサーヴァントにすら優る、まさに神の子。

 

「……」

 

「ねぇ!何してるんだい!」

 

「ライダーか、薔薇を愛でていた。そうか……」

 

「話してるの?」

 

「魚座の聖闘士は植物と対話し操る事ができる、園芸をするのなら最高の技だな」

 

「へぇ!どう言ってるの!」

 

「……ホムンクルス、ライダー。何をした」

 

「へ?」

 

アルバフィカはただ、情報を得ようとしただけだった。

しかし、薔薇だけでなく周りの草花達もホムンクルスという単語を発している。

 

「ホムンクルス…アストルフォ、ケイローン」

 

「……あははっ、ちょっと想定外。でもついてきてよ」

 

アルバフィカは黒のライダーに古城の一室へと案内された。

 

「ライダー…ここには」

 

「大丈夫!ケイローン!彼は信頼できるし!改めて!僕はアストルフォ、彼はケイローン!」

 

「…ケイローン」

 

アルバフィカにとって黒のライダーの真名よりも、黒のアーチャーの真名への衝撃が凄まじい。

射手座の聖闘士、その聖衣は眼の前の存在をモチーフにしているのだ。

いわば、神話の時代を知り、神々を知っている世代との邂逅なのだ。

 

「失礼を、私は…アテナの黄金聖闘士。魚座のアルバフィカ」

 

「いえ、そこまで改まる必要はありません」

 

「……それで、彼が件のホムンクルス」

 

「あな…た…は」

 

少年と呼べる年齢、整った顔はまるで作り物であると他に証明しているようだ。

 

「……少年、手を借りるぞ」

 

「え?」

 

アルバフィカは眼の前の少年に運命を感じた、ホムンクルスでありながらその身体には確かに存在しているはずだ。

 

「…何か、あるのですか」

 

「……そうか、君は」

 

アルバフィカとホムンクルスの間に金色の輝きが生まれる。

それは、ケイローンもアストルフォも予想していなかったものだ。

 

「……私は消える」

 

「待ってよアルバフィカ!彼に何が」

 

「……ホムンクルス、君の運命は始まった。私から言えることは1つだ、生きろ。生き抜け、君の……君自身の道を」

 

アルバフィカは一輪の薔薇をホムンクルスへと投げる。

 

「その薔薇には私の小宇宙が宿っている、危うくなればその薔薇が君を守るだろう」

 

アルバフィカは微笑みを浮かべ扉の前に立つ。

 

「……ケイローン、アストルフォ、彼と出会わせてくれたこと感謝する」

 

アルバフィカはそれだけを告げると、ゆっくりと歩き出した。

そして、ついに時が来た。

黒の陣営ダーニックからの方向により、赤のバーサーカーが昼夜問わずユグドミレニアの古城へと迫っているというのだ。

 

「……あり得るのか?サーヴァントとはマスターが」

 

「アルバフィカ殿、赤のバーサーカーはどうやら暴走しているようなのだ。おそらくは、狂化によりマスターの指示すら聞かない暴走状態へと陥ったのだろう」

 

ゴルドからの説明を受けたアルバフィカだが、それでもおかしいと感じてしまう。

 

「…客将ながら、意見を言わせてもらおう。赤のバーサーカー、確保することはできるか」

 

「なに?」

 

ブラド3世から視線を向けられるが、アルバフィカは言葉を続けた。

 

「マスターにはサーヴァントに対する絶対命令権である令呪がある、その令呪に刃向かえるサーヴァントは居るのか?」

 

「……ありえないわ、サーヴァントになれば令呪には」

 

「ならば、何故赤のバーサーカーのマスターは令呪を使わない?令呪で無理矢理言う事をきかせ、それこそ戻せば良い筈だ。令呪は転移すら可能とするのだろう?サーヴァントを仕留める事はできないが、捕まえれば相手のマスターに令呪を使わせる事が可能なはずだ」

 

「……そうだな、一理ある」

 

黒の陣営もうなずきながらブラドを見た。

 

「赤のバーサーカーを確保する、けして殺すな」

 

ヴラドの指示の下、黒の陣営は確かに動き始めた。

 

 

 

夜の常闇の中、3人の人影が森を破壊しながら進撃を続ける、赤のバーサーカーをじっと見ていた。

 

「これが英霊か、暴走の果てに死地へと」

 

「……マスター、そう言うな。バーサーカーのマスターもそう易々と死なせはしまい。バーサーカーの宝具が使われるまでの辛抱だ」

 

「まったく……姐さんとそのマスターのお嬢は仲良いよな」

 

「姐さんではない、私の名はアタランテだ。アキレウス」

 

「…そのマスターのお嬢ではない。私は、アテナの黄金聖闘士。蠍座のミレーヌ」

 

「はいはい」

 

