「……アサシンも、アサシンのマスターも何処にも居ないんだ」
「どういう……いや、ライダー。コレを見ろ」
ジークフリートが指を差したのは花弁であった。
城に咲いているどんなバラよりも棘は鋭く、神々しさすら感じる破片。ソレだけで、理解できたのだ。
「……僕は、護られてばかりだ」
「…ライダー」
「アルバフィカは生きてるんだぞ!今の時代を、今の世界を!なんで!なんで僕達が此処にいるんだ!死ぬのは…」
「ライダー、アルバフィカは俺に言った。友を頼むと。俺は、その約束を違えるつもりはない」
「……」
死んでしまったら元も子もない。
ライダーは落ちた花弁を握りしめ、心に誓う。
「僕の願いは決まった、彼を……アルバフィカを蘇らす。
彼は……僕の為に死んだんだ」
「……ライダー、あの………」
「そうか、君はまだ出会った事がなかったよね。僕を救ってくれたのは魚座のアルバフィカ。とっても格好良い…アテナの聖闘士だよ」
______
赤の陣営でも、アルテミスとミレーヌは離れて生活している。
「……なんで………何故」
「……その肉体に英霊の魂を降ろした。魚座の意識はもう存在しないだろう」
「アテナが!アテナがソレを認めたと?!何故!」
「…私に聞くな」
アタランテも発狂するマスターの相手は疲れている。
仲間を守るためだけに命を燃やし、赤の陣営の最高戦力たる神の子。カルナと相対したうえ、撤退にまで追い込んだ。カルナは令呪一画では回復しきれず、2画をもっての回復。
アルバフィカは合計で3画の令呪を使わせたのだ。
「……化け物としか言いようがない」
幾ら敬愛するアルテミスの妹たる戦いの女神アテナ。
その眷属にして、魔術師すらたどり着けない神秘の存在。
聖闘士。その88の聖闘士のうち、黄道12星座を司りアテナを守護する最後の砦、ソレが魚座だとかつて話された。
「…アルバフィカ」
人を愛し、慈しむ目をしている。子供を愛し、守る父親だった。
「……ミレーヌ、お前はなんだ!」
だからこそ、ミレーヌは敵陣営ながらアルバフィカを信じていたのだろう。ミレーヌはまだ幼い、戦士であるが心は程遠いと、アタランテは理解した。だからこそ、導き手として先人として、手を挙げる。パシンッ!と乾いた音が響く。打たれると思っていなかったのか、ミレーヌは震える目でアルテミスをみる。
「ミレーヌ、お前はあの男と同じ黄金聖闘士だろう」
「なに…を」
「仲間のため、アルバフィカは我が宝具を簡単に降し、あのカルナに対しても勝利を収めた!だが、お前はどうだ!アルバフィカに一度、世界を頼まれたと言うのに…ウジウジと」
「言わないで……」
「……それでは、高が知れているな。お前を育てた存在も、お前に聖衣を託した弟も」
「黙れぇぇぇぇぇ!!!!!」
黄金の小宇宙が湧き上がる。怒りにより爆発し、太陽が大地に顕現する。聖衣箱が開き、瞬く間に蠍座の黄金聖闘士が装着される。
「来い、黄金聖闘士。お前など、私でも簡単に倒せる」
「スカーレット!ニーードルッ!!」
アタランテの俊足でいとも容易くスカーレットニードルが回避され、胴体を蹴り飛ばされる。
「マスターを裏切れないと思ったか?」
「くっそぉぉぉっ!!」
スカーレットニードルを諦め、拳による接近戦に移る。
加速していく拳だが、アタランテはソレを見てから避けていく。
「何故……何故……あたらないの」
「光速がマッハ90だとあの男は言っていたな。ソレが黄金聖闘士の拳だと、なら何故理由らない。今、その拳は私が容易く避けられるほどに弱くなっていると!」
アタランテはミレーヌの拳を受け止め握る。
その拳は余りにも軽い、幾ら強化されているとはいえ生身だ。
しかも、黄金聖闘士の攻撃では骨折は必至だろう。だが
「あっ……」
「そうだ、止められた。それどころか、私は何の傷もない。
ミレーヌ、お前は認められた筈だ。あの森で、未来を託された筈だ。その時の、己の願いすら忘れたあの覚悟はどうした!」
「…そんなの」
ミレーヌは顔をそらしてしまった。
自分が一方的に攻撃していたのが、あの森での戦いだ。サウザンドウォーズなどなり得ない。あの日から理解している、自分とアルバフィカに天と地以上の差があると。
「無理だよ……まだ…まだ14の私に……世界なんて……未来なんて」
ソレは子供として、聖闘士として隠し通してきたミレーヌの本心。アルバフィカとは違い、ミレーヌは聖闘士の役目を理解しつつも、子供だった。生命を奪うことはしたことが無い。この聖杯大戦すらミレーヌは人の命を奪っていないのだ。
「ミレーヌ、私の願いは子供が笑って過ごせる世界だ。だが、そんなことは無理だ。
私は、少なくとも一人の子供を泣かせた。父親を殺した、その時点で私の願いは無理だ。
マスター、私も願いを捨てよう。英霊として、アルバフィカの言う言葉を信じてみようと思う」
「私は……」
「立ち上がれ、私がお前を鍛える。残り少ない間だが、
徒手空拳の経験も多少はある。良いな?」
「………」
ミレーヌは地面を握り締める。
土を広いながら、それを顔に付ける。
「私は……出来損ないなんかじゃない。
私が……私が蠍座の黄金聖闘士だ。
アタランテ、先生。私を……鍛えてください」
ミレーヌは再び、覚悟を持って立ち上がった。
そして、それぞれの覚悟が決まった時。
運命が動き出した。
「なっ……なんでここが揺れて」
「これは………」
それはユグドミレニアが保管していた大聖杯が奪われた事だ。
赤のアサシンの宝具
『虚栄の空中庭園(ハンギングガーデン・オブ・バビロン)』
によって強奪された。
それを追い、黒の陣営、ルーラー。
そして、蘇りし英雄が走った。
空中庭園内部では各所で、
黒の陣営と赤の陣営の戦闘が巻き起こっていた。
「こうして、お前と再び戦う事になるとは。赤のランサー」
「黒のセイバーいや、ジークフリート」
「セイバー?
