魚座の運命   作:影後

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アルバフィカ、限られた時に生きるもの

……ここは、ありえん。スカーレットニードルを…アンタレスを打ち込まれ、何故私は生きている」

 

「…そりゃぁ、捕虜って事だな」

 

アルバフィカには劣るが、絶世の美男子と呼べるに相応しい男が扉の前に立っていた。

 

「…アキレウスか」

 

「へぇ……流石だな、魚座いやアルバフィカか」

 

アキレウスはアルバフィカを何処か値踏みするように見ている。

 

「……待ってろ、彼奴等を呼んでくる」

 

アルバフィカは脱がされていない聖衣を確認した。

蠍座のミレーヌとの戦いでボロボロとなった聖衣を聖衣箱へと封印し、自身の血を垂らす。

聖闘士の血で聖衣の再生は上がる、だがアルバフィカの血はおかしなものだった。

聖衣箱から垂れた血は床の木を再生させ、枝と花をつけた。

ありえないのだ、アルバフィカの血はかのヒドラの血すら越える猛毒。

ミレーヌとの戦闘のときも、意識がなくなった瞬間あたりが毒に侵されてもおかしくはないはずだった。

 

「起きたのか、アルバフィカ」

 

「な!何をしている!アルバフィカ!!」

 

「へぇ……そうやんのか」

 

ミレーヌはアルバフィカの手を掴み止血を行おうとする。

 

「何故触れられる!私の血は」

 

「なっ……」

 

アルバフィカは意識していなかったが、ミレーヌに毒が周ることはない。

 

「……何をした、私に………」

 

「それを話すのは彼女だ」

 

「……まず、この様な非礼に謝罪を。アテナの黄金聖闘士よ」

 

「……ルーラーか、カルナと黒のセイバーとの戦い以来だな」

 

あの時、どの陣営にも肩入れはしないと言っていた裁定者が赤の陣営と共にいる。それは裏切りと同じである。

 

「………此方をご覧ください」

 

アルバフィカは渡された新聞に何が書いてあるのか、それを見たくはなかった。だが、それを見なければならない。そう、感じさせられた。

 

「……あの二人…の家族よりも!私が!私が!…アテナの黄金聖闘士である事を優先した末路か」

 

トゥリファスで行われている無差別殺人、犯人は不明だがその手口は知っている。アルバフィカは知識でして、そして……

 

「……アルバフィカ、お前には止める義務がある」

 

「アタランテ」

 

「お前の子だろう、お前が過ちを正さなくてはどうする」

 

「…………」

 

血塗られた手の傷を塞ぎ、アルバフィカは聖衣箱を背負う。

 

「ルーラーよ、どうかチャンスをくれ。あの子はジャックは救われるべき存在だ。生まれられなかった子供達の怨念、だが邪悪ではないのだ。無垢なだけだ、どうか……どうか頼む」

 

ルーラーは一瞬だが、慈愛の視線を向けると言葉を発する。

 

「1時間です、彼女の殺人は神秘の秘匿を破るほどではない。1時間で駄目なら、私は全陣営に黒のアサシンの抹殺を指示します」

 

「アテナの名にかけて」

 

アルバフィカはその場から瞬時に消えた、テレポーテーションだ。

アタランテもアキレウスも流石にそれを見たことはなかった。

 

「転移の魔術ではないな」

 

「…小宇宙を辿ったんだ、恐ろしいな。アルバフィカは」

 

 

 

赤のセイバーと黒のアサシンがぶつかる。

 

「お前達が……お父さんを殺した」

 

「ちぃ!復讐かよ!それに無垢な民草を巻き込んでんじゃねえ!」

 

アサシンでありながら、防具を駆使し攻撃を行い赤のセイバーと拮抗している。

 

「……だがな、うちのマスターがお前のマスターを見つけたら」

 

「お母さん!」

 

「余所見かよ!!」

 

赤のセイバー自体、子供を斬るなど騎士のあるべき姿ではない。

そう思っている、だが眼の前の存在はサーヴァントであり殺人鬼。

誰かの為にも討ち取らなければならない存在なのだ。

 

「お前ッ!!」

 

「マスター!何してんだよ!!!」

 

「ちぃ…合流されたか!セイバー!!」

 

「しゃあねぇ…なッ!」

 

赤のセイバーの斬撃が金色の輝きに阻まれる。

 

「……私の家族を殺させはしない」

 

「アルバフィカ」「おと……さん」

 

玲霞とジャックの前に魚座の黄金聖衣を纏ったアルバフィカが姿を見せた。

 

「全身金色?舐めてんのか!」

 

「……声は女のようだが、その振る舞いは騎士か」

 

「あん?俺を女だと!てめぇの方がよっぽど女じゃねぇか!」

 

「…貴様」

 

