いつも隣に戸山さん   作:斉藤努

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どこかで私を知っていた方はお久しぶりです。初めての方ははじめまして。この作品は私の初作品『隣の家の戸山さん』のリメイク小説となっています。
少し前からこの作品を作り直したいと思ってのこの作品。ぜひかわいい戸山姉妹を堪能して頂きたいです。


初めの始め。

 茶色の髪の毛を持つ少女と幼女。少女が俺と幼女に声をかけ外に出た。俺は幼女……明日香を担いで追いかけると香澄は満天の宇宙(そら)の元を駆けていく。やっと止まったかと思い明日香を肩から下ろし、本能的に上を眺める。そこには一面に星の輝きが拡がっていた。

 

キラキラドキドキする

 

 そう香澄は言の葉を綴った。俺は思った。何言ってんだコイツ、と。皆さんだって同じ思いをすることだろう。だってキラキラドキドキだぜ? キラキラはわかる。星々はキラキラしてる、充分に納得。いや、もうちょっと適切な言葉なかったのかとは思ったけど。でもドキドキってなんだ? 俺はドキドキなんて全然しない。香澄がそんな独特な感性を持ち合わせてるとも思えない。でも香澄を見るとキラキラもドキドキもしているということだけはわかった。

 そこで世界が180°傾き、俺の身体は沈んでいく。

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 ……久しぶりにこの夢を見た気がする。確か、あの後に『女の子から目を離してなんかあったらどうすんだ』と父親にぶたれた。いい思い出だ。

 目の前に見える雨戸を開ければ彼女に会えるのだろうか。もう2年くらい会ってないから俺の事なんか忘れているかもしれない。忘れられているのは悲しいけど俺が会わないという道を選んだのだから自業自得だ。気持ちを入れ替えるための深呼吸をし、朝ごはんの準備のためにリビングへ向かった。

 いつものように目玉焼きとご飯を用意して椅子に座り箸を持つ。飾り気のない部屋に自分の咀嚼音だけが散布した。

 

 そういえば、この環境に慣れてしまってもう1年ほど経ってしまったか。慣れというのは恐ろしいなと常々思う。ご飯も食べ終わったしそろそろ学校に行くか。皿洗いは……水につけといて帰ってきてから洗おう。

 俺の靴しかない玄関。ため息をひとつ零して扉を開けた。

 

 

 扉が閉まる音が重なって聞こえた。ひとつは先程開けた自分の家のもの。もうひとつは……右の方から聞こえたような気がして、でもそっちには。

 そちらを向きたくないという俺の気持ちとは裏腹に身体の方は反射的に目を向けていた。

 茶髪のショートで、三角形のヘアピンを付けた少女がそこに立っていた。彼女の名前は……。

 

「そ、蒼兄!? 蒼兄だよね! 覚えてる? 私、明日香だよ」

 

 寧ろ今はアイツより明日香の方が幾分かマシだった。罪悪感もあまりないし、きっと目を見て話せる。そう、大丈夫。

 

「覚えてるっての。久しぶり、明日香」

 

 でも、明日香の目を直視することはできなかった。明日香の方を見てるけど明日香を見てるわけじゃない。明日香のことがぼやけてしまうくらい遠くを見ていた。

 

「蒼兄! ぼーっとしてたけど体大丈夫?」

 

 心配されてしまった。いいと思ったのだが、どうやらこの作戦は短い会話を繋げる場においてはさして効力を持たないようだ。

 まあいい、適当に躱して学校に行こう。そう考えて足を動かし始めたが、そこでまたもや声がかかった。

 

「あのさ! もし良かったら一緒に登校、しない? 無理だったら全然断って貰っていいんだけど」

 

 そんな笑顔で聞かれて断れるわけないじゃないか。俺はそんな強い人間なんかじゃない。俺がもっと強かったら……、思い出すのはやめにしよう。いい感情なんか湧いてこないのだから。折角の再会をこんな記憶で穢すものではない。

 首を縦に振ると明日香は嬉しそうな顔をしながらこちらに駆け寄ってきた。

 

「ホントに久しぶりだね。ブレザー似合ってる、カッコイイよ」

 

「おう、明日香も似合ってるぞ。それにしても身長伸びたな。昔はこ〜んな小さかったのにさ」

 

「最後に会ったのだって2年前だからね。そりゃ成長するよ。蒼兄ももっと身長伸びてイケメンに磨きがかかったね」

 

 そんなことない、なんて無碍なことは言えないので適当にいなして歩き始めた。こうやって明日香と一緒に登校するのはいつぶりだろうか。少し楽しく、嬉しかった。けど、後ろめたくて心の底から笑えた気はしなかった。

 

「お姉ちゃんと会うのは、厳しそう? 私と話すのも嫌?」

 

 そんな訳ないだろ! ……声は出ていなかった。でも優しい明日香は俺の表情を読み取ってくれたようでまた話しかけてくれた。

 

「そりゃ……そうだよね。変なこと聞いてごめん。それでね、久しぶりに会えて、こうやって一緒に学校行けて嬉しいんだ」

 

「俺もだよ。でも明日香に会うなんて思ってなかったからちょっと緊張してて。普段は出くわさないように敢えて時間ずらしたりしてるから……っ!!」

 

 口に出さなくていいことを言ってしまった。『君たちのこと避けてました』そう解釈されるのが普通の言葉。何も無い状況でも傷つくのにましてや、自分と会うことを楽しみにしていた子に対してそんな言葉を吐いてしまったんだ。悔恨の念が湧き出る。

 

「そりゃ……そうだよね。蒼兄のことだから過去のことなんか思い出さないように高校ではおちゃらけたりしてるんでしょ? それとも優等生だったり」

 

「どっちも正解かな。それに香澄には昔のこと思い出させちゃうかなって。だったら俺がわざと会わないようにした方がいいって思っちゃってさ」

 

「ふーん、そっか。結局は全部お姉ちゃんじゃん

 

 もはや呆れることしかできないようだ。でもそれだけじゃない、ちょっと怒ってる。昔からの勘だが、明日香が怒っているのを何となく察知できるのだ。

「あっ、そうだ蒼兄、連絡先! スマホ出して。ほら、これならいつでも連絡できるから。辛い時は私に吐き出してくれてもいいんだよ?」

 

「ありがと。でもそんなことできないよ」

 

 だって君にだって罪悪感でいっぱいなんだから。

 言葉は全部出切らないまま明日香と別れ一人学校への道を進んで行った。




いかがだったでしょうか。香澄も好きなのですが、明日香のほうが好きなんですよね。お姉ちゃんには微ツンデレな感じとか、調子の乗り方とか刺さります。
この作品はリメイク前と感じを変えて戸山姉妹オンリーでやろうと思ってます。ふたりの話が完結したら番外編みたいな形で投稿するかもしれません。お楽しみに。
それではまたどこかの作品で。

どちらが好き?

  • グイグイ甘えてくる系の香澄
  • お姉ちゃんと貴方だけには甘々系の明日香
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