月光に照らされ、黄金の聖衣が光り輝く。

そして、兜の下からは15歳ほどの少女の顔が浮かび上がった。

 

(なぁ、姐さん。ミレーヌに話したのかよ)

 

(……話せるわけが無いだろう、黒の陣営に黄金聖闘士がいるなど)

 

アタランテは自身のマスター、ミレーヌに開示する情報の制限をかけている。

アルバフィカの毒は貴重な令呪を一画使用し、治療された。しかし、何の毒であるかは話していない。

戦士と戦士の戦い、そしてジャックと玲霞を守る姿は父親のそれであった。

 

スパルタクスの前には数多のゴーレム達が見えている。

自身の持つ、その刃によって土人形を蹴散らした先にいるであろう圧制者を倒すため、自分の正義を貫き通すために戦うのだ。

 

「圧制者よ!!!」

 

 

 

黒の陣営の中に、アルバフィカは居た。

赤のバーサーカーは怨敵を、圧制者を倒すためにユグドミレニアの古城へと向かっている。

そして、その足止めを行うための一番槍は黒のライダー、アストルフォであった。

彼の触れれば転倒!(トラップ・オブ・アルガリア)で足を無理やり霊体化された後に、彼はヴラド三世の極刑王(カズィクル・ベイ)でえ貫かれながらも、ヴラド三世をずっと狙っていた。

キャスターにとらわれるまで、狙っていたのだ。アルバフィカはその勇姿に暴走などという言葉を感じることはなかった。

黒のセイバーとバーサーカーが残る英霊の追撃に向かった。

アルバフィカは今晩は仕事がない、そう思っていたが息を切らしたゴルドの叫び声で状況は一変した。

 

「アルバフィカ殿!」

 

古城内で待機していたはずのゴルドだが、その瞳には焦りがあった。

 

「ゴルド卿、落ち着くのだ」

 

「敵だ、敵にも聖闘士がいる!」

 

聖闘士の一撃によってセイバーは撤退し、現在バーサーカーが単騎で立ち向かっている状況だった。

喋ったことはなかったが、現在黒の陣営の客将であるアルバフィカは聖衣箱を背負い、バーサーカーの元に向かった。

 

「うううううう」

 

「こちらもバサーカーを失ったんだ、お前の首で帳簿は」

 

遊ばれていたのだろう、特に傷がついていない黒のバーサーカー。

しかし、彼女が何度攻撃しても赤のライダーには攻撃できない。

 

「アキレウス。戦士なら、一思いに」

 

「お嬢がよく」

 

「ダイヤモンド・ダスト!!!」

 

赤のライダーアキレウスの体が一瞬にして氷付き、あたりは霜に包まれる。

 

(バーサーカー、撤退だ!)

 

「うう!」

 

黒のバーサーカーは念話に従い、森に隠れるように逃げる。

 

「待て!」

 

「だめだ!アキレウス!!」

 

「ダガーローズ」

 

「...まさか俺の体に傷がつくとはな。出てこい」

 

その容姿にミレーヌは息を飲んだ、月明かりに照らされながら、紫がかった髪は神秘的に輝いている。

 

「アキレウスとは...彼が戦うか。私の仕事ではない」

 

「なに」

 

その言葉をアキレウスが呟いた瞬間、その胸に深々と矢が刺さった。

 

「俺の...身体を?逃げろ、お嬢‼」

 

「ロイヤルデモンローズ‼」

 

ミレーヌはロイヤルデモンローズを回避し、目の前の存在について理解した。

 

「これは...ありえない、デモンローズを扱えるのは」

 

「来い、魚座‼」

 

森に隠されていた聖衣箱が開き、太陽の輝きが周囲を照らした。

 

「ふざけるな!アナタは誰だ‼」

 

「我が名は魚座のアルバフィカ」

 

「ありえない、まだ魚座の黄金聖闘士は」

 

「ハァ‼」

 

アルバフィカはミレーヌの胴体に光速を超えた拳を叩き込む。

 

「マスター!」

 

「駄目、アタランテ‼」

 

アルバフィカはアタランテとの初戦とは違い小宇宙を最大限に高めて戦っている。

「速すぎる」

 

「なめるな、アタランテ。黄金聖闘士はの拳は光速。つまりマッハ90万弱。だが私の拳はそれを超え、マッハ120万。そして、私はアテナを守る最後の砦にして聖闘士の処刑人。蠍座、お前との戦いなど...」

 

「ありえない、黄金聖闘士が戦えば千日戦争か...それこそその身が消滅するまで」

 

「馬鹿者、それは実力が拮抗している為に起こること。私とお前の実力が違いすぎるのだよ‼」

 

アタランテとミレーヌは二人がかりでアルバフィカと戦っている。だが、アルバフィカはダメージを負うことをせず、只管にミレーヌに拳を振るう。

 

