魚座の運命   作:影後

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聖杯大戦

「アーチャー!宝具を!!」

 

「この災厄を捧げん――

『訴状の矢文(ポイボス・カタストロフェ)』!!」

 

数え切れない程の矢が上空から飛来する。

例え英霊達でもその全てを迎撃はできない、それがケイローンだとしても。

だが、その技を知っている存在が居る。

そう、

 

「聖闘士に同じ技は2度も通じん!」

 

「ピラニアンスクリーム」

 

アルバフィカの光速を越えた拳が衝撃波を放ちながら上空へと向けられる。アマゾン川のピラニア達が血を流した獣を無慈悲に喰らうように、放たれた矢は砕け、消滅していく。

 

「やはり、最大の障壁であるのは貴様か」

 

「太陽神スーリヤの子、カルナだな」

 

「いかにも…ソナタは黄金聖闘士か」

 

「黄金聖闘士、魚座のアルバフィカ。お前のその肉体、我が拳にて打ち砕かん」

 

カルナの槍とアルバフィカの拳がぶつかる。

方や太陽神の子であり半神、方や聖闘士であり人間。

しかし、人間が身に纏う聖衣は神話の時代から太陽の光を浴び続け、どんな闇すらも照らす真の光を放つ存在。

そして、それを纏うは歴代最強の魚座であるアルバフィカ。

 

「その速さ……まさしく神に等しいな」

 

「その力、いったい幾つの生命を奪ってきた」

 

「…1294。堕ちた聖闘士を粛清し、数多の敵を倒してきた。だが、私は忘れない己が奪った生命を……」

 

カルナとアルバフィカは問答をしながらも誰もが立ち入れないほどの激戦を繰り広げる。

闇夜の中に2つの輝きがまさに昼間の様に輝き照らす。

 

「ハァァァ!!!!」

 

カルナの槍から熱線が放たれ、大地が爛れる。

だが、その大地をアルバフィカは友から教えられた技で防ぐ。

 

「ダイヤモンドダストッ!」

 

「……被害を減らしたか、しかしその程度の氷では溶けゆく大地を………お前の仲間を守る事は叶わんぞ」

 

「くっ………せめて、オーロラエクスキューションを……ちぃ……」

 

「喰らえ!」

 

「かかったな!」

 

カルナの槍がアルバフィカの心臓を狙った。

しかし、半透明な壁がそこには存在した。

 

「くはっ……」

 

カルナの心臓付近から血があふれる。カルナ自身、何が起こったのかわかっていなかった。だが、アルバフィカも片膝をつく。

 

「あと………1秒展開が遅かったら死んでいたか。まさか………あれ程の一撃とは」

 

激しく小宇宙が消費され、アルバフィカ自身も想定外だった。

慢心ではないが、アルバフィカは自身の力なら簡単にとはいかなくとも英霊に負けることはないと思っていた。

だが、その認識を変えるにはカルナの一撃は十分なものだ。

 

「何をした」

 

「話すはずがない」

 

アルバフィカは全力のクリスタルウォールを槍の穂先に1cm程度に圧縮した壁を展開したのだ。通常のクリスタルウォールなら、カルナの一撃には耐えられない。ならば、密度を限界までにし、ピンポイントで展開したのだ。

 

「そうか……俺も慢心していた」

 

カルナの着用していた黄金の鎧が消えていく。

防御を捨てたのだ、それは戦士にとってあり得ないことである。

 

「……防御を捨てるだと!私を舐めているのか!」

 

神の子であるカルナに届かないと言いたいのかとアルバフィカは叫ぶ。

 

「違う、お前は真なる戦士だ。だからこそ、俺もお前に全力で当たる」

 

「神々の王の慈悲を知れ。インドラよ、刮目しろ。絶滅とは是、この一刺。」

 

それはカルナの身の丈にも迫る槍、その輻射熱で大地が溶けゆき一面をマグマと変えていく。

 

「灼き尽くせ、――『日輪よ、死に随え(ヴァサヴィ・シャクティ)』!! 」

 

「……かつての聖戦時、この技を一人で放った黄金聖闘士が居たという。この身は……地上の愛と平和の為に」

 

アルバフィカの、魚座の黄金聖闘士が金色に輝く。

小宇宙が際限無く高まり、アルバフィカはその全てを感じた。

一瞬だが、魚座の黄金聖闘士が太陽にも等しい程の輝きを見せる。それは神依、に最も近い神聖衣。

 

「なっ…聖衣の姿が」

 

「アテナエクス―クラメーション!!!!!」

 

対界宝具と小規模なビッグバンがぶつかり合う。

世界を呑み込む一撃は相殺されることはない。

 

「……ごふっ………」

 

ボロボロの聖衣と肉体を引きずる様に起き上がる。

 

「カルナめ………逃げ…いや、撤退か」

 

深手は負わせることができただろう、だが場合によっては、令呪で治されるかもしれない。アルバフィカはそんな不安を覚えはしなかった。ただ、戦い終えた戦士が自陣営に戻るため歩くだけだ。

 

「……まさか、カルナを退けるとは思いませんでしたよ」

 

「赤の陣営のマスター……いや、お前の気配は」

 

「終わりです、アサシン!」

 

「馬鹿め」

 

赤のマスターが現れたのは行幸だった。

アルバフィカは毒の瘴気を操り赤のマスターと赤のアサシンに放つ。

 