「おい、セイバー。相手さん、ブチギレてないか?」

 

赤のセイバーのマスター、獅子劫界離の隣を金色の閃光が走り赤のセイバーが吹き飛ばされた。

 

「悪いな、穏やかに終わらせようとしたが」

 

アルバフィカは優しげに話すが、その目は笑っていない。

 

「お前を打ちのめして、言う事を聞かせる事にした」

 

「いいぜ…女男!やれるもんならやってみやがれ!」

 

光速の拳が赤のセイバーの剣とぶつかり合う度に激しい衝撃波が街を破壊する。玲霞とジャックは危険性を理解し姿を晦ませ、獅子劫界離は呆れながら二人の喧嘩を見ている。

 

「獅子劫さん!」

 

「あ〜……聖闘士の嬢ちゃん確か………」

 

「蠍座のミレーヌです、お話を聞いても?」

 

「……何をしているんです、彼は」

 

「おいおい、あの男。黒のアサシンを止めに来たんだろ?何、赤のセイバーとガチの喧嘩してんだよ」

 

「黒のアサシンとそのマスターは隠れていますか、発見は難しい。しかし」

 

ジャンヌは壊れゆく街を呆れ顔で見ている。

黒のアサシンは殺しをしていたがどれも犯罪者ではあった。

しかし、その犯罪車を殺し過ぎた事で今回問題になったのだ。

神秘の秘匿が行われなくなれば、聖杯戦争どころの騒ぎではない。

それを止めるために『黒のアサシンを討て』と指示を下す側であったが、今の相手はそれに当てはまらない現代の人間。

恐ろしいのは下手なサーヴァントよりも強いのだ。

 

「喰らえ、ピラニアンローズ!」

 

「黒薔薇が!」

 

赤のセイバーの鎧をズタズタに引き裂く漆黒の薔薇の花弁。

ルーラーであるジャンヌよりも遥かに強いだろう。

 

「あぶねぇ……てめぇ、サーヴァントじゃねぇだろ!」

 

「笑止!血が流れれば死ぬ!不死などという存在は居ない、殺せなくとも倒す方法等いくらでもある!」

 

「人間やめてるテメェが言うな!」

 

「おとーさん!!!!」

 

「ぬおっ?!」

 

アルバフィカがブラッディローズを投げようとした瞬間、背中に衝撃が走った。

 

「おとーさん!おとーさん!!おとーさん!!!」

 

背中にしがみつき、顔をグリグリとこすりつけるジャック。

アルバフィカは動けず、隙をさらしてしまった。

 

「あ~~~クソッ!やる気失せた!」

 

「何を……赤のセイバー!」

 

「うるせぇよ!今は見逃してやるから失せろ!」

 

「良いのか、セイバー?」

 

「ガキの前で父親を殺す趣味はねぇよ」

 

赤のセイバーはその一言の後、霊体化し前から消えた。

残ったのはアキレウス、アタランテ、ミレーヌ、ジャック、玲霞、ジャンヌ、獅子劫界離、アルバフィカのみだ。

 

「それで、アーチャーのマスターよ。ここでコイツラをやるのか?」

 

アルバフィカは玲霞とジャックを守るように拳を構える。

 

「子供を殺す趣味はない」

 

「一騎打ちならな……でも、俺の相手は黒のアーチャーと決めているんでな」

 

「……相手をする理由が無いので。獅子劫さんは?」

 

「セイバーがあれだから」

 

「ならば、この場はルーラー。ジャンヌ・ダルクの名においての停戦を指示します。黄金聖闘士アルバフィカ、貴方は己の陣営に戻りなさい」

 

「……ジャンヌ・ダルク、貴女にアテナの祝福を」

 

アルバフィカはジャックを抱いた玲霞の肩を手を触れる。

 

「すまない、心配をかけたな」

 

「……おとーさん、おかえり!」

 

「次は先に言ってね?アルバフィカ、皆が心配していたんだから」

 

「……死なんさ、聖闘士に2度も同じ技は通じない。そうだな、ミレーヌよ」

 

「当たり前だ、必ず倒すぞ。魚座のアルバフィカ!」

 

アルバフィカは赤い薔薇をミレーヌの前に放った。

 

「!」

 

「安心しろ、私が育てた薔薇だ。ロイヤルデモンローズに劣らない美しさだろう、はっきり言おう。赤の陣営よ、お前達は近い将来にこの世界の敵となるだろう、その時私、魚座のアルバフィカは真に一人の戦士としてお前達に戦いを挑む」

 

「まて、アルバフィカ!俺達が世界の敵とはどういう」

 

「……さらばだ、アキレウス、アタランテ、ミレーヌを。次代の聖闘士を頼んだぞ」

 

アルバフィカは決意を固めた男の顔でその場から転移した。

 

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