「蠍座、うて!!!お前の奥義を...刻んでみせろ、この肉体に」

 

「スカーレットニードル!!」

 

「ぐうぅ」

 

放たれるスカーレットニードルをアルバフィカは何故か受け続ける。避けられるはずの攻撃を、ミレーヌのスカーレットニードルを受け続けている。

 

「何故、何故避けない‼魚座!!!」

 

「...蠍座よ、お前が聖杯にかける願いは何だ」

 

7発、半分のスカーレットニードルがうちこまれた時、アルバフィカはミレーヌに問う。

血は滴り、地面を腐らせ、汚染する。

 

「願いは、1つ!!私の……私の弟が生き返る事だ!弟から受け継いたこの、蠍座!私は、弟を」

 

「……同じ願いか、だがだからこそ反目し合う。私の願いは救えなかった少女の蘇生、さて話は終わりだ」

 

「……これは我が奥義、受けてみよ」

 

「スカーレットニードル!!」

 

ミレーヌは眼の前のアルバフィカに恐怖していた、すでに半数のスカーレットニードルを放ち、今も放っている。魚座の黄金聖衣もボロボロになり、それでもただ立っている。

 

「これで…これで14発目だぞ!アルバフィカ!!」

 

アルバフィカは答えず、ただ小宇宙を燃やしている。

血が溢れようと、じっと構えを解いていない。

死ぬはずなのだ、倒れるはずなのだ。なのに、アルバフィカは倒れない。

 

「ピラニアンスクリーム」

 

「スカーレットニードル・アンタレス!!!」

 

それはピラニアの鋭い牙の様な拳だった。

肉を抉り、黄金聖衣すら削り取り、着実にミレーヌの生命を奪わんとしている。最も美しいと言われる魚座の聖闘士、それに似合わないほど荒々しい戦い方だった。

スカーレットニードル・アンタレスとピラニアンスクリームの激突。千日戦争に匹敵する小宇宙、小宇宙のぶつかり合いでアルバフィカが負けるはずは無かった。しかし、

 

「……何故……何故………私の生命を」

 

「………ごフッ」

 

アルバフィカは血を吹きながら、ミレーヌを見た。

小宇宙のぶつかり合いの末に、周囲の木々は砕け、草花は消え去った。

だが、アルバフィカの周りにあるはずのない花弁が舞っている。

 

「お前も、アテナの黄金聖闘士なら頼みがある。赤と黒という陣営の括りすら越えてだ」

 

「待ちなさい!いま、血止めを」

 

「聞くのだ!私の……とある少年を通し未来を見た!!この、聖杯戦争の先にあるのは地上の壊滅だ!どうか……どうか頼む、地上を………アテナの」

 

アルバフィカは蹌踉めきながら、ミレーヌから離れる。

 

「逃げるな、今…真央点を」

 

「無駄だ、私の血はヒュドラの毒すら越えた激毒。今、お前が無事なのは奇跡だ。血の瘴気は私の中に抑えているが、触れた瞬間この地面のようにお前の身体を腐らせ、死に至らしめる」

 

「駄目だ!アルバフィカ、お前は、お前はアテナの聖闘士だろう!こんな、こんな所で」

 

「良いのだ、蠍座のミレーヌ。後は…任せるぞ」

 

「逝くな!逝くんじゃない!!スカーレットニードル!!!」

 

ミレーヌのスカーレットニードルがアルバフィカの真央点を突いた。しかし、アルバフィカが目覚める様子はない。

 

「起きろ、アルバフィカ!起きろ!!お前も……お前も聖闘士だろうが」

 

ミレーヌは始めて聖闘士との命のやり取りをしたのだ。

その聖闘士は気高く、自身の願いよりも地上の愛と平和の為に、そして、それを託した。

 

「馬鹿…もの…………」

 

「……マスター、アキレウスから念話が来た。撤退だ」

 

「………アルバフィカは連れて行く。聖闘士ならば、聖域に埋葬してやりたい」

 

既に血は止まっている、だがアルバフィカが覚醒めることはないだろう。

ミレーヌはじっと、自身のサーヴァントを見た。

 

「……アタランテ、もしだ。私が君の願いすら踏み躙り、地上の愛と平和の為に戦うとしたらどうする」

 

「………」

 

「私は、このアルバフィカの言葉を真実だと思う。頼む、私を裏切るつもりなら今ここで令呪を全て使って自由にする」

 

「…自害せよ、とは言わないのだな」

 

「……人の願いを踏み躙る権利は人にはない、私は願いよりも、自らの使命のために戦う」

 

「………生憎だが、私のマスターはお前だ。ミレーヌ、私が契約を解除したくなるまではともに歩もう」

 

「……ありがとう……アタランテ」

 

そこにはアテナの黄金聖闘士としてのミレーヌではなく、少女としてのミレーヌの顔があった。

 

 

 

 

 

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