「ごふっ………こっ…これは………」

 

「こふっ………血が………止まらない」

 

「我が血はヒドラの毒をも超える激毒。今は見逃してやる、死にたくなければ仲間に救われるのだな。……さぁ、疾くと失せろ」

 

アルバフィカは赤のマスターと赤のアサシンをその毒で倒し、仲間達の下へと歩く。毒の中には神経毒も含まれている。あのままであれば、二人は倒れてくれるはずだ。

 

「うっ………」

 

「大丈夫かい?」

 

「ライダー……手を貸してくれないか?」

 

「うん、行こうか」

 

少し歩くとアルバフィカは自身を支えることが叶わず、大地に伏した。

 

「ちょっと!何してるのさ!速く!速く起きなくちゃ」

 

「……手負いの獣程恐ろしい物はない。神父とアサシンが狙えと言っていたが、どうするかマスター」

 

その言葉より、アサシンとマスターが生きていることを知るが、アルバフィカ自身、もう立ち上がる気力もない。

 

「………どうするもない」

 

赤のアーチャー、アタランテと蠍座のミレーヌが闇からゆっくりと現れる。それでも、アルバフィカは約束の為、仲間の為に体に喝を入れる。

 

「……ライダー、下がるんだ」

 

「待ってよ!君はランサーとの戦いでボロボロだ!勝てるわけがない!」

 

「黒の陣営のヤバいヤツがここまでとはな!いい機会だ、今回は潰す」

 

「おいおい……だが、良いことを聞いたな」

 

さらにボロボロの車から獅子劫界離とそのサーヴァント。

赤のセイバーが降りてくる。

 

「……降伏しろ、我々の狙いは黒のライダー。お前が何もしなければ殺すこともしない」

 

「僕は良い!アルバフィカ、君は君の生命を」

 

「………」

 

アストルフォが居る限り、毒の瘴気は使えない。

操ればなんとかなるかもしれないが、現在のアルバフィカの小宇宙は不安定であり、間違えればアストルフォも殺してしまう。

左腕を上げようとするも、力は入らずどうすることもできない。

動くのは右腕のみ、起きているのは最後の気合であった。

 

「………動けないのだろう、カルナと戦ったのだ。お前は人間の身で神に傷をつけた。もう…もう、良いではないか。栄光も、武勇もあるではないか」

 

アタランテは説得を続けているが、アルバフィカはじっと小宇宙を高めている。

 

「アタランテよ、まず貴女の様な存在が敵であることを嬉しく思う。敵でありながら、思いやる心を忘れないでいてほしい。そして……私は友を、仲間を見捨てることは決して無い!」

 

「お前!」

 

「クリスタルウォール!」

 

それは何処までも続くように感じさせられる巨大な水晶の障壁。

何人たりとも通さないという、確かな決意がある。

 

「お前達が脱落すれば黒の勝ちは見える。これが……私の最後の一撃だ」

 

「止めるんだ!アルバフィカ!!!」

 

「ミレーヌよ、問おう。我等の神、アテナはなんの神か」

 

「それは、戦いの……お前は」

 

「…アテナよ、ご笑覧下さい。行くぞ、英雄達よ」

 

「ちぃ、マスター!!」

 

「あぁ、宝具だ!」

 

「アタランテ、眠らせて………戦士として」

 

「判っている、しかし……あの壁は」

 

見えている、立ち塞がる壁の先ではライダーが何度も叩き、声を荒げながらアルバフィカを呼んでいるのだろう。

 

「喰らえ、美しき白薔薇を!」

 

「獅子劫さん!」

 

「ブラッディローズ!!」 

 

四人に向かい、白薔薇が通常ならあり得ない速度で投擲される。

だが、アルバフィカのミスだった。ミレーヌとアタランテは既にブラッディローズの弱点を知っていたのだ。

アタランテは2輪、自分とミレーヌに迫った物を撃ち落とし、

獅子劫と赤のセイバーに迫った物を撃たなかった。

 

「ぐはっ」「なん」

 

赤のセイバーの鎧は砕け、獅子劫と同じ様に心臓に深々とブラッディローズが刺さり血を吸っている。

だが、ミレーヌは即座に二人のブラッディローズを抜き捨てる。

 

「……最後の最後に一撃を与えるか……魚座のアルバフィカ。私は貴男の様な気高い聖闘士を忘れない」

 

アルバフィカは全身が動かなくなっていた。

ブラッディローズを投擲し、最後には立ったまま消えた。

小宇宙はもう残っていない、眼の前に居るのは屍だ。

 

「…随分とやってくれたな!」

 

「待て、セイバー。お前は死人の尊厳すら奪うのか?」

 

「……ちっ」

 

赤のセイバーは騎士である。仲間の為に死ぬ、それはある種の騎士道であり、理解できるものだった。

 

「…てめぇと一度、やり合ってみたかったぜ」

 

「そんな……なんで君が逝くんだ!僕等は死人だ!君は、君はこの時代を生きる魂だろ!それが!」

 

「……逃げたと思ったが、まだ居たか。此奴の墓標でやり合うのは気が進まねぇが、黒のライダー。その首、俺が貰うぞ!」

 

赤のセイバーの剣が黒のライダーに向けられる。

だが、そこには新たな剣が振り下ろされた。

 

「なんで……なんで君が居るんだ!ジーク!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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