ご飯を食べ、いつもならこれから風呂に入って寝る時間なのだが、そうはいかせてもらえないらしい。香澄が俺の部屋に入ってきてベッドにダイブした。
「蒼くんのベッド久しぶり〜!」
「怪我したらどうすんだ? というか勝手に入ってくんな」
「ケガしないもん!」
「はぁ……あのさ、香澄」
「なぁに?」
「……香澄はどうして俺にあいたかったんだ?」
「蒼くんのことが大好きだからだよ!」
ドキッとした。けど相手は香澄だ。他意はない。香澄の目を直視できない。変に意識してしまっている。俺だって高校生なのだから性欲もあるし恋だなんだにも興味はある。けど、その相手は香澄じゃない気がする。
「ごめんな。自分のことだけで精一杯になっちゃっててさ、合わす顔ないなぁって」
「蒼くん、とっても辛かったでしょ? 私こそごめんね。蒼くんのこと何にも知らなくて。蒼くんは私とか
香澄はさっきまでベッドで寝そべっていたかと思っていたのに、いつの間にかに目の前にいた。目はうるうるしていて、今にでも泣き出してしまいそうな顔だった。
もう、我慢なんて出来っこなかった。ずっとギリギリで、大丈夫なフリをしていただけ。
「蒼くん? あっちゃんも私も、頼っていいんだよ? 言ってくれればなんだって手伝う。今まで蒼くんがしてくれたみたいにさ? だから、だからっ!」
そんなこと言われたら、甘えてしまうだろう? 自分が二人の兄貴分なんだって。だから泣いてる姿なんてみせられないんだって。そう自分に暗示してきた。けれど、もう我慢とかそういう話じゃなかった。涙は出ている。泣きたい気分なのは香澄や明日香のはずなのに。自分は堪えないといけないのに。目の前の香澄はずっと笑顔でこっちを見てくる。
「だから、だからさ。蒼くん。もう絶対に離れないでね」
その言葉が、深く胸に突き刺さる。痛い、痛い。けれどとても心地よい。身体がじんわりと暖まって瞼が重い。今は、瞼をこじ開けようとする気力も湧いてこなかった。
寝てしまった。そう気付くのに幾許もいらない。横を見ると、ニヤニヤした姉妹がいた。揶揄われる予感がしたのでこの部屋を出ようとした。しかしそれよりも早く、俺の腕は掴まれる。
「蒼にい? なんでどっかに行こうとするの? もうさ、一回言っちゃったんだから今更どうにかしようとしても意味ないと思うよ。わたしとお姉ちゃんのこと、頼ってくれるんでしょ?」
「いや、でも時と場合っていうか。頼りっきりは良くないっていうか……」
「確かにそうだね。けど、ギリギリになる前にちゃんと話してくれる?」
「うん。そうする」
「もう勝手に居なくならないでね」
力いっぱい握られていた手がだんだんと解れていく。今にも泣き出しそうなくらい目がうるうるな明日香。その横には……まるでおもちゃを盗られた子供のようなムスーとした顔をしている香澄がいた。
「なんかあっちゃんばっかり、ずるい、ずるい!」
「ずるくないよ? お姉ちゃんが蒼にいの手を掴まないのが悪いだけじゃん。それをずるいっていうのはお姉ちゃんのワガママじゃない?」
「蒼くんが行くほう独り占めしてたんだもん!」
「わたしはあとから来たよ? もともとお姉ちゃんがそこにいたんだからその言い訳は無理があるよ」
「はいはい、二人ともそんな言い合いしないで。それに明日香も香澄も俺はここにいるんだよ?」
「ずっといてくれなかったクセに。そんなこと言うのズルいよ」
「そーだ、そーだ! 蒼くんがズルい!」
言い返せないことをいいことに……香澄も便乗して、もう収集つかないぞ?
「時に、蒼にい。今日一緒に寝てくれたら許さないこともないよ。ね、お姉ちゃん?」
「! そうだね、あっちゃん。ということでベッドに向かおう、蒼くん」
え、いや、どいうこと? なんで? てか俺まだお風呂入ってないから! こんなことになるなら家の鍵かけときゃよかったなぁ。あ、でも2人とも合鍵持ってるか。
どちらが好き?
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グイグイ甘えてくる系の香澄
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お姉ちゃんと貴方だけには甘々系の明日香