何故……いや、我と同じサーヴァントではないだと?」
「今の俺は友の為に此処にいる。
彼は命を賭して、世界を、仲間を託した」
「……そうか、あの男は逝ったのか。
現代に於いて、俺と同様にスーリヤの加護を受けてもおかしくない。奴はそれ程の男だった」
「あぁ…赤のランサーいやカルナ。俺はお前を倒す。
ランサー、先に行け」
「…感謝する」
「待て」
カルナの槍がヴラドを狙う。
しかし、その槍は衝撃波によって阻まれた。
誰が出したかなど明白だ。
カルナの前に居るのはネーデルラントの大英雄。
邪竜ファブニールを討伐せしめた男。
聖剣バルムンクを携え、
ジークフリートはカルナにに斬りかかる。
「行くぞ、カルナ!」
「…く」
音速を越えた斬撃と音速を越えた刺突がぶつかりあり、
世界を破壊する程の衝撃を生み出す。
「面白いものだ……サーヴァントになりお前の様な剣士。
そして、あの男の様な戦士と出会えた」
「……俺は悔しい。肉体は帰ってきたが、全てがあるわけではない。鎧とこのバルムンク。その為に、友一人が死んだ」
カルナの槍とジークフリートの剣がぶつかり合い、
火花を散らす。
地面が砕けようと、壁が割れようとお構い無しだ。
今、2人の中にいるのは共に戦うべき英雄のみ。
「『幻想大剣・天魔失墜(バルムンク)』!!」
魔力を光線のように放つのではなく、
刀身に纏わせカルナの肉体を斬りつける。
「…これは………ジークフリート。お前だけの力ではない。
そうか……俺は感謝するぞ。今此処で、俺が認めた2人と
戦えていることに」
神々でさえ、破壊が困難と言われているカルナの鎧。
ソレに人間の英雄、ジークフリートの斬撃が傷を与えたのだ。
その傷は重く、後少し深ければその肉体に迫っていた程だ。
「……アルバフィカ。俺に力を化してくれ」
(あぁ、任せてくれ)
ジークフリートの斬撃と共に、
顔の見えない黄金聖闘士が手刀を行っていた。
ソレは山羊座の黄金聖闘士の技と似て非なる者。
所作は同じなれど、無付けるならば。
『バルムンク』
『幻想大剣・天魔失墜』と『バルムンク』の連続攻撃。
「……認めようお前達は人間であり、神を下せる者達だ」
カルナの鎧が剥がれていく。
そして、封印されていた力が目覚めようとしていた。
「お待ちなさい!」
「ルーラー」「お前か」
「カルナ、そして……ジークフリート。
今、黒のランサーの暴走により世界が危機に瀕しています。
今だけは、そして、聖杯戦争の調律のため矛を収め共に戦ってはくれませんか」
ソレは聖女たるジャンヌ・ダルクの言葉。
聖杯戦争の裁定者として、英霊としての言葉。
「…世界の危機ならば。俺は友から託された」
「…俺もだ、伏せろ。ルーラー」
ジャンヌ・ダルクの首元に迫った異形。
ソレをカルナは焼き付くす。
「これは………一体なんだ」
「ジークフリート!大変だよ!
ヴラドが……ヴラドが吸血鬼にってカルナ?!」
「……赤のランサー」
「ジーク君!何故此処に…いえ。
今はそれどころではありません。
先で、ケイローンとアキレウスが戦闘しています。
お願いします、カルナ。吸血鬼の弱点は貴方しか居ないのです」
だが、ジャンヌ・ダルクの言葉を遮るようにケイローンに吹き飛ばされてアキレウスが現れる。
「ちっ……先生、この助け方やめねぇか?」
「アキレウス、貴方はもっと周りを見なさい」
師弟での戦いなぎら、疲労はないだろう。
しかし、サーヴァントとなった肉体に吸血鬼と言う存在は、
まさに想定外の弱点なのだ。
「……まて、ルーラー。太陽なら此処にも居るぞ」
闇の中に星々が浮かぶ。
ソレはアタランテにとっても馴染み深いもの。
アルテミスに迫った英雄オリオンを死に至らしめ、
現在も弱点たる生物。
「スカーレット・ニードルッ!!!」
「……お前かミレーヌ」
「お嬢…吹っ切れたみたいだな」
「アキレウス様、新しい師が短時間ながら」
「……2人目の黄金聖闘士ですか」
仲間の黄金聖闘士は死に、敵の黄金聖闘士は生きている。
ケイローンに多少なりとも複雑な感情を思わせる。
「私の願いは一つ、聖闘士として私に未来を託したアルバフィカ。あの男の復活だ、その邪魔をする魔物め。受けてみろ、
太陽の……黄金の輝きを!
スカーレット・ニードル・ディエーチ」
10発ものスカーレット・ニードルが吸血鬼達を破壊した。
太陽の黄金をまとった拳に焼かれ、苦しみながら消えていく。
「……ルーラーよ。
私、蠍座のミレーヌは地上の愛と平和の為。
戦おう」
「…よろしくお願いします。蠍座」